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清閑 PERSONAL DIARY

2016.10.7 (金) バンコク日記(2日目)

20161007vバンコクの宿は今回”Centre Point Silom”の、リバービューの部屋にした。窓に近づくと、しかし所詮は川沿いに建っていない悲しさで、目の前にはシェラトンのコンドミニアムをはじめ大きな建物があり、チャオプラヤ川はその一部しか望めない。「だったら3年前の、シティビューの部屋の方が眺めは良かったわな」と後悔しても遅い。ただしベランダに出れば、サトーンの船着き場から下流の、大きく湾曲した川面を見晴らすことはできる

宿泊は食事を含まないプランにて、朝はチャルンクルン通りを北に歩く。ことし2月、「洽記珠宝行」の向かって右側にクイティオの名店を発見した。ちかくまで行くと幸い店は開いていた。よって席に着いて「センヤイナム」と店員に注文すると、別のオバチャンが入口の調理場から僕を手招きする。そばに立った僕に「ルークチンはないの。代わりにこれでいいかしら」と、オバチャンは油揚げの煮びたしを指す。望むところである。

席に戻り、ほどなくして運ばれたドンブリを見ると麺はセンヤイではなく太めのセンミーで、椎茸がやたらに浮いている。汁をひとさじ飲んで「2月と全然、違うじゃねぇか」と驚く。そしてここでようやく店先の黄色い旗に気づき「なるほどギンジェーか」と腑に落ちる。というか残念さを感じる。ギンジェーの期間中は、ダシから具に至るまで動物性のものは一切、使わないのだろう。路上のおかず屋台にも「齋」の旗が目立つ

今日はタイの最終日だ。時間は無駄にしたくない。無駄にしたくないとはいえ、あくせくと歩きまわるわけではない。上は白いポロシャツ、下は”Patagonia”のバギーショーツを身につけプールへ行く。そして寝椅子の上にパラソルを広げ、11時30分まで本を読む

チェンライにいるときとは打って変わって朝食は軽い。腹を空かせて外へ出る。チャルンクルン通りを、BTSの高架をくぐって南に歩く。1960年代の東京ならそこここで見ることのできた、異臭を放つ黒い水の川を渡る。しばらく行くとソイ57が左手に伸びている。これを過ぎると間もなく左手に、タイ語と共に”YAN NAWA FIRE & RESCUE STATION”と書かれた消防署が見えてくる。この消防署に向かって右側にあるのがカオマンガイの”Meng Pochana”だ。鶏肉も炊き込みごはんも美味い。というか、ごはんの脂のコクがただものではない。レモングラスの香るスープは辛く酸っぱく爽やかだ。

「来年はラオカーオを持って、また来てぇなぁ」と思わないでもない。しかし夜のバンコクにいながらカオマンガイのみを肴に酒を飲むのも味気ない。だったらどうするか。来年までの宿題である

午後はサトーンからフェリーボートで対岸に渡り、知ったマッサージ屋で足マッサージ1時間を受ける。本当はタイマッサージ2時間にしたかったけれど、夕方が忙しくなることは避けたかったのだ。

18時までのレイトチェックアウトには1,500バーツの追加料金がかかる。しかし外から帰るたび何度でもシャワーの浴びられることを考えれば、僕にはそう高くは感じられない。落ち着いて荷造りをすると、きのうはスーツケースからはみ出した草履も何とか収まった。フロントに降りてチェックアウトをする。荷物はベルボーイに預ける。そして先ほど船着き場から戻る途中でバンラックのフードセンター裏に見つけ「5時に来る」と約した海鮮屋台へ行く。

「あ、本当に来た」とばかりに、料理担当のオニーチャンは僕に握手の手を差し伸べた。「プラーヌンマナーオ」と声を大にして言う。オニーチャンはすかさず写真入りのメニュを僕に見せた。プラーニンには200バーツ、鱸には250バーツの値が付いている。ここはやはり鱸だろう。その鱸の柑橘蒸しも、また海老のニンニク揚げも美味かった。とどめのガイヤーンは胸に染みた。タイとも今夜でお別れである。イスラム寺からコーランの詠唱が流れはじめる。時刻は18時05分だった

ホテルに戻り、ベルボーイに50バーツを渡してタクシーを呼ぶよう頼む。間もなく来た朱色のタクシーに荷物を積んでくれた別のベルボーイには40バーツを渡す。時刻は18時18分。タクシーはポーチの奥で回頭すると、チャルンクルン通りに出て高速道路の入口を目指す

右手数百メートルの距離にある大きな駅を指し「ノーンアライ」と訊くと「マッカサン」と運転手は答えた。時刻は19時41分。普段なら1時間もかからず空港に着くところ、金曜日の今夜はホテルを出て1時間23分も経って、いまだダウンタウンの真ん中にいる。自分の持つ多くの悪癖のひとつに「危機に及んで何もせず平然としている」というものがある。赤く光る数千個のテールランプを眺めつつ「間に合わなかったらそれまでだ」くらいの気持ちでいるとは、明らかに人間失格である。間もなくふたつ目の料金所を過ぎる。

渋滞とは不思議なもので、あたかもこの料金所が狭い水門ででもあったかのように、車間はまたたく間に広がり、スピードメーターは遂に100キロを超えた。やがて空港の青い明かりが見えてくる。その明かりが見る間に近くなる。運転手は停まっている車列のあいだに朱色の鼻先を突き入れた。時刻は20時07分。メーターは389バーツ。祝儀を兼ねて500バーツを手渡すと、そこで運転手ははじめて笑った。

20時15分にタイ航空のカウンターでチェックインを完了する。20時25分に手荷物の検査場を抜ける。20時43分にパスポートコントロールから出国をする。C3ゲートへ向かう途中の免税店では、僕がチェンライで買ったとおなじ品に4.6倍の価格を付け、そこに「特価」の札を添えている。

“BOEING 747-400″を機材とする”TG682″は定刻に25分おくれて23:10に離陸をした。海の上に出て右に旋回すると、ほどなくしてベルト着用のサインが消える。デパスとハルシオン各1錠ずつを、空港の自動販売機で買ったミネラルウォーターで飲む。椅子の背もたれを後ろに倒す。ウインドブレーカーの胸ポケットから取り出したアイマスクで目を覆う。来たときとは異なって、すぐには眠れない。


朝飯 チャルンクルン通りのクイティオ屋のセンミーナム
昼飯 “Meng Pochana”のカオマンガイ
晩飯 バンラックフードセンター裏の海鮮屋台のプラーガポンヌンマナーオ海老のニンニク揚げガイヤーン、ラーカーオ”Black Cook”(生)

  

上澤卓哉

上澤梅太郎商店・上澤卓哉

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