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清閑 PERSONAL DIARY

2025.12.23 (火) 下弦の繊月凄然として

朝、店の前から隠居の方に目を遣ると、植木の「ヤマカ園」のトラック2台が門の前に横付けされていた。それを見て「遅れてはいけない」と、そちらへ向けて走る。アルミニウム製の裏門は、既にして開かれている。「なせだろう」と、踏み石を辿る。すると表門も開いていて、何人もの本職が出入りをはじめていた。社長のカシワギさんの姿も見えたため問えば、事務室にいた社員から鍵を預かったとのことだった。

今日はちょうど一週間前の日記に書いた、実生から育ち、今や屋根と雨樋、そして冷蔵庫の室外機に枯れ葉を落とすばかりになっている、本職によれば「お金をかけるのは勿体ない」という松が伐られるのだ。

その、いささか太い幹を目にしてきびすを返し、事務室の神棚から御神酒を降ろす。そしてそれを手に隠居へ戻り、まぁ、ただの縁起かつぎ、あるいは厄除けのつもり、あるいは気休めに過ぎないものの、当該の松に御神酒を注ぐ。つまり僕も、アミニズムの信奉者、というわけである。

パートタイマーの販売係が次々と退社をし、残るはササキセーラさんのみ、となった17時すぎに、三たび隠居へ行く。冬至を過ぎたばかりの庭は既にして暗く、地面に横たえられた松は、いくつにも分けられていた。

昭和20年3月9日の夜、米軍の空襲により偏奇館を焼け出された断腸亭は、スペイン公使館ちかくの空き地まで逃げたところで空を見上げ「下弦の繊月凄然として愛宕山の方に昇るを見る」と記している。僕は和漢洋に通じた文豪ではないから「下弦の繊月凄然として」などは、とても書けない。しかし桜の梢を透かして見る旧暦11月4日の月はいかにも美しく、店の棚にiPhoneを置いてきたことを、いささか悔いた。


朝飯 菠薐草のソテーを添えた目玉焼き、蓮根のきんぴら、納豆、切り昆布の炒り煮、なめこのたまり炊、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、若布とズッキーニの味噌汁
昼飯 にゅうめん
晩飯 南瓜のすり流し、菠薐草の胡麻和え、蓮根のきんぴら、ザーサイ、豚挽き肉と春雨の中華風炒め豚肉とニラともやしの「コモトリケー君行きつけの総菜屋のソース」炒め炒飯、「紅星」の「二鍋頭酒」(生)


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上澤卓哉

上澤梅太郎商店・上澤卓哉

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