2017.1.5(木) 粒食と粉食
大晦日以来、5日ぶりの味噌汁を作って飲む。ホッとする。米のメシはおせち料理の押し鮨を除けば5日も食べていない。こちらついては明日を待たなければありつけないらしい。餅は嫌いではないけれど、日本にいる限り、朝はなぜか米のメシが食べたくなるのだ。
粒食と粉食のどちらが好きとは一概には言えない。米とパンなら口内食感の点で米の方が断然、好きだ。しかし夜になると、むしろ進んでパンに手が伸びる。それはひとえに、パンとワインの相性が良いことによる。
粉食をパンと麺に分ければ、これまた口内食感の点で麺、それも小麦によるそれが圧倒的に好きだ。イタリア料理屋でロングパスタとピザのふたつの選択肢があれば、僕は例外なく前者を選ぶ。
しかしそこにワインさえあれば、パンもピザも、また悪くはない。すべては葡萄酒の有無にかかっているのだろうか。そして夜はきのうに引き続いてスパゲティを肴に白ワインを飲む。
朝飯 「なめこのたまりだき」によるなめこおろし、雑煮の具、べったら漬け、焼き餅、豆腐と揚げ湯波と三つ葉の味噌汁
昼飯 カレー南蛮うどん
晩飯 リンゴと京人参のサラダ、からすみと魚醤のスパゲティ、“Qué bonito cacareaba2013”
2017.1.4(水) ことしの暦
年末28日に掃除をし、だから年の途中にあれこれの御札やお供えの増えていく神棚は、いまださっぱりとしている。そこにことしの暦の載せられていることに気づいた。よってそれを手に取り、自分の九星である八白土星のページを開く。
「今日までの不安定な気運から抜け出て気分的にも安定して来る年」とは多いにありがたい。「準備は段取りよく運び仲間の協力も得られます」も嬉しい限りだ。
「やり過ぎたり張り切り過ぎては思わぬ伏兵に遭うので注意」はまぁ、大丈夫だろう。生来の怠け者につき、やり過ぎたり張り切り過ぎたりすることは無い。しかし更に振り返ってみれば、外務省が渡航禁止勧告を出している地域にサンダル履きで旅をするなどは、これに当たるかも知れない。
「自信のあることでも焦らず確実に答えを求めておくことです」は耳が痛い。「地道に着実に」とか「千里の道も一歩から」は苦手な性分である。
「また、周囲との交流はまめにして情報は広く集め」と言われても、ひとり気ままにしていることを好む性格は、いかんともし難い。
「時流に合ったプランを立てて運ぶと思わぬチャンスに恵まれます」は、幼児期、子供時代に受けた教育のせいか、どうも、できない。
「ただし、忙しさからのうっかりミスや誤解、勘違いからの思い込みにも注意が必要」とは、まるでどこかから僕の行いを観察しているような、正鵠を射た「お叱り」である。
「時には耳の痛い忠告や意見を聴ける心の余裕が求められます」と言われても、それができれば苦労は無い。
最後に「転職開業、改築、建築建墓凶」とあるから、今年しようとしていたお墓の整備は止めておくことにする。
朝飯 「しその実のたまり漬」を搗き混んだ餅、お雑煮の汁、バター、焼き海苔、イチゴ
昼飯 「大貫屋」のキムチタンメン
晩飯 “Moët & Chandon Brut Impérial”、トマトとほうれん草とコンビーフのスパゲティ、“Qué bonito cacareaba2013”、花林糖、”Glenfiddich”(生)
2017.1.3(火) 同窓会
深夜とおぼしき時間に応接間の電話が鳴る。「誰だ、こんな夜中に」とベッドから降りようとすると、その呼び出し音は2回で切れた。枕頭のiPhoneを見ると時刻は1時31分だった。しばらくするとまた電話が鳴った。今回も2回で切れた。夜遊びをする誰かのポケットの中で、携帯電話がたまたまウチの番号を発信してしまったのかも知れない。
はじめの電話から2時間が経っても二度寝はできそうにない。3時36分に起床する。
「おとといの日記ができていないと焦燥する」とは、ここにしばしば綴ることだ。今朝は仕方なしの早起きを僥倖として、おとといときのうの日記を一気に書く。そしてその勢いを以て、今日の日記の前半までも書いてしまう。
