"Leica ?c"

「なぜ、その要求を聞き入れたのか?」 と不思議に思うことがしばしばある。

英国のジャガーが "E-Type" に4座を装備したのはアメリカ市場の需要によるものだった。マルコム・セイヤーのたぐいまれな美しいデザインは車軸間距離を230ミリも延ばされ、また屋根も高くしてカボチャの馬車になり果てた。

2座として設計したスポーツカーの座席数を倍にすることが馬鹿げた行為であるとは、すこし考えれば分かることだ。ウイリアム・ライオンズは上質の趣味と会社の将来とを秤にかけ、ドルを持つ人たちの求めに応じたのだろう。

世紀の大発明 "Ur Leica" を源流とするバルナックライカの最終形 "?f" は軍艦部の裏側にフラッシュのソケットを備えている。これもまたアメリカの人たちの要求によるものだ。しかしライカは "Bag's groove" を鼻で歌いながら闇にネズミを捕らまえる猫のようなカメラだから、もとよりフラッシュは必要としない。

道は残されている。我々は歴史を遡上して "?f" の手前の機種 "?c" を求めれば良い。そして現代の高感度フィルムを用いるならば、この "?c" から更に30分の1秒未満の低速シャッターを省いたモデル "?c" が最良の選択となる。

"Leica ?c" はベルモットの甘味も加えていなければ水で薄めてもいない、生のウイスキーのようなカメラだ。

フラッシュも、オートフォーカスも、プログラムAEも要らない。とにかくこれで、写真は写る。

Leica ?c
2005.0501