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お買い物かご

清閑 PERSONAL DIARY

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2019.2.28(木) anniversary

「あにばーさりー」と打ち込んでF4キーを押すと”anniversary”と出るから、ワードプロセッサとは便利なものだとつくづく思う。「あにう゛ぁーさりー」と入れても同じことだ。

ところで僕はこと「記念日」については、ほとんど興味を持たない。正月にもクリスマスにも興味は無いから、たとえ1月1日の朝からでも何の屈託もなく、あるいはむしろ意気揚々と働くことができる。しかし浮き世で生きていくためには、記念日にはそれらしい行動をとらなくてはならないこともある。

オフクロの誕生日には毎年、霧降高原のステーキ屋で夕食会を催した。オフクロの好物が牛肉だったからだ。しかしオフクロが亡くなった翌年から、この店には4年半も無沙汰をしてしまった。オフクロの葬儀に際しては生花までいただきながら、申し訳ないこと甚だしい。よって今日は、嫁のモモ君の誕生日にかこつけて、久しぶりにその店へ出かけることとした。

我が家から日光の旧市街へ向かう大谷川河畔の道には霧が出ていた。そこから霧降大橋を渡って霧降高原への道を上り始めれば、その土地の名の通り、霧はますます深い。

この店の、4年半前と変わらず、否、いつ来ても上出来のステーキにナイフを入れながら思い出したのは、同級生サカイマサキ君のことだ。牛肉を好きだったに違いない関西人のサカイ君は、この店に来たいと常々言いながら、それを果たさないまま3年前の2月に亡くなった。「肉を食う」という生存に直結した行為の最中には、却って死を思うことが自然なのかも知れない。

寒くない冬の雨や霧は美しい。食事を終えたステーキ屋の外には、こころよく湿った夜があった。


朝飯 五目ひじき、納豆、揚げ湯波と小松菜の炊き合わせ、グリーンピースの炒り豆腐、空豆の天ぷら、大根と厚揚げ豆腐の淡味炊き、ふきのとうのたまり漬、メシ、トマトと揚げ湯波と長葱の味噌汁
昼飯 「ポンヌッフ」の浅蜊とホワイトソースのパン、コーヒー
晩飯 「グルマンズ和牛」の果物盛り合わせフィレステーキクレープ、他あれこれ、“Beaujolais Villages Antoine Chateled 2016”


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2019.2.27(水) 街の真ん中あたり

大げさに言えば何十年も足を踏み入れなかった宇都宮の中心部を、このところはしばしば歩く。歴史ある繁華街バンバ通りに建つパルコが今年5月に撤退のニュースに触れたからかも知れない。そのバンバ通りと交わる、これまた賑やかだったオリオン通りには、今や歩く人もまばらだ。宇都宮は日光の南東に位置するだけに、気温はより高いはずだ。しかし前回の今月6日とおなじくイヤに寒く感じるのは、この広いアーケードに風が吹き抜けるからだろうか。

そのオリオン通りにあって、例外的に客足の絶えない店を前回、見つけた。飲み屋ではあるけれど、昼は定食屋になるこの店に客が多く集まる理由は、一度ここで何かを食べてみれば直ぐに分かる。

夜は飲み屋になるところから、あるいは既存の客に気を遣ってか、店内にタバコの煙の漂うところが僕には大きな短所となるが、それを補って余りある諸々が、この店にはある。そして今日もここで昼の定食を食べ、中心部に残った唯一の大型店である東武百貨店で少々の買い物をしてから帰路に着く。


朝飯 揚げ湯波と小松菜の炊き合わせ、納豆、巻湯波と人参の淡味炊き、グリーンピースの炒り豆腐、キクラゲと鱈子の佃煮、ふきのとうのたまり漬、メシ、揚げ湯波と万能葱の味噌汁
昼飯 「出世街道」の鯵フライ定食
晩飯 蓮根と人参のきんぴら、椎茸と三つ葉のおひたし、鰆の味醂焼き、ホワイトアスパラガスのバター焼き「日光味噌のたまり浅漬けの素・朝露」がけ、焼叉と長葱のソテー、豆腐と若布と万能葱の味噌汁、麦焼酎「日田全麹」(お湯割り)


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2019.2.26(火) 同級生からの電話

日光味噌のたまり漬の、袋の口を金属の輪で留める方式は、1969年から実に50年のあいだ用いてきたものだ。この留め金の機械の製造元は、2000年代のはじめまで東京の最北部で命脈を保ってきたものの、遂に力尽き、以降は宮城県の会社が保守整備を担ってきた。

