十二月らしからぬ十二月です。気温がぜんぜん下がらず、すこし不安になります。この時期の日光は、小休止。秋の観光ハイシーズンが終わってひと息といったところです。 年末年始の行楽シーズン・初詣・成人式のお参りがピークとなり、その後は閑散とした時期に入ります。当店は、その頃まさに仕込みのシーズンということで、現在はお歳暮の出荷に追われつつ、仕込み用の原材料の手配や道具の準備など、段取りの真っ最中です。来年も良い仕込みができますよう。
 

前回記したような度量衡についての違和感について、次のような仮説を立ててみた。前段に記されている野菜名+容量は完成した漬物製品としての量、後段に記されている塩および副原料名+容量は、原材料としての量を表しているのではないか。そうに考えると、茄子や瓜のように容積で示すのが適当と思われないような野菜についても、漬物としての完成品としての出来高を示しているのであれば、まだしも理解できる。このような観点から、レシピとしての『延喜式』を読み解いていき、再現につなげてみたい。
 
今回ためしに取り上げてみたいのは、「菁根須須保利」である。『延喜式』には、以下のように書かれてある。
菁根須須保利 一石 料 塩六升 米五升
菁根は「あをなね」と読み、現在のカブに相当する野菜である。「須須保利」は、米などの穀類を副原料に加えた漬物である。カブのススホリの出来高が一石ということは、脱水による歩留まりを考えると、カブの生原料としては、ざっくりとその2倍は必要になると思われるので、2石は必要である。1升の10倍が1斗、1斗の10倍が1石なので、生のカブと塩と米の容積比は、200:6:5となる。これを実測値において重量比に換算することで、再現レシピとしての精度を高めていきたい。
 
暑い夏が長く続き、もう12月だというのに気温が氷点下にいたりません。秋野菜、とくに大根は壊滅的で、秋蒔きのものは芽がでてもすぐにとろけてなくなってしまう、虫に食べられてしまう、大きくなったとしても「鬆(す)」があいてしまうなどの問題がでてきています。幸い、冬蒔きのものは何とかなりそうということでひと安心していますが、農家さんの苦労はいかばかりでしょう。このような状況下にあっても、不思議と、コンスタントに素晴らしい作物を作ってくださる農家さんも、たしかにいらっしゃいます。一方で、季節ごとの仕事を変わらず進めていく、というやり方では、もはや気候の変化の速度に追いついていけないのかもしれません。
 
日光の初冬を楽しむセット
このたびは第40回目の日光美味定期便にお申込みいただき、誠にありがとうございます。趣味と実益をかねて農協に行くのが楽しみなのですが、白菜や柚子など、冬野菜がようやく充実してきたの感があります。先日はたまたま九州野菜の「かつを菜」を出荷している方がいらっしゃって、欣喜雀躍して買い込み、さっそくゆばといっしょに炊き合わせにしました。以下、今月の内容です。
 
一、明治の館さん(日光市山内)のトラディショナルヨーグルト2個入
日光の山内(さんない)で、日本で最初に蓄音器を発明・発売したアメリカ人・ホーンの邸宅にて営業するレストラン「明治の館」さんから、ヨーグルトをお届けします。日光東照宮まで徒歩1分の好立地、重厚な石造りの洋館、そして、クラシカルでたしかなつくりの洋食と洋菓子で、ハイシーズンには大行列のお店です。お店はこちらの他に、日光金谷ホテルのすぐ近くに高級ステーキ店「みはし」、霧降高原「山のレストラン」、また、JR宇都宮駅のみどりの窓口のとなりに新しくティーサロンもできました。
お土産の定番としてはレアチーズケーキの「ニルヴァーナ」が名物ですが、自分としてはこちらのヨーグルトが、とろりとしてコクがあり、普段使いもできてすばらしいと思っています。加糖タイプはそのまま、無糖タイプはお砂糖やお好みのジャムなど添えてお召し上がりください。
 
