2023.3.17(金) そのためにのみ
明日は彼岸の入り。コンピュータの年間「すべきこと」の3月18日には「花9対新旧墓にお供え」の文字がある。今年の当日は土曜日。しかし週末は店が忙しい。家内には「汁飯香の店 隠居うわさわ」の仕事がある。そういう次第にて墓参りは17日に行うこととして、花はきのう、家内がJR通りの「花一」に予約をした。
記録には「花9対」とあるものの、おととし亡くなった叔父の墓は、そこに含まれているだろうか。それがあやふやだったため、今回は10対を用意した。そして昼前に家内と如来寺へ向かう。
歴代の古いお墓の花立ては、昨年の秋の彼岸を過ぎたところですべて洗い、伏せておいた。その底の螺旋を土台にはめ込み、水を満たす。そこに花、そして線香を供える。そこから新しいお墓へ回っておなじことをし、更に叔父と叔母の名の刻まれたお墓にもおなじことをする。花は果たして記録にあった9対で間に合った。「すべきこと」の備考欄には、そのことをしっかり残すこととしよう。
昼食後、きのう楽天から届いた封筒を開ける。中には数日前に請求した、新しいプライオリティパスが入っていた。コロナ禍を過ごすうち期限の切れたそれを更新したのだ。この黒いカードを持ってさえいれば、世界中1,200ヶ所以上の空港でラウンジに入れる。
更新をしながら、しかし僕は、このカードは年にせいぜい1度くらいしか使わない。その理由を挙げれば以下になる。
1.もっとも多く利用する羽田空港には、このパスに対応したラウンジが無い。
2.もっとも多く利用するスワンナプーム空港での乗り換え時間は、ラウンジを使うほど長くない。
3.ラウンジで提供される食べ物や飲物には興味が無い。
4.大抵が一人旅であれば、ラウンジのソファで寝入って飛行機に乗り遅れることが怖い。
なぜそれでもこのカードを持つかといえば、たまにシャワーを借りる、そのためにのみ、これを持つのだ。
朝飯 しもつかり、蓮根とコンニャクと鶏の炊き合わせ、納豆、日光みそ「ひしお」の肉味噌、菠薐草とウインナーソーセージのソテーを添えた目玉焼き、白菜漬け、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、椎茸と長葱の味噌汁
昼飯 ブルーベリージャムのトースト、ホットミルク
晩飯 ジーマミー豆腐、納豆、しもつかり、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、トマトと刻みキャベツとブロッコリーを添えたコロッケとメンチカツ、麦焼酎「こいむぎやわらか」(お湯割り)
2023.3.16(木) 見ていないところで入る
目を覚ましてひと息を入れてから時刻を確かめる。iPhoneのディスプレイには「3:47」の数字が太い白文字で見えている。ためらうことなく起床し、服を着替え、洗面所を経由して食堂に出る。こちらの時計は3時52分を指していた。
朝に早く起きる理由の随一は、静かな時間を過ごすところにある。第2は、意味はおなじかも知れないけれど、自分だけの時間の確保。第3は、夜から朝になるまでの東の空を眺めること。夏が近づくけば、鳥の声も聞こえてくる。
南の国では、鳥の声はいつも聞こえる。タイのそれはホーウィ、ホーウィと啼く。その声が首都から千数百キロ北、千数百キロ東、千数百キロ南では、それぞれすこし異なってくる。それもまた面白い。
11時前に長男、モモ君、先月14日に産まれたカコ、家内、僕との5人で瀧尾神社へ行く。そしてカコのお宮参りをする。僕の発する言葉は「素晴らしいなー」のみである。
夜は自分で肴を整えて、焼酎のお湯割りを飲む。ワールドベースボールクラシックは予選を終えて、今日のイタリア戦からはトーナメント戦になる。試合は先攻のイタリアが巧みさを見せて3回の表まで膠着。その裏に日本代表は四球、バント、ショートゴロと繋げてようやく1点を先制。しかしこれまでの中国戦、韓国戦、チェコスロバキア戦とは、どうも様子が違う。
