トップへ戻る

MENU

お買い物かご

清閑 PERSONAL DIARY

2021年2月の日記28本

2021.2.28(日) インターネットで売れないもの

家内の従姉妹の石版画を無印良品が売ると聞いたのは、今月はじめのことだっただろうか。AIか何かは知らない、みずから探したわけでもないにもかかわらず、きのう当該のページがフワリと僕のiPhoneに現れた。なかなか不気味な、今日このごろのインターネット事情である。

堂本右美の出品は2点。限定数は各100点。売られる場所は無印良品のウェブショップおよび銀座店。家内は2点の双方を買うべくコンピュータに向かった。しかし以前のパスワーは忘れ、登録し直そうとすると「そのメールアドレスは既に使われています」と、撥ねられるという。

「だっらた来月、オレが3丁目の店で買うよ」と提案をする。しかし売り切れが心配なのだろう、自分の代わりに今すぐウェブで買ってくれと家内は言う。

家内の代役は、それからしばらく後に果たすことができた。石版画2点の配達日は来月4日。届くのが楽しみだ。

数年前に、自分の家をネットオークションで売りさばいた例を耳にした。インターネットは情報を伝えるひとつの手段。とすればなるほど、これを介して売れないものはひとつとして無い、ということなのだろう。


朝飯 めかぶ、生玉子、納豆、白菜漬け、ごぼうのたまり漬、メシ、ピーマンの味噌汁
昼飯 塩鰹のふりかけ、白菜漬け、焼き鮭、ごぼうのたまり漬のお茶漬け
晩飯 トマトとピーマンと鶏の燻製のサラダ、チーズ、TIO PEPE、パンソーセージと長葱のソテーじゃがいものグラタンPetit Chablis Billaud Simon 2016「グルメ山中」の2種のケーキ、Old Parr(生)

2021.2.27(土) 【ウェブショップは休みません】

蔵の水路の補修を頼んだ業者には、7時40分に事務室を開ける旨を知らせてあった。その数分前に、釣り銭やコンピュータを両手に提げ、4階からエレベータに乗ろうとする。と、そこに電話がかかってきたから携帯電話を取り出そうとして、釣り銭とコンピュータを床に落とす。電話は長男からで、内容は、工事の人たちが到着したことを報せるものだった。

先ずは社員のために事務室のシャッターを上げる。その足で今度は蔵の奥まで走り、こちらもシャッターを上げる。工事の人たちと打合せをするうち7時55分が近づく。僕はまたまた走り、蔵の中でも朝礼のための場所へと移動をする。

今日の工事は、水路を覆った鉄板を外し、その部分を暗渠にするものだった。入念な清掃から始まった作業は、午後の中ごろには目鼻が付いた。コンクリートはいつ乾くか、その上を人はいつから歩けるか、台車は、更にフォークリフトはいつ通れるかなど、細かいことを確かめる。

3月2日から4日にかけての3日間を費やして、店の駐車場を再舗装する。それに伴って、店はお休みをいただく。しかし受注係と製造係は、普段と変わらず仕事をする。よって【ウェブショップは休みません】という表題のメールマガジンを、午後も遅くならないうちに配信する。


朝飯 らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、豆腐と白菜キムチと玉葱の天ぷらと長葱の味噌汁
昼飯 塩鰹のふりかけ、白菜漬け、焼き鮭、ごぼうのたまり漬のお茶漬け
晩飯 チーズ、ウォッカマーティニ、パンふかしたじゃがいもと小松菜とエリンギのソテーを添えたハンバーグステーキ、Petit Chablis Billaud Simon 2016、CHATEAU DUCRU BEAUCAILLOU 1982プリン、Old Parr(生)

2021.2.26(金) 徐々に戻れば

食品工場が抱える問題のひとつに、床や水路の経年劣化がある。ウチもその例に漏れず、補修を繰り返してきた。そして明日と来月の13日には、およそ10数年ぶりに大きめの工事が入る。商品の製造はできない。

きのうの朝礼では、土曜日に蔵が休みになっても、また翌日曜日の仕事が制約を受けても、とにかく品切れは発生させないよう伝えた。それを受けて今日は、休日の予定を入れていたスギヤマアイカさんが午前に、シバタミツエさんは午後に、それぞれ出勤をしてくれることになった。

彼女たちがより有利に仕事を進められるよう、今早朝は、その準備のため仕事場に降りた。このところの気温は高くなったり低くなったりを繰り返している。もっともいくら気温が下がっても、真冬という感じはもやはしない。

ところで我が栃木県は先月13日に、緊急事態宣言の対象地域となった。解除されたのは今月8日。それを受けて今年はじめての「本酒会」が、今日は開かれる。

「本酒会」は日本酒に特化した飲み会で、僕は書記と酒の取り寄せ係を兼務している。頼みつけの酒屋は現在4軒。時々によりそのうちの1軒から一度に4合瓶12本を取り寄せ、冷蔵庫に保管する。そしてそこから、当月の参加者の数により適当な本数を供出する。今日は5本を、朝9時すぎに来たイチモトケンイチ会長へ手渡した。

春の訪れと共に昼も夜も街が賑やかになってくれれば、それはとても喜ばしいことだ。さて、どうなるか。


朝飯 納豆、こんにゃくの甘辛煮、ベーコンエッグ、薩摩芋のレモン煮、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、菠薐草のソテー、大根と大根の葉の味噌汁
昼飯 数日前の夜のおかずと今朝のおかずを流用した弁当
晩飯 「やぶ定」の酒肴あれこれ、盛り蕎麦、会員からの寄贈も含めた6種の日本酒(冷や)

2021.2.25(木) 坂の上の雲

上澤梅太郎商店が行事を催したら1万4千人が参加をしてくれた、という夢のような夢を見ながら目を覚ます。

そのまま横になっていると、エンジンから排気管までかなりの改造を施したと思われるクルマの音が高速で近づいてくる。目の前の十字路で右折か左折を試みれば、道を外れてどこかに衝突しそうな勢いだ。しかしクルマは窓の外でその音量を最大にすると、宇都宮方面か鬼怒川方面かは不明ながら、そのまま遠ざかっていった。

いまだ起きることはせず、自由学園の高等科に学んでいたころのことを思い出す。その多分2年生のとき女子部の人に、2歳か3歳下の中等科の人たちがガリ版で刷り、ホッチキスで綴じた小冊子を見せてもらった。借り受けたわけではなく、その場でページを繰ったのみだったから、すべてを読めたわけではない。僕の目を惹いたのは「好きな作家ベスト10」というところで、その第1位は司馬遼太郎だった。