2011年3月11日の東日本大震災の折には、この会社と連絡が取れなくなり、被災状況をあらわず地図をインターネット上で調べつつ、最悪の事態を考えていた。そしてこの大地震の1週間後には、どこで調べたか、早くもこの機械で使う金属の輪を扱う会社から「ウチからも供給できる」との連絡が入った。

数ヶ月後、前述の宮城県の会社の担当者から、突然、電話が入った。「無事だったんですね」と、僕は飛び上がらんばかりに喜んだ。そして以降はまた、機械の保守整備と消耗品の供給は、その会社に頼ることとした。

その、紆余曲折を経ながら50年ちかく続けてきた包装形態を、この4月1日から一新する。それをお客様にお知らせするご案内は僕の手書き文字とし、先週から順次、投函を始めた。

本日、昼食の最中に、インドのあれこれを視察して帰国したばかりの同級生ヨネイテツロー君から電話をもらった。「家に帰ったらハガキが届いていた。包装形態の最新化はとても良いことで、自分も楽しみにしている。ついては4月1日の出荷で、らっきょうのたまり漬10袋を自宅に届けて欲しい」というのが、その電話の内容だった。

時あたかも春を目の前にして、自分や周囲の内燃機に火の入ってきた気がする。そして夜はひとり、乾麺を茹でる。


朝飯 グリーンピースの炒り豆腐、納豆、巻き湯波と人参の淡味炊き、揚げ湯波と小松菜の炊き合わせ、じゃこ、大根と胡瓜と生姜としその実の醤油漬け、ふきのとうのたまり漬、メシ、ベーコンと白菜の味噌汁
昼飯 パン、マーマレード、キャベツと人参とエノキダケのスープ
晩飯 鮫の発酵食品ハカール、”ABSOLUT VODKA”(生)、トマトとベーコンと「ふきのとうのたまり漬」のスパゲティ、”Petit Chablis Billaud Simon 2015″


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2019.2.25(月) 全然イケる

「地酒”BLACK DEATH”のおつまみとして、あなたもこの名物に挑戦してみませんか」と書かれた黒板を見て、その「名物」とやらを試してみたところ、自分は平気だったけれど、おなじテーブルの仲間たちは辟易しながら二度と手を出さなかったと、先般、アイスランドを旅した家内に聞いた。

子供のころの記憶を辿れば、世界地図にあるアイスランドは、海岸線の陸側の縁こそ緑色だが、残りの大部分は真っ白に塗りつぶされて、まるで氷の塊のように感じられた。しかし家内によれば、アイスランドは地熱により日本よりよほど暖かいのだという。

家内が買って帰ったその「名物」には、僕には読めないアイスランド語と共に”Shark”の文字があった。「鮫」だけでは明らかに説明不足だ。僕はサイコロ状に刻まれたそれを5つ、豆皿に載せた。”BLACK DEATH”などという酒はもちろん家には無いからウォッカを用意した。

その「鮫」の食感は筋のある蒲鉾のようなもので「日本人なら全然、イケるよ」と咀嚼を続けると、そのうち口腔から鼻孔へアンモニア臭が抜け、その臭いは強くなるばかりだ。どれほど強いかといえば、蚊に刺されたときに塗る「キンカン」の瓶に鼻を近づけたときのそれと、ほぼ変わらない。しかしその臭いはウォッカで舌を洗えば綺麗さっぱり消え、だから僕は即、ふたつめの固まりに楊枝を延ばした。

明晩はひとりメシ。となればまた、僕はこの「鮫」を豆皿に盛るに違いない。日本人なら全然、イケる味である。


朝飯 鮭の麹漬け、大根と胡瓜と生姜としその実の醤油漬け、ふきのとうのたまり漬、じゃこ、キクラゲと鱈子の佃煮によるお茶漬け
昼飯 ハムとチーズのパン、ヨーグルト、コーヒー
晩飯 鰊の油漬け、キャビア風の魚卵、鮫の発酵食品ハカール、”ABSOLUT VODKA”(生)、キャベツと人参とエノキダケのスープ食パンジャガイモのベーコン焼き“Petit Chablis Billaud Simon 2015”カステラ、”Old Parr”(生)


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2019.2.24(日) 定形外

30年ほども前に築地の場外で鮨を食べていたときのこと、隣席の、いかにも本職らしい人が、いわゆる「下駄」に山葵を山盛りにさせているのを目にした。この人は、あらかじめ鮨を山葵抜きで注文し、山葵の量は「種」により自分で調整をしていたのだ。

