2021.6.14(月) 梅雨の始まり
電子卓上計算機にはきのう「15:00 セキネ」と青いフェルトペンで書いた黄色いポストイットを貼った。またiPhoneには14時30分に警告音が鳴るよう設定した。その14時30分が過ぎたところで、今度は15分が経ったら報せるようキッチンタイマーのボタンを1、5、0、0と押す。どこかから電話が入り、その内容が急を要するものだった場合には、予定など簡単に頭から抜け落ちる、それを防ぐための、二重三重の備えである。
新型コロナウイルスのワクチンを接種するための書類は、日光市役所から届くなり金庫に収めた。その黄色い封筒は、午前のうちに事務室の大机に出しておいた。問診票には昼食の後に計った体温36度7分を書き込んだ。健康保険被保険者証は、朝のうちに財布に入れた。それをいまいちど確かめて、14時50分に会社を出る。
先月24日に続いて2回目のワクチン接種は簡単に済んだ。会社に帰るなり「クーポン」の「新型コロナウイルスワクチン予防接種済証」の部分を複写する。余分は鋏で切り取り、ピンク色の蛍光ペンで四囲を囲む。それを仕事中は常に首から提げているネームプレートに、名刺と背中合わせに入れる。
夕刻、盛大に雷が鳴って、雨が強く降り始める。梅雨の始まり、である。
朝飯 ズッキーニと竹輪の天ぷら、納豆、茄子とパプリカの揚げびたし、鶏の幽庵焼き、昆布の佃煮、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、豆腐とアイスプラントの味噌汁
昼飯 弁当
晩飯 茄子と舞茸の味噌汁、トマトと刻みキャベツを添えたハムカツとメンチカツ、キンミヤ焼酎(ソーダ割り)、チョコレート、Old Parr(生)
2021.6.13(日) 雑用は大切とミヤシン先生は言った
天井に埋め込まれた空気調和機は、一定以上の時間を稼働させると、フィルターの掃除を促す警告灯が点く。もっとも頻繁に点灯するのは食堂のそれで、頻度は2ヶ月に1度くらいのものだろうか。きのうの夜、ふと気づくと、その黄色い明かりが点いていた。よって廊下のどん詰まりから食堂に脚立を運び、それに昇り、フィルターを外した。そして入浴のついでにシャワーで洗って窓辺に干した。
今朝はまたまた食堂に脚立を立て、すっかり乾いたフィルターを元に戻した。そして「ひとり暮らしの老人は、こんなとき、どうするのだろう」と考える。サービスアパートメントなら、電話1本で係が飛んでくる。しかし当然のことながら、誰もがそのようなところに住めるわけではない。
ひとり暮らしの老人は、若い友だちを作れば良い。そうすれば、いろいろと助けてもらえるだろう。老人ばかりの住む限界集落に、若い人が赴任して雑用を引き受けながら暮らす、という仕組みを持つ自治体はどこかにないか。あればそこまで行かないまでも、インターネット上の動画か何かで、ちょっと見せてもらいたい気はする。
朝飯 トマトサラダ、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、焼きおむすび、豆腐と小松菜の味噌汁
昼飯 「カルフールキッチン」の豚カツ弁当
晩飯 「コスモス」のトマトとモッツァレラチーズのサラダ、ドリア、ドライマーティニ、TIO PEPE、家に帰ってからのエクレア、Old Parr(生)
2021.6.12(土) 一戔五厘の旗
目を覚まして時刻を確かめると3時2分だった。即、起床する。この時間に起きればおとといの日記を整えて公開し、続いてきのうの日記を書き、更に本を読むことができる。
本は、おとといから花森安治の「一戔五厘の旗」を読んでいる。花森の文章は、はじめ詩か散文のように始まりながら、やがて核心へとまっしぐらに突き進んでいく。決意の強さによるものか、いささか偏執的な気質によるものか、ひとつのことを述べるにしても、使う文字数は多い。読むには骨が折れる。しかし僕にとっては未知のことがたくさん詰まっているから、すこし我慢をしながら読む。
「一戔五厘の旗」には29の文章がある。骨は折れても日にひとつずつ読めば、ひと月で読み終える。読み終えるころには、真夏が迫っているかも知れない。
