2020年7月の日記31本
2020.7.31(金) どれほど好きかといえば
銀座のコリドー街を南西へ、つまり新橋を目指して歩く。するとやがて首都高速道路ではない、むかしは「会社線」と呼んでいたような気もするが、正しくは東京高速道路の下をくぐる。頭上を覆うものがなくなると、すぐ右手はこの道路に上がるための土橋の入口だ。その入口に沿って張られた金網に、夏になると咲く花がある。万事に疎い僕のことだから、花の名前はもちろん知らない。
それとおなじ花が、ここ何年かは店の坪庭の、竹垣に咲くようになった。そして今朝はふと思いついて、その花をiPhoneで撮ってみた。iPhoneには、花の名前を特定するアプリケーションが入っているのだ。
花の名前は果たしてマルバアサガオと知れた。説明によれば、それは雑草、それも農家を悩ませる問題雑草に分類され、種には毒さえ含むという。
実は僕は、この花が好きである。どれほど好きかといえば、よその家の飼い犬の頭を撫でるくらいの軽微さで好きだ。花を生業とする人なら見向きもしない、というあたりにもまた「あはれさ」を覚えるのかも知れない。
朝飯 牛肉のすき焼き風、納豆、トマトのスクランブルドエッグ、ピーマンと人参の炒り煮、ごぼうのたまり漬、メシ、長葱の味噌汁
昼飯 ラーメン
晩飯 らっきょうの塩漬け、TIO PEPE、スパゲティナポリタン、Petit Chablis Billaud Simon 2016、スモモのゼリー
2020.7.30(木) 太陽の季節
きのうの閉店後は販売係に製造係の面々が力を貸して、店の冷蔵ショーケースを掃除した。手の届くところはもちろん日々、綺麗にしている。しかし梅雨入り前と梅雨の上がるころには、商品をすべて出し、底板を外して、その下の部分まで拭き掃除をする。お客様の目に見えないところこそ、清潔に保つ必要がある。作業は45分ほどで完了し、ショーケースは、底板の奥底まで磨き上げられた。
秋には東京から本職を呼ぶ。そのときには各部を分解し、素人の手には負えない更に奥まで、蒸気を当てつつ清掃する。これもまた、毎年くりかえしていることだ。
街で人と顔を合わせれば、冬は寒さを嘆き、夏は暑さを呪う言葉が、とかく交わされる。今ならさしずめ梅雨の長さを指しての愚痴だろうか。
夏はいち早くプールや友達の家の持つ別荘に繰り出して遊びたい。そういう学生のころに一度、長梅雨に焦燥した経験がある。しかし今年の梅雨は、1951年に記録を始めて以来、もっとも長引いているという。梅雨が長ければ、その後に来る太陽の季節にも、なるべく長くあって欲しいと思う。
朝飯 牛肉のすき焼き風、納豆、ピーマンと人参の炒り煮、長葱の「日光味噌のたまり浅漬けの素・朝露」漬け、ごぼうのたまり漬、メシ、キャベツと若布の味噌汁
昼飯 ラーメン
晩飯 豆腐と茄子と万能葱の味噌汁、トマトと刻みキャベツを添えた豚のしょうが焼き、らっきょうのたまり漬、「渡邉佐平商店」の「純米地酒焼酎」(お湯割り)
2020.7.29(水) 暖簾に腕押し
5月より2、3日に1回の割合で、TikTokに朝食の動画を上げている。するとどういうわけか、4回に1回ほどは、その再生回数が1万を超える。中には84.8Kなどというものもある。観る人が多くなれば、感想も多く付く。
その感想の中で目立つものを上げれば、ごはん茶碗の位置がおかしい、漬物はお膳の向かって左に置くべきだ、納豆と玉子を混ぜると栄養成分が失われる、口を閉じて食べろ等々、なかなかにかしましい。
ごはん茶碗については、これを手前に置いて写真に納めると、ごはんがいわゆる「白飛び」を起こす。それを嫌っての位置である。左手で器を持ち上げなくても箸で取りやすい漬物は、左より右に置いた方が合理的だ。僕の朝食は、栄養のためでなく人生の喜びのひとつとしてある。よって栄養は考慮しない。口を閉じて食べろとは、多分、漬物を食べるときの咀嚼音を指してのことだろう。iPhoneのマイクは、口の中の音も明瞭に拾う。
このような説明を、いちいち僕が出て行って付けることはしない。TikTokの運用はすべて、外注SEのカネヒラケンジさんに任せている。カネヒラさんは、その手の感想には「苦笑」や「照れ笑い」を表す顔文字、あるいは「そうなんですねー」くらいの返信で済ませている。
カネヒラさんは、僕よりひとまわりは年少と思われる。しかし僕よりよほど、大人である。
朝飯 牛肉のすき焼き風、生玉子、ピーマンと人参の炒り煮、ごぼうたまり漬、長葱の「日光味噌のたまり浅漬けの素・朝露」漬け、茄子の塩漬け、メシ、揚げ湯波とズッキーニの味噌汁
昼飯 きのう「和光」から持ち帰った豚カツによる弁当
晩飯 オクラと山芋の酢の物、らっきょうのぬか漬け、豆腐と揚げ湯波と豚三枚肉と水菜の鍋、「松瀬酒造」の「松の司山廃純米」(冷や)
2020.7.28(火) 聴きながら眺めながら
「タイには毎年、3月と6月と9月に行くことにしています」と、タイに長く住んでいた人に話したことがある。「なにも、そんな悪いときをわざわざ選ばなくても」と、その人は笑った。
インドシナでは、3月は酷暑を迎えるころであり、6月は雨期のまっただ中、9月は雨季から乾季に移りつつあるときだが、時として大雨に見舞われる。しかし雨期においても雨がシトシトと降り続くことはほとんどない。大抵は一気に降り、すぐに上がる。旅行者は少なく、宿泊料は安い。つまり悪いばかり、でもない。
いばらの茂みを住み家にするウサギもいれば、家で飲む酒がいちばん美味い、という人もいる。ウサギは人ではないけれど、人の好みは様々だ。僕も家飲みばかりだが、たまには外へ出る。
街ではほとんどそこにしか行かない居酒屋の引き戸は開け放たれて、店の中には静かで涼しい空気があった。そして昭和の歌謡曲を聴きながら、あいだみつをのカレンダーを眺めながら、ビンの4分の1ほども焼酎を飲む。
朝飯 ピーマンと人参の炒り煮、牛肉のすき焼き風、冷や奴、長葱の「日光味噌のたまり浅漬けの素・朝露」漬け、柴漬け、茄子の塩漬け、ごぼうのたまり漬、メシ、大根と若布の味噌汁
昼飯 ラーメン
晩飯 「和光」のお通しの茄子とモロッコインゲンの揚げびたし、鰹の刺身のたたき風、つぶ貝の刺身、サービスの冷やしトマト、豚カツ、「二階堂酒造」の麦焼酎「吉四六」(オンザ日光の天然氷)
2020.7.27(月) 「べらぼう」は能代にある居酒屋の名前
ウェブショップの、あるところの説明文について「分かりづらい」と、先日お客様よりご意見をいただいた。確認してみると、なるほど分かりづらい。よって即、書き換えの提案を、外注SEのカネヒラケンジさんにした。カネヒラさんによれば、その部分はシステムの都合上、前半が全角で25、後半も全角で25と、文字の数を制限されているという。
