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戀する者と酒飲みは地獄に行くという  根も葉もないたわごとに過ぎぬ
戀する者と酒飲みが地獄に墜ちたら  天國は人影もなくさびれよう
Omar Khayyam

 2003.0731(木) 「大きくなったら」

5時30分に起床し、事務室へ降りる。

"清閑PERSONAL" のカウンターが、80,000を100ほど過ぎている。「自分が80,001を当てました」 というメイルは、今回は届かなかった。誰かが気づかないままに、その数字をやり過ごしたのだろう。次のプレゼントは、90,001が引き当てられたとき、ということになる。

昨夜、習字を仕上げた後に、長男は荷造りをした。カエルの腹のようにふくれた "Gregory" の30リットルザックには、最後に、内田百閒の 「冥途・旅順入場式」 と、自由学園の英語教師アカギヒデヤ先生からお借りし、5年を経た今も返却をしていない、日本語版が出る以前の 「カモメのジョナサン」 が納められた。

長男はこれから8月15日まで、学校の用事や勉強、下級生の家庭訪問などをこなしながら、しかし自身の楽しみも含めて、日本の西側を移動していく。

朝飯は、3種のおにぎりきのうのカクテキ、きのうのキャベツ、きのうの水キムチ、キュウリのぬか漬け、タシロケンボウんちのお徳用湯波とミツバの味噌汁

7:03発の上り特急スペーシアに乗る長男を、下今市駅へ送る。梅雨寒に帰宅した折は半ズボンをはいていた長男が、朝からウンザリするほど暑い今朝は、僕がむかし使った、"Patagonia" のクライミングパンツを身につけている。間の悪いことはなはだしい。しかも、20年のあいだはき込まれたクライミングパンツは色も抜け、裾はボロボロになっている。

昼に、「癒しのキムチ」 から肉やキムチと同時に取り寄せてあった冷麺スープを用いて、家内が冷たい素麺を作る。オクラ、キュウリ、水キムチ、トマト、鶏ささみ肉、ゴマの載せられたその風情も涼しく、次男の残した分も含めて、かなりの量を食べる。

きのう成文社印刷に原稿を持ち込んだ印刷物が、もう校正を終えて届けられる。自分ひとりでこれを見直すことは危険だ。第一この日記も、毎日のように誤字、脱字、変換違いがあり、1日に何度も更新するありさまだ。この校正刷りを、事務室内に回覧する。

夕刻になれば、大抵は、お酒が飲みたくなる。開高健の 「黄昏の一杯」 は好きで幾度も読んだが、その内容については何も覚えていない。ただし夕刻になり、頭の中に銀座の "MOD" の酒棚や、「おぐ羅」 の白木のカウンターが浮かぶたびに、僕はこの本を思い出す。

ノイリープラットを飲む。次男は餃子を包んでいる。次男が根気よく取り組むことのできるのは、実に、この餃子包みだけかも知れない。

そのくせ、「大きくなったら、餃子屋さんになってください」 と言うと、「イヤだ」 と答える。「それじゃ、大きくなったら何になるんですか?」 と問うと、「なんにもならない」 と、返す。

僕が小学1年生のとき、「大きくなったら何になりたいですか?」 と教師に問われて、「おとな」 と答えた女の子がいた。そして僕は、その直截な答えに、子供心にも驚倒した憶えがある。

「なんにもならない」 とは、どのようなことだろう? まさか、山頭火や方哉のようになる、ということでもないだろう。

春雨サラダと、そして水ナスのぬか漬けにて、焼酎 「白金乃露」 を飲む。酒屋のお兄ちゃんが、「最初こそ、ウッ、癖、強えぇと思いますけれど、でも美味いっす」 と言ったほどの癖は感じない。そこにはただ、芋焼酎の美味さのあるばかりだ。

「餃子は焼きなの? それとも(すい)なの?」 と母親に訊かれた次男は、初め 「焼き」 と答え、後から 「(すい)」 と言い換えた。その次男の包んだ上出来の水餃子を食べつつ、更に 「白金乃露」 を飲み進む。

入浴して本は読まず、9時に就寝する。


 2003.0730(水) 「癒しのキムチ」 で焼肉大会

夜中に目を覚ますと、隣の部屋から灯りが漏れている。いまだ0時をすこし過ぎたころかも知れない。2度目に目を覚ますとあたりは真っ暗で、3度目に目を覚ますと4時になっている。即、起床して事務室へ降りる。

先日の本酒会の結果を、メイルマガジンにする。会員へ同報メイルで送付する直前までセットし、保留にする。携帯電話のメイルアドレスしか持たない会員の枕元で着信音を鳴らすには、いまだ早すぎる時刻だ。

メイルマガジンの内容をほとんど引き写した形にて、本酒会のウェブペイジを作成する。また、今回試飲したお酒8本を、デイタベイスに加える。本酒会で最もアクセスのあるペイジはトップではなく、このデイタベイスだ

6時30分からラジオ体操が始まる。本日はその最終日にて、子どもたちはくじを引き、景品を受け取って帰宅した

朝飯は、僕以外は、ホットプレイトで調理をしたホットケイキ、インゲン、目玉焼きとミルクティー。僕は、「はれまのやさい」、「上澤梅太郎商店のなめこのたまり漬」、「丸赤の極辛塩鮭」、「みよしのジャコ」、自家製キュウリのぬか漬けによるお茶漬け

それにしても、「なめこのたまり漬」 は美味い。1本1500円という値段から敬遠されることもあるが、「ものの値段とは絶対値ではなく相対評価だ」 と考える人には、着実に売れていく商品だ。

駿河台の斜面を西側に下った蕎麦の名店も、現在のなめこおろしにこの 「なめこのたまり漬」 を用いれば、原価は上がっても、それを取り返して余りある注文数を得ることができるだろう。

昼は、「市之蔵でこれ、出してくんねぇかな」 といつも思う、冷やした鳥スープに沈めた素麺に、こんもりと刻みキュウリを載せたものを、大量に食べる。

終業後は、かねてから計画をしていた焼肉大会の準備に取りかかる。事務室にて、「癒しのキムチ」 から届いた計2キロの肉や内臓を、もみだれに和える。それを、店舗駐車場のベンチへ並べる。タンもバラ肉も巨大で、アカセンやシマチョウの質は申し分ない。

僕が長男に指導をした 「家康本陣風のキャベツ」 は、本人が凝って胡麻油などを加えたため、美味いことは美味いけれど、本物とはまったく異なるものになった

バーベキュー台に炭火をおこし、ちかくの木から蚊取り線香を下げる。僕の経験では、小学生と大人が混在する焼肉大会では、ひとりおよそ300グラムの肉を食べることができる。今夜の参加者は6名のため、2キロの肉は、すこし余るだろうと予測をする。

先ずはタンを焼き、レモンを搾り、これをすべて平らげる。合いの手にキャベツやキムチをつまみ、焼酎 「風に立つ」 で舌を洗う。バラ肉は1枚がかなり大きいが、適度に柔らかいため、充分に噛み切ることができる。アカセンとシマチョウの歯ごたえが心地よい。

それにしても、外で食べる焼肉は、ハードとしては充分に美味いが、店にくつろいで座り、オバサンやオネーサンの上げ膳下げ膳を受け、簡単に火力調節のできるコンロで調理をした方がソフトの面では美味いと、面倒くさがりの僕は考える。

小振りに作られた塩のおにぎりが、なによりも美味い。旅行から戻って 「やっぱり家が1番ね」 というオバサンに、「だったら旅行なんて行かなきゃいいじゃねぇか」 と、つっこみを入れた漫談があった。さしずめ今夜の僕は、「だったら肉なんて、食わなきゃいいじゃねぇか」 という指弾を受けそうだ。

しかしながら、塩おにぎりの格別の味も、上出来の肉があってこそのものだろう。

予想通り、ほんのすこしの肉を残して、全員がごちそうさまとなった。いただき物の、国立 "MILK POT" のアイスクリームを食べ、60連発の花火を1本上げて、焼肉大会を終了する。

後かたづけは人の手も多く、すぐに完了した。入浴してビールを飲む僕と同じ卓にて長男は、先日70歳を迎えたばかりの母方の祖母のために、「祝古稀」 の習字を完成させる

本は読まず、多分、11時ころに就寝する。


 2003.0729(火) 「ばん」 の料理

5時30分に起床して事務室へ降りる。

ウェブショップに、「誤ったカード情報が入力されている」、「ヤマト運輸にも対応のできない到着時間が指定されている」、「存在しない商品をご注文になっている」、「人へお送りするお中元のお支払い方法に、代引き着払いが選ばれている」 などなど、メイルでのお問い合わせが必要なご注文は、意外に多い。

ところが、ご自分の用事さえ済めば、その後一切メイラーは開かないという方も、また驚くほど多く存在する。

そのようなお客様のために、数日前メイルでお送りした質問書のコピーと、別途そのコピーを送付する理由を記した2枚の紙を封筒へ入れ、切手を貼る。

6時25分に、長男と次男がラジオ体操のため外へ出ていく。その後、彼らは次男が学校から持ち帰ったトウモロコシとエダマメの実の大きさを計るが、いまだ梅雨の明けない冷夏にて、10日もその数値は同じままだ。

朝飯は、ソーセージの油炒め、モツァレラチーズとトマトのサラダナスとシシトウの油炒め、茹でたオクラのゴマ和え、キュウリのぬか漬け、マグロの角煮、納豆、メシ、アサリと万能ネギの味噌汁

ウチの店に、お盆休みは無い。むしろお盆はかきいれどきだ。そのため社員たちは今から、お盆の後の代休を、お客様にご迷惑をかけないよう工夫をしつつ、予定表に書き入れている。

それにしても、夏は暑くならないと、また冬は寒くならないと、なかなか物は売れないとは、本当のことだ。プールの入場者数は低く、海や山への人出は少なく、クーラーは売れず、生ビールの 「もう1杯」 の声も控え気味になる。

ウチの店の売上げも、先週は前年度比で微減を示した。それに比しての、地方発送の微増がありがたい。

本日はオフクロの誕生日にて、家族6人で会席料理の 「ばん」 へ行く。

レンコンの辛子和え、アナゴ寿司、ツブ貝のウニ和え生ウニと山芋のプリンハモのしんじょう、たたきオクラ、ジュンサイのお吸い物

次男には、その年齢から一人前の料理ではなく、マグロの刺身とご飯のみを注文したが、目ざとくこの吸い物に目をつけて、母親にこれを所望している。次男はどうして、コンソメスープ、ポタージュ、中華スープ、吸い物は好きで、しかし味噌汁だけはあまり好まないのか、そこのところが分からない。

マグロの刺身とカツオのたたきイカのすり身を詰めて揚げたズッキーニアユの一夜干しとズイキのあんかけ

生で食べるよりも、あるいはただ煮たり焼いたりするよりも、天日に干した後に調理した方がずっと美味くなる食材は多い。アユもまた、そのような食材のひとつだ。

鴨とナスとインゲンの炊き合わせゴマ豆腐の甘酢味噌和えお茶漬けと漬物葛きり

今日の支払いを誰がしたのかは知らないが、この店へ来るたびに、「美味いなぁ、それに、安いなぁ」 と、思う。有名な店や、あるいはそこからののれん分けを許された店で食事をし、「ばんの方がずっと上だよなぁ」 とは、僕がしばしば感じることだ。

この店が郊外ではなく町なかにあり、板前割烹の形式をとっていれば、僕はもっと足繁く通うだろう。

帰宅して入浴し、焼酎 「風に立つ」 を生で1杯だけ飲んで就寝する。


 2003.0728(月) 携帯電話の人間的側面

4時前に起床し、事務室へ降りる。

今年の春から記録し始めた、ウェブショップの中に散らばる深刻な、あるいは小さな齟齬とその修正案、また、顧客が注文をした直後に自動で送付される 「ご注文御礼」 に含まれる優れない文章とそのその修正案などを、2時間かけて整理し、"Computer Lib" へのメイルにする。

