2022.9.14(水) 県南紀行
義理のある人が亡くなったことをきのう電話で知らされた。通夜告別式について訊くと、時勢がら身内で済ませるとのことだった。だったら香典だけを郵送するか。しかし特に遠方のことでもなければ、それも素っ気ない気がする。そういう次第にて午前、仕事着を黒い服に着替えてホンダフィットに乗る。
CDプレイヤーには松本あすかの”PIANO ESPRESSIVO”。その1曲目はヨハン・セバスチャン・バッハのインベンション第1番ハ長調。練習しなければ上達しないことのほとんどすべてが嫌いな僕ではあるけれど、これ1曲くらいは弾けるようになりたいものだと思う。
県南に至っていつも感じるのは平地がどこまでも続いている、ということだ。田の稲はだいぶ色づき、頭を垂れ始めている。遺族は葬儀場まで案内をしてくれた。今はそこに安置されている、長いつきあいのあった人に深く一礼し、線香を供える。
往路は高速道路を使ったものの、それに拠らなくても時間はそれほど変わらない。それに気づいて帰りは下道を行くこととした。「シンゴーデミギホーコー」と繰り返すiPhoneの案内を幾度も無視する。Googleマップはやたらと高速道路に誘導しようとする。鈍行による経路を一切教えてくれない乗り換え案内に似ている。
そうして12時32分に帰社して30分後に仕事に復帰する。
朝飯 温泉玉子、オクラのおひたし、茄子とピーマンとパプリカの味噌炒り、納豆、蕪のぬか漬け、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、らっきょうのたまり漬、ごぼうのたまり漬、メシ、揚げ湯波と小松菜の味噌汁
昼飯 オクラのつゆによる素麺
晩飯 ピーマンの肉詰め、夏太郎らっきょう、「珍来軒」の呉冷麺、麦焼酎「こいむぎやわらか」(ソーダ割り)、バナナケーキ、Old Parr(生)
2022.9.13(火) まけいくさ
きのう読み終えた本を棚に戻す。そのおなじ区切りの中に、何年も前に買いつつ読んでいない文庫の上下がある。これについては先日、堀江貴文が激賞する動画をたまたまウェブ上で目にして「へー、ホリエモンもこんな本を読むのか」と一驚を喫した。
と、ここまで書いて「一驚を喫したとは、オレの日本語も古いね」と感じる。
「治療のホー、今日で終わりになりますね」と、いま通っているところではない別の歯医者で言われたことがある。「ホーは要らねぇだろう」と思うが名詞には「ホー」を付属させるのが今様である。「お席はこちらになります」と、予約した料理屋で言われたことがある。「こちらでございます、じゃねぇのか」と思うが「なります」が今の最大公約数である。「みたいな、の後は何だよ」と訊きたくても、会話においては「みたいな」で文節を切る例が、今は過半ではないか。
世はおおむね多数を獲得した側が正しいとされる。そこに属さない人は否定され、排除され、あるいは無視される。それが何千年も続いてきた事実。「それはちょっと」とみずからの意見を主張しても、負け戦は必定なのだ。
朝飯 茄子とピーマンとパプリカの味噌炒り、オクラのおひたし、納豆、トマトの甘酢漬け、蕪と胡瓜のぬか漬け、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、らっきょうのたまり漬、メシ、揚げ湯波と小松菜の味噌汁
昼飯 茄子とピーマンのつゆの素麺
晩飯 マカロニサラダ、パン、茹でたブロッコリーを添えた鶏のクリーム煮、Chablis Billaud Simon 2018、マンゴー
2022.9.12(月) 筋金入り
会社の横判と銀行印あわせて4つをボディバッグに納めて下今市09:33発の上り特急に乗る。決算期に発生する、年に一度の仕事のためだ。ただし今日は目的地に直行しない。降って湧いたような用件にて地下鉄を本郷三丁目で降りる。甘木庵まで歩き、すこしのあいだ滞在して本郷三丁目に戻る。そして大手町を経由して三越前に至る。
気温は30℃をすこし切るくらいだろうか。とても気持ちが良い。目的の銀行には昼休みがある。よって僕も昼食を摂り、更には喫茶店で本を読む。残りのページはいくらもない。よって普段にも増して、一言一句をゆっくりと追う。
空の明るさからして、いまだ夕刻とは呼びがたい頃に北千住まで戻ってくる。飲み屋のテレビが大相撲の秋場所を中継している。先場所優勝の逸ノ城は御嶽海に負け、翔猿は照ノ富士から初金星を得た。しかし僕にとってはチューハイと本の方が気にかかる。
