池袋 「豊田屋」

「で、その豊田屋ってのは美味いのか?」 と、いきなり訊かれても僕は困ります。ただ、僕が夕刻に池袋を訪れた場合、10回のうち9回は豊田屋へ行くでしょう。残りの1回は、たまたま日曜日のために豊田屋が休みなんです。

池袋の北口から何となく歩いていくと、そのままスイーッと豊田屋に到着します。誰しも街を歩くときには、いちいち通りや曲がり角を確認しながらは進みませんよね。ただし 「自分も行きたいなぁ」 と思われる方のために、その座標をお伝えしましょう。豊島区西池袋1-34-5、これが豊田屋の住所です。ちなみに豊田屋という名前の店は、この近辺に僕の知る限りでも計3軒あります。僕が行くのはそのうちの1軒。ここからは自分でお探しください。

豊田屋で僕が何を注文するか? その時々にもよりますが、10年近く前のある雪の夕方に大感動したのがニラタマです。

カウンターに座っても、卵を溶くボウルの中までは瞥見できません。これはただの憶測ですが、どうも豚でとったダシと豚の挽肉を卵に混ぜ込み、ちょっとユル目の溶き卵にしてから、ぶつ切りのニラを軽くパラパラッと振って、塩胡椒をするようです。

これを年季の入った直径20センチほどのフライパンで焼くわけですが、普通のオムレツとは異なり、決してひっくり返しません。フライパンの底に接した部分のみが焼けて、上の部分はトロトロの半生状態です。これをスッスッスッと、まぁ高級料理屋ではありませんから、何の変哲もない冷たい平皿に移します。美味いですよねー、このニラタマが。

注意すべきは、得てして店がたて込んできたときに、普段はお運びをしているこの店のオヤジが、いきなり調理場に入ることです。で、よりによって僕が注文したニラタマをですよ、このオヤジが作る場合がある、ということです。職人が調理をすれば大変に美味いニラタマをですね、よりによって僕が注文したニラタマをですよ、このオヤジが作ってしまうという場面がデスネ、ごくたまにある、と。

でもまぁ、このニラタマを肴に、國冠だか金盃だか忘れましたが(失礼!)、徳利の形をしたガラス瓶の燗酒を飲むと、何だか人生が一瞬、報われたように感じると言っては大げさでしょうか。

「で、その豊田屋ってのは美味いのか?」って? 美味いですよ当然。職人が焼いたときのニラタマは。

豊田屋
豊田屋
〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-34-5 TEL.03-3985-8415
日曜日定休 16:00~23:30
1988.1025