制約を受けながら生きていくことを嫌う人間と、僕はこれまで自覚してきた。しかし、こと限られた文字数の中で文章を組み立てる行いについてはこれを好む、ということが、今朝は分かった。
2時台に目の覚めたことを奇貨として「明日の朝、考えます」ときのうカネヒラさんに約束したその説明文を、3時すぎより練りはじめる。そこにはまた「に同意する」の5文字が、行尾に”default”として入る。これもまた制約のひとつである。
そうしてできあがった文章を、3時43分にチャットワークに上げる。カネヒラさんからは「はじめ改行が上手くいかなかったものの、前半25文字のポイント数を上げたところ、上手く収まった」との、画像を伴う返事が4時24分に届いた。「ブラボー」である。
朝飯 揚げ湯波と小松菜の炊き合わせ、納豆、ピーマンと人参の炒り煮、柴漬け、長葱の「日光味噌のたまり浅漬けの素・朝露」漬け、ごぼうのたまり漬、メシ、揚げ湯波とつる菜の味噌汁
昼飯 「大貫屋」の冷やし中華
晩飯 水菜とレタスと胡瓜のサラダ、カレーライス、3種の薬味、Old Parr(ソーダ割り)
2020.7.26(日) ところが
「いつも今日のように、15分も歯を磨きますか」と、温泉旅館の脱衣所で訊かれたことがある。洗い場で歯を磨く僕の様子を、その人は湯に浸かりながら見ていたらしい。
「歯磨き 精神病」と検索エンジンに入れると「強迫性障害」という病名に行き当たる。僕の歯磨きは、まさかそれではないだろう。歯のどの部分を磨いたかを忘れてしまうことにより、おなじところを重複して磨いているのだ。
ときどき歯茎の痛むことがある。僕はこれを歯肉炎によるものと考え、その都度、複数のビタミン剤を服用してきた。ところが、である。
先週の水曜日に、大井町のソーマ歯科を久しぶりに訪ねた。診察台に仰向けになった僕に口を開けさせ、その中を一瞥するなり「歯茎が傷んでますね、2、3日は触らないでください」と、先生はマスクの奥から声を発した。僕の歯茎の痛みは病ではなく、歯ブラシでの擦過傷によるものだったのだ。
「2、3日」と言われたものの、それから今日まで、僕は4日も歯を磨いていない。それでも口の中に違和感は無い。ことによると僕の歯磨きは、月水金などと、日を限るべきなのかも知れない。
朝飯 茄子の揚げびたし、揚げ湯波と小松菜の炊き合わせ、牛肉のすき焼き風、長葱の「日光味噌のたまり浅漬けの素・朝露」漬け、ごぼうのたまり漬、メシ、オクラと若布の味噌汁
昼飯 柴漬け、つる菜のおひたし、牛肉のすき焼き風、大根と胡瓜と人参のぬか漬け、メシ、大根とズッキーニの味噌汁
晩飯 蛸とトマトと胡瓜のサラダ、2種のパン、鮭のクリーム煮、Petit Chablis Billaud Simon 2016
2020.7.25(土) いまや貴重になった日本
pool氏は、栃木県でもっとも読まれているだろう飲食店紹介サイト「とち、フラ~」の運営者だ。そのpool氏による「汁飯香の店 隠居うわさわ」の記事が、今朝、そのサイトに上がった。有り難いことだ。そして開店をすると間もなく、この「とち、フラ~」をご覧になったと思われる方々からの予約が入り始めた。さすがのアクセス数と、大いに感心をする。
「汁飯香の店 隠居うわさわ」の営業日である、土、日、月の3日間においては、家内は4時に起きる。そしてひとり朝食を済ませ、5時には隠居へ向けて去る。朝食に特化した「隠居うわさわ」の開店は8時30分、最終入店は12時30分、閉店は14時。家内は大抵、僕が昼食を摂っている最中の14時すぎには自宅へ戻る。しかし今日に限っては、その姿がいつまでも見えない。
家内は午後も半ばを過ぎるころ、ようやく事務室に現れた。聞くところによれば、隠居には予約なしのお客様が続々と詰めかけ、普段は予備としている個室の「杉の間」まで埋まったという。また、最後にお見えになった若い男女の5名様は特に「隠居」の諸々を珍しがり面白がり、最後は畳が気持ち良いと、そこに寝転んでのおくつろぎ様だったという。
和服は現在、ほぼ”costume play”として息を長らえている。新築される家には、和室を備えない例も珍しくない。和食については、どうか。
「和のすべては珍しく、面白い」と感じて下さる方の「隠居」へのご来店は、とても嬉しい。
朝飯 揚げ湯波と小松菜の炊き合わせ、牛肉のすき焼き風、茄子の塩漬け、ごぼうのたまり漬、柴漬け、白粥
昼飯 ラーメン
晩飯 冷やしトマト、揚げ春巻き、素麺の「日光味噌ひしお」による肉味噌和え、「松瀬酒造」の「松の司山廃純米」(冷や)
2020.7.24(金) いらっしゃってくださったお客様に
「Go Toトラベルキャンペーンに期待することは何でしょう」とテレビ局の人に訊かれて「期待は特にありません、いらっしゃってくださったお客様に最善を尽くすのみです」と答えたのは、5日前のことだ。そのGo Toトラベルキャンペーンが始まったのはいつだろう。そしていつ終わるのだろう。
Go Toトラベルキャンペーンの優遇を受けるには、どのような方法をとれば良いのだろう。旅行代理店へ出向いて、対象のツアーを申し込むのだろうか。
「いますぐタイとラオスの国境まで行ってくれ」と言われれば、明日の午前にはメコン川のほとりに立っていられる。それは、その方法その他がからだに染み込んでいるからだ。しかし国の決めたあれこれについては、どうにも頭に入ってこない。
日光宇都宮道路の今市I.C.から鬼怒川方面に向けては、午前のうちから渋滞が発生した。そしてそのクルマの列は、午後の中ごろになっても、いまだ続いた。「いらっしゃってくださったお客様に最善を尽くそう」と、あらためて思う。
朝飯 冷や奴、揚げ湯波と小松菜の炊き合わせ、トマトのスクランブルドエッグ、納豆、胡瓜のぬか漬け、ごぼうのたまり漬、メシ、若布と大根の味噌汁
昼飯 ざるラーメン
晩飯 二十日大根を添えたオムレツ、Petit Chablis Billaud Simon 2016、「久埜」の麩まんじゅう、Old Parr(生)
2020.7.23(木) だから、そうではなくて
高等学校の1年のときか2年のときか、それは忘れた。とにかく国語の授業のときだったと思う、「好きな季節と、その理由を述べよ」と、国語のヤマグチヒカル先生は問いを発せられた。
真っ先に手を挙げた者が誰だったかは覚えていない。指名をされて「好きな季節は夏。理由は、海で泳げるから」と勢いよく答えた。それを受けた先生の第一声は「そうではなくて」だった。
それまでの授業の成り行きから「そうではなくて」の理由は、僕には分かっていた。そういう具体的なことではなく、感情や情緒の発露を、己が内包する、今の言葉でいえば「エモさ」の探索を、先生は期待されていたのだ。
