2020.4.5(日) ぜんまい
「汁飯香の店 隠居うわさわ」は朝食の店だ。営業日の土日月の3日間は、家内は4時30分に起きる。朝食は5時。そして5時30分には隠居へ向かう。「早寝早起きにより、お母さんは、今以上に健康になるのではないか」と、長男は言う。
それはさておき「汁飯香の店 隠居うわさわ」には、きのうに引き続いて、早くも常連様ができつつある。調理やお運びには関わらない僕も、そのようなお客様にご挨拶をするため、開店時間の8時30分に隠居へ行く。本日一番の最初のお客様は、既にして席にお着きになっていた。
隠居の庭には草花以外にも、様々な植物が育つ。今朝は、ぜんまいが数本のみ茎を伸ばしているのに気づいた。隠居の庭のぜんまいの株は、深い山中にしか見つけ得ないそれほどに大きい。
本日の隠居にはまた「自宅のベランダからノレンが見えて気になった」とおっしゃる、ご予約なしのお客様もいらっしゃった。あるいは「お店、できたんですね」と歩道を往きつつおっしゃる方を玄関までお連れし、店の案内をお渡ししたりもした。いずれも、とても有り難い。
枝垂れ桜の根元に咲いた黄色い水仙は、先日の雪に倒れたものの、今は息を吹き返して大きく花を開いている。老いて花の数を減らしたとばかり思っていた染井吉野は、その後、急につぼみを膨らまして、そろそろ満開になろうとしている。山桜の裏手の菜花は、いまだ土の下で芽吹きに備えているらしい。
朝飯 納豆、生玉子、ごぼうのたまり漬、メシ、モツ煮
昼飯 長葱のつゆで食べるうどん
晩飯 モツ煮、冷やしトマト、釜揚げうどん、麦焼酎「むぎっちょ」(お湯割り)
2020.4.4(土) ゆうだい21
「汁飯香の店 隠居うわさわ」の4回目の営業日。早くも裏を返してご予約くださったお客様がいる。そのお客様には、家内や長男からだけでなく、僕からもご挨拶をしなければならない。そう考えて、開店の15分前に隠居の柴折り戸を押す。先週の雪の記憶からだろう、3台のストーブの焚かれた屋内は、すこし暑く感じられた。
土鍋で炊き上げるごはんには、種が一般に解放されてからいまだ10年しか経ていない新しいお米「ゆうだい21」を使っている。このお米については、先月13日の日記に書いた。納入してくれているヤギサワヒロシさんの棚田は、日光の中でも水稲用の農地としては標高の高い、高百地区にある。
先週に続いてご来店くださったオーツカミエコさんは本日、何とその「ゆうだい21」の開発者であるマエダタダノブ宇都宮大学名誉教授と共にお見えになり、先生を我々にご紹介くださった。「本職は偏執狂であるべし」との考えを持つ僕に、先生は卓上の味噌汁の存在も忘れて、このお米について存分に語ってくださった。というか、僕は味噌汁の冷めることを心配して、先生のお話を一旦、止めさせていただいたかも知れない。「もうひとつ、お訊きしたいことがあった」と長男が残念がったのは、先生がお帰りになってからのことだ。
とにかく「ゆうだい21」、更に言えばこれを高地の棚田で作るヤギサワヒロシさんと長男の、ことし2月の出会いは幸運だった。明日も、土鍋は朝から休まない。庭の枝垂れ桜は、今日から3日のあいだには、いまだつぼみのままだろう。
朝飯 菠薐草のおひたし、切り昆布の炒り煮、納豆、ベーコンエッグ、ごぼうのたまり漬、メシ、豆腐と長葱の味噌汁
昼飯 バターと杏と無花果のジャムとらっきょうのたまり漬のトースト、ホットミルク
晩飯 ズッキーニと擂り胡麻の味噌汁、トマトとベビーリーフのサラダ、コロッケ、Petit Chablis Billaud Simon 2016
2020.4.3(金) 喰えない肴
「日本人は同調圧力が高い。周囲が自粛をしているから自分も自粛、そのような思考停止から、そろそろ脱け出してはいかがなものか」と、3月19日にSNSに書いた人がいる。以降の、新型コロナウイルスの感染拡大については、誰もが知る通りだ。書いた当人は現在、おなじSNSで「政府の対策は後手後手」と、今度は国に批判の矛先を向けている。