サッカーでも野球でも、点は概ね僕の見ていないところで入る。先月から仏壇に供えたままのチョコレートを食後の甘味にすべく席を立つ。そして数歩を歩いたところでテレビから歓声が上がる。振り向くと、6番打者の岡本和真がランナーふたりを置いてホームランを打っていた。
途中で入浴し、ふたたびテレビの前に戻る。それにしても今日はひとつのイニングが長い。そのうち家内が会合から戻ってくる。7回の裏に入ったところでテレビに見切りをつける。「えっ、寝るの」と家内は驚くも、今朝の起床は3時台である。寝室の戸を閉めた途端「吉田、ホームラン」と家内の声が聞こえる。
朝飯 しもつかり、納豆、蓮根とコンニャクと鶏の炊き合わせ、ホウレンソウのソテーを添えたしらすのオムレツ、胡瓜と蕪のぬか漬け、白菜漬け、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、メシ、長葱の味噌汁
昼飯 ブルーベリージャムのトースト、ホットミルク
晩飯 めかぶの酢の物、しもつかり、白菜漬け、鮭の粕漬け、赤飯、麦焼酎「こいむぎやわらか」(お湯割り)
2023.3.15(水) 第3水曜日
2000年5月12日より始めた「ほぼ年中無休」の体制を、今年の1月からは「第3水曜日定休」と改めた。その休みの日には、外には「社内メンテナンスのため」と看板を出す。「メンテナンス」は誤りではないものの、同時にすべての社員が出社をして話し合いや摺り合わせをする。今日のそれは隠居にて昼に完了した。
午後は、販売係を除いては通常の仕事に就く。販売係に限っては店の一角に集まって、これから半年先までのことについて、意見を出し合う。16時を過ぎて後は、それまで降ろしていたシャッターを上げて外光を入れ、什器の配置換えなどを検討する。
その最中に僕だけ抜けて道の駅「日光街道ニコニコ本陣」の様子を見に行く。そこで、一部の商品は売り切れ、主要な商品にも売り切れ間近なもののあることを知る。即、会社に戻って包装係、製造係に用意を頼む。15分後、通い箱に収められたそれらをホンダフィットに積み、売場を充実させる。
売り切れ、または売り切れ寸前まで商品を減らした要因はひとえに、上澤梅太郎商店で商品が買えなかったことによる、来月の休み前には重々気をつけることとして、それをカレンダーに記入する。
朝飯 キャベツとセロリのたまり浅漬け、しもつかり、納豆、胡瓜と蕪のぬか漬け、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、日光みそ「ひしお」の肉味噌、メシ、白菜の味噌汁
昼飯 オレンジママレードのトースト、ホットミルク
晩飯 春雨サラダ、蒸し焼売、焼き餃子、白菜キムチ、麦焼酎「こいむぎやわらか」(お湯割り)、杏仁豆腐
2023.3.14(火) 東京の東側
いきなり発生した用事により東京へ行くことになった。はじめは下今市11時34分発の上りを使うこととしていたものの、今日は5名の社員との面談が予定されていたことを長男に知らされた。その時間割を見れば、5人目とのそれは11時30分からとなっている。
社員との面談は、以前は時間を制限せずに行ってきた。その融通無碍さが徒となり、また他の業務も重なって、年に2度の面談をすべての社員と交わす、ということが「コロナ以降」はできずにいた。よって今回からは、各自の持ち時間を15分と決めた経緯があった。
いちど決めた仕事を個人の都合で変更することは、やむを得ない場合を除いてはしたくない。上りは2本おくらせて13時04分のそれを予約した。
住所は上野、実際には秋葉原の至近というあたりで用事はすぐに済んだ。そこで末広町から銀座線で銀座へ至る。地下鉄の構内から和光の地階へ入り、エレベータで6階へ直行する。そこでは今月の21日まで、鍋島徳恭による写真展「二代目中村吉右衛門」が開かれているのだ。
吉右衛門は姿の良い立役だった。華やかなのは「一條大蔵譚」の大蔵卿。粋の極みは濡髪長五郎や「夏祭浪花鑑」の団七九郎兵衛。照明を絞った会場には「菅原伝授手習鑑」の松王丸が楽屋から舞台の袖まで進みゆく動画も流れていた。
