2025.9.30 (火) タイ日記(6日目)
目を覚ますと部屋の灯りは点けたままになっていた。時刻は0時38分。それにしても外がうるさい。部屋の直下のバービヤ、である。
まるでコンサートのような、大音響の音楽が聞こえてくる。スピーカーの関係か、あるいはバービヤと部屋のあいだの建物の具合なのか、ギターよりもベースとドラムスの音が際だって届く。白人らしい男たちは「イエー」とか「ヒュー」と、歓声を上げている。女たちは、良く言えば哄笑、悪く言えば下卑た笑い声を立てている。
「毒を食らわば皿まで」の気分でベランダへの扉を開く。客の男はどうでも良いけれど、女の人には「そんな仕事を続けていたら、長くは生きられないぞ」と言って上げたい。もっとも刹那的に生きている彼女たちには、そのような忠言は届くはずもないだろう。
音楽はやがて”Hotel California”に変わった。白人たちは老いも若きもこの「懐かしのメロディ」を好んで、しかもその場にいる皆で歌う。「合唱かよ」と、独り言が漏れる。「まだやってるよ」の声も漏れる。騒ぎは4時を過ぎてようやく収まった。
きのうの日記を書きながら、時々は寝台に仰向けになって、スマートフォンを眺める。そこにタイのニュースも流れてくる。興味を惹かれたのは、大きな人工池のほとりのチムジュム屋に出かけたおととい夜の嵐について。その、なぜかギクシャクしている自動和訳は以下。
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仏歴2568年9月28日(日)18:00~19:00
Lanna地区にブア・アロイの嵐からのモンスーン・トラックが襲った。Nong Khai州フォンピサイの多くの地域に風雨が吹く。Udon Thaniは、多くの地域で倒木を引き起こし、一部の地域で、消防ポールが倒れた。
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イサーン北部、つまりノーンカーイやウドンタニーには、かなりの被害が出た模様だ。それにしても、どうもこのあたりには雨が多い。前に来た2020年3月は乾季の終わりだったにもかかわらず、ほぼ毎日のように雨の降ったものだ。
それはさておき部屋の直下のバービヤは、4時30分を過ぎてようやく静かになった。日に焼けて赤みを帯び、痛みを覚えていた胸から腹にかけては、アロエジェルの二度の塗布により、随分と楽になっている。
6時35分、きのうマッサージ屋のオバサンが貸してくれた傘を差して外へ出る。目の前のソイサンパンタミットには、客を待つでもないトゥクトゥクが目に入る範囲内に二台。目抜き通りにもちらほら。しかしウドンタニーには雨が多い。もし明日の朝に雨が激しく降っていれば、僕はかなりみじめなことになる。たとえ法外に思えても、空港への足はホテルのリムジンを使うことを決める。
朝食はきのうに引き続いてホテル一階の食堂”BLUE SILK”で摂る。朝食代の295バーツは屋台のスープの実に12倍ではあるものの、本を読みながらのゆったりとした食事には、何とも言えないくつろぎがあるのだ。
プールサイドには10時に降りた。寝椅子の上ではずっと、メイドのオバサンに許可を得て部屋から持ち出したガウンを羽織り、首元はかたく打ち合わせていた。これ以上の日焼けは御免である。正午を回ったころに雨がポツリポツリと来て部屋へ戻る。以降は寝台の上で本を読む。ふと視線を窓に移すと空は晴れている。しかし再度プールサイドへ降りることはしない。
時を忘れてはいけないから、iPhoneには15時30分にアラームを仕掛けておいた。田舎にいるときの定番である白いTシャツとタイパンツ、これは首都の盛り場で100バーツで売られているモンペ状のものではなくプレー産の正真正銘の藍染めであるけれど、それを身につけロビーに降りる。
レセプションには初日に相手をしてくれたオバチャンと、女装のオジサンがいた。タイでは固い職場にも女装をした男は普通にいる。朝の食堂の受付も、男か女かの見分けはつかなかった。そういう人たちに特別な興味や態度を示すことは、紳士淑女の行いではない。「郷に入れば郷に従え」である。
マッサージ屋にはきのう貸してくれた傘と、ホテルのベルボーイに借りた傘の2本を携えていく。オバサンは今日も、2時間をすこし過ぎるまでマッサージを続けてくれた。
そのマッサージ屋から歩いて一分の、初日にも来たホイトードの、初日と同じ席に着く。おとといの夜とは異なって、今日はタイ航空のペットボトルに小分けしたラオカーオを忘れずに持参した。初日に「センタン」のトップスマーケットで買ったラオカーオは、愛飲の”BANGYIKHAN”にくらべればかなり強く口腔内を刺激するものの、不味いということはない。
部屋に帰り着いたときの時刻は19時16分。シャワーを浴びてプールサイドに降りたときとは異なるまっさらのガウンを羽織って19時34分に寝台に上がる。
朝飯 “BAN BUA”の朝のブッフェ其の一、其の二、其の三、其の四
晩飯 “Je Huay Hoi Tod”の烏賊のトード、カオパット、ラオカーオ”TAWANDANG”(ソーダ割り)