「年度末の決算に打撃を与えないよう、3月31日の証券取引が終了した直後に首相が緊急会見を開き、4月1日からの、東京の都市封鎖を宣言する。これは、ある信頼できる筋からの情報だ。即、食料や日用品の確保にかかるべし」と、3月31日の午前にウェブログに書いた人がいる。その人は自分が誤った情報を流したことを、4月2日のウェブログで謝っていた。謝るだけマシというべきか。
東京に実在する病院の名を挙げた上で、そこの「ドクターから」とする注意喚起の文章が、きのう4月2日に、僕のグループLINEのひとつに届いた。グループ内は直後より「シェアします」の嵐になった。ところでその「ドクター」とは一体全体、誰なのか。個人は特定できているのか。
7年ほど前のこと、食卓の話題が悪口、陰口ばかりになったところで「どーでもいーから飲もー」と、場の空気を一瞬で変えた人がいる。もっとも軽薄に見えた人が、実は一番の知恵者だった、という寓話は世に少なくない。
朝飯 菠薐草のおひたし、納豆、蓮根のきんぴら、切り昆布の炒り煮、冷や奴、生のトマト、ごぼうのたまり漬、メシ、浅蜊の味噌汁
昼飯 バターと杏と無花果のジャムとらっきょうのたまり漬のトースト、ホットミルク
晩飯 レタスとチーズのサラダ、トマトとアボカドのサラダ、にんにくのスパゲティを添えた鶏のクリーム煮、Veuve Clicquot Brut、チーズケーキ、Old Parr(生)
2020.4.2(木) 12本
玉村豊男の「料理の四面体」は、ところにより難解な部分がある。しかし世界中の美味いものが、その調理法も含めて次から次へと紹介されるから、気楽に楽しむこともできる。登場する料理の中で、もっとも僕の食欲を刺激するのは「アルジェリア式羊肉シチュー」だ。
これをきのう、羊の肩ロース1,440グラムを用いて、長男に作ってもらった。「料理の四面体」では香辛料に「真っ赤な唐辛子の粉」が使われる。ウチには3歳児のいるところから、それは避けられた。目の前に運ばれた肉とじゃがいもからは、クミンが香った。用意をしたのは赤ワインだった。しかしクミンであれば、むしろ白酒が似合う。
じゃがいもと1,440グラムの肉は、おとな4人と幼児ひとりでは食べきれない。「アルジェリア式羊肉シチュー」は、昨夜に続いて今夜も食卓に上った。今日こそはワインではなく白酒をコップに注いだ。羊の脂を透明の蒸留酒で流す気分には、格別のものがある。
「飲むと馬鹿になる」と言う人もいるこの中国の酒を、僕は2016年の3月に12本、買った。そして今夜は残った2本のうち1本の栓をひねった。4年で10本なら年に平均して2.5本。次もまた12本を買うかどうかは分からない。
朝飯 切り昆布の炒り煮、納豆、菠薐草のおひたし、ハムエッグ、ごぼうのたまり漬、メシ、キャベツの味噌汁
昼飯 バターと杏と無花果のジャムとらっきょうのたまり漬のトースト、コーヒー
晩飯 春雨サラダ、ブロッコリーのにんにく炒めを添えたアルジェリア式羊肉シチュー、「紅星」の「二鍋頭酒」(生)
2020.4.1(水) 花粉
子供のころは、アトピー性皮膚炎に苦しんだ。そのときの僕に、苦しんでいるという意識はなかった。しかし今から思い返してみれば、なかなかに悲惨な状態だった。当時、かかりつけの医師には「大人になったら治る」と言われた。つまり「今は治せない」ということだ。それから半世紀以上を経た現在でも、人知はアトピー性皮膚炎を制圧できていないのではないか。
僕はまた、子供のころは走ると呼吸が苦しくなった。人はおしなべて、走れば気管支が苦しくなるものと思っていた。しかしそれは運動性の喘息と、後に教えられた。
そんな僕でも不思議なことに、花粉はほとんど感じない。春に限り、10日に1度ほど、目薬の差したくなる朝がある。せいぜいそれくらいのところで、マスクの必要もない。
花粉が盛んに飛ぶ今ごろは、テレビの天気予報は花粉の情報を欠かさず伴っていた。ところが今年はその、花粉についての知らせが少ないような気がする。四六時中の「コロナ」に押しのけられて、気づかないだけなのだろうか。