夏休み、冬休み、春休みに帰省をすれば、家で週刊朝日が読めた。司馬遼太郎はそこに「街道をゆく」を連載していた。僕はいつも、その部分は読まずに飛ばした。文体に馴染めなかったからだ。だから僕は、自分より年少の女の子たちが司馬遼太郎を好んで読むということに驚いた。

司馬遼太郎といえば、そのミニコミ誌を目にする数年前、つまり中学生のとき「坂の上の雲」が箱入りでおばあちゃんの机の上にあった。それに僕が目を留めると「まだ難しいと思うよ」とおばあちゃんは言った。それから50年ほどが経って、僕はいまだ、司馬遼太郎は1冊も読んでいない。


朝飯 鰯の丸干しの網焼き、白菜漬け、ごぼうのたまり漬、らっきょうの甘酢漬け、メシ、揚げ湯波と蕪の味噌汁
昼飯 「丸亀製麺」のわかめうどん
晩飯 めかぶの酢の物、白菜と塩昆布の浅漬け、「丸亀製麺」から持ち帰った天ぷらあれこれ、麦焼酎「むぎっちょ」(お湯割り)

2021.2.24(水) 何となく、すっきり

先月、千葉の山の中から戻った際に、私設の美術館”as it is”に立ち寄ったことを長男に告げた。すると長男はその日のうちに坂田和實の「ひとりよがりのものさし」を貸してくれた。

長男が日本橋高島屋に出張をしているあいだ、僕はこの写文集を読み続けた。青柳瑞穂の名は、そのページの残りも尽きるあたりにあった。ひっそりとしながら、しかしそれは気持ちに深く染み込んできた。

青柳瑞穂の「壺のある風景」は、ウェブ上に存外に安く見つかった。日本経済新聞社の刊であれば、ある程度は売れることを期待された本だろう。

届いて以来、僕はこの、それほど売れたとも思われない本を毎日、読み進んでいる。50年前に出たものとしては文字が大きく、行間も広いから、未明の食堂でも、また早朝の光の中でも苦も無く読める。内容は、とても面白い。そして味わいとしては、徳川義親や江戸英雄のそれに近い。

とここまで書いて、理解したことがある。僕は文章を、情報としては読んでいない。道ばたの花に足を止めたり、古い器を眺めたり、虫の音を聞くようにして、僕は本を読んでいるらしい。僕は文章は、読むそばから忘れる。その理由が今朝は、はじめて分かった気がする。何となく、すっきりした気分である。


朝飯 こんにゃくの甘辛煮、納豆、菠薐草のおひたし、牛蒡と人参のきんぴら、刺身湯波、白菜漬け、ごぼうのたまり漬、メシ、キャベツと万能葱の味噌汁
昼飯 揚げ玉、塩鰹のふりかけ、焼き鮭、白菜漬け、ごぼうのたまり漬のお茶漬け
晩飯 中華ハムの刻み長葱和え焼き餃子焼きそば、「紅星」の「二鍋頭酒」(生)、苺の杏仁豆腐

2021.2.23(火) 少々のマメさ

先月、あるいは昨年末のことだったか、両手の指先すべてに絆創膏を巻いている人を見かけた。アカギレにより、爪の先が肉から浮いている、あるいは爪の付け根の両脇が割れていることが想像された。僕は、冬は時により10本の手指のうち多いときは6本に、その症状の発生することがあった。もっとも困るのは、コンピュータのキーボードが打ちづらくなることだ。

僕の場合には、少々のマメさがその不便さを解消してくれる。朝、すべての指先に、日本ケミファのクリーム「モイスポリアホワイト」を塗って擦り込むのだ。

メーラーの「通信販売」というフォルダに検索をかけてみる。すると僕はこの、チューブに75グラムが入ったクリームを、2014年11月に10本、買っていた。10本のうち2本は新品のまま人に上げた。口を開けていくらも使っていないものも1本、人に上げた。いま残っているのは自宅用と会社用の1本ずつで、双方とも残りは少ない。

2014年から2020年までを指折り数えて「冬を7回で7本か」と考える。「そろそろ買わなきゃな」とも思う。しかし春は目の前まで来ている。次の注文は、11月の声を聞いてからでも遅くないだろう、多分。


朝飯 牛蒡と人参のきんぴら、菠薐草の胡麻和え、人参とキャベツと鶏肉のサラダ、しもつかり、大根の煮付け、ごぼうのたまり漬、メシ、舞茸の天ぷらと万能葱の味噌汁
昼飯 きのうのキムチ鍋の残りのぶっかけ飯、白菜漬け、ごぼうのたまり漬
晩飯 蛸とトマトとベビーリーフのサラダ、TIO PEPE、菜花とパンチェッタのスパゲティPetit Chablis Billaud Simon 2016ドーナツ、Old Parr(生)

2021.2.22(月) 2週間とすこし

先々週つまり今月の第2週までは、早朝の仕事もそれほど頻繁でなかった。しかしこのところは連日、製造現場へ降りている。この仕事は季節や繁閑には関係しない。関わった日をコンピュータに記録すればグラフにもなろうけれど、それはしていない。淡々粛々と、社員に頼まれたことをするまでだ。

繁閑といえば、店のキャッシュレジスターの釣り銭を増やすよう、きのう販売主任のハセガワタツヤ君に言われた。お客様が立て込んでいるときに硬貨が急減していくと、焦燥するのだという。売上げ金額の漸増は、新型コロナウイルスの新規感染者が減ってきた、というよりは春が近づいてきたことによるものと思う。

オフクロを知るお客様がいらっしゃったとの連絡を受けて、ご挨拶のため隠居へ急行する。座敷は南西からの日の光に満ちて、燦々と明るかった。ストーブは、4台のうち1台のみに火が入れられていた。春は遠くなさそうだ。とはいえ昨年は、桜の花に雪が積もった。それを考えればストーブも、そう軽々に片付けるわけにはいかないだろう

午後の日が傾いていくころ、いまいちど隠居へ行く。係のタカハシリツコさんは、厨房で片づけをしていた。僕は次の間に正座をして、ここに来て2週間とすこしを経た壺をしげしげと眺める。そしてまた立って、通常の業務へと戻る。


朝飯 干し海老を薬味にした煮奴、めかぶの酢の物、しもつかり、白菜漬け、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、キャベツと揚げ玉の味噌汁
昼飯 塩鰹のふりかけ、塩昆布、ごぼうのたまり漬、白菜漬け、焼き鮭によるお茶漬け
晩飯 めかぶの酢の物、3種の漬物キムチ鍋、麦焼酎「むぎっちょ」(お湯割り)、プリン、Old Parr(生)

