2017.8.9(水) 風鈴
早朝、久しぶりに晴れ間のある空を食堂の窓から望む。宇都宮証券の塔型の看板の右側はるか先に、まるで富士山のように形の整った山が見える。正確なコンパスと5万分の1の地図があれば、その山がどこにあるか特定できるかも知れない。しかしそこまですることはしない。
iPhoneを手元に引き寄せ、天気予報のアプリケーションを開く。日光でも山間部以外は、気温が30℃を超えそうな、今日の塩梅である。しかし30℃をすこし超えたくらいでは、夏好きの僕は満足をしない。
梅雨が明けたら外に吊そうとしていた風鈴は、梅雨明け宣言の後もぐずつき続けた天気により、事務室に置かれたままだった。そして次は、台風5号の20日間ちかい迷走である。昼前に外を覗うと、日の光は弱まっていない。ここにきてようやく、5つの風鈴を店舗犬走りの梁に提げる。
風鈴はやがて微風を受けて、涼やかな音を響かせ始めた。僕は脚立を上り下りするくらいで呑気にしているけれど、開発担当や製造担当は、お盆に出す3つの新商品の、最後の仕上げに忙しいはずだ。午後は東にも西にも入道雲が立ち上がる。
朝飯 揚げ湯波と小松菜の炊き合わせ、納豆、厚揚げ豆腐の淡味炊き、切り昆布の炒りつけ、「なめこのたまりだき」によるなめこおろし、らっきょうのたまり漬、すぐき、メシ、豆腐とトマトとレタスの味噌汁
昼飯 「食堂ニジコ」のえび春雨丼
晩飯 2種のサラダ、カザレッチェのジェノバ風、”Petit Chablis Billaud Simon 2015″、”DE FONBEL Saint-Emilion 1995″
2017.8.8(火) 立秋を過ぎて
早朝に目覚めて食堂に出ると、先ずはこの角部屋の、直角に位置するふたつの窓を開ける。そうして風を通すのだ。ところが今朝は、夜半から強くなった雨風がガラスを打ち、とてもではないけれど、窓を開けるどころではない。
太平洋上に発生した台風5号は自転車ほどの速さで2週間以上も迷走を重ね、しかし九州南部から列島に上陸してからは四国、そして関西へと真っ直ぐに進みつつあった。その台風は、今ごろは岐阜県か群馬県のあたりにいるのだろうかと想像しつつ、しかしテレビをつけることはしない。窓の向こうの漆黒を愛でていたい気持ちが強かったからだ。
やがて徐々に、外が明るくなってくる。風に飛ばされてくる雨粒は時に強く、時に弱く、しかし窓ガラスを叩き続けている。ここでようやくテレビをつけると、台風は案に相違して、福井県から石川県を経て日本海上へと去ろうとしていた。
一昨日の夕立は雷を伴っていた。「梅雨は雷に始まり、雷に終わる」というならば、この台風が去れば必ず、光輝燦然とした夏がやって来るはずだ。それにしても、立秋を過ぎて後の夏とは、どうにも釈然としない。
朝飯 切り昆布の炒りつけ、揚げ湯波と小松菜の炊き合わせ、生のトマトを添えたベーコンエッグ、すぐき、たまり漬「栃木県壬生産のしょうがです。」を薬味にした納豆、メシ、豆腐と揚げ湯波とレタスの味噌汁
昼飯 「ふじや」の雷ラーメン
晩飯 モツ煮豆腐、鶏肉団子、大根おろしを添えた厚揚げ豆腐の淡味炊き、トマトとキウィのサラダ、ズッキーニの酢の物、麦焼酎「田苑シルバー」(ソーダ割り)、グレープフルーツのゼリー
2017.8.7(月) 何もしないで過ごすなら
9月の下旬から10月の上旬にかけて、タイに11泊をする、その宿の予約を早朝に済ませる。11泊のうち10泊は最北部、そのうち更に4泊はラオスとの国境沿いに留まることとした。国境の街にもメシ屋はあるだろう。ラオカーオは6月末にバンコクで買ったものを持参するから、初見の土地に酒屋が見つからなくても大丈夫だ。
一膳飯とラオカーオ、そこに本さえあれば、夜は退屈しない。いずれ20時を過ぎれば寝てしまうのだ。昼は寝椅子で本を読む。朝と夕刻は街の逍遥だろうか。宿に貸し自転車があれば有り難い。
昨年チェンライに入った9月29日の日記は4,000文字を超えた。ここまで長いと、机とベッドの間を往復しながら、休み休み書くことになる。バカバカしと言えばバカバカしい。旅の最中の日記はできるだけ短くしたい。しかしそれができるかどうかは分からない。