これは、書いた僕でさえウンザリして読む気も起きない工程表だが、別段、読まれなくてもかまわない。"Computer Lib" では、これをプリントしたものに沿って作業が進められ、メイルとして送られたものは、そこに含まれる大量のホットリンクから問題の個所へ飛ぶための道具としてのみ使われるというのが、いつもの流れになっている。

6時25分に、長男と次男が事務室へ現れる。彼らはそのまま外へ出てラジオ体操をし、7時すぎまでブラウジングや、パスワードを知る者のみが読める 「東天寮便り」 に寄せられた感想メイルのチェックをする。

朝飯は、ナスとシシトウの炒りつけ、マグロの角煮、なめこのたまり漬のスクランブルドエッグ、鶏肉とキュウリとレタスのサラダ、キュウリのぬか漬け、メシ、ダイコンと油揚げと万能ネギの味噌汁

長男の同級生たちからは、「大阪から自転車で富山をめざし、現在、京都市街を走行中」 とか、「鹿児島から自転車で北海道を目指し、5日を経て広島へ達した」 という携帯メイルが、毎日、送られてくる。

また、そのような旅の途中に、1学期の様子から心配されるところのある中等部新入生の家を訪ねる際の注意点なども同じ通信手段をもって為され、正に、携帯型通信機の持つ人間的側面を見る思いがする。

昼飯は、ナスの味噌汁をつゆにして食べるそうめん。薬味は細く刻んだキュウリとミョウガ

長男が帰宅して以降は酒の飲める晩を増やすべく、先週の月曜日から3日連続で酒を抜き、早くも1ヶ月に8日の断酒を達成した。それ以降は飲み続けの毎日だが、土曜日の朝に二日酔い、日曜日の朝も二日酔い、月曜日の朝もまた二日酔いということで、本日は、今月9日目の断酒を決める。

このところ次男はずっと、ワンタンの皮に自分で諸々を手巻きにし、それを投入する式の鍋が食べたいと、言い続けてきた。何かのテレビ番組で見て、痛く心を揺さぶられた料理らしい。

鶏肉やホタテ貝のミンチをクリーム絞りへ入れる複数のキノコや野菜を用意する。それらをワンタンの皮へ載せ、ミンチを絞り出して包む。ダシを張り、タシロケンボウんちのお徳用湯波を泳がせた鍋に、そのワンタンを投入する。

次男は、一時は涙を流しながらこの料理を作ってくれと言い続けただけあって、かなりの量をこなし、食後は本棚から抜き出した図鑑などを広げて、さっぱりとした表情を浮かべている。

その傍らで僕は、カスピ海ヨーグルトとモモを摂取する

食後、8月3日の納涼祭へ向けて、これへの参加と協力をお願いするため、春日町1丁目青年会のメンバー3名と、ビラを持って町内の各戸を回る

8時すぎに帰宅し、入浴する。「ガリレオ 庇護者たちの網の中で」 を紛失して以降、読むべき本が選べていない。

枕元に散らばる活字を拾い読みし、11時に就寝する。


 2003.0727(日) 今は酔っぱらっている僕でさえ

体に疲れは残っているが、目覚めは爽やかだった。「どうして疲れているのだろうか?」 と、考える。その理由が、にわかには見つからない。

5時30分に起床する。洗面所へ行くと、昨晩のうちに長男が掃除をしたのだろう、風呂場には水気もなく、風呂桶のフタは洗い場に立てかけてあった。

事務室にてよしなしごとをするうち、外に子どもの声が聞こえ始める。ラジオ体操が終わった後、子どもの付き添いで来ていた青年会の数人と、納涼祭についての話をすこしする。

7時に長男から、朝飯ができた旨の館内電話が入る。そういえば昨夜、長男が米をとぎ、炊飯器のタイマーをセットしていたことを思い出す。長男が作った朝飯は、冷や奴、トマトの炒り卵、めんたいこ、キュウリのぬか漬け、メシ、ナスとシシトウと万能ネギの味噌汁

何日ぶりの晴天だろうか、店舗に朝日が差し込んでいる。販売係が、あちらを取れば、またこちらが伸びるといった体の雑草を引き抜くために、駐車場へ散っていく。

自由学園は夏休みに、全国5ヶ所で教育説明会を開く。これは、自由学園に入学を希望していたり、あるいは自由学園の教育に興味を持つ親子などに、教師と生徒が出向いて学校の説明をする会だ。これに今日は、長男が出席をする。

会場準備のための私服を着、しかし制服の入ったザックを持つ長男をホンダフィットに乗せて、新里街道を南下する。25Kmの距離を僅々35分でこなし、9時35分に、宇都宮市駒生にある宇都宮友の家へ到着する。教育説明会は、午後2時から4時まで行われるという。

帰りはバスと鉄道を乗り継いで帰宅するよう長男に伝え、会社にとんぼ返りをする。

着替えのため自宅へ戻ると、乾燥機の回る音が聞こえる。長男は朝飯の片づけをした後、僕のものも含めて、洗濯をしたらしい。

自由学園で学べば、すべての人間は、夜のうちに風呂の掃除をし、オヤジの朝飯を作り、オヤジの汚れ物も含めて洗濯をするような人間になるかといえば、それは保証の限りではない。しかしながら、湯島天神下や神保町や神楽坂や北千住で酔っぱらっている僕でさえ、少なくとも25年前までは、今日の長男の姿に、幾分かは近かっただろう。

午後、ウェブショップのサイトマップに不整合があることを発見し、逐一これを修正する

終業後、駐車場からホンダフィットを乗り出す。6時40分にJR日光線今市駅で長男を迎え、6時50分に東武日光線下今市駅で家内と次男を迎える。

"Casa Lingo" へ行く。はなからグラッパを飲む

次男は味噌屋の子どものくせをして、味噌汁をあまり好まない。そのかわり、コンソメスープやポタージュ、中華風のスープは大好きだ。その次男のために、ズッキーニのポタージュをとる

いつも注文をしながら 「おかしいな」 と感じるのは、シェフサラダだ。「イタリア料理屋だったら、シェフじゃなくてはマエストロなんじゃねぇか?」 と思うが、こういう細かいことばかりを考えている人間は、あまり金儲けに縁がない。

フルーツトマトのカプレーゼピッツァマルゲリータニンニクとトウガラシのスパゲティペンネアラビアータ
フォカッチャ日光トウガラシのソーセージマグロの石釜焼き羊のロースト

僕以外の3人はなにがしかのデザートをとったが、僕はグラッパに続いて頼んだカラフの白ワインにて締める。

帰宅して入浴する。次男が眠った後、家内と長男との3人で、2時間ほどもおしゃべりをする。

10時30分に就寝する。


 2003.0726(土) いまだ空には群青色が

昨夜、あるいは今朝の就寝が遅かったため、6時20分になってようやく目が覚める。

急いで着替えて事務室へ降りる。6時30分からの次男のラジオ体操には、長男が付き添った。

朝飯は、キュウリのぬか漬けとナスの塩水漬け、ナスと豚挽肉の炒りつけとシシトウの油炒め、納豆、トマトの炒り卵、めんたいこ、茎ワカメの薄味煮、メシ、シジミと万能ネギの味噌汁

ウチのウェブショップが、ペイジによって2種類の異なるヘッダを持っていることに気づいたのは、きのうのことだ。これは昨年、"Computer Lib" にて買い物かごシステムを導入した際に起きた不整合だろう。ヘッダの古いペイジを、すべて洗い出す。

今年の春以来、ウェブショップについては、更改しなければいけない事柄が目立ってきた。それらを発見するたびに記録に残し続けてきたが、ずいぶんとその項目も増えてきた。

これらを整理し、できるだけ早い時期に、"Computer Lib" での作業を行おうと考える。

昼前、所用にて宇都宮へおもむく。帰路、日光街道を北上して会社の前を通り過ぎ、そのまま日光へ至る。東武日光駅にて、きのう、最終のスペーシア車内に置き忘れた携帯電話を受け取る。サイフ、メガネ、携帯電話、コンピュータと、僕がこの列車に置き忘れたものは、枚挙のいとまもない。

夕刻、今月に入ってからのウェブショップの新規顧客を、メイラーのアドレス帳に登録する。単調で陰気で肩の凝るこの仕事から自らを解放する方法も、考えなければいけない。

終業の間際になって、「いま東照宮のちかくにいるんだけれど、すぐに行くからお店、開けておいていただけないかしら? 18人いるのよ」 という電話が入る。2名の販売係に残ってもらい、店を閉めずにおく。

店が開いていれば、それなりに他のお客様もご来店になる。東照宮からクルマを飛ばしてお見えになったお客様をすべて送り出し、定時に25分遅れて閉店をする。

家内と次男が鎌倉にある家内の実家へ行ったため、長男とふたりで 「市之蔵」 までの道を歩く。

あずけてある焼酎 「無双」 が、カウンターに運ばれる。僕は棚から、小さな切り子のグラスを選ぶ。長男の方を目で示して、「こっちはウーロン茶」 と、店主のナガモリユミコさんに伝える。

「飲めなくて残念ね」 「あと数年の辛抱だよ」 というやりとりがあって、煮イカ、豚シャブのサラダという、本日最初の「頼まなくても出てくるもの」 が、目の前に現れる。

メカブの酢の物は、僕の好物だ。カツオの刺身をこなして後は、食べるものを店に任せてしまう。カボチャのポタージュを経て小さなカレイの干物にて、今夜の飲酒を締める。

長男は、頼まなくても出てきた鶏の唐揚げ、みずから注文をしたマグロとカツオの刺身からコロッケへと進み、焼きおにぎりにて締めた。

帰宅して西の窓を開けると、いまだ空には群青色が残っている。

入浴して本を読もうとするが、「ガリレオ 庇護者たちの網の中で」 が見つからない。携帯電話と一緒に列車の中に置き忘れていたなら、これも日光駅の遺失物リストに載っていたはずだが、そこまでは確認しなかった。

「東天寮だより・7月号」 の未読部分をすべて読み、9時に就寝する。


 2003.0725(金) 二重橋前から

4時30分に起床する。5時30分までの1時間で霧は晴れたが、夜半の雨に、家々の屋根や地面は濡れたままだ。

6時20分に外へ出ると、僕の小学校時代にはコンちゃんという同級生が住んでいた家の飼い犬に、町内の子どもたちが群がっている。かなりの老犬だが、自分で家に帰れるのかどうかが危ぶまれる。

ラジオ体操が始まっても、この犬のことが気にかかってしかたがない。屋内に入って紐を調達し、ふたたびラジオ体操の現場へ戻ると、老犬の姿は既にしてなかった。

朝飯は、刻みオクラの鰹節かけ、めんたいこ、キュウリのぬか漬け、鶏肉とキュウリとレタスのサラダ、アジの干物、納豆、茎ワカメの薄味煮、メシ、ナスとミョウガの味噌汁

下今市駅10:36発の、上り特急スペーシアに乗る。北千住から千代田線経由にて、二重橋前へ至る。ここでもまた、7月末とは思えない、薄ら寒い曇り空の下を歩いて、東京国際フォーラムに入る

2時より、コンピュータリブ主催 「成功事例発表」 第2回CPLユーザーカンファレンスが始まる

株式会社リバーストンの社長ヨシダゲンゾウさんによる事例発表1は、ビヤホール 「野宴」 のウェブペイジから入る予約をデイタベイス化して、その顧客が来店する日の諸々の効率を高めると共に、他店舗をも含む次の集客、次の事業展開に生かす興味深いものだった。