昭和20年8月16日の「断腸亭日乗」は「月佳なり」で閉じられている。荷風66歳。筋金入り、である。
朝飯 鰹のたたき、茄子と茗荷の塩もみ、トマトとズッキーニの油蒸し、大根おろしを薬味にした納豆、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、らっきょうのたまり漬、ごぼうのたまり漬、メシ、揚げ湯波と三つ葉の味噌汁
昼飯 「利休庵」のとろろ蕎麦
晩飯 「加賀屋北千住店」のあれや、それや、これや、チューハイ
2022.9.11(日) 最後のひとつ
応接間の床を月が照らしている。思わず「おぉ、すごい」と声が出る。きのうは仲秋の明月だった。その月が、いまだ沈まず空にあるのだ。時刻は3時33分だった。
いつものように、食堂のテーブルにコンピュータを開く。きのうの日記は書けている。「だったらおとといの日記は、とうにできているだろう」とワードプレスを立ち上げる。おとといの日記は想定外のことながら、はじめの段落しか書けていなかった。しかしまぁ、いずれよしなしごとを連ねるのみであれば、焦るほどのことでもない。
そのうち窓の外、東の空が紅みを帯びてくる。時刻は4時45分。空の最も美しい時間は毎日、確実に遅くなりつつある。屋上に上がり、その空の写真を撮る。反対側の空には月がある。早朝、半袖シャツ1枚、裸足にサンダルで外へ出づらくなるのは2週間後だろうか、あるいは3週間後だろうか。
僕の今日の昼休みは13時30分から。店へ行くと「らっきょうとプルドポークのサンド」は、たったひとつが朱塗りの盆に載せられていた。その、きのうと今日を合わせれば200個の最後のひとつを買って、4階の食堂へ上がる。
朝飯 炒り豆腐、揚げ湯波と蕪の葉の炒り煮を薬味にした納豆、「なめこのたまり炊」の大根おろし和え、ピーマンの肉詰め、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、菠薐草と若布の味噌汁
昼飯 らっきょうとプルドポークのサンド、アイスコーヒー
晩飯 菠薐草のおひたし、茄子とピーマンとパプリカの味噌炒り、玉子焼き、冷や奴、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、夏太郎らっきょう、鰹のたたき、麦焼酎「こいむぎやわらか」(生)、羊羹、Old Parr(生)
2022.9.10(土) ニコッペ
きのうTikTokに公開した、8月29日に撮影した「10分で準備できる頑張らなくても美味しい朝食」に、今朝は100以上のコメントの付いていることに気づく。それらのうちまともな90超には即、返信を付ける。ボンヤリさせたら日本一の僕にも、マメなところはあるのだ。
メーラーを回と、8時30分からの朝食の予約が5時37分に入っている。返信をお送りしたのは5時53分。どちらのどなたかは存じ上げないけれど「お互い、早起きですねー」と、声をおかけしたい気分になる。「汁飯香の店 隠居うわさわ」は本日、朝のうちは空いている。このお客様にはせいぜい、ゆっくりしていただきたい。
さて今日明日と開催される、日光市内の様々なお店が工夫を凝らしたコッペパンを売る「ニコッペ」には、上澤梅太郎商店も、2020年の初回から参加をさせていただいている。今回ウチがお出しするコッペパンは「らっきょうとプルドポークのサンド」。幸いにも今日は予定数を超えてご予約をいただいている。よって僕は、明日に買って食べようと思う。
朝飯 蓮根のきんぴら、生玉子、炒り豆腐、めかぶの酢の物、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、トマトと揚げ湯波と若布の味噌汁
昼飯 「日光金谷ホテル」の「那須三元豚の粗挽きソーセージ&金谷カレー」ニコッペパン、牛乳
晩飯 ポテトサラダ、菠薐草のおひたし、ピーマンの肉詰め、獅子唐としその実の天ぷら、夏太郎らっきょう、お多福豆、Old England、Chablis Billaud Simon 2018
2022.9.9(金) しその実のその後
