2025.8.31(日) マイカオチャイ
早朝、きのうおとといに続いて家内と共に「汁飯香の店 隠居うわさわ」へ赴き、おととい床に掛けた柏木弘の”UNTITLED 08-III”を、竹内栖鳳の「晩秋」に戻す。残暑のいまなぜ「晩秋」なのかについては、今月23日の日記に書いた通り。
午前の店では、新たな本を長男が書籍部の棚に並べていく。本はお盆の繁忙に備えて早くから注文していたものだったが、届いたのは今朝のことだった。お客様のほとんどはクルマでご来店になる。だから重さや大きさは負担にならないと当方は考えるものの、文庫本の方が売れ行きは良い。自分に照らしてみれば、普段はお客様とおなじく小さなものを好む。しかし旅先に持参して心が躍るのは、やはり分厚い単行本である。
終業後、本日の売上げをコンピュータに入力したところで「まじー、変だなぁ」と独りごとが漏れる。日曜日の数字としては、お盆休みの最中の17日よりも、8月最終日である今日のそれの方が高いのだ。しかもクレジットカードやQR決済に対して現金の比率が飛び抜けて高い。その要因を考えても解析は不能。これをタイ語ではマイカオチャイ。英語で何と言うかは分からない。
朝飯 茄子の揚げびたし、甘唐辛子の炒り煮、竹輪の磯辺揚げ、ひじきと大豆と人参の炊きもの、納豆、モロヘイヤのたたき、なめこのたまり炊、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、若布とズッキーニの味噌汁
昼飯 納豆と玉葱のつゆで食べる素麺
晩飯 ビーフンの中華風炒め、豚挽き肉と夏葱とピーマンの中華風炒め、夏太郎らっきょう、麦焼酎「こいむぎやわらか」(ソーダ割り)
2025.8.30(土) 行水
上澤梅太郎商店が運営する朝食の専門店「汁飯香の店 隠居うわさわ」の営業日は毎週の土日月曜日。その厨房に早朝より入る家内の荷物を今朝は僕が提げて、隠居の柴折り戸を押す。そしてきのう床の間に掛けた柏木弘の”UNTITLED 08-III”の、周囲との調和を確かめる。おなじ床の花の籠は、19年前に書いた「サイトー君のメルセデス」のサイトー君からの拝領品である。
今日は長男も配達係のイザワコーイチさんも休みにより、朝は道の駅「日光街道ニコニコ本陣」への配達と開店業務をひとりで行う必要がある。こういうときに限って道の駅に納品すべき品が多い。「配達の途中で一旦、店に戻る必要があるだろうか」と考えていたところ、普段は11時より出勤の販売係タカヤマソラさんが早番として8時前に来てくれたから助かった。
開店の8時30分からしばらくは、店番はひとりでもこなせるだろう。そう考えて、道の駅から戻るなり蔵の最深部の冷蔵庫に保管してあるお米「ゆうだい21」の30キロ袋を事務室まで運び、それをホンダフィットに載せる。そしてホームセンター「カンセキ」の精米機で精米をする。帰る途中で、今日は仕事が休みのため隠居の食器洗いを手伝うことになっている次男と家内のための弁当を、既にして開店した道の駅で買う。そこから目と鼻の先の如来寺に立ち寄り、施餓鬼供養のお布施と塔婆の代金を置く。
ホンダフィットは店の駐車場ではなく、蔵の裏口に乗りつける。そして精米済みの「ゆうだい21」とふたり分の弁当を隠居の勝手口から入れる。
ここまですると、下着もシャツも汗で濡れたため、4階の自宅へ戻ってシャワーを浴び、下着とシャツを替える。
タイへ行けば、朝食を食べに出ただけで汗まみれ、昼食を食べに出ただけで汗まみれ、ちかくのコンビニエンスストアへ出かければ、またまた汗まみれになる。そしてこれは本当のことだが、夕刻には、その日に浴びたシャワーの回数が思い出せなくなっている。このところの日本の夏は、最暑期のタイより暑い。だから人によっては、タイでの僕と同じほど水浴びをしていることだろう。
夕食の前の20分ほどは、食卓で本を読む。この新書の残りのページも少なければ、あさっての東京行きには、もう1冊を携える必要がある。その1冊を選ぶために席を立って、応接間に続く、盲腸のような廊下の本棚へと向かう。
朝飯 甘唐辛子の炒り煮、モロヘイヤのたたき、生玉子、納豆、なめこのたまり炊、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、若布と夏葱の味噌汁
昼飯 茄子の揚げびたしと大根おろしのつゆで食べる素麺