2021.2.21(日) 牛丼とカオマンガイ

「牛丼屋にて」という団鬼六の随筆がある。それを読めば、あの吉野家で牛皿とお新香を肴にコップ酒を飲んでみたくなる。しかしてまた田舎に住む僕としては「東京まで来て吉野家かよ」という気持ちもある。よって同社のウェブページにもある「吉呑み」は、いまだ実現していない。

今朝はその「吉呑み」より安直な「ファミマ飲み」というものをウェブ上に発見した。ファミリーマートでおかずと酒を買い、それをイートインで楽しむのだという。角打ちの新しい形と言えなくもない。椅子があるだけ角打ちよりも楽そうだ。しかしコンビニエンスストアは酒屋ではない。客同士で談論風発となれば、周囲は眉をひそめるに違いない。

ところで冒頭の「牛丼屋にて」に戻れば、この初出は1980年代後半あるいは1990年代初頭と思われる。そこには牛丼の並盛が400円、牛皿の並盛は300円、おしんこは90円と律儀に記してある。当時の消費税3パーセントを加えれば412円、309円、92円。約30年後の現在、吉野家のウェブページに提示してある価格はそれぞれ352円、302円、108円だ。

シンガポールの海南鶏飯の価格は、日本の牛丼のそれより既にして高い。タイのカオマンガイが日本の牛丼を価格で追い越すのは、いつになるだろう


朝飯 焼き鮭、めかぶの酢の物、しもつかり、厚焼き玉子、白菜漬け、ごぼうのたまり漬、メシ、キャベツの味噌汁
昼飯 ラーメン
晩飯 スパゲティナポリタンPetit Chablis Billaud Simon 2016プリン、Old Parr(生)

2021.2.20(土) 黎明

払暁と早暁の違いを僕は知らない。とにかく5時40分に家内を隠居へ送る。食材や弁当箱などの荷物が多いのだ。夜明け前、ということもある。その隠居からとんぼ返りをして、今度は製造現場に入る。夜のクラブ活動は苦手でも、朝の一人仕事は結構、得意な方である。

水曜日に帰社して以来、長男は3階でひとり自主隔離をしている。これからいまだ10日間ほどは、eメールやメッセンジャーによるやり取りになるだろう。その文字数は毎日、数千ほどと思う。

と、ここで日記を書く手を休めて「電子メール革命の衝撃」と検索エンジンに入れてみる。ニシジュンイチロー先生はこの本を1995年にお書きになった。amazonに出ている古書の価格は何と8,746円。応接間の先の本棚を確かめると、3冊があった。

1995年といえば、あのグロービスが電子メール教室を開いていた時代である。その「コンピューター・リテラシー講座」の受講料は14万8千円、教材として買わされる、カラー液晶が話題になったThinkPad230Csは30万円。インターネットの常時接続は月に60万円を要した。どのような分野においても「黎明期」の話は面白い。


朝飯 しもつかり、白菜漬け、ごぼうのたまり漬、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、メシ、舞茸の天麩羅の味噌汁
昼飯 弁当
晩飯 トマトとベビーリーフのサラダ、Petit Chablis Billaud Simon 2016、ふかしたじゃがいもと茹でたブロッコリーと「たまり漬を使ったソース」を添えたビーフステーキCHATEAU DUCRU BEAUCAILLOU 1982エクレア、Old Parr(生)

2021.2.19(金) ツジバード

上澤梅太郎商店は「ほぼ年中無休」で動いている。静かに過ごせるのは、夜の明ける前のみだ。その時間の長短は、目覚めの時刻による。今朝は3時台から食堂に出ることができた。「大余裕」である。

数日前に個展の案内が届いた。本人が画廊にいる日を確かめるべく、メッセージを送ろうとして、ふと手を止める。その人のスマートフォンが、この時間から妙な音を発したり震えたりしては申し訳ないと考えたからだ。ちなみに僕は、その手の報せはすべて設定を切っている。

隣の食堂の明かりを頼りに、暗い応接間の仏壇に花やお茶や線香を供える。そこから戻る途中、応接間の、椅子と一体になった小机のワインに気づく。

むかしツジバードという食いしん坊がいた。彼はniftyの電子会議室を主催していた。あるとき彼はそこで、ペトリュースの1961年物を飲んだ経験を語った。グラスに1杯で深く満足をして、それ以上、欲しい気持ちは起きなかったという。

そのような偉大なワインを口にしたことはない。しかしツジバードの言うことはよく分かる。きのうのデュクリュボーカイユは、家内に手伝ってもらっても半分しか飲めなかった。中の空気は真空栓で抜いてある。しかし早く飲むに越したことはない。そう考えて、今夜もきのうに引き続いてステーキを食べることとした。

午後、思いがけず牡蠣が届いた。というわけで、夕食は牡蠣フライに変更をされた。それはそれで、とても嬉しい。食べきれなかった分については、明日の昼のおかずにしようと思う。


朝飯 納豆、揚げ湯波とひじきの炒り煮、細切り人参のサラダ、茹でたブロッコリー、しもつかり、白菜漬け、ごぼうのたまり漬、メシ、蕪と蕪の葉の味噌汁
昼飯 揚げ玉、白菜漬け、塩鰹のふりかけ、ごぼうのたまり漬のお茶漬け
晩飯 蕪と蕪の葉のサラダ刻みキャベツを添えた牡蠣フライPetit Chablis Billaud Simon 2016エクレア、Old Parr(生)

2021.2.18(木) 境界線

北海道と東北地方の日本海側は数年に一度の暴風雪と、テレビの天気予報が伝えている。同時に映し出された列島の地図には、雪の範囲が示されている。このようなとき、我が栃木県日光は、その白い帯の南東端に含まれることが多い。きのうはその地域に「50センチ」の文字があった。冗談ではない。日光市の多くの住民は僕と同じく、その白い帯から日光が外れてくれることを願っているはずだ。

今朝、恐る恐るカーテンをずらしてみると、外には普段の景色があった。道路には黒いアスファルトがあり、道向こうの駐車場には灰色の砂利がある。安堵の瞬間である。

日本橋高島屋の催事に際しては、お得意様は当方からお送りしたハガキを持ってご来店くださる。午前、その戻りハガキを事務机に積み上げ、顧客名簿に入力をしていく。この仕事は、僕ひとりでは完了までに数日を要する。よって事務係のツブクユキさんに諮り、手伝ってもらうことにする。

午後は、家内と宇都宮のカイロプラクティックに出かける。この日の随一の楽しみは、家内が施術を受けているあいだに喫茶店で本を読むことだ。

夕刻に帰社すると、長男の「出張報告」ができあがっていた。終業後のミーティングではそれを複写して、短く説明をしながら皆に配る。そして今般の増産により休みを返上した社員には、代わりの休みを取るよう言う。