「注意力散漫」と、小学何年生のときのことだったか、通信簿に書かれたことがあったらしい。その性向は今でも治らない。今朝も、既にして書けているおとといの日記を公開すべくワードプレスにひとつめのパスワードを入れ、しかし次のパスワードを入れる前に別のブラウザを立ち上げて「しぶえちゅうさい」などと検索エンジンに入れてしまうのだ。僕の生産性が低いのも、むべなるかな、である。
そういう僕には、春から紫蘇を育て、秋にその穂先から実を指先でしごき取り、それを米袋に満たして納品する、というような根気の要る仕事はできない。
納められたしその実は即、3つの水槽により3度洗いをし、脱水機で水を切り、塩をまぶして桶に移す。その、今週月曜日から買い入れを始めたしその実が、夕刻にいたって1,000リットルの桶の上の方まで溜まってきた。1,000リットルの桶がどれほどの大きさかといえば、リトルブラックドレスなら10人くらいは立って入れるほどのものだ。明日は別の桶を用意する必要があるだろう。
上澤梅太郎商店の商品は、農家の方々の勤勉さに支えられている。とても有り難いことと思う。
朝飯 「食堂ニジコ」の「海老と豆腐の塩煮」をかけたごはん、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、若布と小松菜の味噌汁
昼飯 にゅうめん
晩飯 「コスモス」のトマトとモッツアレラチーズのサラダ、カツレツ、ドライマーティニ、TIO PEPE、家に帰ってからのロールケーキ、Old Parr(生)
2022.9.8(木) 秋晴れ
「朝の蜘蛛は殺すな、とは蜘蛛が巣を張れば天気は晴れ。朝の蜘蛛を殺せば晴天が失われるから、これを殺してはいけないとする迷信」という意味のことがウェブ上にあった。全然、当たっていない。きのうも今日も曇りがち、雨がちである。
街が異常に暗い。雰囲気が暗いのではない、光の量が極端に少ないのだ。午前にもかかわらず、行き交うクルマはおしなべて、安全のためにスモールランプを点けている。雲が異常に厚いのだろうか。その暗さの中にホンダフィットを走らせて、3軒の銀行を回る。
1軒目の銀行では、しその実を買い入れるための追加の資金を引き落とす。2軒目と3軒目の銀行間で行ったのは、いわゆる移し替えである。
銀行から会社に戻り、クルマから降りると雷鳴が聞こえた。午後の雷なら慣れている。しかし午前、それも雨が降ったり止んだりしているときの雷は珍しい。冬の夕刻に看板を照らすための自動式照明が、空の暗さに騙されて昼の日なかに点いている。
「まるで梅雨どきみたいだ」と、しその実を持ち来た農家の人が空を見る。「この湿気は何とかならないか」と、別のやはり農家の人は首の手拭いに触れつつ嘆息する。今日の時候の挨拶は大抵、奇妙な天気についてのものだ。秋晴れは、いつのことになるだろう。
朝飯 めぬけの粕漬け、納豆、炒り豆腐、蓮根のきんぴら、ピーマンの炒りつけ、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、小松菜と若布の味噌汁
昼飯 にゅうめん
晩飯 トマトとポテトのサラダ、鶏のトマト煮、Old England、ハムのロールパン、Chablis Billaud Simon 2018
2022.9.7(水) 朝の蜘蛛
「シュバイツァーは、あらゆる命を大切にした。部屋に迷い込んだ虫はコップに移して外へ放った。更には抗生物質さえ嫌った」と、子供のころ何かの本で読んだ。半世紀以上も前のことであれば、あるいはこの記憶にもあやふやなところがあるやも知れない。
朝、食堂に来てお湯を沸かそうとしながら、小さな蜘蛛の、レンジフードから垂れ下がっているのが見えた。蜘蛛は僕の姿に気づくと糸を腹の中に吸い込みつつ自らを吊り上げ、レンジフードにしがみついた。逃げられないとみるや今度は糸を延ばして数十センチほども下降し、また上昇してレンジフードに戻った。僕はその蜘蛛を手でやわらかくつかみ、先ほど開けたばかりの窓から外へ放つ、というよりは放り投げた。
「朝の蜘蛛は殺すな」だっただろうか、あるいは「夜の蜘蛛は殺すな」だっただろうか。そんなことを聞き覚えている。蜘蛛は地上にフワリと落ちて、これからもしばらくは生き続けるだろう。
蜘蛛といえば思い出すのは芥川龍之介の「蜘蛛の糸」で、これは中学校だか高等学校の国語の教科書にあったような気がする。もうひとつは内田百閒の「サラサーテの盤」。こちらも読んだことはある。百鬼園は三島由紀夫がみずからの「文章読本」で激賞するほどの文章家である。しかし幻想小説は残念ながら苦手の分野で、その内容はよく覚えていない。鈴木清順の「ツィゴイネルワイゼン」は、開いた襖の向こうの大谷直子だけが脳裏に鮮やかだ。