晩飯 マッシュルームと夏野菜のスパゲティ、飲みさしの白ワインと赤ワイン、焼き菓子
2025.8.29(金) UNTITLED 08-III
9月はじめの予定が混んでいる。よほど注意をしないと、どこかで粗相をやらかしそうだ。事務机の左手に提げたカレンダーだけでなく、忘備のためのポストイットも目立つところに貼ることにしよう。
その混み合う日程の最中に訪ねたいと考えている店を検索エンジンで特定する。その自社サイトでは、定休日は水木とされている。しかしGoogleのページには、定休日は月火水木とある。一体全体、どちらが確かな情報だろう。幸い自社サイトに問い合わせのフォームがあったため、そのことについての質問を入力して送信する。
「汁飯香の店 隠居うわさわ」に明日の予約を入れてくださったお客様から、食事をしつつ柏木弘の”UNTITLED 08-III”をご覧になりたいとのご要望をいただいた。この絵は通常、冬に飾ることとしているものの、お客様は美術大学で柏木弘の生徒さんだという。滅多にないお申し出であれば、是非にもお応えをしたい。そういう次第にて自宅の倉庫からこれを納めた紙箱を出し、隠居に運ぶ。そして床にある竹内栖鳳の「晩秋」を”UNTITLED 08-III”に掛けかえる。残暑のいまなぜ「晩秋」なのかについては、今月23日の日記に書いた通りだ。
そのまま隠居にいて、9時30分からのウェブ会議に加わる。しかしてまた今日は販売係が手薄なため、僕のみは1時間ほどでその場を離れる。
13時30分より銀行に赴いて、今月中に済ませておくべき入金や資金移動をする。16時30分からはひとりで店番をする。17時をすぎて混み合ったところに長男が来てくれて助かる。17時30分からは、隠居係のタカハシリツコさんが掃除をするため来てくれたから、これまた助かる。ちなみに「汁飯香の店 隠居うわさわ」の今週の営業日は、すべて満席をいただいている。
朝に質問を送った会社からは懇切丁寧な返信が届いた。Googleのページの異常に多い定休日は9月はじめの臨時休業を反映したものであり、しかしGoogleの仕組みでは定休日と臨時休業を区別して表示できないことへの詫びも述べてあった。この店の商品は、できれば9月中には購入したいと考えている。
朝飯 甘唐辛子の炒り煮、目玉焼き、茄子の揚げびたし、揚げ湯波の甘辛煮、なめこのたまり炊、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、オクラと若布の味噌汁
昼飯 納豆と玉葱のつゆで食べる素麺
晩飯 モロヘイヤのたたき、夏太郎らっきょう、牛丼、麦焼酎「こいむぎやわらか」(ソーダ割り)、焼き菓子、Old Parr(生)
2025.8.28(木) 人によりけり
きのうの夕刻は東京にいたから、道の駅「日光街道ニコニコ本陣」の様子は見ていない。よって朝礼の始まる8時より前に、いちど現場を訪ねて売場の在庫を確かめる。そしてきのうのうち準備の完了しているもの、また朝礼の後に急ぎ作ってもらったものをホンダフィットに積んで、9時前に本日最初の納品をする。
日光の小中学校では既にして二学期が始まっている。しかし日光以南の小中学校は、今も夏休みのところが少なくない。よって観光客の数は、いまだ平時のそれまでは減っていない。これが9月になれば、道を往くクルマの数も、いくらかは少なくなるだろう。そして10月11日の土曜日からは、また次の混雑、あるいは賑わいが始まるのだ。
販売係によれば、やはりきのうは夕刻にかなり激しく雨が降ったという。今日も17時を過ぎると、空には青いところも見えるものの、怪しげな雲も低くなってきた。やがていくつかの雨粒が落ちてくる。しかし今夕の雨は、その一瞬のみだった。
「暑さもようやく峠を越えましたね」と言う人もいれば「涼しくなるという予報でしたが、むしろきのうより暑いくらいです」と言う人もいる。僕としては「まだまだ涼しくはなって欲しくねぇな」というところだ。「暑さ寒さも彼岸まで」であれば、まだまだ涼しくなることはないだろう、と思う。
朝飯 海女唐辛子の炒り煮、鮭の昆布巻、茄子の揚げびたし、納豆、なめこのたまり炊、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、豆腐と若布と茗荷の味噌汁
