2025.8.21(木) 6月28日の月
目を覚ましたのは2時50分。起きて食堂に来たのは3時台のはじめ。早起きとは、まったくもって素晴らしい。テレビも点いていない、電話も鳴らない、人の声も聞こえない静かな時間が何時間も与えられるからだ。
仏壇に水とお茶と花と線香を供え、既にして完成しているおとといの日記を公開し、更にはきのうの日記を完成させて保存する。また「汁飯香の店 隠居うわさわ」に予約サイトを通じていただいたご予約を確定させてご返事をお送りする。
それらのことをしている食堂のテーブルから望める空が、徐々に明け始める。今朝の風はどのような具合だろう。それを確かめるため屋上へ上がる。東の空には旧暦6月28日の月があった。
以降はウェブ上を徘徊しても時刻はいまだ5時20分。そこで事務室へ降りて、先週末の「汁飯香の店 隠居うわさわ」のお客様が記入してくださった感想カードを4階の食堂に持ち来る。そしてその内容をコンピュータに入力する。この仕事は溜め込むと後で苦労をする。苦労を避けるためには、休まないことが肝要になる。これを6時に終えて以降は、朝食までのあいだに本を読む。早くに目が覚めるとは、まったくもって有り難い。
朝飯 茄子の揚げびたし、スクランブルドエッグ、ウインナーソーセージと小松菜のソテー、納豆、なめこのたまり炊、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、揚げ湯波と玉葱と若布の味噌汁
昼飯 茄子の揚げびたしと大葉のつゆで食べる素麺
晩飯 グリーンアスパラガスとじゃがいもの細切りとトウモロコシのソテーを添えたハンバーグステーキ、チーズの「日光味噌のたまり浅漬けの素・朝露」漬け、Old Parr(ソーダ割り)
2025.8.20(水) あらためて
お盆を含む週に出勤をしてくれた社員、それは上澤梅太郎商店のすべての社員ではあるけれど、彼らへの祝儀はきのう家内に整えてもらった。それを今朝は、皆に配ってまわる。祝儀は、もらうのも嬉しければ、配るのも嬉しい。次の機会は来年の正月。そのときにも、また良い成績を得られれば有り難い。
ところで僕は、人が暑さを訴え始めるあたりの気温を「心地よい」と感じるらしい。今年5月のバンコクではホテルのロビーに足を踏み入れるなり「折角の気温の高さにもかかわらず、これほど冷やすことはねぇじゃねぇか」と感じた。先般は叔母が事務室を訪ねて来るなり「ちょうどいいね、今日は30℃だって」と声を発した。叔母も多分、僕と同類なのだ。あらためて「夏よ、いつまでも」である。
午後も遅くなると激しい雨の降るここ数日ではあるものの、今日のそれはほんの数分のあいだ、それもまばらに落ちてきたのみで、すぐに上がった。これくらいのお湿りでは、気温はまったく下がらない。しかし特に不快さも感じないため、店の冷房は17時を過ぎたところで切る。釣銭に用いる5,000札の予備は今日で底を突いた。明日の朝は、また銀行へ行く必要があるだろう。
朝飯 生のトマト、目玉焼き、茄子の揚げびたし、甘唐辛子の炒り煮、なめこのたまり炊、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、揚げ湯波と小松菜の味噌汁
昼飯 茄子の揚げびたしと大葉のつゆで食べる素麺
晩飯 菠薐草と椎茸と厚揚げ豆腐と豚薄切り肉の鍋、麦焼酎「こいむぎやわらか」(ソーダ割り)
2025.8.19(火) 夏よいつまでも
ふと気づいたことだが、目を覚ましてから服を着るまでのあいだには、意識をしないまま手の平の具合を確かめるらしい。ここ数日のことを思い出してみれば、手の平の、とても乾いていることが多くなった。どうやら皮膚は、脳よりも先に季節の変わり目に気づいているらしい。