朝飯 榎茸と菠薐草のおひたし、納豆、揚げ湯波とひじきの炒り煮、しもつかり、こんにゃくの甘辛煮、白菜漬け、ごぼうのたまり漬、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、メシ、豆腐と万能葱の味噌汁
昼飯 「丸亀製麺」のわかめうどん
晩飯 レタスと人参のサラダ、TIO PEPE、マッシュルームのソテーと茹でたブロッコリーと「たまり漬を使ったソース」を添えたビーフステーキCHATEAU DUCRU BEAUCAILLOU 1982

2021.2.17(水) 紅梅

紅梅と白梅では紅梅の方が先に咲く、とは限らない。咲く時期は品種によるのだという。隠居の梅は、紅い方が先に咲く。10日ほど前には数えるほどだった、そのいかにも春めいた紅色が、このところは隨分と増えてきた。

とはいえ時あたかも三寒四温の季節である。朝の一連の仕事を済ませて後に、隠居へ行ってみる。そして先ずは厨房に足を踏み入れる。お湯の蛇口からはわずかに水が垂れている。栓を幾分か緩めているのだ。しかし水の蛇口は濡れていない。「すわ、凍結か」と慌ててあたりを見まわす。そして外へ出て地面に設けられた矩形のフタを開ける。水が出なかったのは、不凍栓が締めてあったことによると知って、胸をなでおろす。

午後、日本橋高島屋への、8日間の出張から長男が戻る。無事の帰還は何よりだ。長男はこれより2週間の自主隔離に入る。嫁のモモ君は子供ふたりを連れて、既にして実家に移動済みだ。家の中はしばらく、火が消えたような静かさになるだろう。


朝飯 揚げ湯波とひじきの炒り煮、菠薐草と榎茸のおひたし、細切り人参のサラダ、納豆、筑前煮、白菜漬け、ごぼうのたまり漬、メシ、椎茸と芹の味噌汁
昼飯 揚げ玉、塩鰹のふりかけ、梅干、白菜漬け、ごぼうのたまり漬のお茶漬け
晩飯 チーズ、TIO PEPE、トマトとベーコンのスパゲティクリームソースのキャベツ巻きPetit Chablis Billaud Simon 2016杏仁豆腐、Old Parr(生)

2021.2.16(火) 教室

電子メールの使い方を覚えるため、教室に行った。1990年代の中ごろのことだ。「たかがメールで教室ですか」と不思議がられるかも知れない。しかし黎明期とは、おしなべてそんなものだ。独学、独習が不得手、とうこともある。当時、niftyのメールアドレスは、クレジットカードを所持していなくては作ることができなかった。

昨年、amazonで買い物をする際に不都合が生じた。ログインができないのだ。仕方なくアカウントを新設することにしたが、それまでの、自社ドメインのメールアドレスでは撥ねられる。よってg-mailのメールアドレスに替えて無事、登録は完了した。

今日は2冊の本に手を出した。amazonに品を出している古書店からではなく、1冊は「日本の古本屋さん」に注文し、もう1冊はYahoo!オークションで入札をした。登録メールアドレスを普段使いのものでなくすると、そのショップの使用頻度は激減する。不思議な現象だと思う。

それはさておき「g-mailとことん教室」などというものがあれば、僕はすぐにでも申し込むだろう。「googleカレンダーと自作の日程管理を同期させよう教室」だの「キンドル自由自在」というような教室があれば、それも受けたい。受けたいけれど、どこにも見あたらない。「オレが教えてやる」という人がいれば、ぜひ、連絡してください。受講料はもちろん、支払います。


朝飯 秋刀魚の梅生姜煮、白菜漬け、しもつかり、細切り人参のサラダ、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、トマトと芹と揚げ湯波の味噌汁
昼飯 ラーメン
晩飯 揚げ湯波とひじきの炒り煮、春雨サラダ、白菜漬け、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、水餃子、麦焼酎「むぎっちょ」(お湯割り)、「久埜」の桜餅、Old Parr(生)

2021.2.15(月) しもつかり

おとといからきのうにかけて、全国各地にお送りした「美味定期便」には栃木県の郷土食「しもつかり」も含まれていた。しもつかりは鮭の頭を煮くずし、そこに鬼おろしで降ろした大根と人参と大豆、最後に酒粕を加えて更に煮たものだ。

しもつかりは、自分の感覚からすると見た目が悪い。顔を近づけて香りを聞く気さえしない。長く食わず嫌いを続けて来た。その「続けて来た」を一発で断ち切ったのは、並木蕎麦のあるじで、今は亡きアオキウイチさんだった。

あるとき銘木に囲まれたオヤジさんの自宅へ遊びに行った。時期は今ごろだったのだろう。「こういうものを食わねぇから、からだが弱いんだ」と、オヤジさんは僕ににもつかりを無理強いした。僕には偏食の人を軽く見る性向がある。「そのオレが食わなくてどうする」という気持ちがあったのかどうか、遂に生まれて初めてのしもつかりを口にした。案に相違して、その美味さに驚いた。僕は27歳だった。

むかしの台所では、しもつかりは凍ることもあったという。つまりしもつかりは冷たいまま食べるものだ。朝は温かいごはんのおかずとして、夜は温め酒の肴として、しもつかりは日に2度、3度と異なった形で愉しめるおかずである。

家内が数日かかって大鍋に煮たしもつかりも、今日の午後には隨分と少なくなった。明日の朝食は、これによる一汁一菜にしようと思う。


朝飯 白菜漬け、秋刀魚の梅生姜煮、しもつかり、厚焼き玉子、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、揚げ湯波とピーマンの味噌汁
昼飯 焼き鮭、梅干、塩鰹のふりかけ、しその実のたまり漬、ごぼうのたまり漬のお茶漬け
晩飯 大根と薩摩揚げの炊き合わせ、筑前煮、ごぼうのたまり漬、しもつかり、刺身湯波、豚肉と小松菜ともやしの炒め、白菜漬け、紅白なます、麦焼酎「むぎっちょ」(お湯割り)、「久埜」の草餅、Old Parr(生)

2021.2.14(日) 一度に8個を食べた漢もいる

早朝、花の水を換え、それ供えようとして仏壇の扉を開ける。すると1959年、元号にすれば昭和34年に22歳で病没した叔父の位牌のみが落ちていた。きのうの夜の、震度5の地震によるものだ。落ちるときにリンの縁に触れたか、位牌には小さな傷が付いていた。それを元の場所へ戻そうとして一旦、手を止める。そして年末に大掃除して以来のホコリを、目立つところのみ拭く。

6時10分に製造現場での仕事から上がり、そのまま家内を隠居まで送る。「汁飯香の店 隠居うわさわ」の食器類は無事。水も問題なく出る。それを確認して母屋へ戻る。朝礼では、社内各部の点検を、それぞれの担当者に頼んだ。