場内には、ライスにカレーとハヤシを半々にかけるとか、カツ丼のごはん抜きとか、キャベツの代わりにケチャップスパゲティを多めに添えた豚カツとか、客の要望に応えるうちメニュの品数が異様に増え、メニュに無い特別注文に至っては数え切れないほどに膨れあがった洋食屋もあった。

やはり場内の吉野家には、常連客500人の好みをすべて覚えている店員がいると聞いたことがある。食べ物の本職には「定形」では満足できない人が多いのだ。

実はウチにもそのようなお客様が存在する。「らっきょうのたまり漬」の「浅太郎」は「あまりたまりに漬けるな」というご要望にお応えしたものだし「黒太郎」は逆に「もっとたまりに漬けろ」というご要望にお応えした結果の商品である。

本日の昼すぎに入ったご予約は「大根のたまり漬」についての風変わりなご注文で、そのお好みの特殊さから、コンピュータに「大根」と打ち込めば即、そのお客様の情報があらわれる仕組みになっている。ご来店は14時くらいとのことだったが「社長はそのとき、いるのか」とおっしゃるので「いるようにします」とご返事をして、昼食の時間はいつもの半分に削った。

お客様は14時20分にいらっしゃった。僕はほとんどつききりでご対応をした。僕は多分、そのお客様のことが好きなのだ。お客様は日光味噌梅太郎白味噌1パックと、包装係のサイトーヨシコさんが特別に計った大根のたまり漬5袋をお買い上げくださった。次のご来店は、初夏のころになるかも知れない。


朝飯 大根と人参と厚揚げ豆腐の淡味炊き、生玉子、すぐきを薬味にした納豆、ふきのとうのたまり漬、なめこのたまり炊、メシ、トマトと揚げ湯波と二十日大根の葉の味噌汁
昼飯 パン、マーマレード、ヨーグルト、コーヒー
晩飯 トマトとピーマンのサラダ、おとといの夜に残った鮭とほうれん草とマカロニのグラタン、“TIO PEPE”


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2019.2.23(土) 逃げようとすれば効かない

「1週間に2回の割で通院して、計8回で快方へ向かう可能性が高い。それで駄目なら、そこから更に8回」と言われたカイロプラクティックでの、本日は13回目の施術日である。

地元の整形外科で処方をされた、朝昼晩の食後に飲むこととされている鎮痛剤は、先月の末から日に1度、昼に服用をすれば何とか凌げるようになり、今週の火曜日からは、まったく頼っていない。ただし背骨と右の肩胛骨のあいだの痛みが綺麗さっぱり消えた、というわけではない。

先生は診察台にうつぶせになった僕の背骨を仙骨の上から押して行き、頸骨の下に至って「まだ固いなー」と嘆じた。そして「こんなにひどいハイブツは、私、初めてです」と続けた。「ハイブツとは廃物だろうか、背中になにか、老廃物のようなものが溜まりすぎているのだろうか」と疑問に感じて訊くと「ハイブツ」とは「背部痛」の、先生なりの発音だった。

続けて「ここまで悪くするには、からだは相当、耐え続けたはずですよ。ウワサワさん、隨分と我慢強い性格でしょ」と言われたから一瞬、虚を突かれた気持ちになった。「我慢強い」などと言われたのは、生まれてこのかた初めてのことである。

背中を優先して後回しにしていた左肩の痛みについては、しばらく前から治療が始まったばかりだ。「こちらで電子ペンを当てられた直後こそ良いんですけど、しばらくすると、また元に戻っちゃいますね」と、その症状について伝えると「そりゃぁ、長年のゆがみ、ひずみが蓄積されてますから」と苦笑いをしてから「仰向けになってください、痛いですよ」と、先生は僕の左腕を両手で握り、柔道の関節技のように固めた。

思わずうめき声を上げると「骨が折れるほど痛いですよ。でも逃げようとすれば効きません。力を抜いて」と、先生は僕の左腕を更に締め上げる。「骨が折れるほど痛い」とは、どれほどの痛さなのか。「逃げようとすれば効かない」も、なかなかの殺し文句。更にはその状況下において「力を抜け」である。

「ウワサワさん、我慢しちゃ駄目ですよ、鎮痛剤、辛くなったら我慢せずに飲んでください。予約した日より前でも、具合が悪くなったら我慢せずに電話してくださいね」という先生の言葉に送られて整体院を去る。