今月の初日に作った麺つゆの残りが少なくなった。よってきのうの夜から大鍋に昆布と干し椎茸を沈めておいた。今朝はそれにあれこれと手を加えて麺つゆを完成させた。今夏4回目のそれは、3回目に増して多くの量が出来た。今年の麺つゆ作りは多分、これが最後になるだろう。
お盆の繁忙は、17日の日曜日を境として、裾を引くようにして去った。それにしても、お盆における、上澤梅太郎商店の前年比の数字は悪くなかった。テレビのニュースは「お盆期間中の新幹線の稼働率は全体的に高く、特に東海道新幹線は前年比13%増の約409万1,000人が利用した」と伝えている。
しかしこの日記を昨年の8月16日に遡ってみれば以下の記述があり、とすれば前年比増も当たり前、ということが分かる。
……
風は、列島の東洋上を北上中の台風7号によるものだろうか。本日の東海道新幹線は東京と名古屋のあいだで終日運休。東北、上越、山形新幹線も一部列車の運休を計画。関東の在来線や私鉄にも運休の可能性ありとは、驚くばかりだ。
……
ところで今日は閉店の17時30分を過ぎてもお客様が途切れず、店を閉められたのは18時10分だった。よって明日の釣銭の準備は明朝に行うこととし、シャワーも浴びず着替えもしないまま会食の場へと向かう。
朝飯 揚げ湯波の甘辛煮、納豆、フライドオニオン、胡瓜の古漬け、なめこのたまり炊、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」によるお茶漬け
昼飯 擂り胡麻のつゆで食べる素麺
晩飯 「炉心庵」の其の一、其の二、其の三、其の四、其の五、其の六、其の七、冷えた日本酒あれや、これや
2025.8.18(月) 花の山
空は、夜から朝になろうとしているときが、1日の中でもっとも美しいように思う。今朝はそれほど早くに目が覚めたわけではないけれど、食堂から望む空が綺麗だったため、屋上へ上がる。そこに吹きわたる風は、充分に涼しかった。
6時が近づくころ、隠居の厨房に入る家内の荷物はこびを手伝って、国道121号線の歩道を南へ歩く。隠居の木々の緑はいまだ充分に濃い。床の「緑の絵」は、今週末までには次のものに掛けかえよう。
道の駅「日光街道ニコニコ本陣」に本日最初の配達をして会社に戻り、ふたたびホンダフィットを運転して如来寺へ行く。そして新旧と叔父叔母のお墓の、計9対の生花を持参したプラスティック袋に入れ、花立てはこれまた持参した大きな洗面器に並べて水場で洗う。花立ては、雨水が溜まることを避けて、それが可能なものは伏せてお墓に戻した。
お寺から帰ったところで着ていたものを脱ぎ、シャワーで汗を流す。新しいシャツを身につけると、気分は非常に爽快になった。
きのうの午後、気づくと「相談に乗って欲しいとのこと」という添え書きと共に、後輩の名と電話番号を記したメモが事務机にあった。僕はそれを一瞥して、しかし繁忙により電話を折り返すことはできなかった。
10時を過ぎてようよう、メモの番号を呼び出す。遠いところで会社を営む後輩は、日光まで来てあれこれ話を聞きたいと言い、その候補日として10月11日または11月1日を挙げた。事務机の左手に提げたカレンダーをめくると、前者はスポーツの日の絡む連休の初日、後者は文化の日の絡む連休の初日に当たっていた。勤め人でもあるまいに、なぜそのような日を選ぶのか。紅葉の季節の連休は、1年の中でも、もっとも日光に来てはいけない日、である。列車は満席、宿は満室、道路は大渋滞、それが、他所から来る人には分からないのだろうか。後輩には改めて日を決めるよう言って電話を切った。
お盆の最中に耳にしたところによれば「十軒目でようやく入れた」と、飲食店の席に着くなり言った旅行客がいたという。