ところで今日は、月替わりで内容の変わる美味定期便が出荷をされる。今回のそれには自家製のしもつかりをはじめとして、地元の産品もあれこれお詰め合わせする。そのうちの青菜、それに予約済みの武平まんじゅうを手当てするため、10時すぎに会社を出る。

帰社した時間は11時。ホンダフィットによる往復の走行距離は26.3キロ。青菜と饅頭は、そのまま荷作り場へと運ぶ。大きめの地震ではあったけれど、宅急便が動いているのは有り難い。

定期便の送付先には東北地方も含まれる。当該のお客様のお荷物には、地震見舞いを付箋にしたためて荷物にお納めした。「これ以上の揺れは、来て欲しくないよなぁ」と、腹の底から思う。


朝飯 茹でたブロッコリー、里芋と鶏そぼろの炊き合わせ、しもつかり、厚焼き玉子、しその実のたまり漬、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、揚げ湯波と万能葱の味噌汁
昼飯 ごぼうのたまり漬、揚げ玉、焼き鮭、塩鰹のふりかけのお茶漬け
晩飯 「大昌園」のあれやこれやそれや麦焼酎「田苑SILVER」(オンザロックス)

2021.2.13(土) 侘助たちの午後

伊丹十三の映画「お葬式」の主人公の名は侘助だった。1986年の年明けに京都で撮った写真をまとめたページには「侘助たちの午後」という名を付けた。今朝は、侘助を活けた花瓶を店から「汁飯香の店 隠居うわさわ」へと運んだ。そして床の間の壺を端に寄せ、中央にその侘助を飾った。すると一間幅の床の間は、にわかに窮屈になった。

床の間がもっとも必要とするのは空間だ。壺は、明日の朝にもどこかへ移さなくてはならない。しかしその「どこか」が問題である。隠居は玄関を上がった先に4畳半、その奥に6畳、客間は8畳で次の間は6畳。厨房を除けば4部屋きりの、こぢんまりとした伝統家屋である。壺は思い切って外、それも門を入った脇あたりに置けば、それはそれで似合いそうだ。

そのようなことを考えつつ会社へ戻ろうとして玄関の三和土に降りる。そこには暖房のための石油ストーブが置いてある。そのストーブに近いところの羽目板が乾燥により隨分と縮んで隙間ができている。こちらについては暖かくなるのを待って、本職に見てもらわなければならないだろう。


朝飯 茹でたブロッコリー、里芋と鶏そぼろの炊き合わせ、干し海老を薬味にした煮奴、焼き鮭、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、小松菜とトマトの味噌汁
昼飯 ラーメン
晩飯 「コスモス」のトマトとモッツァレラチーズのサラダカツレツドライマーティニ家に帰ってからのチョコレートケーキ、Old Parr(生)

2021.2.12(金) 打たないことには

戦後の復興に尽くした昭和の男たちは、鮨屋でもフランス料理屋でもウイスキーの水割りを飲んだ。令和の女の子は「ワタシ、ハイボール」と、タイ料理屋で高らかに宣言したりする。結局、いつの時代もサントリー宣伝部の勝ちですか… というようなことを早朝、きのうの日記を書きつつ考える。

山口瞳と開高健による「やってみなはれ みとくんなはれ」は、とても面白い読み物だ。伝記とは畢竟、冒険譚ではないか。北康利による「佐治敬三と開高健 最強のふたり」という上下本もある。

「朝、出社をしたら本を開く。定時になったら『今日は〇〇の□ページから△ページまで読みました』と日報に記して退社する。そんな会社があったら、どれだけ嬉しいだろう」と椎名誠は書いた。同感ではあるけれど、当然のことながら、そのような会社は存在しない。だから僕は、旅先では朝から夕方まで本を読んで過ごすのだ。

「新型コロナウイルスのワクチンは、何だか怪しげだから打たない」という人がいる。僕は、その機会が来たら即、打つ。打たないことには海を越えられないではないか。本は、自国語の聞こえてこない場所で読むと、余計にコクの増す気がする。


朝飯 鶏のそぼろ、牛蒡と人参のきんぴら、茹でたブロッコリーを添えた目玉焼き、納豆、白菜キムチ、ごぼうのたまり漬、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、メシ、揚げ湯波とキャベツとトマトの味噌汁
昼飯 焼き鮭、鶏のそぼろ、塩鰹のふりかけ、白菜キムチ、ごぼうのたまり漬のお茶漬け
晩飯 白菜キムチ、小松菜の牡蠣油炒め豆腐と溶き卵のスープ「食堂ニジコ」から持ち帰った中華焼きそば、「紅星」の「二鍋頭酒 」(生)、苺の杏仁豆腐

2021.2.11(木) 朝から大忙し

「高島屋様出荷予定数量」と題されたA3の紙を持って、朝から事務室と製造現場のあいだを行ったり来たりする。上澤梅太郎商店は、いま食べごろの新鮮な商品のみを蔵出しすることを旨として、商品の作り置きはしない。その理念により、需要の急増にはからきし弱いのだ。

「らっきょうのたまり漬」の今日の出荷は予定の5割増しにするよう、長男はきのう15時に日本橋高島屋から電話をしてきた。今朝着のメールでは、そこから更にいくつ増やせるかを訊いてきた。「今日、店と地方発送で、らっきょうのたまり漬がどれだけ出るか、それがほぼ確定する15時までは、返事はできない」と包装係のヤマダカオリさんは言う。それはそうだろう。

日本橋高島屋へ向けての「らっきょうのたまり漬」の今日の出荷数は、結局のところ、予定の倍になった。ちなみに明日の出荷数は、予定の2.5倍と決まった。「この、田舎と東京の温度差は一体、何だ」という思いである。

夕食を終えた食卓で「お鮨屋さんです。何にしますか」と孫に声をかけられる。「お任せします」と注文すると、彼女は折り紙で鮪と胡瓜巻きと玉子を作ってくれた。更に「お酒は何にしますか」と問われて「お鮨には日本酒です」と、きっぱり答える。

もっとも「鮨にはお茶」と断言する本職もいる。あるいは彼女が大人になるころには、現在のタバコと同じく酒も、社会から忌避されるものになっている可能性がある。次に訊かれたときには「お茶をいただきます」と答えた方が、無難かも知れない。