二、KASHIWA COFFEE ROASTERY(日光市今市東町)のオリジナルブレンドコーヒー3個入
下今市駅前の喫茶店 珈茶話(カシワ、とよみます)さんが、コロナ禍で休業を余儀なくされているあいだ、長年お休みされてきたコーヒー豆の自家焙煎を復活。好みのブレンド・好みの焙煎度で、オリジナルのドリップパックを作ってくれました。当店のオリジナルブレンドは、「上澤の朝食」にちなんで、目覚めのいい朝を演出してくれるように、香り豊かなコロンビアと柑橘系の香りの強いタンザニアを配合。爽快感を重視しています。通常のドリップパックよりも倍近い、喫茶店で飲むコーヒーとほぼ同量の粉が入っています。芳醇な香りをお楽しみください。
 
三、上澤梅太郎商店(日光市今市春日町一丁目)のクリームチーズのたまり漬
クリームチーズを、日光味噌のたまり「朝露」をベースにした漬けつゆに漬けています。ねっとりとして濃厚なうまみは、ごはんにも、パンにも、お酒にも合います。今回同送の「山のにぎわいーミックスナッツとドライフルーツのたまり漬」と合わせてお楽しみいただければ幸いです。
 
四、上澤商店の「山のにぎわいーミックスナッツとドライフルーツのたまり漬」
4種類のナッツ(くるみ、カシューナッツ、マカダミアナッツ、アーモンド)と、3種類のドライフルーツ(レーズン、クランベリー、いちぢく)の計7種類の素材をたまりに漬けています。世界中の産地から厳選した素材から7種類に絞り込んだのは、いちおう、定番の「だんらん」を意識してのこと。レーズンだけでも候補が5種類ほどあり、泣く泣く落としたものもありました。たまりの風味が、ナッツやフルーツなのに、不思議と日本酒を誘います。
 
五、上澤商店の「楽楽らっきょう」
定番のらっきょうのたまり漬をみじん切りにしたものです。某大手のらっきょうメーカーの社長がこれを見て「らっきょうは刻まないのが業界の暗黙の了解である」と言ったことがありましたが、根強い人気があります。カレーの付け合わせや、タルタルソースの素材にどうぞ。
 
六、上澤商店の「日光味噌のたまり浅漬けの素ー朝露ー」
日光味噌を圧搾して得た「たまり」と、醤油、みりんなどをブレンドして、たまり風味の浅漬けの素として開発しました。この開発過程で、漬物に対する知見をいっそう深めることができました。
明治の館の3階は、日本コロムビアの前身となった「日本蓄音器商会」が手がけた貴重な蓄音器のほか、戦前のレコードもコレクションされており、国内でも有数の質と量を誇っています。先日、これを生で聞かせていただく機会がありましたが、電気的な音量増幅がないのに、石造りの建物自体の音響が素晴らしく、感動的な体験となりました。
 
KASHIWA さんのもうひとつの名物が、日光の天然氷でつくるかき氷です。若店主自ら、蔵元の池に出向いて氷の切り出しをしています。天然氷の製造元は全国に5軒しかなく、うち3軒が日光なんです。ちなみにぼくは極端に冷たいものが苦手なので、かき氷は得意ではないのですが、、、、、、駅前のお店ということもあり、お客様がいらっしゃったら必ずここにご案内して食べていただきます。
 
「山のにぎわい」開発時、相談させていただいたのが、上野アメ横のナッツ専門店「小島屋」さんの店主、小島靖久さんでした。試作品を食べてもらったとき「レーズンもいいけど、酸味をいれるならクランベリーがいい」「マカダミアは高いから加工品に使わないほうがいいけど、これには必然性がある」など、歯に衣着せぬコメントをいただき、ブラッシュアップしていきました。
 
次回は、日光の冬をたのしむセットと題して、・地元のゆば ・地元産冬野菜 ・長いものたまり浅漬け
・日光味噌 ・地元産いちご等々お届けしたく思います。何卒宜しくお願いいたします。
 
みなさま、ご健康に留意され、よいお年をお迎えください。