おとといの夜、フランス料理屋にいた客は、我々のみだった。僕はいつもの、つまり極上の諸々にて冷えたワインをすこしずつ飲んだ。店は至極静かだった。戸外には虫の声があったかも知れない。「人の行く、裏に道あり、花の山」である。「上がるから買う。買うから上がる」の今の日本の株式相場は、果たしていつまで続くだろう。
朝飯 生玉子、冷や奴、納豆、なめこのたまり炊、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、小松菜の味噌汁
昼飯 梅干と大葉の薬味で食べる素麺
晩飯 スパゲティボロネーゼ、Chablis Billaud Simon 2018
2025.8.17(日) 行動特性
起きて食堂に来た時刻は3時3分。道路には、きのう降った雨の湿り気が、いまだ残っている。
町内の、江戸末期に建造された彫刻屋台のための蔵は町内の東地区にある。この周辺の草刈りは今月10日に予定をされていたものの、当日は雨のため、今日に延期をされた経緯があった。お盆休み中であれば、僕は繁忙にて、その勤労奉仕には参加はできない。しかし会計係として、昼食の場所を確保する必要はある。
そういう次第にて、9時30分に会社を離れて自転車で屋台庫へ行く。そして麦わら帽をかぶって作業中のウカジシンイチ自治会長に声をかけ、正午に蕎麦の「やぶ定」を予約しておく旨を伝える。その足で「やぶ定」へ向かう。店主のワガツマカズヨシさんは、午前のひと仕事を終えたところだった。
正午の予約をしながら、普段は昼から夜まで通しの営業にもかかわらず、14日の日記に書いた経緯について訊ねてみる。すると、とにかくお客様が多すぎて、調理担当、客席担当ともに疲労困憊の結果とのことだった。
人はとかく「混んでいるとき」に「混んでいるところ」へ行きたがる。「どうにかならないか」とは思うものの、それがヒトの持つ行動特性であれば、どうにもならないのだ。
朝飯 生のトマト、ソーセージのソテー、刻み玉葱を薬味にした納豆、鮭の昆布巻、なめこのたまり炊、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、玉葱と若布の味噌汁
昼飯 納豆と玉葱のつゆで食べる素麺
晩飯 豚薄切り肉と菠薐草の鍋、チーズの「日光味噌のたまり浅漬けの素・朝露」漬け、らっきょうのたまり漬、麦焼酎「こいむぎやわらか」(ソーダ割り)
2025.8.16(土) 送り盆
上澤梅太郎商店が運営する朝食の専門店「汁飯香の店 隠居うわさわ」は、土日月の週に3日の営業。その朝は、家内は早くから厨房に入るため、食事は自分で用意をする。その内容は、1日がお茶漬け、1日が具だくさんの味噌汁による一汁ゼロ菜、1日が納豆、冷や奴、生玉子という調理を必要としない3種のおかずによる一汁三菜と、このところは固まってきた。
その、お茶漬けの食器を洗い終えた時刻は7時ちょうど。一方、出勤してくる社員のために事務室のシャッターを上げるのは7時40分。そういう次第にて、きのう事務室から引き上げてきた「汁飯香の店 隠居うわさわ」の先週のお客様からいただいた感想カードの内容を、食卓でコンピュータにデータベース化する。
午前の早いころには、しその実と茗荷の買い入れのハガキを印刷し、納入実績のある農家へ向けて投函する。いつもはお盆を過ぎてから出す案内が、今年はすこし早くなった。むかしは9月といえばひと息をつける月だった。しかし近年はしその実と茗荷の仕入れに加えて新宿高島屋での出張販売も行われるため、なにやら忙しくなっている。
16時15分より驟雨沛然。その勢いは徐々に弱まって、玄関前で仏壇のお盆飾りを焼いた18時40分ころに止む。
ところで「お盆の混雑も売上げも、明日からは極端に少なくなっていくのではないか」と、きのうの日記に書いた。しかし今日の売上げは、きのうのそれに比べて8パーセントの増。店は、明日こそ静かになるだろう。別段、それを期待しているわけではないけれど。