朝飯 おでんの鍋で煮られたゆで玉子、納豆、菠薐草のおひたし、牛蒡と人参のきんぴら、ごぼうのたまり漬、すぐき、メシ、揚げ湯波と菠薐草の味噌汁
昼飯 焼き鮭、牛蒡と人参のきんぴら、塩鰹のふりかけ、すぐき、ごぼうのたまり漬のお茶漬け
晩飯 レタスとベビーリーフのサラダコーンポタージュスープ茹でたブロッコリーと人参とじゃがいものソテーを添えたハンバーグステーキPetit Chablis Billaud Simon 2016CLOS DU MARQUIS 1986チーズを添えた煮林檎、Old Parr(生)

2021.2.10(水) 想定外

「だから言わんこっちゃない」と思った。

日本橋高島屋地下1階の催し「老舗名店味紀行」は、今朝の10時30分より始まった。長男からは15時前に、第一報の電話が入った。一部の商品に、早くも売り切れが発生したという。らっきょうのたまり漬のうち「浅太郎」と「ピリ太郎」は、本日の出荷予定にどれだけ数を積み増せるか、現場と相談して返事が欲しいという。更には、明日に出荷することとして冷蔵庫に保管中の商品のうち、かなりの部分を本日のうちに出荷して欲しいという。

昨年のおなじ催しの数字を元に、長男は今回の販売予想を立てた。折しも緊急事態宣言発令中であれば、昨年を超える数字は望めないと、長男は考えた。それに対して僕は「想定外のこともある。在庫は充分に持つべし」と言い続けた。

19時すぎに、長男から本日の売上げ金額がメッセンジャーで届く。それは、昨年2月の初日にくらべて34パーセントの増だった。

長男は今夜、ホテルの部屋で、販売予想数量を作り直すことになるだろう。僕は明早朝の仕事に備えて、早々に寝ることとする。


朝飯 納豆、牛蒡と人参のきんぴら、「なめこのたまり炊」のフワトロ玉子、菜花のおひたし、ごぼうのたまり漬、らっきょうのたまり漬、すぐき、メシ、キャベツの味噌汁
昼飯 牛肉のすき焼き風、白菜キムチ、焼き鮭、すぐき、ごぼうのたまり漬のお茶漬け
晩飯 めかぶの酢の物、菠薐草の鶏そぼろ和え、おでん、ごぼうのたまり漬、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、麦焼酎「むぎっちょ」(お湯割り)、生八つ橋、Old Parr(生)

2021.2.9(火) 漢詩の探索

ある漢詩を見つけなければ、きのうの日記は完成しない。その詩は日本酒の箱にあった。箱の、黄色と栗色の配色はいまだ目に浮かぶものの、酒の名は覚えていない。

その漢詩のことは、僕が書記を務めている「本酒会」の会報に書いた。会報はウェブページの形で公開もしていた。しかしこの日記を新しい形にした2016年秋に、サーバから降ろした。よってウェブ上にそれを探すことはできない。

会報は別途、メーラーの「本酒会」というフォルダにも残している。しかし漢詩について書いた会報は封書で送っていた時代のものらしく、そこには見つからなかった。よって今度はメーラー全体に検索をかけてみた。覚えている語句というか文字は「高楼、琴酒、君、探」と、途切れ途切れだ。

当該の詩はむかし本酒会員だったマエザワマコトさんと僕との相対でのやり取りにようやく見つかった。「高楼」と「探」は僕の記憶違いだった。それは良寛による以下だった。

東山明月出
楼上正徘徊
思君君不見
琴酒為誰携

ところでこの詩は今も、菊姫の山廃吟醸の箱に残っているようだ。19年ぶりに飲んでみたい気もする。


朝飯 ひじきの煮物、納豆、玉子焼き、里芋と蛸の炊き合わせ、牛蒡と人参のきんぴら、菜花のおひたし、ごぼうのたまり漬、メシ、舞茸の天麩羅と大根の味噌汁
昼飯 舞茸と菜花の天ぷら、塩鰹のふりかけ、鮭の日光味噌漬け焼き、すぐき、ごぼうのたまり漬のお茶漬け
晩飯 ベビーリーフのサラダ、パン鶏肉とマカロニのグラタン煮林檎Petit Chablis Billaud Simon 2016“Chez Akabane”のチョコレートケーキ、Old Parr(生)

2021.2.8(月) 琴酒誰為携

「汁飯香の店 隠居うわさわ」の客席の状況は、事務室でも確認ができる。その、ご予約とご予約の合間を見計らって、乾つまり北西側の柴折り戸より隠居に入る。6畳と8畳の座敷は庭に面している。その、南西からの光が隅まで届く床の間の様子を眺める。

床の間には、おととい千葉の山の中から持ち帰った壺が置いてある。その壺の、肌の荒れたところを裏の方まで確かめる。灰による緑色のしたたりも見る。土の爆ぜた跡には指で触れてみる。「手に入れて良かったなぁ」と、つくづく思う。しかしまぁ、それは僕だけの感想かも知れない。

ところでこの床の間には、軸は昨年の開店直後にめでたいもの、そして秋に大黒と、ごく短いあいだしか掛けていない。家にある軸は、箱こそ古色を帯びているものの、中味は駄物ばかりだ。それが、軸は滅多に掛けない理由である。

どこかの陋巷に思わず息を呑むような軸の落ちていることはないか。その墨跡が「多少樓臺煙雨中」とか「琴酒誰為携」なら言うことはない。


朝飯 茹でたブロッコリー、秋刀魚の梅生姜煮、ベーコンと玉子のオーブン焼き、すぐき、ごぼうのたまり漬、白菜キムチ、大豆の八角煮、メシ、舞茸と菜花の天麩羅の味噌汁
昼飯 ラーメン
晩飯 めかぶの酢の物、菠薐草と海苔のおひたし、らっきょうのたまり漬、ごぼうのたまり漬、おでん、「片山酒造」の初しぼり「うすにごり素顔」(冷や)、自家製あんこ餅、Old Parr(生)

2021.2.7(日) 節分を機に

きのう千葉から戻って閉店直前の店へ行くと、売上げの意外や良かったことを、販売係のササキユータ君より知らされた。栃木県に発令されている緊急事態宣言は、明日を最終日として解除をされる。それがなにか関係しているのだろうか。

上澤梅太郎商店は、いま食べごろの品のみをお客様にお渡しすべく、日々、売れる数を予想しながら商品をお作りしている。それほど忙しくない状況に慣れると、需要が急増したときに品切れを発生させる恐れがある。それは絶対に避けるよう、朝礼時に皆に伝える。

日本橋高島屋地下1階の催し「老舗名店味紀行」が、今週の水曜日よりいよいよ始まる。その現場へ持参すべき用度品の準備を、販売主任のハセガワタツヤ君は午前のうちに完了させた。