二人目か三人目に「好きな季節は夏。何というか、草がボーボー生えてて、太陽がギラギラしてて、地面に映る影が濃くて」と答えたのも、誰だったかは覚えていない。しかしそのとき「そうそう」と相づちを打たれた先生の、満足そうなお顔はいまだ脳裏に鮮明だ。
先生の問いに対して、今の僕なら何と答えるだろう。「好きな季節は夏。明るいうちから飲めるから」などと言えば「だから、そうではなくて」と「だから」が追加されることは明白である。
朝飯 揚げ湯波と小松菜の炊き合わせ、納豆、目玉焼き、大根と人参と胡瓜のぬか漬け、ごぼうのたまり漬、メシ、鯛と豆腐と三つ葉の味噌汁
昼飯 ソース焼きそば
晩飯 らっきょうの塩漬け、バンブー、マッシュルームと玉葱のポタージュ、3種のパン、カプレーゼとブルーベリーのジャムを添えた豚のパテ、Petit Chablis Billaud Simon 2016
2020.7.22(水) のちの「楽」のために
目を覚まし、部屋の明るさの具合から「4時になろうとするころだろうか」と想像する。枕のまわりを手で探ってiPhoneを探す。時刻は4時5分だった。
着替えて食堂に出て窓を開ける。地面は濡れているものの、雨は降っていない。鳥の声を聞きながら、きのうの朝に書いた、おとといの日記を「公開」する。そこで休まず、きのうの日記を完成させる。それからおもむろに事務室に降りて、小切手1枚を切る。
白内障の手術はさいたま市の眼科で受けた。術後は半年に1度の検診を、真面目に受けてきた。歯は、品川区の歯科で検診や治療を受けている。「なぜちかくを選ばないか」と問われれば、僕の、距離より納得を重く視る性格による。
ところがこの春にいきなり勃発した「移動の制限」により、その距離が心理的にはとても遠くなってしまった。眼科には11ヶ月も無沙汰をしている。歯科の方は本日、ようやく診察を受けることができた。
ここ数ヶ月のあいだ具合の悪かった奥歯は、現在の先生により、その症状の解決を得意としている別の歯科医院を紹介された。今後しばらくは、ふたりの先生の世話になりつつ治療を続ける。からだの維持管理には、手間ひまを惜しまない。なぜならその方が「のちのち楽」だからだ。
朝飯 切り昆布と細切り人参の炒り煮、納豆、茄子の揚げ浸し、オクラのおひたし、人参と獅子唐の天ぷら、茗荷の酢漬け、胡瓜の柴漬け、らっきょうのたまり漬、メシ、若布と揚げ湯波とズッキーニの味噌汁
晩飯 「烏森百薬」のお通しのバクダン、クレソンのサラダ、鰹のたたき、ポテトサラダ、「栁田酒造」の麦焼酎「夏の赤鹿毛」(ソーダ割り)
2020.7.21(火) 早いとこ降っちゃえ
早朝、窓を開けて、食堂に鳥の声を招き入れることは、生活の中にある楽しみのひとつだ。おとといも、またきのうも晴れて、食堂には複数の鳥の、ピッピッピッピッピッとか、キリッキリッとか、ガーガーとか、チュロリチュロリ、という声が絶え間なく届いた。
ふつか続きの晴れは「これで梅雨明けか」という思いを僕に与えた。しかし元の木阿弥というか何というか、今朝はまた、街は霧の底に沈んだ。湿り気の粒が家の中に入ってきそうな気がするから、窓は開けない。
今年の、子供の夏休みは短いという。「コロナ」により学校の日程が滅茶苦茶になったせいだ。ウチに学齢期の子供がいないから、その滅茶苦茶の具合や夏休みの日数については、僕は知らない。夏休みが短ければなおのこと、子供たちのためにも、そのあいだは夏らしい晴れが続いて欲しいものだ。
夕刻に至って「梅雨は雷に始まり雷に終わる」という言い伝えを忘れていたことに気づく。この夏は、その雷雨が、いまだ来ない。「早いとこ降っちゃえ」と、願わずにはいられない。
朝飯 助六寿司、らっきょうのたまり漬、若布と万能葱の味噌汁
昼飯 ざるラーメン
晩飯 冷やしトマト、らっきょうのぬか漬け、らっきょうのたまり漬「ピリ太郎」、茄子と南瓜と人参の素揚げ、カレーライス、Old Parr(ソーダ割り)、わらび餅、Old Parr(生)
2020.7.20(月) 曙光
本日、各々がどのように動くかについては、きのうの夕刻に、家内と長男と共にすり合わせをした。天から降りてきたような需要がにわかに発生したためだ。その、何をすべきかを記した紙を、早朝に清書する。蔵、つまり製造現場には、今朝はいつもより1時間はやく降りた。
包装主任のヤマダカオリさんは、本日やすみのところ、朝から数時間のみ出勤することを決めた。販売主任のハセガワタツヤ君は、やはり本日やすみのところ、午前の数時間のみ出勤することを決めた。彼らは周囲の人たちと力を合わせて、平時の数倍の量になる商品を作り上げた。
空はきのうに引き続いて晴れた。気温はきのうのそれより更に高い。繁忙の最中にはまた隠居を訪ね、家内や隠居係のタカハシリツコさんと、短く言葉を交わす。
ひとつの仕事を終えるたび、朝に清書した「すべきこと」の、ひとつひとつに印を付けていく。その最後の1行は、19時すぎに完了した。明日は明日で、次の1行が始まる。明日の朝礼を、なんとなく楽しみに思う。
朝飯 切り昆布と細切り人参の炒り煮、生玉子、オクラのおひたしと茄子の揚げ煮びたし、納豆、唐辛子の「日光味噌のたまり浅漬けの素・朝露」漬け、らっきょうのたまり漬、柴漬け、メシ、ズッキーニの味噌汁
昼飯 ざるラーメン
晩飯 トマトと玉葱のサラダ、じゃがいもの素揚げ、「にんにくのたまり漬」を添えたビーフステーキ、“MARGAUX CHATEAU DU MARUGAUX 2012”、「ニルバーナ」のチーズケーキ、Old Parr(生)
2020.7.19(日) 他力
朝、道の駅「日光街道ニコニコ本陣」に納品をしながら、如来寺のお墓へ行く。今月13日の、妹の祥月命日に供えた白菊は、大輪に開いて元気だった。ここしばらくは、朝は霧、昼は小雨の肌寒い日が続いた。それ故の、花の保ちだろう。菊は花立てから取り出して、茎を水で洗った。その花立ては、新しい水で満たした。これで菊は、いまだ数日は、生きることができるだろう。
午前の中ごろよりにわかに忙しくなって、1枚の覚え書きを作る。それを必要な数だけ複写して、社員のあいだをまわる。社員のあいだだけでなく、外も回る。早朝は暖房の欲しくなる気温だった。しかし空は徐々に晴れ上がり、入道雲さえ立ちのぼった。昼は食堂に冷房を入れ、冷たい麺を食べる。
午後、販売係のササキユータ君が事務室の扉を開きつつ「テレビ局の方です」と、僕に視線を送った。僕は事務机を離れ、店の冷蔵ショーケースの前に立つ。「Go Toトラベルキャンペーンに期待することは何でしょう」と、テレビ局の人が僕にカメラを向ける。「期待は特にありません、いらっしゃってくださったお客様に最善を尽くすのみです」と、僕は答える。
他力に期待するとすれば、コロナ禍が去ってくれること、ただそれだけである。
朝飯 切り昆布と細切り人参の炒り煮、揚げ湯波、しょうがのたまり漬、唐辛子の「日光味噌のたまり浅漬けの素・朝露」漬け、梅干、柴漬けによるお茶漬け