昼飯 納豆と玉葱のつゆで食べる素麺
晩飯 ポテトフライ、トウモロコシのバターソテー、ベビーリーフのサラダ、パン、鶏のトマトチーズ焼き、Chablis Billaud Simon 2018
2025.8.27(水) 伊豆治療紀行(39回目の2日目)
9,000ボルトを発する電子ペンによる膝の治療は通常、診察台に座った状態で受ける。それが今朝は「新しい方法を見つけた」と、いわゆる側臥位で横になるよう、先生は僕に指示をした。そして先ずは左を下にして横になった僕の左膝の内側、続いて右膝の外側に電子ペンを打ち込んだ。次は右を下にして横になり、右膝の内側と左膝の内側に、おなじ処置をした。
診察台に寝た状態で上から電子ペンを打ち込まれると、どうにも逃げようが無い。治療に伴う痛みはきのうのそれよりも強くなった。しかしからだを良好な状態に保つためには我慢も必要。この整体院を超える「治し屋」を僕は知らないから、ただ堪えるのみ、である。
借りていたクルマを伊東駅前で返し、乗れた伊豆急行鉄道の列車は11:35発。熱海での4分間の乗り継ぎは僕のみがこなし、家内は休憩室で昼食を摂りつつ次の新幹線を待つという。
先月も書いたような気もするが、僕が時間を調整する場所は登山用品屋と本屋だ。登山には命がかかっている。よってその用品屋で売られている服は普通の衣類より機能に特化しているところが好きだ。本についてはまぁ、無ければ生きていけない、ということもないけれど、これを欠いては人生の楽しみの数十パーセントが失われることは確かだ。
きのう東京駅で買った本を日本橋丸善の喫茶室で読むうち、ジュリア・キャメロンという人が提唱した「モーニングページ」というものを知る。起き抜けにたくさんことを文字にすると、これが脳のいわば「毒消し」になる。すると自由な発想が得やすくなるというのだ。とすれば、早朝に日記を書く僕などは、それを知らず知らずのうちに実践していたことになる。とはいえ日々、自由な発想が湧き出ている感覚は無い。モーニングノート、果たして本当のことだろうか。
家内とは銀座の伊東屋で落ち合い、食後、地下鉄で浅草へ移動をする。そして19:59発の下り特急に乗り、22時前に帰宅を果たす。夕刻に驟雨でもあったか、街はひどく涼しかった。
朝飯 「ガスト」の目玉焼き&ベーコンソーセージセット、ライス(大盛り)
晩飯 “Osteria Barababao”のオードブルの盛り合わせ、イカ墨のスパゲティ、豚のグリル、ヴェネチアのシャルドネ、チョコレートプリン、グラッパ
2025.8.26(火) 伊豆治療紀行(39回目の1日目)
きのう家から持って出た本のページが、明日の夕刻までは保ちそうにない。活字を欠いては焦燥の募るたちにて、新たに本を買う必要がある。今いる場所は東京駅にて、いつも書いていることだが、ここは広すぎて、どこに何があるかがまったく分からない。よって通路を歩くうち行き当たった案内所のオネーサンにスマートフォンで検索した書店を見せ、その場所を教えてもらう。
教えてもらったとはいえ、周囲は雑音に満ちているから、オネーサンの言ったことすべてが聞こえたわけではない。その後も一旦は迷い、ようやく目指す本屋に辿り着く。
普段は、買おうとしている本は既に決まっていて、ウェブ上で買う。それに対して今日はこれからめぼしい本を見つけるわけで、何を買うかは決まっていない。肩には二泊三日分の荷物を納めたトートバッグをかけている。よって本屋に長居はしたくない。食指の伸びる本には幸い、1分ほどで出会うことができた。即、その精算を済ませてから昼食にするものも買い、おなじ階にある東海道新幹線の改札口にPASMOを触れせせる。
前述のとおり東京駅には詳しくないから、家内との待ち合わせについては「13:27発 こだま729号 14番線 4号車」と、青いフェルトペンで記した紙切れをポケットに入れておいた。家内とは幸いにもその場所で会えて、下りの東海道新幹線に乗る。
6月から7月にかけては左の腰に違和感があった。7月から8月にかけては、その違和感が右の腰に移った。「伊豆痛みの専門整体院」のワタナベ先生にはそのことを伝え、9,000ボルトを発する電子ペンにて治療をしてもらう。その先端を押し当てられた腰のツボは当然、かなりの痛みを感じさせた。続いて受けた膝については左右とも、先生が軽く触れて「固い」と言った上部の一点のみが電子ペンの痛みを感じ、しかし他の場所はどうということもなかったから助かった。