株式会社三晃堂の社長ミヤカワミツマサさんによる事例発表2は、ウェブペイジでも見ることのできるメイルマガジンを、毎週水曜日に必ず発行することによって、そのメイルマガジンに紹介された以外の商品も売れていくという、いわば呼び水効果が面白かった。

予定よりも30分ほど押して、先ほど発表を行ったヨシダゲンゾウさんとミヤカワミツマサさん、「すまいる情報」 会長のカンバオサムさん、それに僕を加えての4人が質疑を受ける形の、パネルディスカッションが始まる

コンピュータリブのナカジママヒマヒ社長には司会の才があるらしく、活発な意見交換は、1時間ほども続いた。

ビールとサンドウィッチによる交流会がお開きになったのは、7時30分ころのことだ。打ち上げの会場が八重洲に用意してあるとのことだったが、今日は浅草駅21:00発の特急スペーシアに乗らなくてはいけない。八重洲へ移動して8時に打ち上げが始まり、と計算をすると、飲み食いをしている時間はほとんど無い。

「今日は帰宅をするので、みなと飲酒を為しているヒマはない」 という僕の言葉を信用しないヨシダゲンゾウさんたちと別れ、東京国際フォーラムの北側から外へ出ると、弱くない雨に叩かれたシャツが、みるみるうちに肌へ張りついていく。

千代田線二重橋前駅まで、タクシーに乗る。ほんの200メートルほどの距離に、650円を費やす。愛用の "Montbell" の傘が壊れて数ヶ月、僕は不意の雨に、どれだけのお金を使っただろうか。

8時すぎに北千住へ達すると、雨はいくぶん、その勢いを失っていた。北千住といえば 「大はし」 だが、現在、この飲み屋は改装中だ。とすれば、やはり西口の路地にある 「大升(だいます)」 だろう。

僕が20歳ほどで甘木庵に住み始めたとき、北千住駅の西口には、いまだ焼け跡闇市の雰囲気が濃く残っていた。そのころから、この店のたたずまいは、まったく変わっていない

ほぼ満員の店内に、オヤジがひとり分の椅子を見つけて案内してくれる。壁の無数の品書きから野菜2品と焼き物2品を注文し、これを肴に生の焼酎を3杯ほども飲む。そして、「ガリレオ 庇護者たちの網の中で」 を読む。

北千住駅のプラットフォームに、浅草発の下り最終スペーシアを迎える。車掌に起こされてはじめて、自分が終点の日光駅まで乗り越したことを知る。

浅草から日光までの切符よりも高いタクシー代を使って、11時すぎに無事、店舗駐車場へ帰着する。夏休みに入って以来、オーケストラの合宿と体験入学の手伝いをこなしていた長男は、今日の夕刻に帰宅したという。

酔っていたためその内容まではよく憶えていないが、家内と長男との3人で、2時間ちかくも何ごとかを話す。ようやく入浴し、長男が持ち帰った、自由学園男子部の部内報ともいうべき 「東天寮だより」 をすこし読んで、1時に就寝する。


 2003.0724(木) 8本の日本酒

目を覚ますと同時に、薄がけ1枚の夏布団に寒さを感じる。首までそれを引き上げて、ふたたび眠る。夜半の雨は、夜が明けると同時に止んだ。

事務室でよしなしごとをするうちに次男が現れ、店舗駐車場での町内のラジオ体操に参加する。学校から持ち帰ったトウモロコシとエダマメの実の大きさを物差しで測り、次男がその数字を記録帳へ書き込む。

朝飯は、茎ワカメの薄味煮、厚揚げ豆腐のすき焼き風、キュウリのぬか漬け、ピーマンとナスの油炒め、茹でたオクラの鰹節かけ、納豆、めんたいこ、メシ、豆腐とワカメと長ネギの味噌汁

木曜日ということと、すっきりしない天気ということのふたつの理由からか、店舗は終日、静かなままに推移した。終業後は自宅へ戻り、あたりにある印刷物を拾い読みする。

今夜は僕が家で晩飯を食べないため、また、今朝の新聞ちらしでケンタッキーフライドチキンの広告を目にした次男が、これを食べたいと何度も主張をしたため、食卓には、同社のフライドチキン、ポテトフライ、サラダ、それに、これだけは自家製のオニギリが用意された

7時15分、家内にうながされて、第122回本酒会が開かれる 「やぶ定」 へ向かう。そして8時30分までに、北は山形県新庄市から、南は高知県佐川町までが産する、8本のお酒を飲んだ

せっかくこの3日間、ヨーグルトと果物の晩飯にて節制をしたため、締めはラーメンではなく、盛り蕎麦にする。

9時すぎに帰宅し、入浴して、焼酎 「風に立つ」 を猪口で2杯飲む。本は読まず、10時前に就寝する。


 2003.0723(水) ウェブショップで成功をするということ

目を覚まして枕頭の灯りを点け、時計を見ると、4時30分だった。「ガリレオ 庇護者たちの網の中で」 を読んで、5時30分に起床する。

事務室でよしなしごとをするうちに、家内に連れられて次男が降りてくる。ごく弱い霧雨の中で、ラジオ体操が行われる

次男と同学年の子供を持つ親に、「夏休みの宿題は、本当にないんですか?」 と訊くと、やはり、「義務でしていく形の宿題はない」 との答えが戻る。更に 「他のクラスでも?」 と重ねると、「他のクラスどころか、全学年で、宿題はない」 という。

自分の小学生時代を振り返ってみれば、夏休みに宿題がないという今年の状況は、天国のようなものだ。もっとも僕の家では母親が教育に熱心だったから、たとえいまの時代に小学生であっても、そう楽なものではなかっただろう。

炎天下に遊びに来る友だちの誘いを、勉強をしている机から断る気分は、焦燥以外のなにものでもなかった。

朝飯は、キュウリのぬか漬け、焼いた厚揚げ豆腐と薬味のミョウガ、納豆、茎ワカメの薄味煮、アジの干物、ほうれん草のゴマ和え、メシ、キャベツと豚肉の味噌汁

7月1日から今日までの地方発送受注高の累計が、対前年度比で5%高い。これは、日本全国おしなべての、今年のお中元の傾向なのだろうか、あるいは珍しい例なのだろうか。ウチにおけるこの増分はひとえに、ウェブショップの売り上げによるものだ

もっとも、ウェブショップを経営した者にしか分からないことかも知れないが、ウェブショップで成功をするということは、例外中の例外だ。そしてまた、ウチのウェブショップは、小成功ではあっても、決して中成功や、まして大成功などとは呼べない水準のものだ。

終業後、自宅へ上がろうとすると、エレヴェイターが2階で停まっている。2階は倉庫のため、普段は通過する階だ。降りてみると、家内と、家の中のことを手伝ってくれているサイトウトシコさん、そして次男の3人がいて、ちょうど居間にあった電子オルガンを収納しているところだった。

居間の電子オルガンのあった場所には、替わりに趣味の良いライティングビューローが収まった。

それはさておき、次男は倉庫で目ざとくも、長男が小学生のころに買った、「鈴鹿ターボコントローラーF1世界16戦」 などという大がかりなおもちゃを発見した。これにて、せっかく片づいた部屋が、また散らかることになる。

この2晩の勢いに乗じて今夜も断酒をすることとし、チェリーボブのヨーグルトとメロンを摂取する。この調子でいけば一生の断酒もできるだろうとする考えは、しかし、非現実的なものだ。

「ガリレオ 庇護者たちの網の中で」 をすこし読んで、9時に就寝する。


 2003.0722(火) 「家康本陣」 のキャベツ

5時30分に起床して事務室へ降りる。

"清閑PERSONAL" では、1万ごとのきりの良いカウンタを引き当てた人にワインを贈っている。70001が出たのはつい先日のような気もするが、その7万台も、いよいよ終わりに近づいてきている。

この調子でアクセス数が伸びていくなら、1万ごとではなく、2万ごとのプレゼントにしないと、ワイン蔵の在庫が見る間に減って、僕の懐はますます寂しくなるだろうか。そのことについては、80001が引き当てられたときに、改めて考えることにする。

振り返ってみればこのプレゼントも、むかしはカウンタが5千上がるごとに進呈していたことを思い出す。

今朝はどんよりとした曇り空ながら降雨はないため、ラジオ体操にはきのうにくらべて、3倍ほどの子どもが集まった

朝飯は、茹でたオクラの鰹節かけ、キュウリのぬか漬け、ホウレンソウの油炒め黒酢がけ、納豆、ナスとトウガラシの炒りつけ、アジの干物、メシ、シジミと長ネギの味噌汁

梅雨が明けたら外で肉を焼こうと、荒物屋や燃料屋の2、3軒に七輪を探していたが、夏のこととて在庫はどこにもなかった。ふと隠居の庭に、うち捨てられるようにして、バーベキューの台があったことに気づく。

もう使い物にはならないだろうと思われたバーベキューの台だが、これを洗って乾かすと、どうにかまともな姿になった

残された問題は、焼肉と共にどのようなお酒を飲むべきか? ということと、もう一点、神保町の飲み屋 「家康本陣」 のお通しに出てくる酢醤油をかけたキャベツを再現できるかどうか? の2点に絞られた。

お酒は、ただ林立するビンから1本を選べば良いだけのことだが、ある特定の店のお通しの再現とは、不可能と知りつつ、たわむれにすることだ。

夕刻、未読の本が山を為す階段室に

「ガリレオ 庇護者たちの網の中で」  田中一郎著  中公新書  \720

を探り当て、これを寝室の枕元へ運ぶ。

きのうに引き続き断酒をすべく、チェリーボブのヨーグルトとバナナとビワを摂取する

入浴して 「ガリレオ 庇護者たちの網の中で」 を読み、10時に就寝する。


 2003.0721(月) 白金酒造・白金乃露

夜中と明け方の2回、「迷惑仕り候」 を読む。5時30分に起床する。なぜか次男も目を覚ましてしまう。学校へ行かなければそれだけ神経や体力の消耗も少なく、そのため早起きになってしまうのだろうか。

事務室にてよしなしごとをしているうちに、ラジオ体操のカードを首から下げて、次男が現れる。

雨が降っていることもあって、集まった春日町1丁目の子どもは、わずかに4人だった。シバザキトシカズ育成会長に、「回覧板に、雨でもラジオ体操はやると、書いておけば良かったですね」 と、言う。

家内のコンピュータで次男がゲイムをするあいだ、僕はきのうの日記を作成する。

朝飯は、ナスの塩水漬け、アジの干物、納豆、めんたいこ、キュウリとワカメの酢の物、インゲンとニンジンの油炒め、メシ、ナスと長ネギの味噌汁

夏休みの育成会行事のひとつに、ボウリング大会がある。回覧板にそのことを発見した次男は、大会が8月26日と1ヶ月以上も後のことにもかかわらず、ボウリングをしたくてたまらなくなってしまったらしい。

「ボウリングへ行きたい」 との懇請を受け、100ます計算と徹底反復書き順プリントの決められたペイジを済ませた次男と、東洋ボウルへ行く。

楽しく2ゲイムをこなして代金を訊くと、なにかの企画にて親子とも無料と伝えられる。支払ったのは結局、僕の貸し靴代300円のみだった。

焼酎のストックがいま飲んでいる 「風に立つ」 1本のみとなったため、森友地区のディスカウントショップへ行き、白金酒造の 「白金乃露」 と 瑞穂酒造の 「古酒25度」 を選んでレジへ運ぶ。

すると店員のオニーチャンは嬉しそうに 「白金乃露」 を指し示し、「これ、美味いっすよー。最初飲んだときには 『 ウッ、癖、強えぇ 』 と思いましたけど」 と、言う。「米も麦も良いけど、やっぱり芋、飲んじゃうとね」 と、それに返す。