聖ヨゼフ幼稚園から今市中学校まで、おなじクラスになったり、また離れたりしながら付き合い続けたイトーカツユキ君から連絡を受けたのは12月なかばのことだった。「中学卒業時の同窓会を企画している。ついてはそれに来られるか」というのがその電話の内容だった。幹事を買って出てくれたイトー君の苦労には報いなければならない。出席する旨の返事をして今日の日を待った。
ウチは、人が休んでいるときこそ忙しい商売である。更には昼ごろが一番、店は混む。正午からの同窓会に20分ほど遅れて駆けつける。会場には想像していたよりも多い、僕を含めて15名が集まった。前回の同窓会は何と25年前の開催だったという。はじめは中座しようと考えていたけれど、そういうわけにはいかない。結局は最後までいて、しかし2次会には参加せず、タクシーで帰社する。
中学生時代、またその数年後に催された同窓会の写真を自分のアルバムから複写し、各自に配るまでしてくれた幹事のイトー君には厚く御礼を申し上げたい。
普段は優れたフランス料理屋でも、年始めの2日から4日まではカレーライスかハヤシライス、という”Finbec Naoto”を夜、家内と長男との3人で訪う。そして薄桃色のテーブルクロスのかけられた席に着いて「正月の夜は静かなことが一番」と、しみじみ感じる。
朝飯 雑煮
昼飯 「奴寿司」の宴会膳、日本酒(冷や)
晩飯 “Finbec Naoto”のフォアグラのテリーヌ、エスカルゴのオーブン焼き、サラダ、オニオングラタンスープ、カレーライス、チーズの盛り合わせ、ワインリストのロワールの白ワインのうち2番目に安かった”Pouilly-Fumé”、アップルパイ、コーヒー
2017.1.2(月) 初売り
普段よりも早く、7時に朝食を食べ終える。雑煮は作り置いた汁を温め、焼いた餅を投入するだけで完成するから、忙しいときにも向いている。家族全員で1階に降り、初売りの準備に当たる。出社してくる社員たちと新年の挨拶を交わす。店舗の花はカワムラコーセン先生により、開店の30分前に整った。
そのころにはまた、早めのお客様がいらっしゃる。ウチは開店の前でも、お客様がお望みになるなら店に入っていただき、買い物をしていただくことにしている。そして毎年、その年の最初のお客様には地元「片山酒造」のお酒を進呈する。
開店前のお客様は、おひとりだけではない。朝はやくからご来店をいただいて、有り難い限りだ。
夕刻に締めたレジの数字は、昨年の初売りのそれよりも良かった。しかし元日が日曜日という今年の正月は、商売においてはいかにも曜日の並びが悪い。明日も頑張って店に立ちたい。
夜はさすがに雑駁な味を舌が欲し、しかし家内に作れとは流石に言えないため、インスタントのラーメンは自分で煮る。
朝飯 雑煮
昼飯 「コスモス」の出前のハンバーグステーキ(デミグラスソース)、ライス
晩飯 おせちあれこれ、牛薄切り肉のソテー、「松瀬酒造」の「松の司特別純米」(燗)、ラーメン
2017.1.1(日) スキヤキ
いつものことながら、朝は誰よりも早く起きて食堂に来る。そして桜材の丸テーブルで何かしらしている。そうしてようよう明るくなりつつある東の空の写真を撮ったりする。穏やかな、2017年のはじまりである。
元旦はいつもひもじい。「お墓に行くよ」と家内が言うので「お茶くらい飲んだら」と落ち着かせて、家内、長男、次男はお茶を飲む。僕はお茶は、仏壇にそれを供えた数時間ほども前に飲んでいるので、彼らにはつき合わない。
暖かい朝でも冬であれば、お墓の水場で湯飲みを洗う手は水の冷たさに赤くかじかむ。家に帰ると小さなお椀5客に雑煮を盛り、それをお盆に載せて長男と次男が仏壇、神棚、お稲荷さん、水神、地神の5個所にそれを供えて歩く。ここまでを済ませないうちは、人間が雑煮にありつくことはできないのだ。
家族4人でホンダフィットに乗り、日光市今市旧市街をつらぬく日光街道の東端にある追分地蔵尊に初参りをする。そして今度はおなじ日光街道の西端にある瀧尾神社に初詣をする。これで元日の午前の用事は完了である。
夕刻は18時よりひとり製造現場に降り、明日の用意をする。年が明けてしばらくは好天が続くらしく、有り難い。
すき焼きには「日光味噌のたまり」を使う。鍋にサラダオイルを引き、大晦日に「グルマンズ和牛」で受け取った肉を炒りつける。そしてそこに「日光味噌のたまり」をかけ回して更に炒る。味付けはこれだけで充分に美味い。というか、これに比肩しうる割り下は、市販品では皆無ではないだろうか。