東京の東側は鉄道の便が良い。日比谷線で北千住に直行して飲酒活動。22時前に家に戻る。
朝飯 菠薐草のスクランブルドエッグ、納豆、蓮根とコンニャクと鶏の炊き合わせ、しもつかり、胡瓜の蕪のぬか漬け、白菜漬け、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、メシ、蕗のとうの天ぷらの味噌汁
昼飯 「セブンイレブン」のおむすび
晩飯 「加賀屋北千住店」のあれや、これや、それや、チューハイ
2023.3.13(月) 倉庫の探索
きのうは4階にあるライティングビューローの中味をすべて取り出し、段ボール箱に収めた。そして今日は長男とふたりで倉庫に入り、丈は低くても幅は広い戸棚の中味を取り出すことを始めた。こちらもまた、その本体をほかの用途に供するためだ。
戸棚の左側には棚、そして右側には6本の引き出しがあった。その引き出しを片端から開き、中味を取り出し、あらかじめ用意したプラスティックの箱に移していく。
こちらに収められていたのは英国製のライターやパイプではなかった。古いものは明治のはじめ、新しいものでも大正期の書類だった。見るもの見るものが珍しく、ところどころにおいては内容を確かめつつ作業を進めていたが、時間ばかりが経つ。途中からはとにかくモノを移すことに専念をした。
長男との予定が合えば、明日の午前は、今度は左側の棚の中味を整理しよう。更には他の什器にも、整頓の対象として挙げられているものがある。来月のなかばまでには片を付けたいと考えている。
朝飯 しもつかり、白菜漬け、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、ベーコンと菠薐草の味噌汁
昼飯 トースト、ホットミルク
晩飯 「フライングガーデン」のマッシュルームのサラダ、デミグラスソースのハンバーグステーキ、ブロッコリーのオーブン焼き、カラフの赤ワイン
2023.3.12(日) 使わずとも捨てられず
廊下の北側の突き当たりは4階の中ではもっとも気温が低い。そこにはむかしの小学校の2人用の机ほどの大きさのテーブルがあり、10号くらいだろうか、オレンジ色の油彩画が立てかけられている。そのテーブルの上や下に、良くないことではあるけれど、ここ数ヶ月ほどは飲みさしのワインや、いまだ食べる余地のある鍋などを置いてきた。温度の低さを便利に使ってきた、というわけだ。そこから今朝はおとといのキムチ鍋の残りを台所へ持ち来て、それを味噌汁にした。これを美味いと感じるのだから、僕も安上がりである。
このところは晴れの天気が続き、朝の食卓に日が差す。それが僕を気分良くさせる。「キリストが生まれる遙か以前より、クリスマスは冬至として祝われてきた」は、良く分かる説だ。
出社時の社員の服装が数日前よりガラリと変わった。冬のそれから春のそれに変わったのだ。三寒四温は去ったのろうか。そしてたまさかの、ではなく本当の春が来たのだろうか。ただし今年の花粉はいかにもひどい。「花粉症はありますか」と訊かれるたび「ほとんど無いですね」と答える僕も、今年はそれ用の目薬を日に数度は差している。
午後、今は4階にある、そして秋より店に置く予定のライティングビューローの、中味をすべて取り出す。ダンヒルの新品のライター、おなじくダンヒルの新品のパイプが出てくる。それらの姿はいかにも良いけれど、使う人は永遠に現れないに違いない。
朝飯 白菜漬け、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、キムチ鍋の残りによる味噌汁
昼飯 トースト、ホットミルク
晩飯 チーズ、TIO PEPE、スパゲティナポリタン、Chablis Billaud Simon 2018、アップルパイ
2023.3.11(土) 夜と朝のあいだ
目を覚ましたのは1時台も終わるころ。今朝に限ってはためらう気持ちはない、即、起床する。台所に出て湯沸かしポットに水を入れ、電源を入れる。そのまま階下へ降りて、外の廃水槽を見に行く。