午前、所用により宇都宮へ出たついでに白木屋へ寄る。この額縁屋には先月の中ごろ、ガラスの割れた額の修理、柏木弘の”UNTITLED 2008 Ⅲ”を収めるための黄袋と差箱の作成、そして隠居で使う短冊掛けを頼んであった。それらすべてを受け取り、代金を支払って、昼前に帰社する。
正午を数十分ほど過ぎたころ、食事をご希望のお客様にお声がけをいただく。隠居に連絡をすると、個室の杉の間のみ空いているという。よってそのお客様を、隠居までご案内する。今が見ごろの紫陽花は、数週間は保ってくれるだろう。
朝飯 納豆、トマトサラダ、煮奴、めかぶの酢の物、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、小松菜の味噌汁
昼飯 昆布の佃煮、なめこのたまり炊、塩鰹のふりかけ、ごぼうのたまり漬のお茶漬け
晩飯 生のトマト、稚鮎の淡味炊き、ポテトサラダ、茄子の豚三枚肉巻きソテー、玉蜀黍ごはん、豆腐となめこの味噌汁、「北雪」の「美水月純米大吟醸」(冷や)
2021.6.11(金) 梅の実の収穫
きのうは21時より前に寝に就いた。深夜にいちど目を覚ましたものの、首尾良く二度寝ができた。今朝は3時20分に目が覚めた。夜明けの空を見ようとして、すぐに起きた。天気は生憎と曇りだった。太陽は5時30分に、ようやく雲の合間からその姿を現した。「今日も暑くなれば良いな」と思う。
隠居の庭には幾本かの梅の木がある。そのうち座敷の目の前にある枝振りの良いもの、また味噌蔵の基礎に接して育った隨分と古く見えるもの、それら2本から今日は実を収穫する。その様子を見るため、午前もいまだ早いうちに隠居へ行く。
現場では長男が高所鋏で、隠居係のタカハシリツコさんは脚立に乗って、それぞれ梅の実を獲っていた。枝振りの良い方から収穫したものは、既にして大きなボウルふたつに満ちていた。長男によれば、梅の実は例年にない豊作だという。空梅雨により野菜の生育は遅れがちと聞いているけれど、梅はまた別らしい。
今日の梅の実は、いずれ「汁飯香の店 隠居うわさわ」のお膳かグラスを飾るに違いない。それは、盛夏のころになると思う。
朝飯 ウインナーソーセージとズッキーニのソテー、めかぶの酢の物、トマトとレタスとゆで玉子のサラダ、納豆、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、キャベツの味噌汁
昼飯 弁当
晩飯 蛸とレタスとブラックオリーブのサラダ、パン、茄子とズッキーニのソテーを添えた鶏のソテートマトソース、TIO PEPE、マンゴー
2021.6.10(木) 確認
朝4時28分、白い航跡により、北東から南西へ飛ぶ飛行機を認める。福島県の磐城平あたりから列島上空に入り、日光の真上を通ってそのまま行けば九州の西岸からふたたび洋上へ出ようとするその航路は、一体全体、どのような目的によるものだろう。それは民間機だろうか、あるいは自衛隊機だろうか。しかしいつまでそんなことを考えているヒマは無い。製造現場へ降りて、白衣を着る。
いつも半年分を買い溜め、冷凍庫に保管しながら使う煮干がきのう枯渇した。朝の味噌汁の出汁は、今朝より煮干から昆布によるそれへと変わった。今は、梅雨の走りに上がるという、長崎県沖の鰯を待つばかりだ。
ところで今朝の味噌汁は、昆布が持ち合わせる特有の粘性により、味噌と汁の部分が溶け合わず、不思議な見た目になった。明日はすこし作り方を変えてみよう。
来週の水曜日からは、いよいよ新宿高島屋地下1階での出張販売が始まる。終業後のミーティングでは、初日から一部の商品に品切れを発生させた2月の轍は踏まないよう、関係する各部に確認をする。
朝飯 薩摩芋とベビーコーンの天ぷら、ポテトサラダ、ウィンナーソーセージのソテー、揚げ湯波と小松菜の炊き合わせ、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、ブロッコリーの味噌汁
昼飯 しその実のたまり漬、揚げ湯波と小松菜の炊き合わせ、焼き鮭、塩鰹のふりかけのお茶漬け
晩飯 レタスとじゃがいもと3種の豆とゆで玉子のサラダ、TIO PEPE、茄子とベーコンとズッキーニとマッシュルームのスパゲティ、Chablis Billaud Simon 2015、アイスクリーム、Old Parr(生)
2021.6.9(水) 琴酒為誰携