朝飯 塩鮭、納豆、鮭の昆布巻、なめこのたまり炊、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」によるお茶漬け
昼飯 会社支給の「えんや」の日光のひみつ豚カレーライス、らっきょうのたまり漬、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」
晩飯 “Finbec Naoto”の其の一、其の二、其の三、其の四、其の五、其の六、其の七、其の八、グラスの白ワイン(2種)、コーヒー
2025.8.15(金) 強気の予想ふたたび
ここ数日の雨は夜に降って、深夜に止むらしい。やがて空が晴れはじめる。僕にとっては理想的な天気である。鶏鳴山が、今朝は雲や霞に覆われることなく、応接間の南西正面に見えている。蔵の白壁には朝日が差している。些細なことではあるけれど、その淡いオレンジ色が、とても美しい。
NEXCO東日本は東北自動車道の上りの渋滞について、今日から始まって明日が最高、明後日は収束に向かうと予想をしている。とすればお盆の混雑も売上げも、明日からは極端に少なくなっていくのではないか。それでも「しかし」と、また別の考えも頭をよぎる。「17日までは強気の製造計画で臨むべし」と朝礼で号令をかけたのは11日のことだ。そのようなことについては初志貫徹を維持するべきだろう。
店舗、卸売り、地方発送のための商品の製造計画は、社員がコンピュータと相談をしながら決める。一方、道の駅「日光街道ニコニコ本陣」に納める商品の数量は、僕が勘で決める。そうして結局のところは明日についても強気の数字を出し、そのメモを包装主任のヤマダカオリさんに手渡す。
18日以降に「おやおや」ということが無ければ、この8月の成績は、かなり良いところに落ち着きそうな気がする。
朝飯 鮭の昆布巻、納豆、小松菜のソテー、目玉焼き、なめこのたまり炊、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、きのうの天ぷらの残りと三つ葉の味噌汁
昼飯 会社支給の「カルフールキッチン」の焼鳥重
晩飯 トマトとグリーンアスパラガスとパンチェッタのスパゲティ、チーズ、Chablis Billaud Simon 2018
2025.8.14(木) あちらこちらで渋滞
3時59分に食堂に来て、南東と南西に面した窓を開ける。ここ数日の朝とは異なって、風はすぐに通り始めた。地面の濡れているところからすれば、夜に雨が降ったらしい。そして、なにやら涼しい。涼しさは、心地の良さをもたらす。しかし秋は、好きではない。「夏よ、カムバック」と叫びたいところではある。
白いシャツに墨色のネクタイを締め、三季用の黒いスーツを着ても、暑さは感じない。9時すぎに日光街道を下るホンダフィットの外気温計は「24℃」を示している。ことし初盆を迎えた親戚の家では線香を供え、冷たいお茶で喉を潤したらすぐにいとまを告げる。
iPhoneのGoogleマップに言われた通り、日光宇都宮道路には大沢I.C.から乗る。南の終点である徳次郎I.C.で降りたら今度は東北自動車道に宇都宮I.C.から乗る。下りの車線は激しく渋滞をしている。その先頭は、17.2キロメートル北の矢板I.C.だろうか。
Googleマップには都賀西方スマートI.C.で降りるよう指示をされたものの、ホンダフィットにETCは載せていないから、次の栃木都賀JKS.で東北自動車道から離れる。以降はスマートフォンの音声に従って、時には対向車が来たらすれ違えないほどの細い道を辿りつつ、やはりことし初盆を迎える取引先に線香を供える。
