平安時代の漬物レシピ

『延喜式』にみられる

菁根須須保利 一石 料 塩六升 米五升

の記述が、塩度約5%の漬物のレシピらしいということは、前回までにみたとおりである。

漬物の道具立て

次に道具立てだが、容器については、同じ『延喜式』「内膳司」章に、他の漬物を作る際の道具として、

柏三十五把 帊瓼口料 匏二抦 汲汁料

との記述がある。瓼口に帊(は)する、とは何のことだろうか。

瓼と帊

「瓼」はさらけと読み、国字(日本独自の漢字)である。
浅めの甕(かめ)を指し、時代的に須恵器であると思われる。

「帊」は、九〇〇年代に書かれた中国の字典にすでに収録されている漢字で、小さめの布を複数枚つなげて大きくした布で身体や物を覆う、という意味がある。

したがって、この記述は、柏の葉35束を敷き詰めて、甕(須恵器)の蓋とした、と解釈できる。

「匏」はひさご、ひょうたんの意味で、汁気を汲みだすのに使うとある。

重石・圧力についての疑問

容器についてここまで細かく指定があるのにも関わらず、重石についての記述はない。

漬物とは、内蓋をして重石で押すことで嫌気性の環境を作り、好気性菌の生育を漸減させる=素材の保存性を高める技術といえる。圧力の存在はある意味で、塩以上に重要である。その記述がなぜないのだろうか。