「都市にはその国の悪い部分が集中する」と書いた旅の本を、40年ほど前に読んだことがある。必ずしもそうとは言えないものの、地方からバンコクに戻ると、とにかく気持ちがせわしない。何もしないで過ごすなら、田舎が一番、である。
朝飯 乳茸と茄子の炒りつけ、納豆、ラタトゥイユ、牛蒡と人参と豚三枚肉の炊き合わせ、ゴーヤと瓜のぬか漬け、らっきょうのたまり漬、すぐき、メシ、揚げ湯波と茄子の味噌汁
昼飯 冷やしラーメン
晩飯 胡瓜とエノキダケの酢の物、らっきょうのたまり漬とジャガイモとレタスのサラダ、豚肉と茄子と赤ピーマンのソテー、「夏太郎」らっきょう、麦焼酎「田苑シルバー」(ソーダ割り)、メロン
2017.8.6(日) 来ると得する防災会
事務机の計算機に「9:00 公民館」と、赤いフェルトペンで書かれたポストイットが貼ってある。3歩あるけば物事を忘れてしまうたちにより、数日前から気をつけていたのだ。
8時55分に店を出て日光街道を遡上する。左手の公民館を目指して歩いてくと、しかし見慣れた顔は右手の「いち縁ひろば」に集まっていた。
我が春日町1丁目の自主防災会では、年に1、2度ほど専門家を呼び、非常時に役立てるための講習会を開いている。今日は今市消防署からひとりが出張してくださっていた。
先ずは、すべての家庭に設置が義務づけられている火災報知器について聴く。次は感震ブレーカーというものの説明を受ける。地震に伴って発生する火災は、火より電気によるものの方が圧倒的に多いのだという。最後は消火器の使い方を教えていただき、今回の講習は完了した。
自主防災会の講習に参加をすると、その都度、ふたつもみっつも知識が増えて利口になる。そして行動が変わる。しかして本日の出席者は町内全世帯のうち15パーセントほどのものだった。「せめてひと世帯からひとりくらいは…」と消防署のアカバネさんは遠慮がちにおっしゃったけれど、来るのはいつも、決まった顔ばかりである。
夕刻に雷が鳴り、雨が降ってくる。今年は梅雨明け宣言の出た7月下旬以降も、依然として梅雨のような天気が続いている。「梅雨は雷に始まり、雷に終わる」という。今日の雷が、本当の夏の入口になってくれれば有り難い。
朝飯 牛蒡と人参と豚三枚肉の炊き合わせ、納豆、らっきょうのたまり漬、ラタトゥイユ、すぐき、ほうれん草のソテー、メシ、揚げ湯波とオクラと茗荷の味噌汁
昼飯 冷やしラーメン
晩飯 梅胡瓜、南瓜と玉葱と胡瓜のサラダ、生のトマト、水餃子、「紅星」の「二鍋頭酒」(生)、マンゴープリン
2017.8.5(土) 美田
白いシャツに黒いネクタイを締め、黒いスーツを着る。そして9時30分に、ホンダフィットの運転席に収まり会社を出る。
「そして山百合は、いまだ咲かない。」と、きのうの日記には書いた。ところがこれから法事の始まる親戚宅へ向かう県道沿いには野生の山百合が咲き乱れていた。そうであれば、乳茸が出ても不思議ではない。
奥の座敷に設けられた祭壇の前に僧侶が座る。読経と焼香は10時30分に完了した。次は墓前での読経と焼香である。
古い、しかしよく整備された納屋の裏から杉や竹の林を抜ける。完璧に草の刈られた畦道を行くと、夏の美田の遙か向こうに10基ばかりの墓石が見えてきた。めまいを起こしそうなほど美しい景色だ。このようなものを、砂漠や岩山しか持たない国の人々が目の当たりにすれば、感激のあまり気を失うかも知れない。
13時25分に帰社し、着替えて14時より仕事に復帰する。
本日は我が街の花火大会にて、終業後は春日町の交差点から会津西街道を北へ歩き、朝日町の福島商店にて限定販売の焼きそばを買う。
花火は、観ずに音のみを聴くと、その風情は一層、高まる。そして今夜も食堂の窓を開け、大谷川の中洲から打ち上げられる花火の音を耳に感じつつ、焼きそばを肴に焼酎のソーダ割りを飲む。
朝飯 納豆、ラタトゥイユ、瓜のぬか漬け、揚げ湯波と小松菜の炊き合わせ、乳茸と茄子の炒りつけ、メシ、鶏肉とトマトとオクラとゴーヤの味噌汁