昼飯 冷やし中華
晩飯 春雨サラダ、若布と厚揚げ豆腐のスープ、焼売、焼きそば、”ABSOLUTE VODKA”(ソーダ割り)、「ニルバーナ」のチーズケーキ、Old Parr(生)
2020.7.18(土) みな仲良く
本日「汁飯香の店 隠居うわさわ」には、朝の9時から14名様のご予約をいただいている。それについての注意を、朝礼のときには皆に伝える。
道の駅「日光街道ニコニコ本陣」への、本日1回目の納品を済ませて8時30分に会社の前まで戻ってくる。すると「隠居うわさわ」のお客様らしい方をご案内しているらしい、ハセガワタツヤ販売主任の姿が見えた。僕は即、ホンダフィットを駐車場の端に駐め、お客様をハセガワ君から引き継ぐ。
うかがったところによれば、お客様は、計4台のクルマにより上澤梅太郎商店を目指していらっしゃるという。さいわい雨は降っていない。よって外で立ち話をするうち、3台目のクルマは9時5分に到着した。ここで僕は、先ずは今いらっしゃる11名様を先にご案内することとした。
ふたたび店に戻り待つうち、最後の3名様は9時30分に到着された。これで全員がおそろいになった。僕は胸をなでおろして「隠居」までの100メートルほどを、3名様と共に歩く。
後に家内に聞いたところによれば、そのとき「隠居」の厨房では、お米は既にして炊きあがっていた。それでもお客様の席で蓋を取れば、湯気は炊きたてのように、盛大に立ちのぼったという。そのあたりが土鍋の底力なのだろう。
食後、お客様は買い物を済まされると、華厳滝へ向かわれた。そこから下って二社一時を見学され、今夜は那須に宿泊のご予定と、教えてくださった。大家族がみな仲良くされて、大したものだと思う。
朝飯 切り昆布と細切り人参の炒り煮、納豆、若布と玉葱の酢の物、生玉子、しょうがのたまり漬、茗荷の酢漬け、メシ、大根と大根の葉の茎の味噌汁
昼飯 弁当
晩飯 大根おろしを添えた厚焼き玉子、ブロッコリーの胡麻和え、肉団子と水菜の鍋、その鍋で煮たラーメン、「松瀬酒造」の「松の司特別純米」(冷や)
2020.7.17(金) 梅雨いまだ上がらず
このところ、朝はいつも、霧が出る。今朝のそれは特に、深かった。街が霧に閉ざされると、当然のことながら、山も空も見えない。そして人里を離れた、谷の底にいるような気持ちになる。
5時に設定したアラームだかアラートだか知らないけれど、その音にうながされて仕事場へ降り、朝の仕事に従う。半袖のポロシャツ1枚で寒い、ということはない。しかしその上に白衣を羽織ると、何となく心地が良い。
オフクロに聞いた話だが、おじいちゃんはある時期、蕎麦による夕食を何十日も続けたことがあるという。そのオフクロの父親は、夏休みなどに遊びに行くたび、夜は湯豆腐を欠かさなかった。僕の昼食も、それに似たところがある。まさかそれが数ヶ月におよぶことはないけれど、しばらくは同じようなものが続くのだ。
5日ほど前までは、冷やし中華を食べていた。しかし以降は梅雨寒が続き、温かいものが欲しくなった。生麺は、いまだ在庫が冷蔵庫にある。そういう次第にて先日その麺を買った福島商店へおもむき、今日はスープ6食分のみを袋に入れて会社に戻る。
朝飯 納豆、スナップエンドウとスパムのソテー、切り昆布と細切り人参の炒り煮、青葱の「日光味噌のたまり浅漬けの素・朝露」漬け、メシ、若布とズッキーニの味噌汁
昼飯 ラーメン
晩飯 冷やしトマト、胡瓜のナムル風、冬瓜と豚のソーキのスープ、麻婆豆腐、「紅星」の「二鍋頭酒」(生)、桃と桜桃と豆乳の杏仁豆腐風
2020.7.16(木) イークラ先生
高等学校のときの英文法の教師はイークラ先生だった。先生の陰々滅々として孤独そうな印象は、文法という学問に似合っている気がした。先生はまた、大変なヘビースモーカーだった。つまりは「重症のニコチン中毒患者」というわけだ。
先生は講師でいらっしゃったから、受け持ちの授業を終えればすぐお帰りになる。先生は、学校内では一切、喫煙はされなかった。我慢に我慢を重ねて、正門を去ると同時にタバコを取り出し、歩きながらそれに火を点けるのだ。まさかその後を追って確かめたわけでもないだろうけれど、同級生のひとりが言うには、先生は1本目を吸い終えると即、2本目を取り出して、性急にそれを吸い始めるのだという。
夕食の最後に、甘い西洋菓子を肴にしてウイスキーを飲んだ。すると妙にタバコが欲しくなった。よって食器棚の、薬を収めた引き出しから、いつ買ったか覚えていないピースの箱を取り出す。そして仏壇からマッチを借り、階下に降りて外へ出る。
タバコには曰く言いがたい、抽象的な美味さがある。「生まれてこのかた、タバコは1度も吸ったことがない」という人もいるけれど、この美味さは知っておいて損はない。そして店の駐車場のベンチに腰かけ、ことし2本目のタバコをイークラ先生とおなじほどの速度で、吸う。
朝飯 生のトマト、切り昆布と細切り人参の炒り煮、納豆、唐辛子の「日光味噌のたまり浅漬けの素・朝露」漬け、大根と人参と胡瓜のぬか漬け、肉味噌、メシ、三つ葉の味噌汁
昼飯 ラーメン
晩飯 らっきょうのたまり漬と鶏笹身肉とレタスのサラダ、“LE COFFRET”のパン、夏野菜と茸のスパゲティ、Petit Chablis Billaud Simon 2016、“LE COFFRET”のケーキ、Old Parr(生)
2020.7.15(水) 送料
日本とは異なって、南の国には正札の無い例が目立つ。あるいはあっても、掛け値をしている。その値段の交渉、有り体に言えば値切ることを無上の楽しみとする人がいる。そのような人は、人と人との触れ合いが好きなのだと思う。
南の国ではまた、正札があっても、売り手がハナからそれを無視して、自分の理想とする価格を示してくることがある。メーターを備えながらそれを使わないタクシーなどは、その代表だろう。
僕は、旅先では心付けを渡すことを好む。しかしメーターを使わないタクシーは好まない。だからそのような運転手にはメーターを使うよう言う。それに従わなかった運転手には、ことインドシナにおいては、これまで遭遇したことはない。
メーターを使おうとしない運転手には、それを使うよう言う。しかし掛け値をしていると明らかに思われる商人と、丁々発止のやりとりをしながら値を下げさせようとする、ということはしない。それは多分、人との接触を、僕がそれほど好まないからだと思う。
そのような性格によるものかどうかは不明ながら、僕はウェブ上で買い物をすることが好きだ。ところが困ったことに、送料を支払うことは好まない。よって「〇円以上のお買い物については送料サービス」という店側の提案に、僕は乗りやすい。