きのうの午後おそく、この水槽の水位が異常に上がっていることに、製造係のイトーカズナリ君が気づいた。よって出入りの設備屋カトー興業のカトーさんを呼び、原因を調べてもらった。排水ポンプはやがて正常に動き始めた。「明日また見てみます」とカトーさんは言って帰った。午前2時の水位は地面から1メートルと少々。「これなら大丈夫」と4階へ戻り、コンピュータを開く。
やはりきのう、しかしこちらは夜、風呂から上がって食堂へ行くと「日本が2点、返したんだよ」と家内がWBCの日本対韓国戦をテレビで観ながら教えてくれた。僕は「あっ、そー」と答えて水を飲み、寝室へ引き上げた。そこに家内の歓声が聞こえてきた。多分、日本代表にヒットが出たのだろう。ワールドベースボールクラシックに興味がないわけではない。しかし僕の、夕食後の最優先は寝ることにある。そのお陰で今朝は2時前に起きられたのだ。夜と朝のあいだの時間には、何にも代えがたいものがある。
やがて夜が明けてくる。その光景をカメラに納め、日記の最上部に置くこともしばしばではあるけれど、今朝は食堂の丸テーブルに着いたまま、あれこれ調べものをする。
午前、きのうに引き続いて、廃水槽の異常水位についてカトーさんに調べてもらう。これまた出入りのコジマ電気のコジマさんにも来てもらう。そしてようよう異常の原因を突き止める。修理は来週の月曜日に開始と決まった。
朝飯 牛肉と椎茸のすき焼き風、冷や奴、納豆、昆布の佃煮、白菜漬け、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、白菜とベーコンの味噌汁
昼飯 「日光鱒鮨本舗」の「舞茸とゆばの炊き込みご飯」、白菜漬け
晩飯 生のトマト、菠薐草のナムル、白菜漬け、「食堂ニジコ」から持ち帰った「海老春雨丼の頭」、同「豆腐と海老の塩煮」、麦焼酎「こいむぎやわらか」(お湯割り)、アップルパイ、Old Parr(生)
2023.3.10(金) 環境の整備
製造現場のうちもっとも広い面積を持つ大屋根の下では現在、ボイラーから湯沸かし缶と殺菌槽への、蒸気を送る鉄管の引き直しが行われている。一方、隠居の敷地に建つ冷蔵室では、すべての室内機、すべての室外機の交換が行われている。現在、これらに関わっている人たちは、ことによると出勤している社員より多いかも知れない。
工事の最中にあっても、製造係と包装係は工場内で場所を移し、粛々と仕事を続けている。マキシマトモカズ君とイトーカズナリ君は、今日は「たまり」のタンクを高圧洗浄機で洗った。タカハシアキヒコ君は、昼に配達から戻ると通常の業務に復帰した。
新しい蒸気管は今週中に引き終え、業者による掃除、更に社員による掃除が行われる。冷蔵室の室内機と室外機の交換は来週の火曜日に完了の予定。室温を5度まで下げたら、他の冷蔵室に避難させていた諸々を、新しい室内機の下に戻すことになっている。こちらの仕事は来週末には終えるだろう。
「いま食べごろ」の品を間断なく、遅滞、渋滞させることなくお客様にお届けするには環境の整備は欠かせない。お彼岸の待ち遠しい、今日このごろである。
朝飯 牛蒡と人参のきんぴら、トマトのスクランブルドエッグ、納豆、油揚げと小松菜の炊き合わせ、白菜漬け、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、豆腐と長葱の味噌汁
昼飯 トースト、ホットミルク
晩飯 白菜漬け、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、昆布の佃煮、めかぶの酢の物、キムチ鍋、麦焼酎「こいむぎやわらか」(お湯割り)、アップルパイ、TIO PEPE
2023.3.9(木) コロモガヘ
きのうの東京の最高気温は20度。大阪のそれは23度。列島の各地は東北から北海道も含めて季節はずれの暖かさになっている。もはやユニクロの「超極暖」など着ている場合ではない。
仕事着に限れば、僕は年間で、以下8回の衣替えをしてきた。
春:長袖ヒートテックシャツ+長袖フリースセーター
晩春:長袖ヒートテックシャツ+長袖Tシャツ