それにしても気持ちの良い陽気だ。空気は乾き、暖かい。自転車に乗る二の腕が風を切っても、感じるのは快さのみだ。もっとも梅雨時とは思えない晴天と引き替えに、一部の作物には生育の遅れが目立つという。上澤梅太郎商店にとって重要ならっきょうも、またそこに含まれている。何とも悩ましい。
九州の宮崎は、らっきょうの大きな生産地だ。誰もが知るように、気候変動の激しい昨今は、その収穫時期を狙い澄ましたように、毎年、そのあたりを豪雨が襲う。そしてらっきょうの生産量を激減させ、価格は急騰の一途を辿るのだ。
終業後、ワイン蔵に保管した一升瓶を食堂へ運ぶ。このお酒を飲むのは19年ぶりのことかも知れない。レッテルには良寛の詩が、ある。
東山明月出
楼上正徘徊
思君君不見
琴酒為誰携
そしてその、篆書体の文字を目で追いながら、いびつな小壺に移した中味を更に猪口に注ぐ。一杯目は農耕の神に捧げるべきだろうか。今年の梅雨の穏やかなことを、祈るばかりだ。
朝飯 揚げ湯波と蕪の葉の炒り煮、納豆、菠薐草の胡麻和え、スペイン風目玉焼き、鮭の地酒粕と日光味噌漬け焼き、ごぼうのたまり漬、メシ、揚げ湯波とズッキーニの味噌汁
昼飯 焼き鮭、豚肉のそぼろ、塩鰹のふりかけ、梅干のお茶漬け
晩飯 めかぶの酢の物、ポテトサラダ、トマトとキウイのサラダ、薩摩芋とベビーコーンの天ぷら、クレソンを添えた牛肉の漬け焼き、「菊姫」の「山廃仕込吟醸」(冷や)、桜桃
2021.6.8(火) 黒い絵
店の駐車場の北側に、今年の春より蟻の巣穴がふたつできた。かなりの数が活発に出入りをしながら、時には羽虫の死骸などを運び込んでいる。放置をすれば、蟻はやがてそのちかくの木の幹に入り込み、それを枯らすかも知れない。おなじ駐車場の南側にある紅葉には、実際に被害が出ている。よって今朝は、除虫菊の成分によると説明のある蟻退治の粉末を、その巣の周辺に撒いた。
しばらくして戻ると、先ほどまで何十、何百とうごめいていた蟻は、ただの1匹も見えず、巣穴の周辺は静まりかえっていた。
害虫や雑草を駆除するたび「お前たちが生きていることにより、この世は荒れゆくばかりだ」と、人間より遥かに大きな存在に人間が駆除される、そんなことを夢想する。それは子供のころより今に至るまで続く、僕の妄想である。
「美の旅人」という画文集がある。文章は伊集院静。これを本棚から取り出し、136ページからの「愚かなる者」を読む。そしてゴヤの「わが子を喰うサトゥルヌス」に、じっと見入る。
朝飯 蓮根の梅肉和え、納豆、ズッキーニと竹輪の天ぷら、玉子焼き、揚げた茄子とパプリカ、揚げ湯波と蕪の葉の炒り煮、ごぼうのたまり漬、胡瓜のぬか漬け、メシ、揚げ湯波と胡瓜の味噌汁
昼飯 「ふじや」の冷やし味噌ラーメン
晩飯 刺身湯波、めかぶの酢の物、鶏の幽庵焼き、薩摩芋のレモン煮、胡瓜のぬか漬け、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、茄子とパプリカの揚げびたし、鰤の地酒粕と日光味噌漬け焼き、「小林酒造」の「鳳凰美田純米吟醸生酒」(冷や)、西瓜
2021.6.7(月) あたりまえ
「明後日の釣り銭の準備に手間取り」ときのうの日記に書いた。3台のキャッシュレジスターのために自分は毎日、どれほどの紙幣や硬貨を数えているのだろう。そう考えて、今朝はコンピュータに自作した「両替計算機」を操作してみた。その数は実に501枚と出た。釣り銭の準備は手間食いだ。しかし中華人民共和国などにくらべて決済手数料の高い日本では、現金でのお支払は、やはり有り難い。
消費税が3パーセントから5パーセント、5パーセントから8パーセント、そして10パーセントに上がるたび、国民や報道関係は大騒ぎをした。ところがクレジットカードや電子マネーの決済手数料については、誰も何も言わない。それは、消費者が被る経費ではないからだろう。
昼食のため自宅へ戻るときにはかならず、朝には読めない新聞を持つ。今朝の日本経済新聞の第1面には「ワクチン証明今夏に」の大きな見出しがあった。「当たり前じゃねぇか」と思う。記事の冒頭は「既に一部の政府高官らは非公式の証明書を作成し、海外に持参している。欧米などで接種履歴を聞かれるケースが増えているためだという」だ。