「白金乃露」 についての知識は、今日まで皆無だった。ただその野暮ったいレッテルに商売っ気のなさを感じて選び取っただけだが、にわかにその開栓が楽しみになった。

夏休みの初日から社員と窓ふきなどをしている次男を不憫に思ったわけではないが、"TSUTAYA" にて、「月刊コロコロコミック8月号」 を買って上げる。

帰途、ラーメンフジヤへ寄り、僕はタンメン、次男は子ども醤油ラーメンを食べる。次男はようやく、このこの小さなラーメンを残さず食べられるようになった。更にタシロケンボウの家へ行き、お徳用湯波を1袋買って、帰宅する。

午後、社会保険労務士のキミシマチョウゴさんと仕事をしているうちに、ようやく雨が止む。日没までのあいだに空は大きく変化し、夏らしい、あるいは初秋のような雲に彩られた

今月6回目の断酒日として、チェリーボブのヨーグルト、モモ、大量のエダマメを摂取する。僕が飲酒を為さない日の、家族の晩飯は質素だ。そのためなにがしかの申し訳なさを感じてきたが、今夜の彼らのそれは、宅配のピッツァだった。

部屋に、よだれの出そうなチーズとにんにくの香りが漂っている。案外彼らは僕の断酒日に、そのようなものが食べられることを、嬉しく感じているのかも知れない。

次男は学校へ通っているときの宿題に対する態度とは正反対に、毎日、規則正しく、自分の決めた量の計算問題と漢字練習をこなしている。その上に今夜は、希望者だけが2学期に提出するという習字を、早くも書くという。

その課題は 「あく手」 で、先ずは母親の指導にて、ひと文字ずつ稽古をしていく。仕上げは明日の昼に行うらしい。

入浴し、「迷惑仕り候」 を読み終えて就寝する。


 2003.0720(日) イワナと骨酒

5時30分に起床して事務室へ降り、いつものよしなしごとをしていると、家内に連れられて次男が現れる。休みの日に限って早く目の覚める癖が、今日も出たらしい。

キックボードのハンドルに郵便物の入った袋を下げ、同じ町内にある郵便局のポストに、顧客あてのハガキや封筒を投函して帰宅する。

朝飯は、ナスの炒りつけ、アジの干物、めんたいこ、ブロッコリーの油炒め、キャベツとキュウリのごま油和え、メシ、ダイコンとミツバの味噌汁

事務係のタカハシアツコさんのコンピュータには、昨年7月20日の覚え書きとして、「梅雨明け猛暑」 の文字があるという。しかしながら今朝の街には、薄ら寒い霧があるばかりだ。

午後、用事のため自宅へ上がろうとしているところに、火事を知らせるサイレンが鳴る。エレヴェイターの扉が開くと同時に、焦げ臭さを感じる。窓を開けると、間近の 「市縁ひろば」 付近に煙が上がっている。

そのあたりに住む、同じ町内の人たちの顔が浮かぶ。即、1階に降りて事務室から外へ出る。「市縁ひろば」 を迂回するように走る。あたりの民家に被害はない。ドブさらいなどで勝手を知っている他人の土地を踏んで煙の方向を特定すると、果たして燃えているのは、この広場にあるお蕎麦屋さんだった。

火事はボヤにてすぐ収まったが、この建物の中には、市の観光協会もある。書類や電子機器が濡れずに済んだとは思われない。火事はいつの時期に起きても痛手だが、夏休みの入りに観光協会が被害を受けるとは、いかにも間が悪い。

「今夜は断酒をしよう」 と考えていた午後、店内の生け花を担当しているカワムラコウセン先生が、みずから渓流で釣り上げたイワナを持ってきてくださる。これにて、断酒の予定が飲酒へと変更される。

コウセン先生は、イワナを釣ることはできても食べられず、しかしその骨酒であれば愉しめるという。燈刻になれば僕はすっかりその話を忘れ、ついうっかりと、これを大小2尾とも塩焼きのままに食べてしまう

小さなイワナは頭から丸かじりにしたが、大きなイワナは腹を開け、弾力のある肉や美しい内臓を愛でつつ箸を動かす。と、そこに青光りのする釣り針を発見した

不器用な僕が渓流へおもむいたら、釣りを始める以前に、この小さな針をテグスに取り付けるところで挫折するだろう。

インゲンのゴマ和え、黒豆、冷や奴、キュウリの塩もみにて、イチモトケンイチ本酒会長のお父さんからいただいた、焼酎 「風に立つ」 を飲む。

入浴して本は読まず、8時30分に就寝する。


 2003.0719(土) トウモロコシとエダマメ

朝5時に起床する。「迷惑仕り候」 をすこし読んで起床する。事務室へ降りていつものよしなしごとをし、自宅へ上がって緑茶を飲む。

朝飯は、4種のオニギリキュウリのごま油和え、ナスのぬか漬け、豚汁

8時30分に内線電話を通して、次男が 「テレビに飽きたので、事務室へ行っても良いか?」 と訊いてくる。了承し、自宅へ迎えに上がる。

今市小学校は、今日から夏休みに入った。宿題はまったく無い。これが現在の、文部省の方針なのだろうか。次男は、きのう母親に買ってもらったばかりの100ます計算を事務室でやるなどと、殊勝なことを言っている。

空いている事務机にて、次男が計算問題を始める

ホイヤーの12時間時計 "MASTER-TIME" とストップウォッチの "MONTE-CALRO" を3.5ミリ厚のプレイトにネジ止めすると、これが "RALLY-MASTER" というラリー時計になる。100ます計算は日々の進捗を計るため、所要時間を記入するようになっている。この時間の計測を、"RALLY-MASTER" にて行う

次男は100ます計算を終えた後、更に殊勝なことに、何人かの販売係と店舗の窓拭きまでした。もっともその仕事ぶりは、遊び以外のなにものでもない。

肌に感じるか感じないかの霧雨が、降ったり止んだりしている。午後になっても霧は深く、ヘッドランプを点灯しているクルマも少なくない

次男が1学期のあいだ育て、夏休みの入りに母親によって持ち帰られた鉢植えが、玄関前にある。トウモロコシのふたつの実は、それぞれが14Cmと16Cm、エダマメに至っては、いまだ2Cmのサヤの長さだ。しかしながら、夏の作物の生育は早い。8月に入れば、これらが食卓へ上ることも、あるやも知れない。

終業後、「市之蔵」 へ出かける。

本日最初の 「頼まなくても出てくるもの」 は、アサリの酒蒸しと、ダイコンとダイコン葉とちくわの炒り煮。これにて、焼酎 「無双」 のお湯割りを飲む。7月も下旬に入ろうかというこの時期に、燗酒やお湯割りの欲しくなる外気の肌寒さは情けない。

第2弾目の 「頼まなくても出てくるもの」 は、ゲソの炒り煮と、白ごまとモロヘイヤのたたきだった

できあがったばかりの蔵コロッケを経て、自ら注文をした、カツオの刺身野菜スティック鶏手羽焼きが、ほどの良い間を空けて目の前に運ばれる。

8時前に帰宅し、入浴して大量の牛乳を飲む。本は読まず、8時30分に就寝する。


 2003.0718(金) 網の交換

気がつくと、小さなソファから足をはみ出させ、服を着たまま眠っている。入浴をする気は起こらない。そのままパジャマに着替え、ベッドへ移動する。壁の時計が、午前2時を指している。

5時前に起床し、きのうの日記を完成させる。これをサーヴァーへ転送し、ウェブショップの受注を確認する

6時35分に甘木庵を出る。傘が無くても何とかしのげるほどの雨の中を、岩崎の屋敷の高い塀に沿って歩く。時間調整をしたつもりが、7時4分前に東武日光線浅草駅へ達する。7時にならないと、切符売り場のシャッターは開かない。

切符を買ってから、うらぶれた地下街へ降りる。入口を看板でふさぎ、客の侵入を防いでいるトンカツ屋 「会津」 へ入る。医師よりLDLコレステロールを100以下に落とすよう言い渡されている関係上、いつものベイコンエッグ定食ではなく、納豆定食にポテトサラダを追加して注文する。

7:30発の、下り特急スペーシアに乗る。

「迷惑仕り候」  徳川義宣著  淡交社  \1,500

を読みつつ、9時前に帰宅する。

午後、長男が帰省する日に合わせて、「癒しのキムチ」 に、肉と内臓あわせて2Kgと若干のキムチ、それから冷麺のスープ10食分を注文する。

近所にある湯澤歯科のユザワクニヒロさんが、英国カリマー社製の古くて大きなザックを持っていることを、僕は知っている。聞き及んだところによれば、高等学校のときには山岳部にいて、火をおこすようなことも大好きだという。

それとなく人づてに、「僕が肉を持参したとして、お宅のヴェランダで焼肉大会などできないだろうか?」 と訊いたところ、「それは一向に構わない」 との返事が届いた。

次男にこの話をすると、即、人の家で肉を焼いて食べることに対する興味に、頭の大半は奪われたらしい。しかしながらこれは、僕が戯れに口に出したことで、いかにも図々しいくわだてだ。

焼肉大会は多分、ウチの店舗駐車場にて行われることになるだろう。隠居の庭まで行けば風趣も増すだろうが、自宅の玄関から隠居の玄関までは100歩ほどもあり、庭は更にその奥だ。食材や道具の運搬からして面倒くさい。

ひとりふたりならそう問題にもならないが、4人5人で焼肉を食べると、すぐに網が焦げつくため、お店の人に 「すいません、網交換、お願いします」 と、頼むことになる。この網交換について、少なくない感興を覚えたのは、浜松町の 「正泰苑」 へ行ったときのことだ。

この店では、鋳鉄製の網は用いない。ペラペラの餅焼き網を店奥にうずたかく積み、客から網交換の要請があるたびに、焦げついた網は捨て、新品の網を七輪の上へ載せてくれる。

家の焼肉大会でもこの方式を採るべく、近々、山城屋荒物店にて、七輪と餅焼き網を購おうと考える。それにしても夏7月に、七輪や餅焼き網など、売っているものだろうか。

月曜日から4日間も飲酒を続けたため、今夜は蓬莱乳業のヨーグルトとメロンを摂取する

入浴後、本を読もうとしたが眠気に勝てず、9時に就寝する。


 2003.0717(木) 借景

昨夜は、0時30分ころに目が覚めた。灯りを点け、枕頭にちらばった活字を拾い読みしているうちに、空の色が黒から濃い青に変わったことを知る。あわてて二度寝に入ろうとするが、それがなかなか叶わない。

幾分かは、うとうととしたのだろう。気がつくと、いつもの起床時間を1時間すぎて、6時30分になっている。

事務室へ降りる。ウェブショップの受注を確認し、きのうの日記を途中まで作成する。

朝飯は、キュウリとナスのぬか漬け、ナスの油炒めと大根おろし、納豆、紅ザケの粕漬け、キャベツとキュウリのごま油和え、メシ、豆腐とワカメと長ネギの味噌汁

7歳の次男が送った往復葉書で、17歳の長男からの返事が届く。「終業式は17日だが、帰省するのは24、5日になる」 と、そこにはあった。斑尾でのオーケストラの合宿に続いて、自由学園に入学を希望する親子のための、体験入学の手伝いをするらしい。

すべきことがいくつもある日には、前もって机上にメモを残す。そのメモに従って、宇都宮へ行って帰り、諸方へ連絡をし、人に仕事を振る。そして、そのいくつものすべきことの間に、予期しない急ぎの用事が入り込む。それらを、ひとつひとつこなしているうちに、昼が過ぎ、午後が過ぎていく。

下今市駅16:03発の、上り特急スペーシアに乗る。車内にて、本日の日記を途中まで書く。メイルによるご注文に、受注確認書と礼状を兼ねた 「ご注文御礼」 をしたためる。