昼飯 「菜もん」のコース料理、アップルタイザー
晩飯 胡瓜のぬか漬け、冷や奴、旬仕上げ「夏太郎」、「福島商店」の焼きそば、麦焼酎「田苑シルバー」(ソーダ割り)
2017.8.4(金) 乳茸
「ひぐらしが鳴き始め、山百合が咲き始めると、乳茸の季節だ。」という一節を、2000年9月6日の日記に書いた。これを言ったのは、今は引退をしている当時の製造係アオキフミオさんである。ひぐらしは梅雨の明ける前から鳴いている。そして山百合は、いまだ咲かない。
きのう夜遅くに帰ると、紙袋に入った乳茸が台所にあった。家内に訊けば、シフトにより今日は休日だったにもかかわらず、包装係のサイトーヨシコさんが持って来てくれたものだという。ヨシコさんの夫で、山のことに達者なシゲルさんが採ってきたものに違いない。
「乳茸は食感がポロポロとして良くないため、数十年前までは、蹴飛ばされ、踏みつけられてきたキノコだ。しかしとても良いダシが出ることを多くの人が知るにいたり、今では大いに珍重されるようになった」という説が嘘か誠かは知らない。
今朝の食卓には、この乳茸が茄子と共に炒りつけになって出てきた。その特異な食感は、慣れてしまえば特に奇異に感じることもない。風味はやはり、しごく良い。
この、乳茸と茄子の炒りつけは、素麺の汁に加えても美味い。今年それを口にする機会はあるだろうか。僕に山の教養は皆無である。乳茸のふたたびの到来を、座して待つばかりである。
朝飯 空心菜のソテー、乳茸と茄子の炒りつけ、スペイン風目玉焼き、納豆、すぐき、らっきょうのたまり漬「浅太郎」、メシ、豆腐と揚げ湯波と三つ葉の味噌汁
昼飯 冷やしラーメン
晩飯 ほうれん草と海苔のおひたし、ザーサイを添えた冷や奴、春雨サラダ、棒々鶏、「高千穂酒造」の麦焼酎「高千穂零」(お湯割り)
2017.8.3(木) 持ち時間
このところ目を覚ますのが夜中の2時台、それから二度寝をすることなく起きていたから、昼ごろになると常に眠気を覚えてきた。今日もおなじく2時台の目覚めではあったけれど、いつもとは異なり二度寝ができた。そして割合にすっきりした気分で5時前に起床する。
下今市10:35発の上り特急スペーシアに長男と乗る。巣鴨に出て6時間ちかくも休みなしでミーティングというかブレーンストーミングというか、そのようなことをする。家まで3時間以上かかる人も、今日の話し合いには加わっている。よって19時になろうとするころ「そろそろ」と僕から声を発し、解散をうながす。
巣鴨から西日暮里を経て北千住に戻る。次の下り特急スペーシアの発車までは1時間を切っている。腰を落ち着けて飲むには短すぎる持ち時間だ。特急券を確保しないまま、西口から外へ出る。このあたりは、僕が高校生のころには駅前のロータリーも整備されていず、夜になるとひとけも疎らだったような気がする。
立ったままそそくさと飲酒活動をし、無事20:13発の下り特急スペーシアに乗る。車両は前3両が館林行き、後3両が日光行きのリバティだった。発車直後のアナウンスによれば満席とのことにて、危うく乗りそこねるところだった。そうして22時前に帰宅する。
朝飯 ラタトゥイユ、牛蒡と人参と豚三枚肉の炊き合わせ、納豆、揚げ湯波と小松菜の淡味炊き、胡瓜のぬか漬け、豆腐と空心菜と揚げ玉の味噌汁
昼飯 「小諸蕎麦」のたぬきそば
晩飯 「天七」の串揚げあれこれ、レモンハイ、チューハイ
2017.8.2(水) 緊急地震速報
周囲の人たちの持つ携帯電話が一斉に緊急地震速報を発しても、僕のそれはウンともスンとも言わない、それは僕の携帯電話がフィンランド製の”NOKIA NM706i”だからではないかと、そのころは考えていた。現在の携帯電話は”iPhone 6s Plus”で、しかしこの機種からもまた、地震の速報はそれほど聞いた覚えがない。それが今日に限っては枕元で「ギュイッ、ギュイッ、ギュイッ」と例の不気味な音を響かせたから、驚いてすぐに飛び起きた。時刻は02:03だった。
