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お買い物かご

清閑 PERSONAL DIARY

2016.9.8 (木) しその実

20160908f
8時30分から、しその実の買い入れを始める。ことし還暦を迎えた僕の生まれるずっと以前から連綿と続けられてきた、秋の大切な仕事である。この時期には蔵から事務室から店までがしその実の香りで満たされ、香味野菜の好きな僕はうっとりとした気分になる。

来週の東京行きに備えて午後、下今市駅に特急券を買いに行く。僕の前にはカップルがいた。その男の方が窓口の駅員に「カナガワ」と告げた。駅員と僕はひとしくギョッとしてその、つい先ほどまでは日本人とばかり思っていたカップルを見た。しかし駅員は、その男の風変わりな発音にいち早く気づいて「キヌガワ?」と問い返した。彼らの行き先は「神奈川」ではなく「鬼怒川温泉」だったのだ。

先ほどより日本語にちかい発音で「キヌガワ」と肯定した男に駅員は「250」と走り書きした紙を素早く手渡した。カップルはそれを見て、今度はスマートフォンで何やら調べ、自動券売機で250円の切符2枚を買った。

構内の電光掲示板には、上段に15:51発の日光行きが、下段には15:50発の会津田島行きが示されていた。日本人に見えても日本人でないらしいふたりはその掲示板を見上げて立ち尽くしている。

「鬼怒川温泉に行くんだよね」
「そう」
「だったら15時50分発だね」
「15時51分発じゃないの」
「違う。15時50分発。プラットフォームは2番線」

と会話を交わすと彼らは胸をなで下ろしたような顔つきで僕に礼を言い、自動改札機に切符を差し入れた。

ことしの2月、僕は”LONELY PLANET”の2003年版からコピーした地図のみを持ってスンガイコーロクの駅に降り立ち、そこからナラティワートに移動するバスの停留所を探して街を歩き回っていた。その僕に声をかけてくれたのは、裏道で猫に餌をやるオバサンだった。

そのオバサンに恩を返すことはできない。しかし他の誰かを助けることはできる。外国人に道を教えるくらいのことであれば、僕も日本の国益に与することができるのだ。今後も機会があれば、おなじことを続けて行きたい。


朝飯 タラバガニの三杯酢ジュレ、茄子の炒め煮びたし胡麻和え、牛蒡と人参のきんぴら、塩鮭、明太子、大根と人参のなます、たまり漬「ホロホロふりかけ」、胡瓜のたまり浅漬け、メシ、豆腐と万能葱の味噌汁
昼飯 「幸楽苑」のあっさり中華そばと半チャーハンのセット
晩飯 しその実と胡瓜と茄子の塩漬け、生のトマト、揚げ湯波と小松菜の淡味炊き、ピーマンのソテーを添えた牛肉のたまり漬け焼きお菓子その1お菓子その2、「田苑酒造」の玄米焼酎「つかだ」(ソーダ割り)

  

上澤卓哉

上澤梅太郎商店・上澤卓哉

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