夕食は、おととしの1月にひとりで伊豆を訪ねた際に見つけた店に裏を返した。そして家内の運転するレンタカーにてホテルへ戻り、入浴をして多分、21時より前に就寝をする。
朝飯 「ドトール」のハム玉子サラダサンド、レタスドッグ、コーヒー
昼飯 「笹八」の爆弾おむすび、JAVA TEA
晩飯 「かっぽれ」の若布の酢の物、野菜の炊き合わせ、刺身の盛り合わせ、たこぶつ、海の幸のグラタン、五目釜飯、「土佐鶴酒造」の「土佐鶴ドライ生貯蔵酒」(冷や)
2025.8.25(月) 貴重な数ヶ月
3時すぎに食堂に来て、南東と北西に面した窓を開けても、風はそよとも感じられない。しかし開けたばかりの窓を閉めて、天井の空気調整器を冷房で回すことはしない。未明から朝にかけて窓を開け放っていられるのは、晩春から秋にかけての数ヶ月。貴重な数ヶ月であれば、そのあいだの外気はなるべく肌で感じていたい、という気持ちが僕にはある。
10時に、外注SEのシバタサトシさんと、NTTからのふたりが会社に来る。そして充分に旧くなったビジネスフォンを、今後はどのような形のものにするか、その話し合いをする。僕は基本的には「よきにはからえ」の姿勢である。そのようなことは、若い人が専門家の意見を容れつつ決めれば良いのだ。
その商談が済んだところで4階へ上がって着替えをする。荷物はきのうのうちに、いつものトートバッグに用意をしておいた。それを提げて1階へ降り、自転車で日光街道を下る。乗った特急は11時35分発の上り。
本日の東京の最高気温は37℃。移動は北千住、虎ノ門、新橋、銀座。夜は早々に寝に就く。
朝飯 鮭の昆布巻、納豆、生玉子、なめこのたまり炊、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、豆腐と若布と茗荷の味噌汁
昼飯 「セブンイレブン」のサンドイッチと牛乳
晩飯 「ヤムヤム」のヤムウンセンタレー、トードマンプラー、センソム(ソーダ割り)
2025.8.24(日) 夏太郎
朝日の昇る位置が、北東から東へと移ってきた。今朝は、6時を過ぎると、既にして意外なほど高くなった太陽が、窓の縁からあらわれて顔を直射するまでになった。よって巻き上げ式の遮光カーテンを天井から1メートルほども下げて、その光を避ける。指折り数えてみれば、秋分の日まで30日。暑さは無論、その日を過ぎてもしばらくは続くだろう。
秋分の日といえば秋彼岸。お盆に引き続いて如来寺のお墓へ行く。羽田空港へ向かうのは9月24日の夜。とすれば、供えた花を片づける時間は充分にあると、今度は指折り数えるまでもなく、頭の中で計算をする。
上澤梅太郎商店の目の前の春日町交差点が、いまだに渋滞をしている。その先頭は言うまでもなく道の駅「日光街道ニコニコ本陣」である。お盆休みが過ぎて一週間が経つにもかかわらず、この混雑ぶり、否、賑わいぶりは、どういうことだろう。
日光の池田農園で、今年は7月21日に収穫されたらっきょうを塩とお酢だけで漬けた「夏太郎」を、夕刻にひと袋だけ買う。このらっきょうは、以前は清の時代の磁器の高台に載せていた。しかし昨夏からは、サワンカロークの疎林で拾った陶器のかけらに並べている。完全な形の器よりも、長く打ち捨てられていた、いわばゴミの方にむしろ惹かれてしまうとは、不思議なこともあるものだ。
そしてその「夏太郎」を肴にして焼酎のソーダ割りをゆっくりと飲む。
朝飯 モロヘイヤのたたき、なめこのたまり炊、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、豆腐と玉葱とトマトとウインナーソーセージの味噌汁
昼飯 茗荷のつゆで食べる素麺
晩飯 夏太郎らっきょう、牛肉とピーマンと筍の焼きそば、焼売、麦焼酎「こいむぎやわらか」(ソーダ割り)、杏仁豆腐
2025.8.23(土) 朝のことだけで終わる日記
上澤梅太郎商店が運営する朝食の専門店「汁飯香の店 隠居うわさわ」の床の絵を、きのう「ヒサオさんの緑の絵」から竹内栖鳳の「晩秋」に掛けかえた。残暑いまだ去らない今なぜ「晩秋」かと問われれば、帆を上げた、あるいは帆は降ろしたままの二艘の舟が川を下る、その景色はどうためつすがめつしても夏、百歩譲っても初秋のそれにしか見えないからだ。