6時15分に、自由学園の明日館へ達する。この、フランクロイド・ライト設計の草原様式を持つ建物とメトロポリタンホテルとのあいだにあるラヴホテルの看板が、いつの間にか地味なものに変わっている。慶賀の至りだ。

同学会と呼ばれる卒業生会の本部委員が食堂へ集まり、短い打ち合わせをする。その後、若年のクラス委員たちと、同学会の運営について、また創立80周年記念募金についての話し合いと、交流会を持つ

11時に甘木庵へ帰着する。スペーシアの中で書いた顧客へのメイルを送付し、服を着たまま、オフクロが通信販売で買った、安っぽく悪趣味な色のソファへ横になるうち、眠りに落ちる。


 2003.0716(水) 「コートドオル」

朝5時30分に起床して事務室へ降り、いつものよしなしごとをする。

朝飯は、梅干し、アジの干物、サンショウの佃煮、キュウリのぬか漬け、「はれま」 の 「やさい」 によるお茶漬け

昼に 「聖の青春」 を読み終える。今年、何冊の本を読んだかの記憶はないが、これは間違いなく、その中における僕にとってのベストだ。

午前中、事務室奥の部屋にて、社員ひとりひとりに説明を加えながら、ボーナスを手渡す。

夕刻、既にして漢字練習の宿題を終えた次男の、今度は算数の宿題を督励する。

「10時から10時40分までは、何分でしょう?」 という問題を解けない次男に対する、指導のしかたが分からない。

-100040
-100000
----------
-100040

という数式で納得をさせてはみたものの、次に、「それでは、9時25分の30分前は、何時何分でしょう?」 という問題が出てくると、答えがマイナスになる計算のできない小学2年生は、お手上げになる。また、

(60+25)-30=55

などという式を書いても、なおさら頭は混乱をするばかりだろう。

結局は時計を持ち出して、針をぐるぐると回しながら 「5、10、15、20」 と、アナログ方式で納得の方向へ導いていく。夏休みになったら、秒針が60回動いたら長針がひとこま進んで、それが1分だということを教えようと思う。

放っておいてもおとなになれば時計は読めるようになるが、だからといって、おとなになるまで放っておくわけにもいかない。オフクロの話では、僕も小学2年生のときには、時計を読むことができなかったらしい。

7時をすぎて、「市之蔵」 へ行く。

頼まなくても出てくるコンニャクの炒りつけを肴に、焼酎 「無双」 のオンザロックスを飲む。頼まなくても出てくる2番手のイサキの焼きほぐしからは、焼酎をお湯割りに替える。

優れたフランス料理屋 "Fin Bec Naoto" の経営者兼料理長にして、いまだ若いオオイデナオトさんが、僕の隣に座る。

「本酒会のコバヤシハルオさんに聞きましたが、ウワサワさんのおうちには、良いワインが揃っているそうですね」
「はい、ボルドーの80年代の良いところは、ほとんどあります。でも僕ひとりで一度に1本は飲めませんし、それなりの料理に合わさないともったいないですし。ですからいつもは、普段飲みばかり飲んでるんです」

「こんど、ウチへ持ち込んで飲んでください」
「あぁ、そうですね。1985年、良かったでしょ? この年に生まれた長男が成人になるときには、ナオトさんとこで一発、お願いします。でもそのときには、君にも飲んで欲しいなぁ」

「それでは、味見だけ」
「でもなぁ、味見だけってのもなぁ、一緒に飲まねぇとなぁ、でも無理だなぁ、料理、作ってんだから」

「ウワサワさんは、ボルドー物がお好きなんですか?」
「そんなことないです。最後の晩餐ってのがあったら、僕はサーロインのステーキと、レタスとトマトとネパールのバザールで売ってる紫がかった小さなタマネギのサラダと、それに、ブルゴーニュのど真ん中のワインが飲みたいですから」

「ブルゴーニュのど真ん中って?」
「コートドオル」

オオイデナオトさんは僕よりも遅く来店した分、そして僕よりも酒に強い分、まだまだ腰を落ち着けているだろう。

マグロの刺身から名前を教えられても忘れてしまった魚のぬか漬けを経て、今夜の飲酒を締める。

帰宅して入浴し、9時30分に就寝する。


 2003.0715(火) 「1年のミヤモトです」

念のため5時30分に目覚まし時計をセットしておいたが、5時15分に目が開く。ウェブショップの受注を確認し、きのうの日記をサーヴァーへ転送する。6時に、家内から、僕が起きていることを確認する電話が入る。

丸の内線と西武池袋線を乗り継ぎ、7時30分に自由学園へ達する。スポーツ好きの生徒達が朝の練習をしている以外、学園内にいまだ人の影は薄い。

校舎の裏を歩いて、羽仁吉一記念ホールへ入る。8時前から、昼食の準備が始まる。

献立は、豚ロース肉の生姜焼き、インゲンとタマネギとトマトのサラダ、カボチャの甘煮、ご飯、牛乳、お茶。昨年5月の昼食当番においてカボチャの甘煮を担当した僕は、今日も同じ任に就くことを、当番長に申し出る。

1週間のうち5日を生徒の親が務める昼食当番に僕が参加をするのは、これで5回目のことになる。備え付けの包丁ではなかなかに辛いカボチャの処理を済ませ、ティルティングパンにてこれを煮る。

栄養士の先生と7名のメンバーは、本日の作業には充分に余裕のあるもので、手が空いたときには他の人を手伝いつつ、11時30分には、午前中に予定されたすべての仕事を完了する

厨房から運び出された昼食が、当番のクラスにより配膳されていく。生徒と共に食事をするテイブルにおいて、学園長みずからが盛りつけをするのも、自由学園ならではの風景だ

親のテイブルへ着き、本日の昼食を、有り難くいただく。カボチャの甘煮は経験が功を奏し、昨年5月のものよりも上手に作ることができた。

食事を終えた僕に、ひとりの少年が近づく。

「ウワサワ君のお父さんですか? 僕、1年のミヤモトです。新入生部屋で、ウワサワ君が室長でした」

物怖じをしない、素直な性格の子どもなのだろう。

「もう、辛いことはないの?」
「はい」

「夏休みの最後には、家族と別れたくなくなるかも知れないけれど、また元気で寮に戻ってくるんだよ」
「はい、分かりました」

12歳の少年は笑顔のまま僕の前から離れ、教室へ向かって歩き去った。

午後は、長男のいる高等科3年生の成績報告会に出席をする。自由学園に成績表は無い。体操館に集まった生徒と父母の前に教師が次々と立ち、今学期の学習内容と生徒の状況、また各人の成績を報告する。

浅草発17:00の下り特急スペーシアに乗って、7時前に帰宅する。

ナスとピーマンの炒りつけ、トマトのサラダ、キュウリのぬか漬け、アジの干物、厚揚げ豆腐のすき焼き風にて、焼酎 「千夜の夢」 を飲む。

入浴して、9時に就寝する。


 2003.0714(月) 「伊勢」 の背肝

「聖の青春」 をしばらく読んで、5時30分に起床する。夜の雨が明け方に上がるのは、本当に有り難い。「夜にだけ雨の降る国というものがあれば、さぞかし便利だろうな」 と、考える。

ウェブショップのフォームからではなく、メイルによるご注文が複数、届いている。この処理を始業後1番の仕事と決めて、きのうの日記を作成する。

朝飯は、ホウレンソウのゴマ和え、サンショウの佃煮、納豆、冷や奴、エボダイの干物、キュウリのぬか漬け、タケノコとウナギの炊き込みご飯、ダイコンと油揚げと万能ネギの味噌汁

メシはできるだけ食べない方が良いのだろうが、このおかずの量だと、どうしてもお代わりをすることになる。30分もかかって、ようやく朝飯を食べ終える。

昼前、昨年の夏を限りに失ったとばかり思っていたお客様から、「今年のお中元も頼む」 との電話が入る。昨年の7月、僕は職人根性を強く出しすぎて、このお客様を怒らせた。職人根性が強く出過ぎると、顧客を失うことがある。しかしながら商人根性が強く出過ぎると、それはそれで、いろいろな問題が発生する。

「相反する矛盾の、できるだけ高次元での妥協」 とは、僕の最も不得意とするところのものだ。しかし世の中の仕事のほとんどは、この 「相反する矛盾の、できるだけ高次元での妥協」 ではないか? つまり僕は、「ほとんどの仕事を苦手とする人間」 ということになる。

1年ぶりの電話を受けつつ、僕は受話器を持ったまま頭を下げ、礼を述べる。

その顧客から、100ヶ所を超えるお届け先を持つエクセルの名簿が、メイルに添付され送られてくる。早速にそれを、マイツールへ飛ばす。エクセルのデイタを、事務係と荷造り係の使いやすい形に加工する。

春日町1丁目の役員には、本日、昼食がふるまわれるということにて、会所へ行く。この建物が、普段は公民館と呼ばれ、お祭りのあいだだけ会所と呼ばれることに、なんとはなしの面白さを感じる。

「金長」 のトンカツ弁当を食べ、長老たちによる、戦時中のお祭り風景など興味深い話を聞き、1時前に帰社する。

終業後、今年最後の子どもみこしに途中までつきあい、下今市駅18:52発の、上り特急スペーシアに乗る。

車内にて、返信の滞っていた4通のメイルを書く。今夜と明朝の時間の無さを考え、本日の日記を途中まで作成する。春日部を過ぎて後は、「聖の青春」 を読む。

北千住から日比谷線にて仲御徒町へ至る。

先日、友人のJOKER氏の日記にて、御徒町に 「伊勢」 という焼鳥屋ができたことを知った。神田のガード下にある同名の焼鳥屋が優れた店だということは、前々から知っていた。即、JOKER氏にメイルを送り、この焼鳥屋の情報を得た。

「だったら一緒に飲みましょうよ」 とは、社交性に優れたJOKER氏の提案だが、僕が 「月曜日は到着が夜の9時と遅いから、そちらには迷惑でしょう?」 と返すと、「その日はかえって、遅いほうが良いんです」 との返信が、今朝になって届いた。

南口を出て山手線のガードをくぐると、内外装ともに明るい 「伊勢」 は、すぐに見つかった。2階の席についてオネーサンに訊くと、ウーンロンハイやレモンハイはあっても、生の焼酎は無いという。とりあえず、ウーロン杯と 「1000円のセット+野菜」 とキャベツの漬物を注文して、「聖の青春」 を開く。

店に入って25分後に、JOKER氏へ電話を入れる。「あと20分ほどで到着できます」 との返事が戻る。

僕は本来、早飲みの人間だ。数十分で飲んで食べてハシゴはせず、即、ねぐらへ帰って寝てしまう。それが今夜は、JOKER氏が来るまでのしばらくを、ひとりで過ごさなくてはいけない。濃い酒を一気にいきたい気分を押さえて、薄いウーロンハイのグラスを、そろりそろりと口へ運ぶ。

菊正宗の燗に替えて間もなく、JOKER氏は息を切らせて到着した。ふたりに共通の話題、ウェブペイジについての情報交換、その他いろいろ、諸々の話をしているうちに、閉店時間が迫る。

レジにいた店長に記念写真を撮ってもらい、外へ出て右と左に別れる。

普段なら到底、歩く気のしない2Kmの上り坂をこなして甘木庵へ帰着する。入浴して今日の日記を完成させ、0時に就寝する。


 2003.0713(日) 「聖の青春」

今日は13歳で病没した妹の祥月命日につき、雨の中を家内と墓参りに行く。1972年の7月13日は、暑くない曇りの日だった。東京では夜から雨が降り出したような記憶もあるが、定かではない。

それから3年後の夏休みに、自由学園で3歳年長の上級生が急逝した。当時の学園長の手紙には、「これから彼は、より純粋な世界で生きていく」 というようなことが書いてあった。僕はそれを読みながら、「人間、死んだらおしまいだ」 と、思った。