味噌汁の出汁には煮干しを使う。煮干しは長崎の店で買ったり築地の店で買ったりする。先般、その築地の店で煮干しを買いながら、どうにか送料をサービスしてくれる水準まで買い物をしようとして、煮干しに加えて若布も買い物カゴに入れた。その若布には「ヤケに高けぇな」と感じる値段が付けられていた。しかし「健康のためなら死もまた辞せず」という人とおなじく、送料をサービスさせるためなら、僕は高い買い物も厭わない。
そしてこの若布を数日前から使い始めたところ「ヤケに高けぇ」どころか「ヤケに安い」ことが分かった。肉厚で歯ごたえの良いことに加えて、水にさらすと異常にかさを増すのだ。
そういう次第にて今朝も、その若布を流水にさらして塩を抜き、味噌汁の具にする。若布は、これから数ヶ月は、冷蔵庫の中で保つと思う。
朝飯 鮪の「日光味噌のたまり浅漬けの素・朝露」漬け丼、オクラのおひたし、青葱の「日光味噌のたまり浅漬けの素・朝露」漬け、若布とアルファルファの味噌汁
昼飯 「金谷ホテルベーカリー」の2種のパン、コーヒー
晩飯 じゃがいもと胡瓜と鯖のサラダ、刺身湯波の餡かけ、キャベツの千切りとトマトを添えた串カツ、「渡邉佐平商店」の酒粕焼酎「SEIKAI ALCOHOL 77%」(ソーダ割り)
2020.7.14(火) 次は月のころに
我が人生で最強の「痛み取り屋」へ向けて、9時に会社を出る。
背骨と右肩胛骨のあいだの痛みが徐々に強くなり、我慢できないところまで達したのは、おととしの年末だった。外科の病院を訪ねると、レントゲン写真を撮られ、診察をされ、背中にブロック注射を打たれた。注射は数日をおいて2度うけたが、効果はせいぜい半日しか保たなかった。
年明け、その外科から宇都宮の総合病院に、MRIによる患部の撮影を予約してもらった。インターネットを介して返送された画像をコンピュータのディスプレイに凝視した外科の先生は「脊柱管が狭窄しているようにも見えますね」と言った。その言葉の調子は、僕には「脊柱管が狭窄しているように見なくもない」と聞こえた。
処方された鎮痛剤で痛みを鎮める日々が続いた。しかしいつまで鎮痛剤に頼ることは、僕にはとてもではないけれど、不気味でできない。
そんなある日「からだを妙な具合にひねり、どうにも痛みが去らないため、神の手により一発で治してもらった」と、facebookに上げた人がいた。僕は即、メッセンジャーで自分の窮状を訴え、その整体院について教えてもらった。
はじめその整体院には1週間に2度の割合で通った。治療の頻度は症状が軽くなるにつれ1週間に1度、10日に1度、2週間に1度と低くなっていった。背中の痛みは数ヶ月で霧消した。
「大きな痛みが去ると、それまで隠れていた別の痛みの出てくることがあります」という先生の予言を裏付けるように、今度は左肩にひどい痛みが浮上した。それもまた、先生は根気よく解かした。以降は右膝の不調を治しながら「次は2ヶ月後で良いでしょう」と言われるまでに、僕のからだは持ち直した。
昨年の正月から数えて今日は47回目の施術だった。9,000ボルトを発する電子ペンによる治療は、症状の重いときには、肌に突き立てたボールペンに10キロの重石を載せたほどの痛みを伴う。しかし今日はからだのどこに押し当てられても、ただ触れているだけにしか感じなかった。
先生は現在の施設を閉じ、来週から2ヶ月のあいだ勉強に没頭するという。宵の空に月の綺麗に上がるころになったら、また先生の携帯電話を鳴らしてみようと思う。
朝飯 切り昆布と細切り人参の炒り煮、納豆、茄子とオクラの炒め煮びたし、胡瓜の「日光味噌のたまり浅漬けの素・朝露」漬け、大根と人参と胡瓜のぬか漬け、刺身湯波、メシ、揚げ湯波と菠薐草の味噌汁
昼飯 ラーメン
晩飯 手巻き鮨、「松瀬酒造」の「松の司特別純米」(冷や)、水羊羹、Old Parr(生)
2020.7.13(月) 鮨くらいでは済まない
妹は1972年に14才で病没をした。その祥月命日が近づくと、毎年、南半球から花を届けてくれる人がいる。「日本に来たら、ぜひ連絡してください」と、その都度お礼のメールを送る。しかしその人はいつも黙って日本に来て、黙って南半球に戻ってしまう。銀座で鮨を差し上げるくらいでは済まないはなしだ。
きのう届いたその花は、仏壇の前に日光彫りの台を置き、その上に飾った。と、ここまで書いて「ひとつの文に『その』が重複してはおかしいだろうか、英文であれば、ひとつのセンテンスに”the”の重複する例はあるけれど」と、しばしキーボードを打つ指が止まるも、日記が長くなるので先へ進む。
「墓参りは朝にするものだ」という考えが僕にはある。家内は「汁飯香の店 隠居うわさわ」の仕事で現場を離れることができない。そういう次第にて9時すぎに会社を出て、先ずはJR通りの「花一」で白菊10本を購う。そして如来寺の、桜の古木のちかくにホンダフィットを駐めて、墓地の砂利を踏む。
会社に戻ると10時を5分だけ過ぎていた。ひとりによる墓参りは、結構、時間のかかるものだ。
お墓に供えた花が、人知れず枯れている景色はわびしい。これからしばらくは、数日おきにお墓へ通おうと思う。
朝飯 揚げ湯波と小松菜の炊き合わせ、納豆、切り昆布と細切り人参の炒り煮、大根と人参と胡瓜のぬか漬け、青葱の「日光味噌のたまり浅漬けの素・朝露」漬け、メシ、玉葱とズッキーニの味噌汁
昼飯 ラーメン
晩飯 レタスと南瓜とトマトとパプリカのサラダ、漬物の盛り合わせ、カレーライス、Old Parr(ソーダ割り)、自由学園のクッキー、Old Parr(生)
2020.7.12(日) 助け合いの方向
9時に上がった花火の音は、事務室にいても聞こえた。「八坂祭だ」と言うと「えっ、もうそんな時期」と、長男は飛び上がらんばかりに驚いた。
先週の日曜日は、町内の公民館に祭壇を設けた。またカキダレのための和紙を、集まった役員で手分けして折った。そのカキダレは今年の分ではなく、コロナ禍が去るか、あるいはワクチンが開発されるかして、お祭が元の形で行えるようになったときの準備である。
今年4月、総鎮守瀧尾神社の春の大祭は、お囃子もなく渡御の行列もなく、神事のみで静かに終わった。そしてこのたびの八坂祭も、家の前の飾りつけは無し、渡御の行列も無し、御神輿の巡行も無し。今朝は花火は上がったものの、宮司と当番町の三役がクルマで各町内の会所を回って終了だという。
今年の当番町である大谷向町は、戸数も多く、お祭に際しては満々の気持ちで臨んだことだろう。当番町は、12年に1度しか巡ってこない。お祭の大幅な縮小は、12年後に町内の中枢でお祭を仕切るべき若い人の勉強の機会を、ほぼゼロにする。現在の三役は、12年後には引退をしている可能性が高い。
各町内は、お祭に関しては今後ますます、助け合いの方向を目指していくだろう。
朝飯 切り昆布と細切り人参の炒り煮、揚げ湯波と小松菜の炊き合わせ、青葱の「日光味噌のたまり浅漬けの素・朝露」漬け、しょうがのたまり漬、しいたけのたまり炊によるお茶漬け