初夏:半袖ポロシャツ+長袖Tシャツ
盛夏:半袖ポロシャツ
初秋:半袖ポロシャツ+長袖Tシャツ
秋:長袖ヒートテックシャツ+長袖Tシャツ
初冬:長袖ヒートテックシャツ+長袖フリースセーター
真冬:長袖ヒートテックシャツ+長袖フリースセーター+ダウンベスト
「してきた」と過去形なのは、襟の高い長袖のヒートテックシャツをユニクロが作らなくなってしまったからだ。現在あるのは7分袖のみ。しかし僕はその袖丈を好まない。ユニクロの、襟の高い防寒用の下着で長袖は、いまや「超極暖」しかないのだ。しかし列島は既にして春に突入している。
というわけで「超極暖」はきのうの夜に衣裳ケースへしまった。そして今朝からはユニクロの、もう廃番なのだろうか、木綿を起毛させた襟高のシャツを身につけた。それに重ねたフリースのセーターは、いくらもしないうち木綿の長袖Tシャツに着替えることになるだろう。「はやく半袖ポロシャツの季節になってくれねぇかな」と心底、思う。
朝飯 油揚げと小松菜の炊き合わせ、牛蒡と人参のきんぴら、しもつかり、温泉玉子、納豆、白菜漬け、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、メシ、白菜の味噌汁
昼飯 「久埜」の草餅
晩飯 チーズ、TIO PEPE、生ハムのムースを添えたパン、トマトサラダ、牡蠣とベーコンとマッシュルームのスパゲティ、Chablis Billaud Simon 2018
2023.3.8(水) 伊豆治療紀行(14回目の2日目)
「腰が悪いなぁ、これじゃぁギックリ腰になっちゃうよ」と「伊豆高原痛みの専門整体院」のワタナベ先生は治療台にうつぶせた僕の、背中から腰の様子を一瞥するなり言った。実際には、鼻が邪魔にならないよう空間のある台に顔を押しつけているから「一瞥」がどうかは分からない。しかし肉屋にしろ魚屋にしろ、あるいは僕のような味噌屋にしろ、本職というものは大抵、見ただけで対象の状態を当てるものだ。
9,000ボルトの電子ペンを要所要所に突き立てつつ「腰が一番、痛いでしょ」と先生が問う。「いや、膝がやっぱり一番、痛いですよ」と、僕はうつぶせたまま答える。電子ペンの痛みは肉のないところ、たとえば靱帯などに打ち込まれるときがもっとも強いのだ。
施術後はきのうとおなじく、池入口の交差点から城ヶ崎海岸駅までの、1,100メートルの急坂を徒歩で下る。伊豆急行を熱海で東海道新幹線に乗り換え、東京駅で山手線に乗り換え、有楽町で降りる。
僕は人見知りもするが、物怖じもする。尻の割れ目が見えるほどズボンを落とした若い人が、黒服に白手袋の門番の立つ銀座のブランドショップに入っていく様子を見たりすると「度胸があるなぁ」と、心底ビックリする。
そういう性格から、銀座の和光には今年の1月12日、齢66にしてはじめて足を踏み入れた。そして昨年の秋より動かなくなったセイコーの時計を治しに出した。修理完了の連絡ははやくからもらっていたものの、東京を通過した先月の14日には、それを受け取る時間が作れなかった。
高価でもないソーラー電波時計はムーブメントを新品に交換され、磨き抜かれてプラスティック袋に収められていた。修理費用は18,150円だった。これをショルダーバッグに収めて後は4階へ上がり、スカーフやセーターを見る。中には気に入ったものもある。しかし僕は、高級な品は買えても使えない。それが汚れたり傷ついたりすることを恐れて死蔵してしまうのだ。「オレにはやはり、リトアニアの麻布とかユニクロのセーターが一番だわな」と考えつつ1階へ降り、外へ出る。
次男が待ち合わせの時間に遅れることはない。ふたりで夕食を摂りつつ近況を伝え合う。
浅草から乗った下り特急スペーシアが新鹿沼を過ぎるあたりから目が痒くなってくる。そして22時前に帰宅を果たす。
朝飯 「東急ハーヴェストクラブ伊東」の朝のブッフェ
昼飯 「小諸そば」の春告魚天そば、ライス
晩飯 「鳥ぎん本店」の焼き鳥あれこれ、牡蠣釜飯、鳥スープ、お新香、ハーフ&ハーフ、「沢の鶴」の「特撰純米酒」(燗)