朝飯 大根おろしを添えた厚揚げ豆腐の網焼き、鮭の昆布巻き、菠薐草の胡麻和え、グラタンの玉子とじ、ごぼうのたまり漬、メシ、長葱の味噌汁
昼飯 メンチカツドッグ、コーヒー
晩飯 ベビーリーフと人参と甘夏のサラダ、ブロッコリーと根菜類のスープ、アルジェリア式羊肉シチュー、Cono Sur MALBEC 2018、プリン、Old Parr(生)
2020.3.31(火) 隠居の桜
食堂の、電気湯沸かし器を置いた左手には、南西に向いた窓がある。夜の明けてくる気配を感じると、僕はすぐに、その窓のカーテンを巻き上げる。あたりが明るくなれば、正面に隠居が見える。その庭の3本の桜のうち、もっとも高いところまで枝を伸ばした山桜は、既にして八分咲きになっただろうか。東の角に育った染井吉野は、三分咲きとも思えるし、あるいは老いて、花の数を減じているのかも知れない。しばらくしたら、その真下に行って、観察をしてみることにしよう。
味噌蔵に阻まれて望めない枝垂れ桜は、紅いつぼみがようやくほどけ加減になってきた。3本のうちこれがもっとも長く咲き続けることを考えれば、この週末から来月のなかばころまでは、愉しむことができるはずだ。
先日、長男の茹でたスパゲティを食べた。業務スーパーで手に入れたトルコ産とのことだった。よって僕も本日、そのスーパーマーケットに出かけてみた。棚にあったのはイタリア産だった。それにしても5キロで939円とは、想像を絶する安さだ。これで美味ければ、反則という他はない。
夕刻、そのスパゲティを米と共に箱に収めて、甘木庵に住む次男へ向けて送る。しばらくしたら味の具合について、訊いてみようと思う。
朝飯 大根おろしを添えた厚揚げ豆腐の網焼き、納豆、キャベツとハムのソテー、ひじきとパプリカの炊き物、ごぼうのたまり漬、なすのたまり漬の辛子和え、メシ、キャベツとタラの芽の味噌汁
昼飯 長葱のつゆで食べるざるうどん
晩飯 チーズの「日光味噌梅太郎白味噌」漬け、TIO PEPE、じゃがいもとマッシュルームのグラタン、パテ、茹でたグリーンアスパラガス、鶏笹身肉のチーズはさみ揚げ、Petit Chablis Billaud Simon 2016、プリン、Old Parr(生)
2020.3.30(月) 黄身しぐれ
きのうの雪が、いつから降り始めたものかは知らない。しかし開店準備を取りかかるころには、すでにして水気を多く含む、雪よりはミゾレにちかいものに変わっていた。ミゾレならやがて雨になり、だから雪かきの必要もないのではないか、とも思われた。しかしお客様の足元は、いかにも良くない。そう考えて、販売係のハセガワタツヤ君とササキユータ君には雪かきを頼んだ。
その、雪をかいたところが今朝は見事に乾いている。今日のお客様には、それほどの不便はおかけしないで済む。やはり、雪はかいておいて良かった。
昼に所用があって、90分と少々を留守にする。帰ってスーツを仕事着に着替え、手を洗ってうがいをする。そして蔵の中を抜けて「汁飯香の店 隠居うわさわ」へ顔を出すと、本日最後のお客様に間に合った。お客様は和室の専門職でいらっしゃり、隠居の造作についても、いろいろとうかがうことができた。きのう雪に阻まれてご予約を取り消されたお客様が、翌日の今日に早速ご来店くださったことも嬉しかった。
「汁飯香の店 隠居うわさわ」は、明日から4日間の休みに入る。よって個室の杉の間に飾った花は、花瓶ごと抱えて店に移す。
朝飯 生のトマト、目玉焼き、納豆、茗荷の酢漬け、焼き葱の「日光味噌のたまり浅漬けの素・朝露」漬け、メシ、万能葱の味噌汁
昼飯 バターと杏と無花果のジャムとらっきょうのたまり漬のトースト、ホットミルク
晩飯 鮭の昆布巻き、菠薐草と榎茸のおひたし、牛タンの塩焼き、じゃこ、里芋と「しいたけのたまり炊」の炊き合わせ、鰆の「日光味噌梅太郎白味噌」漬け焼き、胡瓜のぬか漬け、茗荷の酢漬け、「飛良泉本舗」の「山廃純米吟醸HAKUCHO」(冷や)、黄身しぐれ、Old Parr(生)