昼飯 冷やし中華
晩飯 ズッキーニの味噌汁、茄子とピーマンの素揚げ、ルッコラと水菜のサラダを添えた鶏の唐揚げとコロッケ、大根と人参と胡瓜のぬか漬け、蕪のぬか漬け、甘らっきょう、「渡邉佐平商店」の酒粕焼酎「SEIKAI ALCOHOL 77%」(ソーダ割り)、桜桃のヨーグルト和え、Old Parr(生)
2020.7.11(土) これは簡単
朝は日記を書いたり本を読んだりする。時には明日の日記も書く。あさっての日記については、よほどの予定でもない限り書かない。音の無い、あるいはせいぜい鳥の啼き声くらいしか聞こえてこない時間は貴重だ。
土、日、月は上澤梅太郎商店が運営する朝食専門店「汁飯香の店 隠居うわさわ」の営業日だ。この3日間は、その日の予約に従って、家内は4時とか5時に起きてくる。そして高橋義孝風にいえば「それが天の命令ででもあるかのように」テレビのスイッチを入れる。そうなると、ものを書いたり読んだりは、もうできない。
そういう次第にて僕は席を立ち、今日は料理をすることにする。
きのう製造顧問のフクダナオブミさんに、家庭菜園で採れた唐辛子をもらった。唐辛子とはいえ梅雨の最中のそれはまったく辛くないという。その、艶やかに膨れた紡錘形を水で洗い、縦に二つ割りにして種を除く。そしてフライパンに油を敷き、弱火で炒める。
唐辛子は徐々に丸まり縮んでくる。生らしさの消えた頃合いを見計らってキッチンペーパーの上に移し、油切りをすると同時に冷ます。そして適当な保存容器に収めて「日光味噌のたまり浅漬けの素・朝露」を注ぐ。「朝露」の量が「ひたひた」ではしょっぱくなりすぎるから、半分くらいのところで抑えておく。これで「たまり浅漬け」の仕込みは完了である。
家内は6時に隠居へと去った。僕は「30分だけ」と決めて、ふたたび本を開く。
朝飯 揚げ湯波と小松菜の炊き合わせ、切り昆布と細切り人参の炒り煮、温泉玉子、夏葱の「日光味噌のたまり浅漬けの素・朝露」漬け、刺身湯波、メシ、トマトとズッキーニの味噌汁
昼飯 肉味噌納豆うどん
晩飯 冷やしトマト、もやしのナムル、キムチ鍋、「渡邉佐平商店」の酒粕焼酎「SEIKAI ALCOHOL 77%」(ソーダ割り)、バナナプリン、Old Parr(生)
2020.7.10(金) ひさかたの
朝の明るい今ごろは特に、目を覚まして食堂に出れば、即、空を望めるよう、カーテンを巻き上げる。しかしここ数日はその行いを、しばしば忘れた。それはとりもなおさず、空はいつも、鉛色に塗りつぶされていたからだ。
今朝は、ここ10日ほどの例に反して、すこしばかりではあるものの、東の空に明るみがうかがえた。よって両側を本棚に挟まれた狭い廊下を進み、その先にある、北東に面した窓のカーテンを少しずらしてみた。すると東方のオレンジ色の上には雲が層を成し、そこから上手、否、芝居ではないから上手はおかしい、北へ寄ったところには青空さえ望めた。時刻は4時37分だった。
その空の写真を撮り終えて食堂に戻り、既にして書けていたおとといの日記を整える。ただしその最上部に置く画像はいまだ用意できていないから「公開」ボタンはクリックしない。そしてきのうの日記に取りかかり、これをあらかた完成させる。
9時にホンダフィットのハンドルを握り会社を出る。農家を訪ね、ふたつの銀行でそれぞれの用事を済ませる。途中、東武日光線の下今市駅に寄り、次は道の駅で2種の野菜を仕入れる。帰ると時刻は10時になりかかるところだった。空は結局のところ晴れず、また雨が降ってくる。
朝飯 納豆、揚げ湯波と小松菜の炊き合わせ、舞茸のソテー、切り昆布と細切り人参の炒り煮、ピーマンとスパムのソテー、夏葱の「日光味噌のたまり浅漬けの素・朝露」漬け、肉味噌、メシ、大根の味噌汁
昼飯 朝のおかずを流用した弁当
晩飯 ポテトフライ、トマトとレタスとアボカドのサラダ、エリンギのソテーと茹でたブロッコリーと「にんにくのたまり漬」の薄切りを添えたビーフステーキ、San Pedro Castillo de Molina Carmenere D.O.Valle del Maule 2018、バナナプリン、Jagermeister(生)
2020.7.9(木) それは1982年の
このところ太陽の見える日は一切、無い。きのうの午前には強い雨が降った。それ以外の日々も、止んだと思えばまた降り、の繰り返しだ。
最後の墓参りは先月の23日。お婆ちゃんの祥月命日だった。盛夏には、お墓の花は水を小まめに換えつつ数日のうちに片付ける。しかし日照りのない今であれば、花は雨の中でいまだ生きながらえているだろう。そう考えて、本日ようやくお墓を訪ねてみる。花は、誰かの手により既にして片付けられていた。
自由学園の中等科と高等科の、1学期の終業式は7月17日と、いまだに覚えている人がいる。その人によれば、そのころ梅雨は既にして上がっていることが多かったという。そう言われてみれば僕も、傘を差しつつ帰省をした記憶はない。ただしその数年後、いつまでも梅雨の上がらない夏のあったことは覚えている。
列島の上空に弧を描くようにして前線が停滞している。太平洋の高気圧に押されてそれが北に遠ざかれば、それがすなわち梅雨明け。しかし今年はその高気圧の勢いがさほど強くないと、今朝のテレビの気象予報士は説明をしていた。
「夏をあきらめて」と検索エンジンに入れてみる。それは果たして1982年のはやり歌だった。今年の梅雨明けは、いつになるだろう。
朝飯 納豆、島豆腐と玉子とズッキーニのチャンプルー、茄子と獅子唐のソテー、揚げ湯波と小松菜の炊き合わせ、万能葱の「日光味噌のたまり浅漬けの素・朝露」漬け、らっきょうのたまり漬、しょうがのたまり漬、メシ、ズッキーニの味噌汁
昼飯 冷やし中華
晩飯 夏葱の「日光味噌のたまり浅漬けの素・朝露」漬け、冷やし醤々うどん、「渡邉佐平商店」の「純米地酒焼酎」(お湯割り)、李のゼリー、チーズケーキ、Old Parr(生)
2020.7.8(水) 線状降水帯
仏壇に供える花は白い菊を5輪と決めている。
おなじ日に買った菊でも、その保つ日数には大きな開きがある。菊の、駄目になる形にはふたとおりがある。ひとつは、首のところから90度ほども、いきなり頭を垂れる。もうひとつは、花の中心部から外へ向けて、徐々に黒ずみが広がっていく。
駄目になった菊は、次々と処分をしていく。そうするうち、もっとも寿命の長い1輪が残る。「いまある1輪は、どれだけ保っているだろう」と考えて、小遣い帳を見る。それは果たして、昨月の15日にJR通りの「花一」で購ったものだった。梅雨寒とはいえこの時期に3週間以上も保つとは大したものだ。そして明日こそは新しい5輪を求めようと決める。