僕が若い人に最も伝えたいことは、「長生きをしてください」 ということだ。

今夕の子どもみこしは、春日町1丁目の日光街道をはさんだ東側と西側の2基が合同で巡行するため、いつもより出発が1時間も早く、店舗の閉店時間と重なる。まず僕が次男を会所へ連れて行き、途中から家内と付き添いを交代する。

帰宅した次男に、オヤジが 「住吉町のおみこしも、良かったら来てくださいって言ってるけど、行くか?」 と、話しかける。次男は 「うん、行きたい」 と、答える。住吉町は子どもの数が少ないため、夏のお祭りを、できるだけにぎやかにしたいのだろう。

会社の敷地の一部が住吉町にかかっているため、次男がこの町内のおみこしを担いでも、理屈に合わないわけではない。数十分後、次男は住吉町のえんじ色の法被(はっぴ)を着て帰宅した

酒が飲めないということは、1日の楽しみがひとつ減るということだ。酒は毎日飲みたい。しかしながら、1週間に2回、1ヶ月に8回の断酒は、自分が決めたことだ。今月の断酒は3回。明日は東京泊まりだから、酒を飲まないわけにはいかない。今日に4回目の断酒をすれば、後のスケデュールが楽になる。

というわけで、ジャージー乳業のヨーグルトと茹でたトウモロコシを摂取する

長男は小さなころ、お祭りでもらったお菓子は、興味なく半年も1年もそのままにして、結局は賞味期限切れにしていた。次男は反対に、もらったお菓子はすべて、その晩のうちに食べ尽くす

1年に4日だけ大っぴらに飲める炭酸飲料を楽しんだ後、次男は自由学園の寮で生活する10歳年長の長男に、往復葉書による手紙を書いた

「海を渡ったサーカス芸人」 は、土曜日の朝に読み終えた。今夜より、

(さとし)の青春」  大崎善生著  講談社文庫  \640

を枕頭に起き、2時間で146ペイジまでを一気に読む。

村山聖が千駄ヶ谷の将棋連盟における中学生名人戦で敗退したとき、彼の父親は、気落ちし、まだまだ将棋を指したがる息子のために、電話ボックスに備え付けの電話帳で、西日暮里の将棋センターを探し出す。

その日、村山聖はこの将棋センターで偶然、小池重明に出会い、そしてこの真剣師をうち負かす。僕にとっての前半の圧巻は、まさにこの部分だった。

残りの楽しみを明日に取り置いて、10時すぎに就寝する。


 2003.0712(土) 大みこしの巡行

朝9時30分の予約を入れてあった岡村医院で、45分も待たされる。先日の採血の結果を受けて、LDLコレステロールを100以下に落とすよう医師から伝えられる。そう多くの動物性タンパク質を摂取している憶えはない。今月になってから四つ足動物の肉を食べたのは、たったの3回だ。玉子についても、3個のみしか食べていない。

問題は食べ物よりも、運動不足にあるのかも知れない。

カワナゴヨシノリ青年会長から、せっぱ詰まったような電話がかかる。青年会のおみこしの準備が遅れているらしい。病院で待たされた旨の返事をし、即、春日町1丁目の会所へ向かう。

数名の青年会員と共に、倉庫からおみこしを出す。これを芝崎米店のトラックにて湯澤歯科の駐車場へ運び、組み立てる

僕は裏方の仕事は手伝うが、おみこしを担ぐことはしないと、回覧板でも伝えておいた。午後、町内を回ってきたおみこしに、賽銭を上げる

青年会のおみこしは夕刻、八坂祭の行われる瀧尾神社へ向かった。春日町1丁目の半纏を着て、僕も神社へ急ぐ。

6時に、八坂祭の無事を祈る祝詞(のりと)が奏上される。6時30分に、昨年、約80年の眠りから覚めた大みこしが宮出しとなる。昨年はただの見物人に過ぎなかったが、今年、間近でこの大みこしが担ぎ上げられると、背中に感動の寒気が走った。

春日町の交差点から、当番町を務める住吉町の会所前へ至る。大みこしを前後から照らす投光器が目にまぶしい追分地蔵前で折り返し、日光街道を遡上する。

旧市街を半分ほど来たところで、それまで務めていた警備の係を外れる。群衆から離れて走り、会社へ戻って軒先の電灯を点ける。やがて大みこしは春日町の交差点を左へ折れて、ウチの店舗駐車場へ入る。大みこしの立ち寄りは、名誉なことだ。

最大で30分の遅れを見事な巻き返しにより挽回し、定刻の5分前に宮入りを果たす。宮司や当番町青年会長の挨拶があって、大みこしは無事、台車へ戻された

春日町1丁目のおみこしを青年会の一行がウチの店舗前まで運び、再び逆行して湯澤歯科の駐車場へ格納する。その場で大まかな解体をし、打ち上げ場所の 「市之蔵」 へ向かう。

「市之蔵」 へ着いて時計を見ると、10時を過ぎている。カウンターに、茹でたてのシャンハイ蟹がある。「オレの来ねぇ時間には、良いもんがあるんだなぁ」 と、思わず口に出す。

乾杯の後にも、助っ人に入った高校生などが参集し、店内はすし詰めになる。つい先日まで140Cmほどだったサカイ少年の身長が、いつの間にか180Cmを超えている。

「サカイ君、なに飲むんだ?」
「あの、飲み物よりもメシが・・・」

「すいませーん、どんぶり飯ちょうだい」 と、厨房へ向かって叫ぶ。

「サカイ君、刺身、食えよ
「あの、魚よりも唐揚げとか・・・」

「すいませーん、唐揚げちょうだい。冷蔵庫の鶏肉、ぜんぶ揚げちゃっていいから」 と、厨房へ向かって叫ぶ。

サカイ君は黙したまま唐揚げとメシを食べ終えたが、どんぶりに、多量の米粒が付着している。

「サカイ君、米粒、食っちゃえ」
「あ、はい」

大みこしの巡行に参加をしたカトウスミエさんが、「こんなに赤くなっちゃいました」 と、肩を出す。誰かが、「みんなが元気な初っぱなに担ぐのが楽なんだ。まわりがへたってきてから肩を入れると大変だぜ」 と、それに答える。

恒例の、「今日、町内のおみこしに上がったお賽銭はいくら?」 ゲイムが、ユザワクニヒロ会計係によって開始される。ピッタリ賞は賞金1万円、ニアピン賞のそれは3千円。30名ちかい参加者の中で、僕の予想は見事に、ニアピン賞を引き当てた

この3千円を懐にして、まだまだ続く打ち上げから辞去する。時計が、0時5分前を示している。

帰宅した後の記憶はない。


 2003.0711(金) 子どものいる社会

空が黒から藍、藍から群青になりかかるころ、鳥たちが一斉に鳴き始める瞬間がある。そして、更に青、うす青と空が明るくなるころ、鳥はなぜかピタリと沈黙をする。夜と朝の境がどこにあるのかは知らない。日が昇ると、思い出したようにまた鳥が鳴き始めるのは、どのような理由によるものだろうか。

地上は霧に包まれているが、天頂に近いところでは、青空が広がっている

事務室でのよしなしごとを終え、自宅へ戻る。朝飯は、サンショウの佃煮、ウズラ豆、キュウリのぬか漬け、納豆、ホウレンソウの油炒め黒酢がけ、冷や奴、刻んだモロヘイヤ、塩鮭、メシ、キャベツと油揚げとミツバの味噌汁

味噌汁に油揚げを入れると、とたんに美味くなる。「油ってのは美味めぇなぁ」 と、思う。

何年か前、この日記に、「オリーヴオイルで焼いてバルサミコを振りかければ、大抵のものは美味くなる」 と書いて、アメリカに住む未知の大学生から、「もっと具体的に、その料理の方法を教えてくれ」 とのメイルを受け取ったことがある。

そのときには確か、「良い塩と良いコショウで下ごしらえをした良い材料を、良いオリーヴオイルで焼いて、良いバルサミコを振りかければ、大抵のものは美味くなる」 と、返事をしただろうか。

良いだし材料と良い水と良い味噌と良い具を用いれば、大抵の味噌汁は美味くなる。ただし、味噌汁の作り方を知らない人に、この法則は通用しない。

午後遅く、「みんな遅いなぁ」 と気を揉む次男の元に、3人の同級生が遊びに来る。気を揉んでいるあいだ、次男はオヤツを食べている。同級生は、宿題を終わらせてから、遊びに来る。ここに、既にして宿題を終えた子どもと、いまだ宿題を終えていない子どもという、2種類の子どもが発生する。

夕刻6時前、ようやく宿題を終えた次男を連れて、春日町1丁目の会所へ行く。たまに水の粒を感じるくらいの、雨とも言えない雨が降っている。

「卓ちゃん、このくらいの雨の場合、おみこしは出すの?」 と、シバザキトシカズ育成会長に訊かれる。
「当たり前じゃないですか」 と、僕は答える。

シバザキトシカズ育成会長の笛に合わせて、子どもみこしが出発をする。日光街道から裏通りへ至って、365日のうち3日間しかおみこしの通過を見ない犬が、我々に盛んに吠えかかる

やがて子どもみこしは会所へ戻る。幼稚園年少組、年中組、年長組、小学校1年生、2年生と、年の低い順にお菓子とジュースを受け取り、三々五々、子ども達は帰宅する。子どものいる社会は、活気のある社会だ。春日町1丁目はその点において、恵まれた町内だと感じる。

「爆弾ハンバーグ」 という、席で調理をしてくれるファミリーレストランが、郊外にできた。今夜はそこへ行こうと家内が決めていたところに、僕がひとこと、「焼肉という選択肢もある」 と言ってしまったところ、にわかに次男が、「板門店へ行こう」 と主張を始める。

「爆弾ハンバーグの方が、焼肉よりも安く上がったわなぁ」 と思いながら、板門店へ向かう。4種の肉、大量の野菜、メシ、冷麺にて、タンブラーに2杯半の焼酎を飲む

帰宅して、夜しかいらっしゃらない顧客へ、電話を一本お入れする。入浴をして、9時に就寝する。


 2003.0710(木) 梅雨寒

明け方に目覚めて 「海を渡ったサーカス芸人」 を読み、5時30分に起床する。

事務室へ降り、ウェブショップの受注を確認する。照明を点けながら現場へおもむき、地方発送の進捗状況を調べる。事務室へ戻って、きのうの日記を途中まで作成する。

朝飯は、ナスとシシトウの炒りつけ、ショウガのたまり漬、キュウリのぬか漬け、納豆、かまぼこ、トマトのスクランブルドエッグ、塩鮭、メシ、アサリと万能ネギの味噌汁

街に霧が深い。まるでカトマンドゥの朝のようだ。梅雨はいつ明けるのだろうか。次男はこのところ毎朝、肌に感じるか感じないかの霧雨の中を、閉じたままの傘を持って登校する。

午前中、賞与の算定会議を行う。ギフトの受注は相変わらず忙しいが、それも今週末までのことではないだろうか。事務係は30分の残業をして退社した。

初更、カワナゴヨシノリ春日町1丁目青年会長から、「今週土曜日の八坂祭において、おみこしは担がなくてもよいから、警備の仕事をしてくれないか?」 との電話が入る。

僕はここ数年のあいだに2度のぎっくり腰を経験して、おみこしを担ぐ行事からは引退した。警備の仕事とは、おおむね交通整理のことだろう。これに快諾をすると、同日夜のうちに片づけられる大みこしの、解体する過程の写真も撮って欲しいと頼まれる。

夜の祭りにおいて、その晩のうちにおみこしを解体するとは、人手があるうちに大きな仕事を片づけてしまおうとの意図によるものに違いない。こちらの方も、あわせて引き受ける。

