2025.6.10 (火) 勉強
4階の窓のすぐ下には3階の窓のひさしがあって、それは4階の食堂のテーブルに着いていても、視覚の範囲内にある。そのコンクリート製のひさしの上を、ツバメよりすこし小さな鳥が歩いている。腹は黄色みを帯び、背中と羽根は炭色に見える。そしてその鳥の名を僕は知らない。
知らないことがあると悔しさのあまり、それについて一から十まで知ろうとする人がいる。「名も無い草花などと無責任なことが言えるか」と、世に存在するすべての植物の名を覚えようとした人もいた。恐るべき情熱、恐るべき無鉄砲さ、である。
シリアの首都はダマスカス、ベネズエラの首都はカラカスと、そういうことなら僕も知っている。この知識は地理を学んで得たものではない。遠い記憶を辿ってみれば、神保町の岩波ビルの上の方にあった英会話学校の、授業ではなく、英語を教えながら旅をしていた英国人との、雑談の中で覚えたような気がする。
地理の勉強は苦手だ。自由学園男子部高等科の国語教師だったヤマグチヒカル先生は勉強を「勉め強いるもの」と、おっしゃった。みずから勉める気力は無い。他者から強いられることには耐えられない。「シリアの首都はダマスカス、ベネズエラの首都はカラカス」は、それを覚えることが勉強でなかったからこそ一瞬で頭に刻まれたのだ。
そういえば、きのうの日記の最上部に置いた、隠居の池泉に咲く花がショウブなのか、はたまたカキツバタなのかが、僕にはあやふやなままだ。今度、専門家に訊いてみようと思う。
朝飯 切り昆布の炒り煮、揚げ湯波の甘辛煮、塩鮭、なめこのたまり炊、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」のお茶漬け
昼飯 にゅうめん
晩飯 鮨あれや、これや、焼き鳥あれこれ、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、たまり漬「七種きざみあわせ・だんらん」、麦焼酎「こいむぎやわらか」(お湯割り)