2015年9月10日、日光地方は「50年に1度の大雨」に見舞われた。そのころより「50年に1度」は耳に珍しいものではなくなった。「50年に1度の大雨」は毎年、列島のどこかしらで発生をしている。ここ数日のそれは特に、広い範囲に甚大な被害をもたらした。何十年ものあいだ丹精をし続けた農地が一瞬のうちに流される。愛着のある家や会社や生命を維持するために必要な施設を泥流が襲い、その機能を失う。人も勿論、流される。目を覆う惨状である。
「雨よ、早く止め」と祈る以外のことも人間はできる。しかし人間のできることは、あまりに小さい。
朝飯 万能葱の「日光味噌のたまり浅漬けの素・朝露」漬け、納豆、揚げ湯波と小松菜の炊き合わせ、冷や奴、「日光味噌梅太郎白味噌」を練り込んだ松かさ焼き、生のトマト、メシ、胡瓜と若布の味噌汁
昼飯 2種のパン、アイスミルクコーヒー
晩飯 揚げ湯波と小松菜の炊き合わせ、ポテトサラダ、焼き鮭、島豆腐と玉子とズッキーニのチャンプルー、胡瓜のぬか漬け、「渡邉佐平商店」の「純米地酒焼酎」(お湯割り)
2020.7.7(火) 褒美
毎年、2月の後半にタカシマヤ東京店の「老舗名店味紀行」に、また9月の後半にはタカシマヤ新宿店の「美味コレクション」に、それぞれ1週間の出店をさせていただいてきた。今年の2月も、また例年のとおりだった。しかしその直前から広がり始め、いまだに収束しない社会の混乱については、誰もが知るところだ。それを受けてのことだろう、夏から秋にかけての催しに変化が出てきた。
タカシマヤさんでの出張販売に際しては、毎回、お知らせをお客様にお送りしている。その催しに変化が生じれば、お知らせの内容や方法も、それに合わせて調整をする必要がある。
午前、きのう長男と錬った内容を2枚の紙に印刷し、それをコンピュータと共に持って4階の食堂に上がる。「ちかくまで参りましたので、お寄りしてみました」などという人がやたらに来る事務室では、精密な仕事はできない。そして小一時間ほどもかけて「条件付き小計」や「繰り越し演算」や「検索と消去」などを繰り返すうち、端正な結果が得られた。
そういう次第にて昼は「大貫屋」のタンメンを、自分への褒美とする。
朝飯 獅子唐の天ぷら、スペイン風目玉焼き、ホウレンソウのソテー、万能葱の「日光味噌のたまり浅漬けの素・朝露」漬け、しょうがのたまり漬、メシ、蕪の茎の味噌汁
昼飯 「大貫屋」のタンメン
晩飯 トマトのすり流し、椎茸と菠薐草のおひたし、鰆の「日光味噌梅太郎白味噌漬け」焼き、夏野菜の炒め煮びたし、松かさ焼き、「渡邉佐平商店」の「純米地酒焼酎」(お湯割り)
2020.7.6(月) 小さなクラス会
自由学園男子部36回生は、この時期にこぢんまりとしたクラス会を企画した。一行は、きのうの午後に日光入りをした。日光や鬼怒川へ遊びに来るときの一番の要諦は、お彼岸、ゴールデンウィーク、シルバーウィーク、紅葉の見ごろなどの、観光シーズンを外して計画を立てることだ。僕はきのう、彼らと街の居酒屋から洋食屋に流れ、楽しいひとときを持った。
幹事のヒラマツシューヘー君は本日、11時30分に「汁飯香の店 隠居うわさわ」を予約してくれていた。しかし一行はそれより数十分もはやく店に現れた。東照宮の見物は既に済ませたという。「クルマで1キロを進むのに1時間」という観光シーズンさえ外せば、誰もが自由自在である。
「熱海館の朝メシは美味い。だからごはんを3杯も食えば隠居の昼メシは苦しくなる」と、彼らには伝えておいた。彼らは「隠居」で、90分ほどもくつろいでくれた。環境にも食事にも過分の評価をいただけて有り難かった。彼らは店で買い物をしてくれた後、4台のクルマに分乗して去った。
それはさておき「隠居」には、下級生は続々と来てくれるものの、同級生はいまだひとりも現れない。誰か泊まりがけで来てくれないか。旅は気楽で忙しくないのが一番だと思う。
朝飯 スパムと空心菜のソテー、しょうがのたまり漬、人参のぬか漬け、メシ、若布と玉葱の味噌汁
昼飯 「カルフールキッチン」のサンドイッチ、アイスコーヒー
晩飯 レタスとブロッコリーのサラダ、牛すじ肉のジェノベーゼ、トマトとしらすとブラックオリーブのスパゲティ、Petit Chablis Billaud Simon 2016、ホイップクリームを添えたアースケーキ、コーヒー
2020.7.5(日) 泊まりがけ
地元の勉強仲間イトーヒロミさんが、友人のドーゾノアサコさんを「汁飯香の店 隠居うわさわ」にお連れくださった。「隠居」の照明は数十年前の古色蒼然としたもので、部屋は薄暗かった。それを解決すべく採り入れたのが、ドーゾノさんのご主人が経営される「てるくにでんき」の小さなLEDである。
材木屋のコバヤシハルオさんによれば「玄関に続く6畳間、その奥の6畳間はケの部屋、庭に面した6畳間は家族にとってのハレの場、床の間が南面する8畳間は客間。部屋の格は、天井板を観れば分かる」とのことだった。その天井に傷を付けることなく、既存の照明も活かしつつの増光が実現できたのは幸運だった。
午後、事務室にて、人の視線を感じて顔を上げると、自由学園男子部36回生、つまりひとつ下の面々が僕を眺めて笑っていた。彼らのうちのひとりヒラマツシュウヘー君は小さな同窓会を企画して、ひと月ほど前から「隠居」を予約してくれていたのだ。
夕刻、泊まりがけで来た彼らを、帰省中の次男と共に旅館「熱海館」へ迎えに行く。そして計9名にて夕食のひとときを持つ。
朝飯 小泉武夫先生が「100人中103人がおいしいと言う」と自賛する焼き納豆丼、しょうがのたまり漬、胡瓜と人参のぬか漬け、若布と菠薐草の味噌汁
昼飯 「日光の庄」の盛り蕎麦
晩飯 「和光」のあれや、これや、それや。他あれこれ。麦焼酎「吉四六」(ソーダ割り)
2020.7.4(土) 馬々虎々
「日記は翌日の早朝に書いて、その日の昼に公開する」というリズム、まぁ外来語はできるだけ使いたくないから時間的規則とでもしようか、とにかくそのような規則性を以て日記を更新していた時期がある。しかしここ数年は多く「日記は翌日の早朝に書いて保存し、既に完成しているおとといの日記を公開」している。自分の行動の理由を都度、考えることはしない。多分、在庫の余裕が欲しいのだと思う。
今朝は、おとといつまり7月2日の日記の「公開」ボタンをクリックして後は、そこにも書いた開高健の「玉、砕ける」を読む。そしてその冒頭より、これまで自分が読み違えていたところのあることに気づく。
—–
ある朝遅く、どこかの首都で眼がさめると、栄光の頂上にもいず、大きな褐色のカブト虫にもなっていないけれど、帰国の決心がついているのを発見する。
—–
という書き出しの「首都」を、僕はこれまでサイゴンとばかり思ってきた。それは多分、開口の一連の著作、および香港の三助が発する「アイヤー」という感嘆詞からの連想に拠ったものだろう。しかし数行先の
—–