「ちょっと、お弁当、始まったんだって」と、午後一番で電話が入る。「汁飯香の店 隠居うわさわ」は、昨春の緊急事態宣言からこのかた、ご注文のあるかぎり弁当をお作りしてきた。しかし特に告知はしてこなかった。それ故の「始まったんだって」だろう。お客様は弁当ではなく「おかずギッシリ詰め合わせ」ふた折を、明日の昼に予約してくださった。

節分を機に、冬ごもりもお終いなのかも知れない。


朝飯 秋刀魚の梅生姜煮、生玉子、牛肉のすき焼き風、すぐき、白菜キムチ、ごぼうのたまり漬、茹でたブロッコリー、メシ、トマトとピーマンの味噌汁
昼飯 塩鰹のふりかけと「しその実のたまり漬」のスパゲティ
晩飯 リガトーニのサラダカレーライス、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、Petit Chablis Billaud Simon 2016チーズ、Old Parr(生)

2021.2.6(土) そういうものにばかりに目がいく

10日か2週間か、それくらい前に、ウェブ上でひとつの壺を目にした。その瞬間から、僕はそれに惹きつけられた。以降、毎日そのページを訪ね、ためつすがめつ眺めてきた。そして1週間ほど前に、店主へメールを送った。その古美術店は千葉県の山の中にあり、ひと月に2日しか開かない。店主が返信してきた日は、僕には都合が悪かった。そしてすり合わせの結果、今日がその日に決まった。ウェブショッピングの好きな僕も、今回は流石に、先ずは現物が見たい。

09:08 ホンダフィットで会社を出発。
10:03 羽生P.A.で休憩。
10:37 東北道を川口I.C.で降りる。
10:42 東京外環自動車道に入る。
11:06 京葉道路に入る。
11.17 PASAR幕張で休憩。

12:05 目的地最寄りの茂原長柄I.C.はETC専用で降りられず。
12:08 そのひとつ先の茂原長南I.C.から一般道に降りる。
12:21 APOLOGIA着。ここまでの走行距離は217.5Km。

農業協同組合の穀物倉庫、といった趣の大きな建物の前にホンダフィットを駐める。メモ帳に覚え書きなど記しているところに店主のタグチマサヒロさんが迎えに来てくれる。目当ての壺は、あらかじめ入口ちかくの明るいところに出してあった。

口縁の3分の2ほどが失われていることは、ページの画像から分かっていた。肩の部分の灰かぶりは、やはり相当なもので、まるで溶岩のようだ。iPhoneのLEDランプを点灯させて内側を覗き込む。床に膝をつき、外からも観察をする。裾から下は失われ、底までの3寸ほどは別の土で継がれている。その「継ぎ」は、壊れたことを惜しんだ人が、直しながら使った跡だろう。「これ、いただきます」とタグチさんに告げる。

店の中には無疵完品の壺もあって、それには売約済みの札が貼られていた。しかし全体が茶色一色の滑らかなそれには、特に興味は覚えなかった。

「クルマで15分ほど」と教わった美術館”as it is”は、杉の森を抜けた山の上にあった。そこで望月通陽のあれこれを見て、予期せずコーヒーをいただいて、砂利の道を徒歩で戻る。

13:38 “as it is”下の駐車場で、iPhoneのgoogleマップに帰路を探す。
14:12 市原舞鶴I.C.から首都圏中央連絡自動車道に上がる。
14:25 東京湾アクアラインを抜けて浮島I.C.から首都高速道路湾岸線に入る。
15:18 蓮田P.A.で休憩。
16:35 帰社。アポロギアからの走行距離は246.8Km。

会社に帰り着くなり壺を長男と隠居へ運ぶ。そして口縁が大きく欠けた、穴窯の中で大量の灰を浴びたか、まるで溶岩のように肩の荒れた、裾から下は別の土の継がれた壺を、床の間の中央に置く。


朝飯 メシ、らっきょうのたまり漬「小つぶちゃん」、ごぼうのたまり漬、メシ、豆腐と缶詰の鯖と白菜キムチと揚げ玉と菠薐草の味噌汁
昼飯 “as it is”のコーヒー
晩飯 「陶」から持ち帰った酒肴あれこれ、家のおかず少々、「片山酒造」の初しぼり「うすにごり素顔」(冷や)、自家製わらび餅風、Old Parr(生)

2021.2.5(金) 3月、4月

紅型の内裏雛の額を、箱に入れたまま持って隠居へ行く。そしてこれを、八畳間の床脇に掛ける。ひな祭りは3月3日。よってこれからひと月ちかくは、これを掛け続けることになるだろう。

雛の次には土筆と桔梗を金泥で添えた「更佳」の書が控えている。隠居の庭には実際に土筆が生える。しかしそのとき、頭上に山桜が花を開いていたかは記憶していない。

隠居にはかつて6、7本の桜があった。それをあるとき植木屋の助言を容れて、伐りに伐った。助言とは「育ちすぎて、このまま枯れたら始末に負えない」とか「こんなところに実生から育って、邪魔なだけ」というようなものだ。そして現在は染井吉野と山桜と枝垂れ桜の3本のみが残っている。

昨年の、新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言は先ず、4月7日に首都圏、関西、九州北部の7都府県に発令をされた。そして9日後の4月16日に、それは全国に拡げられた。これを受けて「汁飯香の店 隠居うわさわ」は休業に入った。つまり「隠居」のお客様は、いまだ庭の桜をご覧になっていない。

こちらの桜は東京のそれにひと月おくれて咲く。見ごろは4月のなかばから下旬にかけてになるだろう。今年は満を持して、お客様には便りをお送りしようと思う。


朝飯 干し海老を薬味にした菠薐草のおひたし、納豆、揚げ湯波と蕪の葉の炒り煮、秋刀魚の梅生姜煮、広島菜漬け、沢庵漬け、ごぼうのたまり漬、メシ、キャベツと万能葱の味噌汁
昼飯 塩鰹のふりかけ、牛肉のすき焼き風、秋刀魚の梅生姜煮、ごぼうのたまり漬のお茶漬け
晩飯 3種の野菜を添えた串カツあれこれOld Parr(ソーダ割り)

2021.2.4(木) 専門職

ウチの玄関に下駄箱は無い。下駄箱は4階の廊下にある。よそ行きの靴を使うときには、それをここから出して玄関まで降ろす。下駄箱には靴と共に備長炭が入れてある。科学的根拠については知らないけれど、靴が湿ることを防いでくれそうな気がするからだ。

それでも2足に限ってはコバにカビを生やす。ひとつはオールデンの短靴、もうひとつはホワイツの半長靴だ。「短靴って何だ」、「半長靴って何だ」という人はgoogleで「とは検索」をしてください。