2020.3.29(日) とても暖かい
3時台に目を覚ます。日光地方に大雪注意報の出たことを、iPhoneに浮かび上がったニュースが伝えている。起きて窓際へ歩き、カーテンをずらして外を見る。水銀灯に照らされて、雪が静かに降り始めている。日光でも我が今市地区に限っては、それほど積もらないような気もする。
本日の朝食は4時55分。その内容は「戦闘食」とでも呼べそうな簡単なものだった。家内は5時28分に隠居へと去った。おなじ時間に僕は製造現場へ降りようとして、裏玄関の扉を開ける。不意に長男が外から戻ってくる。そして雪かきに取りかかるべく、ふたたび外へと出ていった。
「汁飯香の店 隠居うわさわ」の、雪の払われた石を踏みながら、朝からお客様がお見えになる。とても有り難い。今日のお客様は、ある意味で幸運でいらっしゃったかも知れない。雪に桜の景色は、そうそう愛でられるものではないからだ。于武陵の「勧酒」の「花発多風雨 人生足別離」に井伏鱒二は「ハナニアラシノタトヘモアルゾ サヨナラダケガ人生ダ」の訳をつけた。中国に桜があれば、詩人たちはこぞってこの花を謳ったにちがいない。
控えの間に、お客様のさんざめきが聞こえてくる。きのうの日記にも書いたことだが、何とも嬉しい気持ちになる。今朝にご予約をくださった若い女性のお二人は、奥の杉の間に落ちつかれた。僕はほどのよいところで戸を引き、時間を気にせずゆっくりしてくださるよう、お伝えをする。
外は雪でも、築150年の伝統家屋の内側は、とても暖かい。
……
「汁飯香の店 隠居うわさわ」は、築150年の伝統家屋で朝食をお召し上がりいただくお店です。営業日は毎週(土)(日)(月)の3日間、営業時間は朝8時30分から14時、オーダーストップは12時30分です。
ごはんは、日光の棚田で収穫されるお米「ゆうだい21」を、土鍋で炊き上げます。吸水に40分を要しますので、ご予約をいただければ幸いです。なお一汁五菜膳につきましては、前日までのご予約を、お願いしています。
電話番号は0288-25-5844(日光ごはん良し)です。営業日以外には、上澤梅太郎商店(0288-21-0002)でも、ご予約を承ります。
朝飯 生玉子、焼き葱の「日光味噌のたまり浅漬けの素・朝露」漬け、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、メシ、椎茸と筍とレタスの味噌汁
昼飯 バターと杏と無花果のジャムとらっきょうのたまり漬のトースト、紅茶
晩飯 根菜類と茸のスープ、キャロットグラッセと粉ふきいもを添えた鯛のバター焼き、Veuve Olivier & Fils Carte d’Or、クッキー、Old Parr(生)
2020.3.28(土) 汁飯香の店 隠居うわさわ
きのうの夜、風呂上がりに水を何杯も飲みながら、うたた寝をした。気づくと家内の姿が見えない。家内が僕より先に寝るなどは、かつて無かったことだ。
今朝の僕の起床時間は、理想の3時台。家内は4時45分に起きてきて、朝食の準備にかかった。これまた異例の早さだ。僕は製造現場へ降り、戻ったところで朝食。どんなに忙しくても「メシ」を欠かすわけにはいかない。「メシ」を欠かせば戦はおろか、何もできないと心得るべきだ。家内は5時49分に食堂を出て隠居へと向かった。
8時より朝礼。隠居の調理を担当する家内、それを補佐する長男はもちろんのこと、今日明日は僕も、閉店時間の14時までは、ほぼ隠居に詰めることを社員に伝える。
「汁飯香の店 隠居うわさわ」の、お客様のための部屋は庭に面した6畳と8畳、そして奥の杉の間。席数は最大で20。ここに今日は、21名様のご予約をいただいている。おひとり目のお客様は、はじめ店の駐車場へクルマをお着けになったため、隠居に至近の駐車場をご案内する。おふたり目のお客様は、最初のお客様のお連れ様。おなじ時間に更に3名様がいらっしゃる。