来るときの下りの渋滞を考えれば、帰りに東北自動車道は使えない。一般道を辿り、最後は日光宇都宮道路の土沢I.C.からこわごわ日光宇都宮道路に乗って今市I.C.を目指す。電光掲示板によれば、渋滞は今日の僕には関係しない、日光I.C.から清瀧I.C.のあいだで起きているとのことだった。会社に戻れたのは、朝に予想をしていたより早い12時46分だった。
目の前の春日町交差点には、いつの間にかクルマが詰まっている。その先頭は道の駅「日光街道ニコニコ本陣」だろう。渋滞の最後尾は日光方面の杉並木の中に消えていて、見ることはできない。こういうときにはホンダフィットではなく自転車で道の駅へ出かける。そして15時すぎに納品すべき品を頭に刻み、ふたたび日光街道を遡上する。
店の混雑の中に白人のご家族がいらっしゃって、アルバイトのワタナベサクラさんに何ごとかお訊きになっている。時刻は15時30分。引き継いだ僕にその女性は、いま隠居で食事ができるだろうかと問われた。以降のやり取りは以下。
「隠居は生憎と、毎週、土日月の営業で、しかも朝食の専門店です」
「あら残念。このあたりで他に食事のできるところはありますか」
「蕎麦屋なら営業しているかも知れません」
「それは、商業施設の中のお店ですか」
「いえ、このちかくです」
商業施設とは多分、道の駅「日光街道ニコニコ本陣」のことだろう。そこにある飲食店は満席だったものと思われる。僕は尻のポケットからiPhoneを取りだし、蕎麦の「やぶ定」の電話番号を探す。
「そのデータを私にください」
「大丈夫です。いま蕎麦屋の主人に電話をします」
「それは有り難うございます」
やがて「やぶ定」のワガツマカズヨシさんが、こちらの呼び出しに応じる。いま食事ができるか否かを問えば、今日に限っては通しの営業をしていないという。それをご家族の代表の、女の人に伝える。彼らは礼を述べて去った。「お盆に観光地に集団で」という旅の仕方には、特に外国からの旅行客には辛いものがあるだろう。
さて本日の売上げは昨日のそれにくらべて流石に3.6パーセントの減。これから16日までは漸減が続き、お盆休み最終日の17日には更に減、という流れだろうか。
夕食の後に入浴をして寝室の戸を引くと、中は滅茶苦茶。衣類が床に散乱し、寝台の掛け布団も乱れてめくれていた。孫のリコとカコが大人の服を着て遊んでいたに違いない。というわけで、そのまま明かりを落として寝に就く。
朝飯 トマトのソテーを添えたスクランブルドエッグ、納豆、茄子の油炒め、なめこのたまり炊、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、揚げ湯波と玉葱と若布の味噌汁
昼飯 会社支給の「コスモス」のハンバーグ弁当
晩飯 夏太郎らっきょう、天ぷらあれこれ、かやくごはん、「松瀬酒造」の「松の司生酛純米酒」(冷や)
2025.8.13(水) むかえ盆
仏壇の中のものはきのうの早朝にすべてを取り出し、乾いた布で拭き、あるいは化学繊維製のはたきでほこりを払って元に戻した。扉の内外は、ほこりの積もりがちなところを中心として濡れ布巾で清めた。よって気分は清々としている。
きのうの日記にひと区切りをつけると時刻は4時30分。東の空にはひさかたぶりに、紅い色が見える。それを更に広く望もうとして屋上へ上がる。安全壁の縁を飾るかまぼこ形の瓦にiPhoneを置く。すると右腕に何かの気配を感じたため視線を落とすと、そこには小さな蜘蛛がいた。「朝の蜘蛛は殺すな」だったか「夜の蜘蛛は殺すな」だったかは定かではなかったものの、その蜘蛛の右腕にうごめくまま、北東の空に狙いを覚めてホームボタンを押す。
5時30分、白と黄色の大量の菊を抱えて家内と外へ出る。そして如来寺のお墓に参る。新旧および叔父と叔母のお墓には計9対の花立てがある。菊は茎の長いままだったから、これを家内に切ってもらい、逐一、それらを線香と共に供えていく。