おみこし片づけの写真は、春日町1丁目が当番町になったときに備えて作る、アルバムのためのものらしい。

次男の、国語の宿題を督励する。間違えた漢字を何度も消して書き直すうちにイライラはつのり、つい筆圧が高くなる。すると指の痛みは増して、更にイライラがつのる。

次男を洗面所へ連れて行き、お湯の中で指を揉んでやる。

カスピ海ヨーグルトと冷凍の果物を摂取する

鍋物が恋しくなるような梅雨寒に、体の温度が冷える。7時30分ごろにベッドへ潜り込んだところ、そのまま眠ってしまう。9時に気がつき、入浴をして、9時30分に就寝する。


 2003.0709(水) こなからの片口

闇の中で目が覚める。昨夜の酒が残り、体が心地よくほてっている。眠れないままにすごした時間の長さは不明だ。遂に枕頭の灯りを点けると、3時30分になっている。不思議なことに、「海を渡ったサーカス芸人」 を開いたとたん、眠くなる。

5時に再び目を覚ます。床から本を拾い上げて30分だけこれを読み、起床する。

ウェブショップに、あれやこれや修正しなくてはならない個所が増えつつある。

ほとんどの人は気づかず、僕の持ち前の潔癖さから我慢のならない文言の不一致という、それほど問題にならないものから、フォームへ入力された顧客の問い合わせが、ときおり不達になるという重大なものまで、僕の 「デジタルノート」 への箇条書きは、既にして2ペイジに及んでいる。

この1ヶ月以内には、なんとか解決できるだろうか。

朝飯は、サンショウの佃煮、キュウリとナスのぬか漬け、コンブの佃煮、焼いたタラコ、塩鮭、ショウガのたまり漬によるお茶漬け

特別限定・片口セットを、ウェブショップから一気に10セットも、ご注文になった顧客がいらっしゃる。そして気がついてみれば、「こなから」 つまり二合半の容量を持つ片口の在庫は、僅々8個となった

この片口はひと窯単位で焼き上げるものにて、これから1月半を経なければ、次の分は届かない。「これほど売れるとは思わなかったなー、もっと早く注文しときゃ良かったなー」 と、反省をする。

今日も、ギフトの受注をすべて伝票処理しきれないままに、終業の時間を迎える。もっとも、この時期にサクサク仕事を終えていたのでは、そちらの方がよほど問題だ。

自宅へ戻り、次男の宿題の督励をしながら、ノイリープラットを飲む

池波正太郎の本で最も好きなのは、「食卓の情景」 だ。この中で池波は小学校の恩師について、「宿直室で勉強の面倒を見ながら、酒を飲ませてくれた。良い先生だった」 と、追憶をしている。これにくらべれば、次男が宿題をする勉強机でノイリープラットを飲むくらいは、充分にゆるされて良い行為と思われる。

刻んだモロヘイヤ、ナスの炒りつけ、冷や奴、カニシュウマイ、アジの丸干しにて、焼酎 「千夜の夢」 を飲む。五目おこわ、キュウリとナスのぬか漬けにて、更に焼酎を飲み進む。

8時30分に入浴し、9時に就寝する。


 2003.0708(火) 「一刻者」 と 「不阿羅王」

夜中の1時から2時までと、明け方の4時30分から5時まで、「海を渡ったサーカス芸人」 を読む。起床して事務室へ降り、いつもの朝の仕事をして、7時すぎに自宅へ戻る。

肝機能や脂肪の血中濃度を測るための採血が午前中に控えているため、朝飯を抜く。

きのうの日記に、「過去の統計からすれば、明日8日の受注がお中元需要のひとつの山となって、後は漸減の道を辿ることになる」 などと書いたが、その予想は見事に裏切られて、それほどの苦労もなく1日が終わる。統計に誤差はつきものだ。

明日、「7月の第2水曜日は楽勝」 とのデイタベイスに従って休暇を取る社員もいる事務室に注文が殺到するような 「誤差」 も、予想されないことではない。そして、それは怖いものでもあるが、しかしまた、有り難いことでもある。

雨の上がった夕刻、近所の "Johnny's Cafe 638" へ行く。僕が飲み屋でビールを注文することはほとんどないが、立派なビールサーヴァーを備えたこの店に来れば、どうしても自分の定型を外すことになる。「黒い方」 と 「白い方」 のうち、今日は 「白い方」 を注文して、これをノドへ送り込む。

初っぱなの酒肴はピンチョス。どうして僕はこうも、串に刺してある食べ物に心惹かれるのだろう。

タコとオリーヴのサラダチキンバルサミコを迎えて、飲み物をビールから、小牧醸造の焼酎 「一刻者(いっこもん)」 に替えるアーリオオーリオペペロンチーノチーズの盛り合わせときて、焼酎を、王手門酒造の 「不阿羅王(ファラオ)」 に替える。ほとんど緑色を帯びるまでに熟成したキャマンベールチーズが、ストレイトで飲む焼酎によく似合う。

8時に帰宅し、入浴して9時に就寝する。


 2003.0707(月) 夏休みに食べたいもの

2時30分から5時までかかって、「スタンド・アローン」 を読み終える。二度寝に入り、6時に起床する。七夕にもかかわらず外からは、アスファルトに溜まった雨水をはね飛ばして走るタイヤの音が聞こえている。

事務室へ降り、メイラーを回して ウェブショップの受注を確認する。また、きのうの日記を作成する。

朝飯は、タラコの昆布巻き、塩鮭、ナスのぬか漬け、納豆、生のキュウリとひしおマヨネーズ、かまぼこ、ホウレンソウの油炒め黒酢がけ、メシ、ダイコンと万能ネギの味噌汁

8時30分に加藤床屋へ行く。髪の毛はハサミで、ヒゲは6ミリのバリカンで処理して、10時に帰社する。

7月第1週のギフト受注高合計が、対前年度比で24%の伸びを示している。しかしこれは、最大瞬間風速のもたらした誤差だろう。月末を迎えての数字がどのようになるかは、フタを開けてみるまで分からない。

この受注高の伸びに従って、今朝は製造係の半数が荷造りに当たった。それでも先週土曜日の受注分は、そのほとんどが、出荷を明日に持ち越された。

過去の統計からすれば、明日8日の受注がお中元需要のひとつの山となって、後は漸減の道を辿ることになる。

夕刻、家内と次男がマグロの手巻き鮨を食べるかたわらでカスピ海ヨーグルトとスイカを摂取する

「長男が夏休みに帰省したら、何を食おうかなぁ」 と、考える。

癒しのキムチから肉と内臓を取り寄せて、外で七輪で焼きながら食べよう。ひとり300グラムは食えるだろう」 と、考える。「明神水産からカツオのたたきを取り寄せて、大鉢に盛って食べよう。あそこの藁焼きカツオは、料理屋で食うカツオよりも美味めぇからな」 と、考える。

「鶏レヴァのオリーヴオイル焼きバルサミコソースも食おう」 と、考える。「マグロのそぎ切りを買ってきて、これに塩とコショウとオリーヴオイルとバルサミコをかけたやつも食おう」 と、考える。

階段室に、次に読むべき本を探す。棚に収まり、床に積み重ねられ、あるいは散乱した本の中から

「海を渡ったサーカス芸人」  大島幹雄著  平凡社  \2,400

をようやく選び、食後、宿題の仕上げをする次男と同じ机にて、これを読み始める。

むかし外国へ渡って、その地で生涯を終えた日本人、逆に、日本の市井に溶け込んでしまった外国人。この両者をあつかった本が、振り返ってみれば僕の本棚には目立つ。

8時すぎに入浴し、8時30分に就寝する。


 2003.0706(日) 下々の食べる魚

むかしの常識からすれば夜中、いまの常識からすればただの夜にあたる午前0時に目を覚ます。1時まで 「スタンド・アローン」 を読み、二度寝に入る。5時30分に起床する。

事務室にていつものよしなしごとをしていると、家内が早く起きすぎた次男を連れて降りてくる。平日にこそ早起きをすればよいものを、次男はなぜか、休みの日に限って早く目覚める。

キックボードのハンドルに郵便袋を下げた次男と共に、町内にある郵便局までハガキや封筒を運び、これを投函する。

朝飯は、塩鮭、ナスとキュウリのぬか漬け、納豆、ホウレンソウのゴマ和え、かまぼこ、温泉玉子、メシ、アサリと万能ネギの味噌汁

今朝の食卓のかまぼこは、きのう、憶えのない人から届いたものだが、後に送り主は、ウチのお客様だということが分かった。昨夕、御礼の電話をお入れして、お送りくださった理由をお訊ねしたところ、「美味い漬物を作り続けてくれているからだ」 と、そのお客様はおっしゃった。

かまぼこは北陸産の、アナゴやタコを練り込んだ、上品かつ珍しいものだ。これを有り難く頂戴する。

通常、社員が出勤し始める7時40分から9時までは静かだが、今朝はきのうし残した仕事があるため、ハナから忙しい。そのため午前中の、八坂祭の会所設営に参加する義務を忘れる。

終業時、今日も処理しきれない発送伝票を机上に残したまま、事務係が退社する。

種々のかまぼこと大根おろしシシトウとナスの油炒め、キュウリとナスのぬか漬けたたき風の薬味を添えたカツオの刺身、刻んだモロヘイヤにて、焼酎 「千夜の夢」 を飲む。

吉田兼好が 「徒然草」 の中で、「かつて下々の食したカツオが、近ごろでは貴顕の食卓にも上るようになった」 という意味のことを書いている。

「下々の食した」 とは、この魚が獣肉にも通じる野趣を備えているせいだろうか。第一、ニンニクを薬味にして食べる魚など、日本ではカツオ以外に思いつかない。

8時30分に入浴し、牛乳を飲んで、9時に就寝する。


 2003.0705(土) 鳥の味、カエルの味、カメの味

夜中の2時前に目を覚まし、「スタンド・アローン」 を1時間だけ読んで二度寝に入る。5時30分に起床する。

事務室へ降りて朝のよしなしごとをし、7時すぎに自宅へ戻る。洗面所の窓から日光の山を見ると、雲の向こうにわずかながら青空が見える

朝飯は、納豆、キュウリのぬか漬け、茹でたブロッコリー、ベイコンエッグとホウレンソウの油炒め、「丸赤」 の極辛塩鮭、「はれま」 の 「野菜」、メシ、アサリと長ネギの味噌汁

ベイコンエッグは僕の大好物で、かつては毎朝のように食べていた。しかしながら会社の健康診断において高脂血を指摘されるにいたって、その食生活をあらためた経緯がある。このベイコンエッグは、何ヶ月ぶりのものだろうか。

きのうの夕刻にし残した、事務係では処理の難しいウェブショップからの注文を、いくつもさばく。

「ご入力いただいたメイルアドレスが誤っているため、当方からの確認メイルがバウンスしてしまう」
「ギフトにもかかわらず、お支払い方法に代引き着払いが選ばれている」
「カード決済としながら、カード名が特定されていない」

これらのご依頼主にメイルを書き、電話をし、ファクシミリを送付する。

筆無精の人がウェブショップを経営して成功しないのは、このような不完全な、あるいは間違ったご注文への対応が遅れ、あるいは無視してしまうところに、かなりの原因がある。しかしながら、面倒くさがりの人すべてがウェブショップの経営に向かないかといえば、そのようなことはない。

無精な人は、不完全な、あるいは間違った注文が発生しないようなシステムを誰かに作らせ、これを用いればよい。あるいは、無精でない社員を雇用すればよい。

日中は、電話、ウェブショップに加えて、何十軒ものお送り先をお持ちのお客様も、ご来店になる。机上には、処理を待つ受注メモが積み重なっていく。

包装係のセオヨウコさんが、「社員用トイレにスズメが飛び込んできたので、追い出してくれ」 と言いに来る。四つ足の動物は平気でも、鳥は不気味でさわれないという人が意外に多い。これは鳥の姿に、は虫類や両生類を思わせるところがあるからではないだろうか。味や歯ごたえにおいても、鳥の肉はまた、は虫類や両生類のそれに、よく似ている。

