雑駁なのが、おいしい

アメリカではサンクスギビング、日本ではにいなめ祭。世界中で、秋は五穀の豊穣を祝う季節です。
先日、ウチでも、商売繁盛を願う「恵比寿講」のお祭りをもったばっかりです。


ここでお供えするのが、鏡餅、鯛の尾頭つき、魚の煮付け、青菜のおひたし、えび入りの紅白なます、そしてごはんとけんちん汁です。
なかでも、たっぷり根菜が入ったけんちん汁は、寒い季節にぴったりのあたたかな料理です。
きょうは、このけんちん汁の作り方をご紹介します。

材料はこちら




だいこん、にんじん、ごぼう、さといも、しいたけ、こんにゃく、とうふ(木綿)。
それから、油、塩、味の決めては醤油
以上!ダシは使いません。

まずは下ごしらえから

・こんにゃくはひとくち大の薄切りにして、下茹でします。
これは、アクをとるためです。



・さといもは皮をむいて乱切り。水からゆで、沸騰したら火を止めて、ザルで水けを切っておきます。
これはとろみがおつゆにでるのを防ぐためなので、それが気にならない方は省略してもOKです。



・だいこん、にんじんは皮をむいていちょう切り。
ごぼうは皮を包丁の背でこそげとったら、はす切り(斜めの薄切り)、
しいたけは石づきをとって、四つ割にしておきます。



下茹でするものが2種類あるので、ここまでがちょっとタイヘンですが、あとは、炒めて煮るだけです。

とにかく、鍋はデカイのを

家にある、いちばん大きな鍋を用意してください。
今回は、大根10cm弱、にんじん半本、ごぼう2/3本、しいたけ4つ、さといも(小さいの)5個、こんにゃく半枚、とうふ半丁で作っていますが、それでもかなりな量(10人前はあるか?)となっています。
ただ、大量につくっておくのがこのテの料理の醍醐味でもあるので、そこは仕方がないと思ってください。


まず、鍋に油をうすく引きます。
火にかけて油がやわらかくなったら、鍋の底に油が回るていどを目安としてください。
感覚としては、ちょっと多めに感じるかもしれません。



中火にかけて、鍋があたたまってきたら、火が通りにくいと思われる順に野菜を入れて、炒めていきます。
まずはごぼうから。
(黒くなってますが、水にさらしたりしなくても、まったく問題ありません)



次に、にんじん。



それから、だいこん。



そして、しいたけ。



全体をちゃっちゃとかきまぜたら、ここで塩をふたつまみほど入れましょう。
これは味付けが目的ではなく、塩の浸透圧で野菜の水分を引き出し、火の通りを早くするためです。



さらに炒めていきます。
次に、さといも。



こんにゃく。



最後に、適当な大きさに切ったとうふをいれます。
ま、手でちぎってもOKです。どうせ煮崩れますから。
そして、煮崩れたとうふが、またうまいんです。なので、形については、まったく気にしないでください。



先述のとおり、とうふは崩れてもかまいませんので、全体をざっとかきまぜて、油をいきわたらせます。
この間、ずっと中火でOKですが、焦げてきそうになったら弱めてください。
全体的に油がまわってピカピカしてきて、野菜がしんなりしてきたら、かぶるより多めに水をいれます。



ふたをして、15分ほど、ことことと煮込みます。



ほどよく煮えてきた頃合いで、しょうゆをドボドボ。



味見をしながら、お好みの味よりちょっと薄いくらいまでしょうゆを入れていきます。
そして、ふたをあけた状態で、また30分から40分煮ます。
この過程で、野菜の甘みを引き出すんですね。
ふたをあけて煮るのは、煮詰めるためでもあります。野菜の旨味を凝縮させるためです。ですので、最初の段階で味をちょうどよく決めてしまうと、濃いめになってしまう危険があります。
味付けを決めるのは、できるだけ後半戦に。かならず味見をしながら微調整してください。



とうふとさといもが煮崩れはじめ、だいこんが透き通ってとろりとした食感になったら食べごろです。
野菜だけで、こんなに旨味がでるのか!というほど、しっかり、そして、しみじみとした味がいたします。


召し上がるときはお好みで、ネギをちらしたり、七味を振ったりしてください。




見よ、もめんとうふの、この、美しき煮崩れ。
家庭料理のおいしさ、ここに極まれり。



たしかに料理やさんはだしが大事かもしれないけど、「家庭であってもかならずキチンとだしをとるべき」みたいな発想は、ちょっとしたデカダンスだと思うんです。みんながみんな、料理やさんの料理を目指さなくてもいいんじゃないかなー。だしを使わなくても、うまいものはうまいんです。と思いますよ。


こういう料理の常で、出来立てよりも、翌日のほうがうまいです。


熱々のけんちん汁と、ごはんと漬物。もう何もいりませんね。
急に寒くなってきたこの時期、ぜひお試しください。