朝飯 蓮根のきんぴら、茄子とピーマンの炒りつけ、生のトマト、納豆、しらすおろし、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、キャベツと若布の味噌汁
昼飯 「ふじや」の野菜麺
晩飯 生のトマト、ピーマンとオイルサーディンの油蒸し、Old England、トースト、Chablis Billaud Simon 2018
2022.9.6(火) 言語の習得
先月30日の日記に書いた、2日分の「いつでも使える日記」には賞味期限があった。夏のあいだに公開すべきが、次々と書かれる日記により下へと追いやられるうち、季節はいつの間にか秋になってしまった。よってその文章は来夏に使うこととして、ワードブレスから秀丸に移した。「いつでも使える日記」はいずれまた、新たに増えていくことだろう。
ところで言葉について。
1歳9ヶ月になる孫のシンの日本語が、このところ僕のタイ語を追い越しつつある。先日は「ペン、ちょうだい」と言った。ペンはタイでもペンで通じるものの「ちょうだい」を意味するタイ語については、僕はそれを知らない。
「タイに来て1年、それとも2年」と、タクシーの運転手に訊かれたことがある。そうではない。僕のタイ語はメシを食うことと移動をすること、そのふたつにおける最低限が身についているだけだ。「私にペンを貸してください」は、そのどちらにも当てはまらないから話せないのだ。
タイ人の教師によるタイ語の学校は東京にもある。しかし先月28日の日記に書いたように、僕は「練習しなくては上達しないことの、ほとんどすべてが嫌い」な人間である。「行っても気力が保たねぇだろう」とは思う。
朝飯 「なめこのたまり炊」のフワトロ玉子、小松菜のおひたし、納豆、オクラのおひたし、胡瓜と蕪のぬか漬け、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、メシ、揚げ湯波とズッキーニの味噌汁
昼飯 にゅうめん
晩飯 炒り豆腐、夏太郎らっきょう、トマトと刻みキャベツとマッシュドポテトを添えた串カツ、麦焼酎「こいむぎやわらか」(ソーダ割り)
2022.9.5(月) しその実
「しその実」は秋9月の季語。現在の季節感に一致しているところからすれば、それは新暦になってから定められたものと思われる。僕の9月の日程も「今年はいつからいつまでしその実を買い入れようか」というところから立てはじめる。
現在の商品のうち、しその実を使うものは「しその実のたまり漬」、「七種きざみあわせ・だんらん」、「ホロホロふりかけ」、「ひしお」の4種。このうち「だんらん」は特に人気の商品である。しその実の在庫を切らせるわけにはいかない。
しその実を近隣の農家から買い入れる期間は、様々な条件により伸び縮みする。今年は9月5日から10日までの6日間とし、製造係はそのための設備をおととい、蔵の中に組み立てた。設備とは3つの大きな水槽と、その各々に大量の水を供給するパイプ、スクリューコンベア、ミキサーである。
買い入れたしその実は製造係が蔵へ運び、この水槽を次々と移動させながら計3度、洗う。脱水機で水を切ったらミキサーで塩をまぶし、スクリューコンベアの下の口に入れる。そのしその実はそのコンベアにより高いところへ運ばれ、1,000リットルのプラスティック製の桶に溜められていく。
今年の初日の買い入れ量は、昨年のそれの4倍に上った。さて明日はどうなるか。計量と検品にあたる僕はせいぜい早寝早起きを心がけ、3度のメシをしっかり食べるのみである。
朝飯 ピーマンと茄子の炒りつけ、しらすおろし、めぬけの粕漬け、めかぶの酢の物、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、獅子唐の天ぷらと若布の味噌汁
昼飯 大根おろしのつゆによる素麺
晩飯 茄子とピーマンの揚げびたし、オクラのおひたし、トマトの甘酢煮、薩摩芋のレモン煮、お多福豆、鮭の漬け焼き、胡瓜のぬか漬け、「松瀬酒造」の「松の司生酛純米」(冷や)、豆乳のババロア








