僕はご挨拶の後は、玄関と杉の間のあいだの控えの間で静かにしている。これまでこなしてきた練習の通りに立ち働いているのは、家内、長男、そしてタカハシリツコさんの3名だ。控えの間に、お客様の歓談をなさる様子が伝わってきて、僕は穏やかな気持ちになる。
午前にひとつ、昼にひとつの、新聞社による取材の対応は僕がさせていただく。その最中に来客を伝える電話が事務係のツブクユキさんからあって、店に急行したりもする。午後に入ったところで雨が降り出す。おなじく事務係のカワタユキさんに連絡をして、まとまった数の傘を持ってきてもらう。
最後の4名様には玄関で傘をお渡しし、その傘を回収しながら駐車場までお見送りする。時刻は14時。今日は良い仕事ができた。
以降は、生花をいただきながらいまだお礼をお伝えできていなかった方々に、取りあえずは電話で謝意をお伝えする。また道の駅「日光街道ニコニコ本陣」に、商品の減り具合を調べに行く。夕刻にふたたび隠居へ行き、生花のお礼に漏れのないことを確認する。
明日の空模様は、雪と伝えられている。明日のお客様には、雪に桜の景色をお楽しみいただけるだろう。
朝飯 生のトマト、菠薐草のおひたし、ハムエッグ、納豆、塩鮭、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、メシ、揚げ湯波とキャベツの味噌汁
昼飯 塩鮭、梅干し、塩昆布、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、唐辛子の味噌炒りによるお茶漬け
晩飯 「コスモス」のトマトとモッツァレラチーズのサラダ、カツレツ、ドライマーティニ、TIO PEPE、家に帰ってからのバームクーヘン、Old Parr(生)
2020.3.27(金) 初日の準備
朝食に特化した「汁飯香の店 隠居うわさわ」の、明日は開業日だ。きのうはお取引様から、胡蝶蘭や花の盛り籠が7基も届けられた。それを今朝は、長男とタカハシリツコさんが隠居に運んだ。今朝も、胡蝶蘭と盛り籠が各ひとつずつ届けられた。それは僕と長男で運んだ。
所用にて、昼前より県南に出かける。13時30分に日光宇都宮道路の今市I.C.を降りて、JR日光線のトンネルをくぐる。そこから上がって赤信号で停まると、タカハシさんは隠居の外で歩道の雑草を抜いていた。
17時を過ぎて、花の「花一」がワゴン車で花を届けに来る。これもまた、お取引様からのものだ。数は胡蝶蘭が5基に盛り籠が2基。ワゴン車の女性ふたりを隠居に案内し、以降は長男とタカハシさんに任せる。
終業後に本日出社の社員たちと小さな集まりを持ち、明日の「汁飯香の店 いんきょ上澤」について話す。それを済ませて後はふたたび隠居へ行く。
隠居の床の間にはこれまで何年ものあいだ、今井アレクサンドルによるガーベラの絵を掛けていた。2011年3月の東日本大震災から立ち上がろうとしているときに、今井が僕を励ますため、くれたものだ。しかし現在、それほど広くない隠居の座敷は花で満たされている。よってこれらのあるうちは、床の間は地味にしておこうと家内は言う。
母屋から持ち来たのは、季節を問わない双幅の掛け軸だ。床の間には大抵、一幅でも双幅でも掛けられるよう、3つの鉤手が天井ちかくに取り付けられている。長男が脚立に上って、その幅を調整しようとする。ここで初めて、それらが3つとも錆び付いて動かないことを知る。
双幅の掛け軸は結局のところ、大きく間を空けて掛けざるを得なかった。当座はそれらのあいだに花器を置いて、凌ぐつもりである。
朝飯 紅白なます、塩鮭、納豆、大根おろしを添えた厚揚げ豆腐の網焼き、胡麻豆腐、胡瓜のぬか漬け、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、メシ、大根と大根の葉と椎茸の味噌汁
昼飯 豚三枚肉と切り昆布の炒り煮、塩鮭、塩昆布、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、梅干しによるお茶漬け
晩飯 「食堂ニジコ」の酒肴其の一、其の二、其の三、其の四、ソース焼きそば、3種の日本酒(冷や)