あるときそのgoogleに「宇都宮 靴 クリーニング」と入れてみた。なぜ宇都宮かといえば、東京まで靴2足を持参するのは文字通り荷が重いからだ。なぜ地元の日光で探さなかったかといえば、一定以上の人口があってこその専門職と考えたからだ。そうしてひとつの店に狙いを定めた。

今日は2週間に1度の、宇都宮でカイロプラクティックを受ける日だ。靴を托すべき店には、出かける前に電話を入れたおいた。

若い女の人がひとりで営んでいるその店”amor”は、FKD宇都宮店のはす向かいにすぐに見つかった。店主は2足について預かり証に記入し、最後に「ベストをつくします!!」とボールペンを走らせた。今月の末までには、オールデンの短靴にふさわしい靴下を買おうと思う。


朝飯 鶏肉そぼろ、納豆、温泉玉子、揚げ湯波と蕪の葉の炒り煮、大豆と昆布の八角煮、広島菜漬け、沢庵漬け、ごぼうのたまり漬、メシ、豆腐と万能葱の味噌汁
昼飯 「スシロー」のあれやこれやそれや
晩飯 ベビーリーフのサラダスパゲティミートソースチーズチョコレートケーキCLOS DU MARQUIS 1986

2021.2.3(水) お弁当、始めました。

「汁飯香の店 隠居うわさわ」に来てくださったお客様には、料理、接客、雰囲気についての評価をうかがっている。動的資料として活用をするためだ。その、繁忙により昨年11月下旬から中断していた仕事を一気に片付けようと、午前のなかばよりコンピュータを持って4階の食堂に籠もる。入力は2時間ほどで完了した。

11月下旬から師走にかけてといえば、観光の季節はとうに過ぎている。それでも、ほんのふた月ほど前までのお客様の多さには目を見張るものがあった。「GoToトラベルキャンペーン」と緊急事態宣言とのあいだには、ヒマラヤの頂とマリアナ海溝ほどの差があることに、あらためて気づく。

ところで先月30日の日記に書いた「隠居」の弁当やおかずについては、きのう長男が会社のfacebookページにお知らせを上げた。そうしたところ、今日は早速、今週土曜日のご予約をいただいた。とても有り難い。実はその土曜日に、僕は千葉まで出かける。これまで行ったことのない土地であれば、どこで昼食にありつけるか分からない。僕も「隠居」の弁当を買いたいところだが、出発の時間からして、ちとむずかしいだろう。


朝飯 トマトとブロッコリーのサラダ、揚げ湯波と蕪の葉の炒り煮、納豆、ベーコンエッグ、広島菜漬け、焼き葱の「日光味噌のたまり浅漬けの素・朝露」漬け、メシ、キャベツと莢豌豆の味噌汁
昼飯 鮭のつけ焼き、揚げ湯波と蕪の葉の炒り煮、塩鰹のふりかけ、広島菜漬け、ごぼうのたまり漬のお茶漬け
晩飯 鴨鍋蕎麦、沢庵漬け、麦焼酎「むぎっちょ」(お湯割り)チョコレート、Old Parr(生)

2021.2.2(火) 豆は半分のこすべし

今月10日から16日までの7日のあいだ、上澤梅太郎商店は日本橋高島屋地下1階で開かれる催し「老舗名店味紀行」で出張販売をする。そしてそれをお知らせするハガキはきのう、投函をした。

今日は、それをお受け取りになったお客様から、早くも電話が入り始めた。その内容は「〇日の〇時ころ売場へ行くから、コレコレの品を予約したい」というものもあれば「外出を控えているため、商品は宅急便で取り寄せたい」というものもある。それを承るたび僕は受話器を耳に当てつつ深くお辞儀をする。

そういえば今日は「隨分、暖かくなりましたね」という時候の挨拶を受けた。さてその相手は誰だっただろう。しかし旧暦の暦によれば、いまだ年は明けていない。一本調子に気温の上がっていくことはないだろう。

お世話になった方の通夜より19時前に戻る。ホンダフィットの前照灯に照らされた店の駐車場には、点々と豆が落ちていた。それを見て「あー、リコが撒いてくれたんだな」と、孫の行いを有り難く思う。

節分の豆は半分のこすべししもつかり煮る日もちかければ


朝飯 紅白なます、揚げ湯波と蕪の葉の炒り煮、納豆、鮭のつけ焼き、焼き葱の「日光味噌のたまり浅漬けの素・朝露」漬け、広島菜漬け、ごぼうのたまり漬、メシ、豆腐と菜花の味噌汁
昼飯 ラーメン
晩飯 トマトと玉子のスープジャーマンポテトと茹でたブロッコリーを添えたポークソテーPetit Chablis Billaud Simon 2016椿餅、TIO PEPE

2021.2.1(月) 「朝露」の確保

長男は朝からフクダナオフミ製造顧問と共に「日光味噌のたまり浅漬けの素・朝露」の火入れをすると、朝礼の際に報告があった。

昨年11月30日の日記に書いた理由により「朝露」は繁忙期においては特に、品薄になる。お客様の需要を優先すれば、当方の台所においても、それは底を突く。現在は新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための緊急事態宣言発令中により、商売は繁忙の対極にある。よって今日の火入れ分については、僕も確保をしておくことにする。

先月15日の夕食は握り鮨だった。長男とモモ君は醤油を所望した。食器棚から取り出した醤油差しは、しかし綺麗に洗われたままだった。僕と家内は料理はさておき、卓上の調味料は「朝露」ばかりで、もはや醤油は使っていなかったのだ。

ところで今日は、今月10日から日本橋高島屋で開かれる「老舗名店味紀行」をお得意様にお知らせするハガキが投函された。明後日あたりからは、電話によるお問い合わせも増えてくるだろう。繁忙の対極にあっても、お客様は存在してくださっている。有り難いことと思う。


朝飯 揚げ湯波と蕪の葉の炒り煮、油揚げと小松菜の炊き合わせ、人参と胡桃のサラダ、牛肉のすき焼き風、広島菜漬け、ごぼうのたまり漬、メシ、白菜の味噌汁
昼飯 塩鰹のふりかけ、油揚げと小松菜の炊き合わせ、広島菜漬け、ごぼうのたまり漬のお茶漬け、秋刀魚の梅生姜煮のお茶漬け
晩飯 油揚げと小松菜の炊き合わせ、根菜類の煮付け、胡瓜と林檎のぬか漬け、刺身湯波の「朝露」かけ、蕪のゆず風味漬け、大根おろしを添えた鮭のつけ焼き、揚げ湯波と菠薐草と人参の味噌汁、胡麻豆腐、麦焼酎「むぎっちょ」(お湯割り)

< 2021年1月の日記へ  2021年3月の日記へ >

上澤卓哉

上澤梅太郎商店・上澤卓哉

蔵見学