午後は予想したより早く会社に戻ることができた。そして以降は普段の仕事に当たる。


朝飯 蓮根のきんぴら、大根と人参と厚揚げ豆腐の淡味炊き、揚げ湯波と小松菜の炊き合わせ、グリーンピースの炒り豆腐、ふきのとうのたまり漬、大根と胡瓜と生姜としその実の醤油漬け、メシ、なめこと二十日大根の葉の味噌汁
昼飯 「東北自動車道上三川P.A.」のカレーライス、コーヒー
晩飯 揚げ湯波と小松菜の炊き合わせ、湯波の淡味炊き、グリーンピースの炒り豆腐、大根と胡瓜と生姜としその実の醤油漬け、鮭の麹漬け、なめこのたまり炊、すぐきを薬味にした納豆、麦焼酎「日田全麹」(お湯割り)


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2019.2.22(金) むかし酒席で耳にした話

年長の友人ヨコタジュードーがむかし、ある経済紙に取材を受けたときのこと、すべての質問に答えてのち「今度はそちらの番だ」と、これまで仕事で出会ってきたあまたの成功者に共通することは何かと、その記者に訊いてみたという。もう数十年前のことだから、その「共通すること」について、僕はふたつを記憶するのみだ。

ひとつ。成功者は夜、眠っているときに、いきなり良案を思いついて目を覚ますという。しかしてその良案は、ひとりで眠っているときにのみ訪れるという。

もうひとつ。成功者は、目の前の扉が次々と開いていくのだという。苦心惨憺して鍵を外すでもなく、錆び付いた蝶つがいに渾身の力を振り絞るでもなく、歩いて行くに従って、扉は向こうから次々と開いていくのだという。

本日、その「扉が向こうから開く」ということを僕も経験して「興奮した。オレ、ちょっとお茶、飲んでくるわ」と事務室で立ったまま言うと「それほどのことでもないでしょ」と長男はこちらの顔も見ないまま淡々と答えた。そして結局のところ、お茶は飲まずに終業時間に至る。


朝飯 春菊の胡麻和え、納豆、「なめこのたまり炊」のフワトロ玉子、大根と人参と厚揚げ豆腐の淡味炊き、ふきのとうのたまり漬、大根と胡瓜と生姜としその実の醤油漬け、メシ、浅蜊と二十日大根の葉の味噌汁
昼飯 「玄蕎麦河童」の蕗のとうの天ぷらおろしぶっかけ蕎麦(十割)
晩飯 ポテトサラダ3種のパン鮭とほうれん草とマカロニのグラタン“Petit Chablis Billaud Simon 2015”


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2019.2.21(木) 「安くて直ぐ」も悪くない

「盆暮れ床屋」とは「1年に2度ほどしか床屋にかからない人」を指す言葉だという。そして実際に、そのような人を僕は知っている。髪が長ければ「盆暮れ床屋」でも、周囲はそれほどの違和感は覚えない。しかし僕のような坊主頭では、そういうわけにはいかない。まして今日は午後に商談が控えている。よって朝のうちに住吉町のカトー床屋へ行く。

カトー床屋の仕事は丁寧で、ややもすれば90分ほどはかかる。南の国の床屋とは大違いだ。10時から社員との面談が控えているため、髪を刈られ、顔を剃られつつ、ときおり壁の時計に目を遣る。散髪は幸いにして9時50分に完了した。

仕事が一段落をして小遣い帳を検索すると、前回の散髪は12月27日にしていた。坊主頭にもかかわらず7週間も床屋に無沙汰をしていたとは呆れるばかりだ。今日から3週間と2日後、つまり来月の16日には従兄弟の長男の結婚式が控えている。その直前にはまた、床屋にかかるべきと考えている。スコータイかバンコクで済ませられれば、仕事は「南の国の水準」ではあるけれど、安直は安直、である。


朝飯 生のトマト、納豆、目玉焼き、切り昆布の炒り煮、鮭の麹漬け、すぐき、ふきのとうのたまり漬、メシ、豆腐と若布と長葱の味噌汁
昼飯 すぐき、梅干し、切り昆布の炒り煮、鮭の麹漬け、なめこのたまり炊、蕗のとうのたまり漬によるお茶漬け
晩飯 「食堂ニジコ」の酒肴あれやこれや、他あれこれ、担々麺、5種の日本酒(冷や)