「ワクチン 接種証明 否定的」と試しに検索エンジンに入れてみると、僕の常識からすれば目を疑うような見解の数々が出てくる。新型コロナウイルスワクチンの接種証明書が発行されることになれば、できるだけ早く、僕はこれを手に入れるつもりである。
朝飯 ズッキーニと竹輪の天ぷら、納豆、菠薐草の胡麻和え、トマトサラダ、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、しその実のたまり漬、メシ、キャベツの味噌汁
昼飯 ざる素麺
晩飯 炒土豆絲、煮卵、冷やしトマト、水餃子、焼き餃子、キンミヤ焼酎(ソーダ割り)、マンゴーとナタデココの杏仁豆腐
2021.6.6(日) 紫陽花
日曜日は平日にくらべて張り合いの度合いが高い。週の中でもっともお客様の多い日だからだ。上澤梅太郎商店の商品別販売数の半分は「らっきょうのたまり漬」が占める。それを明日、どれだけ蔵出しするかは、前日の夕刻に包装係と話し合って決める。蔵出しされたものを蔵から店に運び、冷蔵ショーケースに陳列するのは包装係と販売係の仕事だ。
毎朝、僕は道の駅「日光街道ニコニコ本陣」へ出向き、冷蔵ショーケースを拭き、棚を拭き、商品を補充する。各々の仕事に忙しい社員には頼めないからに他ならない。道の駅から帰ると、今度は「汁飯香の店 隠居うわさわ」のお客様をご案内すべく、事務室にて待機をする。
今日の朝一番のお客様はふた組、10名様が予約をくださっていた。そのうちの4名様は2度目のご来訪である。初見の6名様も、隠居の場所はご自分でお調べになったらしく、僕の出番は無かった。庭では花菖蒲が終わり、紫陽花が咲き始めているはずだ。
閉店は17時30分でも、それから18時までの掃除中は、店は開けておく。その30分のあいだにも勿論、お客様がいらっしゃれば商売をさせていただく。
今日は18時30分よりめかぶの酢の物と焼き鮭にて晩酌をすることとしていた。しかし明後日の釣り銭の準備に手間取り、4階に戻れたのは18時50分だった。よって晩酌は飛ばして即、カレーライスにありつく。
朝飯 マカロニのクリームチーズ煮、納豆、揚げ湯波と小松菜の炊き合わせ、揚げた茄子とパプリカ、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、トマトと長芋の味噌汁
昼飯 にゅうめん
晩飯 蛸とトマトと白インゲン豆とレンズ豆のサラダ、レタスとグレープフルーツのサラダ、「マルサン葡萄酒」の「甲州百2019」、カレーライス、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、Old Parr(前割のお燗)
2021.6.5(土) 「サスガデスネ」
本日のお客様の、すべてお帰りになった頃合いを見計らって隠居へ出向く。そして床の間の室礼を確かめる。「汁飯香の店 隠居うわさわ」の花は家内が活ける。それに対して置くもの、飾るものは僕の選ぶことが多い。
その中には先ず、拾ってきたものがある。「タダで手に入って良かったですね」と言われれば「おっしゃる通り」だ。もっとも、それが落ちていそうな場所まで足を運び、更には「コレ」と感じるものが見つかるまで歩きまわる、という手間はかかる。
拾ってきたものの次は、もらったものだ。「買わずに済んで助かりましたね」と言われれば、これまた「おっしゃる通り」。ただしものをもらうとは、吉田兼好いうところの「物くるゝ友」に恵まれてはじめて成り立つ。
今朝より隠居の花は、サイトー君からもらった籠に活けてある。「カゴは気持ち悪くなるほど持ってるの。これ、隠居の床の間に似合いそうだから」と、何やら由緒のありそうな、艶やかなそれをサイトー君は昨年のある日、僕の目の前に差し出した。
サイトー君とは大昔に書いた「サイトー君のメルセデス」のサイトー君である。サイトー君のくれた籠を、僕はひと目で気に入った。「サスガデスネ」と思う。
朝飯 牛肉と牛蒡のすき焼き風、揚げ湯波と小松菜の炊き合わせ、生玉子、茹でたブロッコリー、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、オクラの味噌汁
昼飯 にゅうめん
晩飯 揚げ湯波と小松菜の炊き合わせ、生のトマト、南瓜の煮付け、肉団子鍋、芋焼酎「妻」(前割のお燗)