焼きたてのパンの香りが漂い、飾り窓の燦めきにみたされた大通りへでかけ、いきあたりばったりの航空会社の支店へ入っていき、東京行きの南回りの便をさがして予約する。
—–
まで読み進めば「首都」がサイゴンでないことは明白だ。あるいは以前に読んだときには、そのような誤読はしていなかったかも知れない。それから何十年かのあいだに、自分の脳が勝手に「変換」を起こした可能性は、ある。
ところで僕は「澡堂」は、台北でしか経験をしたことがない。香港には、いつごろまで存在しただろう。
「玉、砕ける」はむかしの小さな活字によるものとしても、文庫本で15ページたらずの短さだから、端から端まで読んでも30分はかからない。そしてこれを本棚に戻せば、早朝の仕事に従うべく、エレベータに乗って1階のボタンを押す。
朝飯 若布と玉葱の酢の物、スパムと菠薐草のソテー、しょうがのたまり漬、メシ、若布と万能葱の味噌汁
昼飯 「ふじや」の広東麺
晩飯 「コスモス」のトマトとモッツァレラチーズのサラダ、チーズオムレツのカレーライス、ドライマーティニ、Tio Pepe、家に帰ってからのエクレア、Old Parr(生)
2020.7.3(金) 鬼田平子
地元の産品を詰め合わせた商品「おうち料理応援!味噌汁セット」は、春に企画して以来、今もなお、お客様からご好評をいただいている。これに含まれる完熟トマトの、6月分の代金を支払う必要がある。もうひとつ、毎週土日月に営業する「汁飯香の店 隠居うわさわ」のためのトマトを、今日は仕入れる必要がある。よって朝、ユミテ農園のユミテマサミさんに電話を入れる。呼び出し音10回は時間にして30秒。応答は無い。ユミテさんは僕とおなじく、携帯電話を携帯しないらしい。
電話が通じなければ、6月の支払いがいくらになるか分からない。もうひとつ、ユミテさんは朝は畑にいるから、釣り銭などは持たないだろう。そういう次第にて、1万円札から1円玉までを納めた手提げ金庫をホンダフィットの助手席に乗せ、農園のある森友地区へ向かう。
茎からもいだばかりのトマトは、いまにも爆ぜそうなほどに熟している。会社に持ち帰ったそれは即、隠居の厨房に運んだ。
来週の月曜日、 隠居には後輩7名が予約を入れてくれている。子供のころから寮で揉まれていれば、食べ物に好き嫌いは無いはずだ。味噌汁の具は、思い切って冒険をしてみても、良いかも知れない。
朝飯 納豆、菠薐草のソテー、大根おろしを添えた厚揚げ豆腐の網焼き、炒り豆腐、生のトマト、しょうがのたまり漬、メシ、万能葱の味噌汁
昼飯 熱い汁で食べるざる饂飩
晩飯 胡瓜と若布と蛸の酢の物、長芋のたまり漬、しらすおろし、豚の冷しゃぶ、豆腐としらすと溶き卵の味噌汁、「片山酒造」の酒粕焼酎「粕華」(お湯割り)
2020.7.2(木) 玉、砕ける
焼肉「板門店」のはす向かい、書店”TSUTAYA”のとなりにあった「正嗣」の今市店は、しばらく前に店を閉めた。だから日光市今市地区の住民は「まさしの餃子」を、これまでのように気軽に食べることはできなくなってしまった。
その「まさしの餃子」を先般、宇都宮の駒生店から送ってくれた人がいる。そして今夜は、それを鍋で煮るという。食器棚に置いた白酒は、底から3センチほどのところまで減っている。よって2階の倉庫からあたらしい1本を食堂に運び、万全を期す。
お客様にいただいた百德食品公司の豆板醤は、いよいよ残りすくない。よって今夜はそれは使わず、プリックナムプラーを冷蔵庫から取り出す。バンコクから持ち帰ったナムプラーに日光産の青唐辛子を加えたもので、こちらの在庫は充分だ。
それはさておき九龍醤園は、いまだ豆板醤を量り売りしているだろうか。自分が香港島のそこへ行く機会があれば、10年分くらいは買って戻りたい気分だ。
ところで香港の自由、闊達、放埒、あるいは2階建てのバスやトラムの頭上に煌めくネオンサイン、そういうものの好きだった人は、開高健の「玉、砕ける」を読んで損はない。テレサ・テンの「私の家は山の向こう」に歌われるのが「張おじさん」なら、この短い小説に登場する男の名も偶然、また「張」である。
朝飯 椎茸のおひたし、スペイン風目玉焼き、炒り豆腐、納豆、大根と胡瓜のぬか漬け、しょうがのたまり漬、メシ、豆腐と油揚げと万能葱の味噌汁
昼飯 冷やし中華
晩飯 ブラッディメリー、胡瓜のぬか漬け、キムチ豆腐、春雨サラダ、隠元豆の胡麻和え、「まさしの餃子」による水餃子、「紅星」の「二鍋頭酒」(生)
2020.7.1(水) 笹づくし
朝、家の竹藪から長男が竹を伐り出してきた。その枝を落とすところまでは僕も手を添えた。以降は家内や社員が手伝って、七夕の飾りを店の中に据えようとする。
竹を床に立てると、その先の高さは天井を遥かに超えてしまう。よって外へ出して地面に寝かせ、下から4節ほどをノコギリで落としてふたたび店の中に入れる。すると枝葉は大きくしなって、今度は隨分と短く感じられる。先ほど切り落としたばかりの4節を更に半分に縮め、その太い方に店の中の竹を接ぐと、ようやく格好が付いた。
この飾りは旧暦の七夕まで置くつもりと、長男は言う。カレンダーによれば、今年は8月25日がその日に当たっている。暦に則っている、とはいえ盆を過ぎての七夕飾りは、いかにもおかしい。というか、このような季節の行事を新暦で行うところに無理があるのだ。そしていくら無理があったとしても「御一新」以来の定めであれば、それも仕方がないのだ。
夕刻、必要に迫られて隠居へおもむく。すると玄関に続く6畳間の大壺に、笹の、今朝おとしたばかりの枝が大量に投げ込まれていた。ひと仕事を終えて母屋に戻ると、4階の廊下には、おとといサイトー君からもらった竹籠に、これまた何十本もの笹が枝をしならせていた。
膝のあたりにつきまとう孫に「笹の葉の歌、知ってる」と訊く。「知ってるよ」と彼女は答えて「ささのはさーらさらー」と歌い始めたと思うと、いきなりきびすを返して食堂に駆け戻った。「軒端に揺れて」から先も知っているかどうかは、明日にでも確かめてみようと思う。
朝飯 山芋と茗荷の酢の物、油揚げと小松菜の炊き合わせ、大根おろしを添えた揚げ茄子と揚げパプリカ、炒り豆腐、椎茸のおひたし、しょうがのたまり漬、メシ、若布と蕪の茎の味噌汁
昼飯 らっきょうのたまり漬、しょうがのたまり漬、3種のぬか漬けによるお茶漬け
晩飯 コーンポタージュスープ、スパゲティナポリタン、Petit Chablis Billaud Simon 2016、チョコレート、Old Parr(生)





































































































