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2019.2.20(水) あの犬は良い犬だった

4分の1に折りたたまれた新聞が、食器棚に無造作に置かれている。「はやく1階の資源ゴミ置き場に持っていかなければ」と考えつつ手に取ると、それはさきおとといの日本経済新聞だった。ウチは週のうち日曜日がもっとも忙しいから、ベランダの籐椅子でコーヒーを飲みつつ日曜版の新聞を寛いで読む、というような優雅な時は持てない。そして結局のところ、日曜日の新聞はほとんど読まない。

4分の1に折りたたまれたその新聞を何気なく2分の1まで開き、そこから更に開くと、もっとも後ろの紙面つまり第32面の真ん中に「冬のパリ」という活字が見え、その瞬間、”AGFDC”となだらかに落ちる旋律が聞こえたような気がした。言うまでもなく”Autumn in New York”の出だしの部分である。そんなことを書きながら、秋、どころかそもそもニューヨークという街に僕は行ったことがない。しかし冬のパリなら知っている。

1979年のいまだ松の内、成田空港からエアフランス機に乗った。シャルルドゴール空港とオルリー空港とのあいだをどのようにして移動したかの記憶は無い。当時、日本とスペインのあいだに直行便は飛んでいなかった。「行き先はマラガですね」と僕のスーツケースにチョークを走らせようとした職員に「違う、マドリッド」と慌てて答えたことは覚えている。当時、空港のベルトコンベアが荷物に貼られたバーコードを光電管で読み取る仕組みは無かった。

マドリッドは暖かく、グラナダは更に暖かかった。帰りはパリで数日を過ごした。朝、ちかくの公園を歩きながら「こんなところで冷たい空気を吸い続けたら、呼吸器がおかしくなるに違いない」と、紳士の連れた人なつこい犬の頭を撫でると即、ホテルへときびすを返した。

「冬のパリ」を書いた林真理子は、現地で蕪蒸しを食べたという。僕はパンと生牡蠣と鶏のワイン煮を食べ、カフェオレとワインを飲んだ。パリまで足を延ばすことは、もうないと思う。


朝飯 豆腐と菜花と若布の味噌汁
昼飯 「金谷ホテルベーカリー」の2種のパン、コーヒー
晩飯 大根と胡瓜と林檎のサラダ“Signifiant Signifie”の3種のパン2種の温野菜を添えた豚肉とソーセージのソテー“Petit Chablis Billaud Simon 2015”チーズのブリオッシュ、”Old Parr”(生)


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2019.2.19(火) 足元を見られそうな場所

足元を見られそうな場所へ出かけるときには常に黒い革靴を履く。足元を見られそうな場所とはどこかといえば、それは大抵の場所、である。

2003年に”trippen”の短靴”sheet pull”を買った。2010年にはおなじくショートブーツ”scooter wax”を買った。

“sheet pull”はスベリを換え底を換え、何かの拍子に切れたカンヌキ止めを縫い直して、いまだ艶やかに現役を務めている。”scooter wax”はやはりスベリを換え、底は交換が必要になる前にかかとの部分のみ修理をしたから”sheet pull”より更に長く履けるだろう。

その”scooter wax”の右の甲の先端に、擦過による糸のほつれを見つけたのは先月のことだ。そのまま履き続けても問題は無いだろうが、それでは気分が悪い。よって同月の21日に、トリッペン原宿店に修理に出した。

それが本日、佐川急便により届けられた。中には店の人からの手紙と共に、見積もりより安く上がったと、返金分の1,080円が納められていた。予想された1ヶ月の納期まで1日を残しての納品だった。大いに助かる。

足元を見られそうな場所へ出かけるときには常に黒い革靴を履く僕は、だからタイとラオスの国境ちかくにも、タイとミャンマーの国境ちかくにも、またタイとマレーシアの国境ちかくにも”trippen”を履いていく。

来月はスコータイからサワンカロークを経てシーサッチャナーライの更に奥まで行く。いろいろなものがうずたかく積もっていそうなところであれば、短靴よりショートブーツの方が無難かも知れない。


朝飯 揚げ湯波と菜花の味噌汁
昼飯 パン、コーヒー
晩飯 鮭の麹漬け、「なめこのたまり炊」によるなめこおろし、切り昆布の炒り煮、大根と胡瓜のサラダ、煮奴のすき焼きのせ、塩らっきょう、麦焼酎「日田全麹」(お湯割り)


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上澤卓哉

上澤梅太郎商店・上澤卓哉

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