今日から3日間は「汁飯香の店 隠居うわさわ」の営業日にて、だから朝のうちにあらためて、その「晩秋」の、床の間への落ち着き具合を確かめるため隠居の柴折り戸を押す。夜のあいだに鳴く虫の声は当然、もう聞こえない。夜が明けゆくときに啼く鳥の声も、もはや届いてこない。下草の露で足を濡らさないよう、踏み石を選んで歩を進めて勝手口より隠居に入る。
「晩秋」の、床畳からの高さが適当かどうかを家内に訊き、その同意を得て座敷を去る。午前の日を避けるための朝顔は、いまだ賑やかで有り難い。
と、ここまで書いて、きのうおとといに続いて今日の日記も朝のことだけで終わりそうな雲行きだから、午前から夜までのことを思いだしてみる。
日中の気温は割と高かった。今月13日に蔵出しをしてすぐに売り切れた、日光の池田農園で採れたらっきょうを塩とお酢だけで漬けた「夏太郎」が、ふたたび店の冷蔵ショーケースに並べられた。店の犬走りに置いた6鉢のカランコエは厚い葉に水を蓄えるのか、以前のマーガレットとは異なって手間いらずで助かっている。キャッシュレジスターの脇の棚の、下今市駅ちかくのカフェ「珈茶話」の若マスターが特別に焙煎し、ブレンドしてくれているコーヒーのドリップパックが売り切れた。日光市の標高の高いところに田んぼを持つヤギサワヒロシさんによるお米「ゆうだい21」の2合袋はきのう大人買いをされたお客様がいらっしゃって、売り切れが間近になっている。
道の駅「日光街道ニコニコ本陣」では常温対応の「ごぼうのたまり漬」が午後に売り切れたため、見本と値札は一時、引き上げた。それと共に「らっきょうのたまり漬」と、たまり漬「ピリ太郎らっきょう」がまばらになっているのを目にして、裏の冷蔵庫から充分の数を売場に運ぶ。夕刻の店舗には長男をはじめ次々と他の部署から人が来てくれて助かった。そして夕食は外へ出て摂った。
まぁ、そんなところである。
朝飯 モロヘイヤのたたき、納豆、生玉子、なめこのたまり炊、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、メシ、ピーマンと若布の味噌汁
昼飯 擂り胡麻のつゆで食べる素麺
晩飯 “Parrot”のパロットサラダ、チキンステーキイタリアン、BEAUJOLAIS GEORGES DUBOEUF 2021
2025.8.22(金) 南海旅行記
あれこれをするためコンピュータを開いたテーブルの椅子に着いて右手、つまり南東に面した窓の外へ目を遣る。見えるのは数百メートルほども離れたところの街灯の白い灯り、それとこちらは数キロメートルほどの距離はあるだろう、どこかの山の上に建った送電線の頂上に点滅を繰り返す赤い灯りのみだ。
虫の声は、複数種が、複数の方向から届いている。しかしきのうの朝、長男と2歳の娘カコが散歩に出たところ、草陰には動かなくなった虫が目立ったという。そういう虫は、大方は蟻に巣まで運ばれて、イソップの寓話にあるように、大切な食料になるのだろう。
この日記には何度か書いたことだが、アリとキリギリスを題材にした六代目三遊亭圓楽の、楽太郎時代の枕が好きだった。イソップ版では、冬を迎えたキリギリスは飢えと寒さから死んでしまう。しかし楽太郎によれば、キリギリスは、冬にはなぜかハワイにいて、相変わらず遊んでいるのだ。
ここでふと気になって検索エンジンに当たってみたところ、この寓話には似た話がいくつもあり、そのうちのひとつを読んだサマセット・モームはキリギリスに同情すると共にアリを憎み、アリ役の賢兄に対してキリギリス役の愚弟が晩年、大金持ちになる話を作ったという。
それはさておきネットサーフィンの最中には良くあることだが、そのページにあった、モームの「南海旅行記」を読みたくなって更に調べてみるも、日本語版はどこにも見あたらない。そして原書である”My South Sea Island”はひどく高い。しばらくは忘れることにしようと思う。
朝飯 スクランブルドエッグ、納豆、モロヘイヤのたたき、なめこのたまり炊、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、トマトと玉葱と若布の味噌汁
昼飯 納豆と玉葱のつゆで食べる素麺
晩飯 カレーライス、夏太郎らっきょう、らっきょうのたまり漬、Old Parr(ソーダ割り)