「日光味噌のたまり」は非売品ではあるけれど、明日から店に並べる福袋のうち、金色つまり3,000円の袋の中身の一部として、お分けする。興味のある方にはぜひ、お試しをいただきたい。
朝飯 雑煮、屠蘇
昼飯 津軽漬け、黒豆、おせちあれこれ、「松瀬酒造」の「松の司特別純米」(冷や)
晩飯 すき焼き、べったら漬、“Glenfiddich”(ソーダ割り)
2016.12.31(土) 朝飯ダブル
ここ何年か、大晦日の朝は霧降高原にある優れたステーキ屋「グルマンズ和牛」に、予約済みのすき焼き肉を受け取りに行く。ここではまた、人数を問わず、客には軽食が振る舞われる。つまり僕と次男にとっては、今朝は「朝飯ダブル」ということになる。そして9時過ぎに山を駈け降りて会社に戻り、仕事に復帰する。
社員は持ち場、持ち場で力を発揮してくれている。僕は事務室、店、製造現場を行ったり来たりして、あれこれの連絡に勉めたりする。4階の部屋は家内により整った。仏壇には新年にふさわしい花が供えられいる。
夕刻、製造現場へ行くと、初売りのための福袋が整然と並べられていた。普段は季節の書を掲げる店舗正面右側には、僕も手伝って「賀正」の文字を取り付ける。定時の18時に店のシャッターを降ろす。社員たちと年末の挨拶を交わす。
大晦日の夕食の席は最高だ。この1年の肩の荷を降ろす感じがする。風呂に浸かりながらすこしのあいだ眠ったらしい。そして21時すぎに就寝する。
朝飯 ほうれん草のおひたし、たまり漬「おばあちゃんのホロホロふりかけ」、納豆、冷や奴、ベーコンエッグ、白菜漬け、メシ、豆腐と三つ葉の味噌汁、「グルマンズ和牛」のメンチカツのホットドッグ、胡瓜のピクルス、ベーコンと玉葱とキャベツのスープ
昼飯 ロールキャベツライス、昆布と牛蒡と蓮根の佃煮
晩飯 鰤の照り焼き、鴨鍋、蕎麦、「松瀬酒造」の「松の司生酛純米」(冷や)
2016.12.30(金) 日光の美味七選
「知り合いだから」とか「取引先だから」というような義理は一切関係なく、僕が普段から気に入って食べたり飲んだりしている地元のあれこれを、各々のお店にお願いし、たまり漬と共にお届けする、送料税込み10,800円、限定40セットの「日光の美味七選」は、12月1日の朝9時に販売をおしらせするメールマガジンンを配信し、3時間後の11時59分に売り切れた。
2013年までは僕が段取りをし、製造部長のフクダナオブミさんとふたりで荷造りをしていた。2014年からはその準備を長男に引継ぎ、荷造りにおいては、僕は長男の助手に回った。荷造りの時間がいきなりこれまでの半分に短縮をされたのは、長男が同級生オーキトシヒコ君の考えた”logistics”を採り入れたことによる。
荷造りは13時30分から始めて15時30分に完了した。製造現場の、ヤマトがトラックを横付けする扉の外へ出てみれば、正月を迎えるための松が一対、涼やかに飾られていた。ひとつひとつの仕事を粛々とこなすばかりである。
朝飯 納豆、白菜漬け、ほうれん草とソーセージのソテー、目玉焼き、鰯の梅煮、メシ、揚げ湯波と玉葱とピーマンの味噌汁
昼飯 「大貫屋」のチャーハン(大盛り)
晩飯 “Glenfiddich”(ソーダ割り)、刺身湯波、うずら豆、白菜漬け、豚しゃぶ、「旭酒造」の「獺祭磨き二割三分純米大吟醸」(冷や)
2016.12.29(木) 阪納誠一メモリアル走行会
クルマの催しは多く、暑くもなく寒くもない季節の週末、連休などあれば特にそのときを選んで開かれる。それはすなわちウチの店の繁忙日に重なるから、出て行くことは憚られる。クリスマスと大晦日のあいだのエアポケットのような日に開催される「阪納誠一メモリアル走行会」が、今のところは参加できる唯一である。
正確な年は覚えていない、おそらく1995年ころを最後として乗らなくなった”BUGATTI 35T”のエンジンにふたたび火を入れたのは、2006年のこのイベントに臨んでのことだった。以降、休みなく参加を続けたのは勿論、自分の愉しみのためではあるけれど、もうひとつは、1926年製の遺産を動体保存する意味もある。
