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清閑 PERSONAL DIARY

2022.4.26 (火) 病は気から

1980年8月、アメリカの西海岸へ行ってくれとオヤジに言われた。当時は修行中の身であり、一緒に働いている人たちへの遠慮もあって、気乗りはしなかった。しかし「こちらにも義理がある」とオヤジは二の句を継がせない。結局のところ、成田から東へ飛ぶ飛行機に乗った。

カーメルは洒落て明媚なところだった。夕食は常に、郊外のモーテルからクルマで街へ出かけて摂った。その晩は、緩やかな坂の途中の角に建つ粋な料理屋を選んだ。テーブルにはターキー、トニー、相撲とり、オーヤマさん、そして僕より少し年長の女の子がいた。

メニュを開くと、その先頭あたりに生牡蠣があった。「へー、このあたりでは夏に生牡蠣が食べられるのか」と、僕はそれを半ダース頼んだ。「大丈夫か」と、山奥から来たターキーは懸念を示した。「ダメならメニュに載せないでしょ」と僕は答えた。

丸く小ぶりな生牡蠣は美味かった。僕のその様子を見たターキーは、6個のうちの1個に手を伸ばし、口へ入れた。

白ワインをしこたま飲んだ僕は、熟睡をした。一方ターキーは、朝までに5回も便所で難儀をしたと、翌朝、語った。口から吐いたか尻から出したかまでは確かめなかった。

後日、その出来事をオフクロに話すと「病は気からだよ。ビクビクしながら食べるから当たっちゃうんだ」と、牡蠣は生でしか食べない彼女は持論を述べた。

今夜の居酒屋の冷蔵ショーケースには殻のままの牡蠣があった。「岩牡蠣ですか」と訊くと、普通の牡蠣とのことだった。「まだ食べられるんですね」と、先ずはそれを注文した。

養殖や殺菌や流通など諸々の技術が上がってきたせいだろうか、日本の、5月もちかくなっての牡蠣は、もちろん美味かった。1980年8月の、カーメルの生牡蠣が美味かった理由については、よく分からない。


朝飯 揚げ湯波の淡味炊き、コンニャク煮、納豆、酢蓮の梅肉のせ、しいたけのたまり漬、ごぼうのたまり漬、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、メシ、トマトと菠薐草の味噌汁
昼飯 蕪と胡瓜のぬか漬け、梅干、揚げ湯波と蕪の葉の炒り煮のお茶漬け
晩飯 「和光」のお通しの筍の木の芽和え生牡蠣蛍烏賊サービスのにんにくの醤油漬け赤魚の粕漬けサービスの山椒の醤油煮、麦焼酎「吉四六」(お湯割り)


美味しい朝食のウェブログ集は、こちら。

  

上澤卓哉

上澤梅太郎商店・上澤卓哉

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