"Patagonia"のスタンダップ・ショーツ

こと服装においては、自らを記号化してしまうと、とても便利だ。出かけるたびに服の組み合わせに悩むこともなく、お金もかからない。

年がら年中、同じ格好をし続けると、相手は対象について 「何だコイツ、いつも同じ格好して」 との感を漸減させ、ごく早い時期から 「確固とした好みを持つ、素敵な方でいらっしゃいますね」 との印象を持つに至る。(ホントかいな)

僕の冬の服装は、素肌にバーバリアンのラグビー ・ ジャージー、ボトムはリーヴァイス501。その上にシェラデザインのマウンテンパーカを着て、メレルのトレッキング ・ シューズをはく。首にはインド綿のスカーフ。

「アイスクライミング」  イヴォン ・ シュイナード著  坂下直枝訳 山と渓谷社

にも書かれているように、帽子は上着1枚と同等の保温効果を人体にもたらす。よって、その時の気温や行き先に合わせたそれは必需品だ。

春から夏、そして秋までは、上はTシャツ、下は半ズボンというスタイルに変わる。靴は相変わらず、メレルのトレッキング ・ シューズ。

TシャツはCOMDEX会場のクジ引きで当てたやつ、ローストチキン屋の開店記念に貰ったやつ、英国の前衛芸術家 “GILBERT and GEORGE” の展覧会のおみやげコーナーで買ったやつなど、どーでもよい物ばかりだが、ボトムの半ズボンについては、Patagoniaのスタンダップ ・ ショーツ以外に考えることはできない。

Patagoniaはソニーやホンダと同じく、研究開発型の企業だ。11オンスという分厚いコットン ・ キャンバスを、場所により二重に縫製した頑丈なクライミング ・ パンツも、Patagoniaが誇る多くの発明品のうちのひとつだ。

このクライミング ・ パンツを半ズボン化したものは、スタンダップ ・ ショーツと呼ばれる。その名前は、この半ズボンを脱いで地面に置くと、生地の厚さからそのまま直立することに由来する。

僕のPatagonia製11オンスのパンツも、長いものと半ズボンとを合わせて4代目になった。すり切れて4代目に至ったワケではない。それまでは、どちらかというと細身だった僕の体重が、この10数年で標準値にまで増えたことと、この頑丈なパンツが、水洗いによって著しく縮むことがその要因だ。

このパンツを買う際には、ピッタリのサイズよりも2段階大きなものを選ぶことが肝要だ。当初は大き過ぎてズリ落ちてしまうが、細めのザイルを幾重にも巻いてベルト代わりにすれば、非常時の備えにもなる。

5mm径のザイルでも、ピアノ1台を釣り下げるくらいはお茶の子さいさいだ。だから、これを30メートルも腹に巻いておけば、そしてカラビナとエイト管が1個ずつあれば、ちょっとしたビルの屋上からでも懸垂下降は可能になる。実行に移す気は、さらさら無いが。

Patagonia のスタンダップ・ショーツ
1999.0721