クルマをサーキットで走らせるときには、クルマと自分、その双方の限界に限りなく近づこうとすることこそが僕の愉しみである。その行いは「愉しみ」ということばとは相反して恐怖と肉体の苦痛を伴う。「今年で引退か」とも考えつつ出走を申し込んだ経緯が今回はあった。
そうして1926年当時とおなじパターンの、しかし新品のタイヤを履いた青いレーシングカーのギヤをローに入れ、朝9時のツインリンクもてぎ西コースへと出て行く。
ウチのクルマに与えられた時間は午前と午後で計130分。そのうちの110分を目一杯、走る。エンジンの調子はこの11年間で最も良く、4速4,500回転を超えてなお回ろうとする。昨年あった振動は新品のタイヤによって消えた。そのタイヤも、シケイン直後の左コーナーを除けば他はすべて右コーナーという西コースの設計により、左の肩の部分のみが極端に減っていく。
最後の20分間は、2006年以来、これを修復、整備し続けているタシロジュンイチさんに操縦席を預け、現在の状態を確認してもらう。後輪のブレーキは、シューを交換する必要があるかも知れない。
観客席の向こうに冬の日が沈むころ、いつも来てくれるモモイシンタローさんの淹れてくれたお茶をいただき、パドックを去る。「今年で引退」は止めた。左右のタイヤを入れ替えて、来年もここへ来ようと思う。
朝飯 「ホテルツインリンク」の朝のブッフェ
昼飯 “Paddock Cafe”のカレーライス、ミニサラダ
晩飯 4種の野菜のサラダ、ロールキャベツ、“Qué bonito cacareaba2013”、アップルパイ、”Glenfiddich”(生)
2016.12.28(水) 黒いジャケット
“BELSTAFF”の、1年に1度だけ着るジャケットがクローゼットに見あたらない。「ことによると」と階段室の、4階から屋上へ行く踊り場まで階段を上がる。そこに置いたタンスの戸を開ける前から油が匂う。「やはりここだったか」とその、分厚い木綿に防水用の油を染みこませた重い上着を取り出す。
3時になったところで”EB-Engineering”のタシロジュンイチさんから電話が入る。「3時に出るんですか」と訊かれて「そうです」と答えると「4時でも5時でも間に合いますよ」とタシロさんは言う。「だったら4時にしましょう」と決めて電話を切る。
トラックの助手席に収まって16時9分に会社を出る。「ツインリンクもてぎ」に併設されたホテルの駐車場に17時33分に着く。タシロさんは荷台に上がり、夜露を避けるためブガッティをシートで包んだ。
ホテルの各部屋には本田宗一郎の伝記が備えてある。それを読みつつ、30分ごとに区切られた食事時間のうち、我々の選んだ18時30分が来るのを待つ。
夕食の後は風呂に浸かり、21時よりも前に就寝する。
朝飯 結び昆布、白菜漬け、生のトマトを添えた目玉焼き、納豆、メシ、大根と長葱の味噌汁
昼飯 「麺屋ききょう」のネギ塩ラーメン
晩飯 「ホテルツインリンク」の夜のブッフェの其の一、其の二、其の三、其の四、其の五、“Angeaile Brut”、”Suntory ROYAL”(生)
2016.12.27(火) 風は強い
マイナンバーに関係したことで近所に出かける。近所とはいえ徒歩ではすこし遠く感じるところにて、帽子をかぶり、ジャンパーを着て、手袋をはめて自転車に乗る。日光の山々は隨分と冬らしい姿になってきた。しかし気温は相変わらず低くない。
目的の家の玄関におじゃまし、事務的な話だけでは何だから「それにしても暖かいですよねー」と時候の挨拶というか何というか、そんなことを口にしたら「だけど風は強いよ」と、僕より20数歳は先輩と思われる女の人は言葉を返してくれた。
そう言われてはじめて、店のノレンが今日は風に煽られ片側に寄ってしまい、いくら直しても、すぐにまた片側へ寄ってしまっていたことを思い出した。
普段は閉店の直前に仕舞うノレンだが、今日はその1時間ほど前に事務室の中に引き込んだ。「よもや元旦に雪が降るなどはあるまいな」と、すこし心配になる。
朝飯 エリンギと小松菜の胡麻和え、五目白和え、鰯の梅煮、昆布締め、納豆、「たまり漬おばあちゃんのホロホロふりかけ」、メシ、トマトと昆布と玉葱の味噌汁
昼飯 「ふじや」の野菜麺
晩飯 春雨サラダ、葱焼叉、「正嗣」の餃子による水餃子、「紅星」の「二鍋頭酒」(生)



