朝礼の後、道の駅「日光街道ニコニコ本陣」への納品から戻ると、店には今日から発売の、日光の畑で採れたらっきょうを塩と酢だけで漬けた「夏太郎」が、既にして朱のお盆に載せられ、冷蔵ショーケースに置かれていた。今月9日に試食をしたところでは、いまだ中心に生の部分があったものの、それからの3日間で急速に仕上がった。「夏太郎」の在庫は、9月の末までは保つらしい。
日中の店舗は客足が閑散とする時間もあったものの、閉店後にキャッシュレジスターを締めてみれば、売上金額は10日、11日のそれより、更にはきのう12日のそれよりも多かった。今年のお盆の売上げは10日と11日の連休が双耳峰のように高くなり、以降は漸減して次の突出は15日としていた僕の予想は丸外れ、である。
17時50分、如来寺のクワカドシューコー住職と4階の応接間にいたところに長男と孫のシンとカコがロウソクの点った提灯を持ってお墓から戻ってくる。小さな子供に迎えられたとあれば、ご先祖様もさぞやお喜び、かどうかは不明ながら、良い景色ではあると思う。
朝飯 茄子の油炒め、きのうの夜の残りのキャベツ炒めと豚の生姜焼き、揚げ湯波の甘辛煮、なめこのたまり炊、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、揚げ湯波と隠元豆の味噌汁
昼飯 玉葱と擂り胡麻のつゆで食べる素麺
晩飯 枝豆、春雨サラダ、沢庵、夏太郎らっきょう、焼き餃子、麦焼酎「こいむぎやわらか」(生)
2025.8.12(火) 虫の声
目を覚ましたのは3時51分。そのまましばらく休む手もあったものの、3時台の起床は「得した感」が強い。洗面所から廊下を伝って食堂の扉を押す。棚の電波時計は3時57分を差していた。
その食堂に風を通すべく、南東と南西に面した窓を開く。すると南東の側から虫の声が聞こえてきた。それははじめ、国道121号線を隔てた駐車場の、松の根元から発せられているように思われた。よって窓の、腰の高さほどの下枠にもたれて、その声の主のいそうなところを、いまだあたりは真っ暗ではあるものの、凝視する。盛んに鳴く一匹の虫は、どうやら松の木より数十メートルほども向こうで羽根を震わせているらしかった。
「断腸亭日常」が秋に近づくと、虫の声のことがしきりに出てくる。荷風は虫の声を「虫語」と書いた。まさか「むしがたり」ではないだろうから「ちゅうご」と読むのだろう。
タイには「何もしない」ということをするために行く。あるいは本を読むために行く。5月から携えているライオネル・バーバーの「権力者と愚か者」を読み終えたら次は岩波文庫の「断腸亭日常」全9巻、と行きたいところではある。しかしルビが振られていないため、手は出しづらい。百年以上も前の、しかも漢籍に通じた人の文章は、いくら流麗でも素では読みづらい。何とも切ないことである。しかしてまた、書店にて立ち読みをして、飛ばし飛ばしでも読めるようなら購うべしと、未練の心は、ある。
さて、きのうの日記には「お盆の繁忙は、今日で一旦は収束。昨年の記録によれば、次の山は15日に来そうではあるけれど」と書いた。しかし今日の売上金額は、きのうのそれを超えた。短期決戦の「読み」は何とも難しい。お盆やすみの終わる17日までは、品切れに注意を払いつつ、何とか乗り切っていきたい。
朝飯 刻みオクラの鰹節かけ、茄子とトマトのソテーを添えた目玉焼き、大根おろしを薬味にした納豆、隠元豆の胡麻和え、なめこのたまり炊、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、揚げ湯波と若布の味噌汁
昼飯 炒めた茄子のつゆで食べる素麺
晩飯 玉子焼き、菠薐草の胡麻和え、茄子の揚げびたし、甘唐辛子の炒り煮、キャベツのソテーを添えた豚の生姜焼き、夏太郎らっきょう、「山本合名」の山廃純米「天杉」(冷や)