迷い込んだスズメは、いまだまともに飛べない子どもだった。どこにある巣から迷い出たものかも分からず、親が助けに来る保証もない。とりあえずは、熱くも乾いてもいない木陰にこれを放つ。

事務係は30分の残業をし、後は明朝の仕事として帰宅をした。ホワイトカラー系の会社であれば、30分や1時間はだらだらと居残って世間話をしていたりもするが、ウチは元々がブルーカラー系の会社のため、残業時間は厳密に計算され、仕事が終われば即、全員が退社する。

カスピ海ヨーグルトとスイカを摂取する。土曜日の夜に断酒とは、大した禁欲ぶりだ。次男に乞われ、いまだ薄明るい戸外へ出て花火をする

入浴して本は読まず、9時に就寝する。


 2003.0704(金) 川本三郎の古い本

夏至をかなり過ぎた今でも、空は4時前から明るくなり始める。「夏至は6月なんかじゃなくて、8月のなかばあたりに来てくれねぇかな」 と思う。夏の前に夏至の来る事実は、どうにも受け入れがたい。

5時30分に、「ジャン・ギャバンと呼ばれた男」 を読み終える。

事務室へ降り、外の光を入れようと、シャッターを上げる。しかしながら、ガラスのはめ込まれた格子戸は、鍵をかけたままにしておく。

5時50分に、その格子戸をドンドンと叩く音がする。視線を上げると、見知った顔のお客様が立っていらっしゃる。1000円の折箱5個のご注文をいただき、開店前から5000円の売上げを確保する。

きのう残業して作成した発送伝票を整理し、荷造り現場へ運ぶ。7月最初の週末にお中元を配ろうしていらっしゃる方が多いらしく、本日の発送伝票は異常に多い。しかもその中には、複雑な荷造り作業を要するご注文が、かなり含まれている。

きのうの日記を作成し、自宅へ戻る。

朝飯は、玉子雑炊、サンショウの佃煮、キュウリのぬか漬け、「はれま」 の野菜、ニンニクとショウガのたまり漬、塩鮭、焼きタラコ

夜半からの雨が夜明けと共に止むと、とても得をした気分になる。太陽の熱に気温は上がり、地面の水分があっという間に蒸発していく。店舗駐車場の片隅にオフクロの植えたキキョウが、急に花を開かせる

終業後の仕事がはかどるのは、電話が留守番に切り替わるからだろう。それでも1時間の残業中に、ウェブショップの受注をすべて処理することはできなかった。

雲に穴が開き、その向こうに、まるでニジマスの腹のような青空と夕焼けが見える

インゲンのゴマ和え、キュウリのぬか漬け、冷や奴にて、焼酎 「千夜の夢」 による晩酌を始める

冷や奴を食べるたびに 「美味いなぁ」 と感じつつ、飲み屋でこれを注文しないのは、冷や奴を料理と認識していないせいだろうか。否、根津の 「鍵屋」 では、冷や奴を注文したことがあった。あの店の冷や奴は美味い。

茹でたブロッコリーとひしおマヨネーズエビシュウマイアジの丸干し肉じゃが にて、更に焼酎を飲み進む。

飲酒の後、階段室に本を物色する。

スタンド・アローン  川本三郎著  筑摩書房  \1,750

を発見する。1989年の初版本。階段室のなかば倒壊した本棚は、まるでアリババの洞窟だ。これを寝室へ運び、入浴する。

見つけたばかりの本を30分ほど読み、9時30分に就寝する。


 2003.0703(木) 神経を冷ますビール

2時30分に目を覚ます。「ジャン・ギャバンと呼ばれた男」 を読み、3時30分に二度寝に入る。5時に起床する。

事務室へ降り、メイラーを回して ウェブショップの受注を確認する

抽象的な表現のご注文や、メイルの1行が長すぎるため、電話番号や商品数量が入り乱れて改行され、どの数字が何を表すものやら分からなくなっているご注文などに、質問のメイルを書く。

また、「お中元に配る」 としながら、「○日に配るから、その前日の○日に必着させよ」 という到着日指定のないご注文にも、問い合わせのメイルを書く。

否、今朝の顧客へのメイルは、「書く」 というよりも、「書きまくる」 という表現の方が適切かも知れない。

きのうの日記を作成し、自宅へ戻る。あたりは霧に閉ざされている

朝飯は、2種のオニギリとキュウリのぬか漬け

本日は休暇の予定を入れていた事務係のコマバカナエさんが、胸騒ぎでもしたのか、急遽、出社をした。

「せっかくコマバ君が来たんだから、今日は忙しくなって欲しいね」
「そうですね」

という会話があった90分ほど後から、ご来店客、ファクシミリ、電話の数が増してくる。店舗の地方発送受注台で受けきれないお客様が、次々と事務室へ案内される。あるいは、毎年のことにて既に要領をご存じのお客様は、駐車場から直接、事務室へ入っていらっしゃる。

僕とタカハシアツコさんとのふたりだけでは恐慌を来していただろうと思われるひとときもあって、結局、 事務係は1時間の残業をした。集計の結果は、今年に入って最高の地方発送受注高を示した。

今日はまた、大きな樽入り味噌の大量予約もあり、店舗と現場のあいだを何度も往復した。

いまだ明るい外へ出て、少しクラクラした、しかしまだまだ負荷を飲み込む余地のある脳に、夕刻と夜のあいだの空気を供給する。

近所の洋食屋 「金長」 へ行き、「1番小さい器の生ビール」 を、ひと息に飲む。仕事によって与えられた熱のようなものが、徐々に体から抜けていく。サザエのバター焼きを肴に、あずけてある焼酎 「純 Legend」 のオンザロックスを飲む。

大量の野菜サラダときのこのスパゲティにて締め、帰宅する。

入浴後、居間にある小さな冷蔵庫から1リットルの牛乳パックを取り出し、そこから直接ゴクゴクと牛乳を飲み始めると、すぐそばにいた次男が、「おぉー、凄い」 と、驚く。

別段、凄いこともない。ただだらしないだけの行為に、次男はいたく感心をしたらしい。子どもと大人の目の付けどころの違いを、面白く思う。

9時に就寝する。


 2003.0702(水) 「あづま」 の串カツ

闇の中で目を覚まし、しばらくじっとしている。眠気が訪れないため、枕頭の灯りを点けて時計を見ると、2時30分だった。「ジャン・ギャバンと呼ばれた男」 を読み、4時に二度寝に入る。5時30分に起床する。

事務室へ降りていつものよしなしごとをし、7時に自宅へ戻る。

朝飯は、キュウリのぬか漬け、タラコの昆布巻き、納豆、マカロニサラダ、目玉焼きとホウレンソウの油炒め、メシ、ダイコンと油揚げと万能ネギの味噌汁

山は晴れた。空気は乾いている。雲の白さが目にまぶしい。次男が、プールへ入るための、水泳パンツやバスタオルを持って登校する。

夏のギフトの出荷は、7月の頭から2週間が正念場だ。その後、作業量は急激には落ちず、8月のお盆すぎまで高原状態を維持する。普段よりも頻繁に、事務室と現場のあいだを往復する。

終業後、ほとんどの社員が、「とんかつあづま」 に移動する。休暇を取った社員は、このひとときのためにのみ集合する。昨年夏の実績をいくつかのグラフにしたものを、全員に配る。その説明を為し、これから6週間の奮起を促す。

後は、ふたつの小上がりに別れて食事会となる

社員の大半は食べ盛りにて盛り合わせを注文したが、僕は食べきれないことを懸念して、串カツに留めた。それでもこの店の串カツは、大変に大きい

大ぶりのグラスで焼酎のオンザロックスを2杯飲み、タケノコと油揚げの炊き物、ダイコンとキュウリのぬか漬け、メシ、豆腐と長ネギの味噌汁にて締める

宴会の需要を想定した料理屋でなければカラオケの施設もなく、集まりは比較的上品な雰囲気を保って、しかも長引くことなく終了する

帰宅して入浴し、9時に就寝する。


 2003.0701(火) 「ジャン・ギャバンと呼ばれた男」

首尾良く朝2時30分に起床する。即、起床して事務室へ降りる。

きのうから、明朝にすべきことのひとつとして、顧客名簿の更新を考えていた。精密さを要求される作業を、電話や不意の来客のある日中に行うことはできない。1時間ほどで新しい顧客名簿を作成し、社員や店舗のコンピュータへ供給できる形にする。

顧客は、この3ヶ月で、600人強、増えていた。

個人ペイジの "清閑PERSONAL" において毎月1日に更新する文章をアップし、きのうの日記を作成する。7時に至れば、早くも頭がクラクラしている。

朝飯は、ニシンのサンショウ漬け、キュウリのぬか漬け、納豆、タラコの昆布巻き、豆腐の炒り卵、ピーマンの油炒めとナスの炒りつけ、メシ、シジミと万能ネギの味噌汁

昼過ぎ、1982年にマルディヴ共和国のグライドゥー島へ行ったときの写真を、本棚から取り出す。近くの写真屋 「プリント館ドゥ」 へこれを持ち込み、スキャナで読み込んでSDカードへ保存してくれるよう頼む。

写真屋のオジサンは 「はい、できますよ」 と言ってくれたが、価格表のどこを見ても、デジタルなメディアから紙焼きにするものはあっても、紙焼きをデジタル化する際のものはない。

「逆なんだよねぇ」
「逆なんだよねぇ」

「べらぼうな値段になんなきゃ、かまわないけど」
「そんなにならないと思いますよ。数百円かな」

ということで、店を出る。

数時間後にできあがったその画像を、今朝更新した 「パパラギとコンピュータ」 に貼り付ける

終業後、次男の漢字練習の宿題を督励する。続いて、国語の教科書の音読も督励する

「鎮魂歌 不夜城?」 は、昼に読み終えた。次に読むべき本を、長男の本置き場に物色する。僕が読まずに長男へ渡した 「転がる香港に苔は生えない」 と、もう1冊、「聖の青春」 という本が目につく。それらを次男の去った勉強机に運び、裏表紙の宣伝文句や帯の文字を読みながら、ノイリープラットを飲む。窓の外はいまだ、真昼のように明るい。

前者は、寝転がって読むには厚すぎる。後者は文庫本のため、外出をするときのために取り置きたい。本の散乱する階段室へ行き、

「ジャン・ギャバンと呼ばれた男」  鈴木明著  大和書房  \1,300

を選んで戻る。これは実に1983年の初版本だが、一体誰が買ったものだろうか。

今夜は自宅を、ヴァーチャルな飲み屋にする。スモークトタンを、家内が薄切りにしている。僕の分だけは、サイコロ状に刻むよう頼む。

僕の好きな神保町の飲み屋 「家康本陣」 の突き出しは、酢醤油をかけたキャベツの乱切りに、申し訳程度の四角いスモークトタンが添えられたものだ。その景色を頭に浮かべながら、食卓のスモークトタンを楊枝に刺して食べる

セロリとキュウリのスティックには、家内はひしおマヨネーズ、僕は味噌マヨネーズをつけて食べる。味噌とマヨネーズの混合物は目に美しくないが、味は良い。現在のひしおは大きなダイズへの麹のはぜ込みも良好で、きわめて好もしく熟成している。

マカロニサラダ温泉卵、キュウリのぬか漬けインゲンの豚肉巻きソテー にて、焼酎 「千夜の夢」 を飲む。しばしば湯島の 「シンスケ」 で温泉卵と生湯波を頼み、オヤジの目を盗んでこのふたつをごちゃ混ぜにして食べた味を思い出す。

8時30分に入浴し、9時に就寝する。