"maruman"の電波時計

時間を厳守する人間には、ふたつの種類があるという。ひとつは、目的地に何十分も前に着いている人。そしてもうひとつは、約束の時間ギリギリに滑り込む人。僕は常に後者だ。

数年前まで、僕は"TIMEX"のゼンマイ式腕時計を使っていた。数千円のものだった。長く使った1台目が壊れ、同じものを新たに購入した。2台目のものは、少しく正確さに欠けるきらいがあった。

1日に1分も2分も狂う時計は困りものだ。僕はゼンマイ時計をあきらめた。ホームセンターにて電波時計を買った。これもまた、数千円のものだった。

世の電波時計のデザインは、所有する気の失せるものがほとんどだ。幸いなことに、僕が目にしたものは、たまたま 「我慢できる範囲内」 の外観を持っていた。

「我慢できる範囲外」 のベルトは、街場の時計屋にて交換をした。

電波時計は、福島県の山奥から発信される電波を受信して、自動的に時刻を修正する。誤差は10万年に1秒だという。なにごとにもギリギリを好む僕に、まことに似合いの時計だ。

新幹線が東京駅のホームを離れるとき、この時計を見ていると、ホントに1秒の差もなく発車をする。嬉しくて、思わず顔がほころぶ。正確とは、何と楽しいものだろう。

この時計のお陰で、出発間際の列車にも、僕は急がず堂々と乗り込むことができる。

ただひとつ怖いのは、長距離移動をした朝の、この時計の動向だ。なぜか標準時よりもキッチリ1時間遅れていることが、ままある。

約束の時間に1時間も遅れたら、それはそれで、諦めもつこうというものだろうか。

maruman の電波時計
2001.0701