しばらくしてそのiPhoneでニュースのアイコンをタップすると、地震は福島県と茨城県の一部が震度4、そして栃木県は震度3とあった。当方には2011年3月11日の記憶があるから、地震はとにかく怖いのだ。以降、1時間を経ても眠気は訪れない。
3時20分に起床し、食堂に3枚ある窓のうちの2枚を開け放つ。標高400メートルの、朝の空気は涼しいよりも寒い。よって事務室に降り、椅子の背もたれにかけておいた長袖のTシャツを、半袖のポロシャツに重ねる。
そろそろ店に降りようとしている7時16分に、また小さくない地震がある。仏壇の、数時間前に供えた水とお茶はこぼれてしまった。よってそれらをお盆ごと食堂に持ち来て布巾で拭い、ふたたび仏壇へと戻す。
朝飯 切り昆布と豚三枚肉の炒め煮、納豆、緑茄子の油炒め、生のトマト、「なめこのたまりだき」のフワトロ玉子、揚げ湯波と小松菜の炊き合わせ、浅蜊と三つ葉の味噌汁
昼飯 冷やしラーメン
晩飯 ラタトゥイユ、2種の茄子と肉団子の揚げだし、豚肉と牛蒡と人参の炊き合わせ、銀鱈の味醂漬け、胡瓜のぬか漬け、「松の司」の「生酛純米」(冷や)、釜蓋餅
2017.8.1(火) キッチハイクその後
おととい隠居で催した「伝統家屋でいただく、なんでもない日の食卓。」に参加をしてくださったお客様が、キッチハイクに数多くの画像、そして感想を上げてくださった。その、丁寧にお書きいただいた文章は、当方の気持ちをとても嬉しくするもので、大いに励まされた。そして長男は、この朝食会の、毎月の開催を決めた。
日本には四季がある。豊富な食材は季節と共に変わり、人を飽きさせない。日光では、特に野菜は次から次へと農業協同組合や道の駅の直売所に出てくる。「伝統家屋でいただく、なんでもない日の食卓。」では、その野菜を主として旬のものを月替わりでお出しする。それとは別に、1年を通じておなじおかずもお作りすれば、それはそれで、ひとつの趣向になるだろう。
開催日は原則として、毎月の最終日曜日。次は8月27日の予定である。ご予約は随時「キッチハイク」の、こちらの最下部にて承ります。
朝飯 白粥、塩昆布、なめこのたまりだき、胡瓜のぬか漬け、塩鮭、なすのたまり漬
昼飯 冷やしラーメン
晩飯 “TIO PEPE”、トマトとレタスとキウィのサラダ、フランスパン、生ハムのペースト、ホタテ貝のペースト、緑茄子のグラタン、“Petit Chablis Billaud Simon 2015”、タピオカの桃シロップ煮
2017.7.31(月) ひたし豆
仕事用のズボンを外出用のそれに履きかえ、ベルトを締めると、いちばん内側の穴でもゆるい。よってその革製のベルトをゴムで伸び縮みする、どの位置でも合わせられるものに換える。革製のベルトを買ったのは2006年。以降、僕の胴囲は徐々に細くなり、2014年の正月からは更にその傾向が強くなって今に至る。理由については知らない。
下今市11:35発の上り特急スペーシアに乗る。東京の、夏らしい暑さが心地よい。巣鴨で所用を済ませ、湯島に出る。
「地下鉄…」と口にした弟子を「地下鉄道と言いなさい」とたしなめたのは折口信夫だっただろうか。そこまでの厳密性は持ち合わせないものの、言葉を略することは、僕も好きでない。「コスパ」なども、そのひとつである。これを「安値」とする解釈も嫌いだ。「コストパフォーマンスに優れる」と「安値」は同義ではない。
ところで「コストパフォーマンスに最も優れる飲み屋」といえば、僕の中では湯島天神下のシンスケで揺るがない。「タルヒヤ」のある晩秋から桜のころにかけては、その価値は更に高くなる。夏は2階で焼酎に専念したい気持ちもあるものの、今日のところは1階のカウンターにて3種の日本酒を飲む。
朝飯 胡瓜と若布と茗荷の酢の物、納豆、切り昆布と豚三枚肉の炒め煮、スペイン風目玉焼き、牛蒡と人参のきんぴら、メシ、若布と揚げ湯波と三つ葉の味噌汁
昼飯 「味彩たむら」の日替わり弁当
晩飯 「シンスケ」のあれや、これや、それや。3種の日本酒(冷や)






































